よろしくお願いします。
「いた!あそこに!!」
「間に合え!!唸れ 真空の斧!!」
フレイザードのせいで地底魔城の近くの死火山が活火山になり、大噴火をしてヒュンケルがダイ達を逃がした後、先に脱出をしていたクロコダインとティファはガルーダの助けを借りて
溶岩に呑み込まれかけたヒュンケルを間一髪のところで救い取った。
ダイ兄達ご免!でも後でちゃんと会わせてあげるから。
このマグマの煙でヒュンケルの救出シーンが見られず、きっと見殺しにしてしまったと泣いているはずだ。
罪悪感あるけど先に進んでもらう旨の手紙を鳩につけて送り届け、
「デルパ。」予想よりもボロボロのヒュンケルを手当てするために、島の友達ベホイミスライムの
べほちゃんを出した。
これはノヴァの時の教訓で、あれ以降外出時はいっつもべほちゃんと行動を共にしている。
火傷用と切り傷用の万能薬をそれぞれの効能を殺さない量で混ぜ合わせて塗って、
「べほちゃんお願いね。」
「-うん、ベホイミ―」-パー―
傷はすぐに治りホッとする。
「さて、こやつをどう説得をしたものか。」
う~ん、とっても頑固そうだ。
一行を命懸けで助けて償うのが俺の道とかの路線は勘弁してほしい、そんな下らなくて後ろ暗い
覚悟なんて私の中ではごみ箱行き決定している。
なので、「クロコダイン、私が呼ぶまでヒュンケルと二人で話をさせてください。」
「・・大丈夫か?」
またショックで説得する方法かと、クロコダインはヒュンケルの事を本気で案じる。
「・・取って食ったりはしません、穏やかにしますからね。」
なんかクロコダインに胡乱な目で見られた、ちょいショック。
「合図に鳩送ります。」
「分かった、ではな。」
クロコダインがガルーダと共に言った後、内面の手当てを始めた。
肋骨が二・三本折れているので包帯で固定をする、ダイ兄ちょっとやり過ぎだ。
終わった後ヒュンケルを寝袋に入れて、焚火を焚いてレモンティーの身ながら目覚めるのを待つことにした。
すこし空が白んできたか。
「う・・」
ん?目が覚めたかな。
「っう・・ここは・・」
まだはっきり覚醒していないのか呆っとしてる。
なんだ、体が重い。それに痛みもあって動きづらい。
んん・・あの眼鏡は!!
「アバン!!!」
ぼやけた視界にはっきりと映った黒ぶちの大きな眼鏡は、間違いなくアバンの物だ。
すると・・自分は・・「俺は死んだのか・・。」
死んで、あの世のアバンの元に来てしまったのだろうか?
「違いますよヒュンケル、貴方も私も生きていますよ。
おはようございます、ヒュンケル。」
「つ!ティ!!」-ズキ!!-
「ぐう!!」
「ああ、そんなに急に体を起こそうとすれば痛みますよ。
少しお待ちなさい。」
アバンでなくとも、自分が殺しかけた少女が穏やかに挨拶をしてくれば十分驚愕に値する。驚いたヒュンケルは咄嗟に体を起こそうとして激痛に襲われてしまった。
そんなヒュンケルをティファは上半身を支えてゆっくりと起こし、用意していた寝袋で作った
簡易クッションを三つ背中に入れた即席の背もたれにもたれさせ、
「これをお飲みなさい。温まりますよ。」
呆然としているヒュンケルの手にレモンティーを両手で持たせる。
のんびりと挨拶をされて世話をされ、最早反論する気さえ全く起きないヒュンケルは流されるままにお茶を飲んだ。
「・・美味い・・」
世辞ではなく、本当に体の隅々まで温かさが伝わる沁み入るようなおいしさだった。
「それは良かった。」
「・・何も聞かんのか。」
自分にお茶を飲ませた後はティファもお茶を飲んでいるだけで、別れた後に何があったのか聞いてこない。
「ヒュンケル、私は言いたくない事は無理には聞かない主義なんです。」
「・・そう・・なのか。」
「ですが。」
