勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

69 / 535
物凄くお久しぶりです。

UPが遅くなりました。



~回想・料理人の不在~

ティファと様々な事を話しながら、三人でとりあえずパプニカの王城へと向かった。

「兄がこの国の王女様と仲いいようです。助命嘆願はともかくとして、民達からも公正で知性高き王女との呼び声も高いようなので、貴方達の処遇を決めてもらうにはうってつけだと思います。」

勇者自らが助けようとした相手を悪くはしないだろうと話しながら