ティファは左手の指を一本すっと持ち上げると、
「言いたい事は遠慮なさらずに何でもどうぞ、どんな事でもどんとこいです!受け止めます!!」
ビシッと指を指しながら・・なんだか変な事を堂々と言っている・・・
「・・くっくっく・・は~はっはっは!」
可笑しな奴だこいつは、やることなすこと滅茶苦茶だ。
ひとしきり感じた可笑しさのまま笑ったヒュンケルは、ポツリポツリと決戦での出来事、
知った真実、全てをティファに話しつくした。
「お前の言う通り、俺は間違っていた。」全ての事を。戦士ですらなかった。
「そうですか。」
「ああ。」
「しかし貴方は散々な事を言った私とクロコダインの命を救ってくれました。
そんな貴方は戦士だと、彼と私の意見は一致しましたよ?」
「・・そうだ!クロコダインは・・」
「大丈夫です、彼も無事に無傷で脱出しましたよ。」
「無事か・・」良かった
「ふふ」
「・・何がおかしい。」
「貴方の顔が出会った時と顔と違って穏やかになっていたのが嬉しいのですよ。」
「・・そんなに違うか?」
「はい、まるで憑き物が落ちたような清々しい良いお顔ですよ。」
「そうか。」
「ダイ兄達のお陰ですかね?あの三人は何事も全力で一生懸命に物事に向かっていきますから。
貴方の事を助けようとしていませんでしたか?」
「ああ、マグマの中で全員が全滅しかけても最後まで俺の身を案じてくれていた。」
命ではなく心を救われた思いだ。
ダイの必殺技を喰らって倒れた自分を、慌てふためきながら介抱をし、あれこれと心配をしてくれた
優しい三人の子供達。
うるさくて目が覚めた、色々な意味で。
「これからどうしますか?」
ん!魔剣か、今は来ないでほしい -ジ・アザーズ―
ヒュンケルに今後どうするか決めてもらう前に魔剣がお空飛んできた気配がしたので、
無詠唱のハイエント結界で捕まえて、魔剣には空中で待ってもらう。
今のまま魔剣が来たら戦って償おうコース確定だ、絶対阻止もんでしょ!
「俺は償いたい!しかし、死んだアバンは許してはくれないだろう。」
敵の遺児である自分を温かく迎え入れ、惜しみなく注いでくれた愛情を、踏みつけ裏切った自分を。
「・・先程ヒュンケルの話を全てしてくれましたね。」
「・・そうだ。」
「私も一つ話をします。
貴方とお話をしていて思い出した事ですが、今から七年も前のお話です。」
「七年・・」
自分がアバンと別れてから一年後の事か。
「実は私とアバン先生は会っているのですよ、一瞬の出来事でしたが。」
「会った・・アバンと・・」
情報では-ダイ達―がアバンと会ったのは大戦日に島であったのが最初の筈だが、あ・・いや、
そもそも島にはモンスター達とダイしかいないと魔王軍では認識をしていて、ティファの事は
影すら見えなかった。
そのティファがいつ、どうやって。
「島を初めて出てロモス王国の港町の古道具屋でカール産の風よけマントを買って、少し歩きながら
リンゴを齧ってのんびりとしていました。」
「・・・」
「そうしたらいきなりあなたの名を呼ばれたのですよ、ヒュンケルと。」
「俺の・・名を・・」
「名を呼ばれながら肩をいきなり掴まれて、振り返らされた目の前にいたのがアバン先生でした。
その時のお顔は血相を変えて取り乱していたようでしたよ?」
「あのアバンがか・・」
いつも冷静であったあのアバンが血相を変えていた⁉
「はい、まるでようやく捜していた思い人を見つけたような雰囲気でしたよ。」
今でもよく覚えている、血を吐くが如くヒュンケルの名を叫ぶように呼んだ先生の声は。
忘れるはずがない、ようやく愛し子を見つけた親のようなあの声を。
「今思えば、カール産の風よけマントはどこでも売っていて、当時の私とあなたでは大分背格好も
違っていたでしょうね。」
そうだ、アバンはいつだって落ち着いて行動をしていた、なのに・・何故そんならしくないミスを。
「それだけ必死に貴方を捜していたのでしょうね、風よけマントで判別しようとする程に。」
ティファはそっと、沁み入るような声で当時のアバンの気持ちを代弁するように言ってきた。
「・・俺を・・そんな気持ちで・・」
出会った当初から憎しみの瞳しか向けなかった俺を、アバンが
「時にヒュンケル、貴方はアメはお好きですか?」
「はっ?いきなり何を・・」
「好きですか、嫌いですか、どうでもいいですか?」
この話の流れでなぜ突然アメの話に。
だが、ティファは本気で聞いているようで答えないといけない気にさせられる。
「・・好きだ」
アバンが作るものは何でも美味しかったとは本人には頑として言わなかったが、アメが一番好きだった。
「ふふ、そうですか。
だから先生はあんなに大量にアメをお持ちだったのですね。
会った時びっくりして泣いた私にアメをくれたのです、それも袋ごと。
ダイ兄と分けっこしても半月は持ちましたね。」
「・・それがどうした・・」
「分かりませんか?島で先生と会った時、先生はあまり甘いものを自らは食べていませんでした。
無論ご自身でアメを舐めていることも、ポップ兄やダイ兄に上げている素振りもありませんでした。
では当時何故あんなにアメを沢山持っていたのか、ご自分用でないとすれば―誰―の為の
アメだったのか。」
「・・あ!・・」
それは・・もしや・・
「そうですヒュンケル、-貴方の為―のアメだったと思います。
いつ貴方と再会をしてもいいようにと用意をされていたのでしょう。
・・残念ながら、島に来た時の先生は貴方との再会を諦めてしまったのか、飴は持っては いませんでしたが。」
そうだ、何かあればアバンは常に飴をくれていた。
「ヒュンケル、よく出しましたね。ベリーグットですよ。」
そう言って、頭を撫ぜて来て・・飴をくれた。
あれだけは素直に受け取っていた、甘くて・・とても、温かさを感じて―ポタン―
「おれ・・は・・」
「先生はおそらく、許すとか許さないとかは考えていなかったと思いますよ。」-パタパタ-
「むしろバルトスさんから託された貴方を救えなかったと後悔されていたのかもしれません。」
「俺を・・救う・・」
「ええ、彼の人はとても優しく心の広い温かい人でした。
魂の貝殻に声と思いを残した貴方の父君もまた同じような方だったのでしょう。」
―ヒュンケル、最愛の息子よ- -お前と出会えてよかった-
俺は‥俺は!
「貴方は確かに愛されているのです。
父君から、そしてアバン先生からも。
そして新たに、ダイ兄と、ポップ兄と、マァムさんからも。」
・・みんな・・本当に温かい笑みを向けてくれていた・・こんな自分に。
―どうか幸せに-
「ですから、貴方も幸せになっていいのですよ?」
!!その言葉は、魂の貝殻の父と同じ言葉!
いつの間にか自分の目の前まで来て膝立をしているティファは、頭をクシャリと撫ぜてきて
父と同じことをいった。
呆然とした思いでティファの顔を見てみれば、微笑んでいて「ヒュンケル。」
優しく名を呼ぶ様は・・
「せん・・せえ・・」アバンと、
「父さん!!うう・・うわあああー!!!!」父の姿が重なった。
「あああー!!うわーああ!!父さん!!・・先生!!」
ヒュンケルは泣いて・・ただひたすらに泣き続けた。
己よりも年下の、それも殺しかけた少女の細い体にしがみついて。
ティファも何も言わずにヒュンケルの頭を抱きしめて思いの全てを受け止める。
小さな体でヒュンケルの全てを包み込み守るように・・まるで雛を守る親鳥のように。
最初の方で書いた-アメフラグ―がようやく回収出来ました。
一行の料理人は少しずつ一行のお母さんのように慕われ始めます。
次回も回想です。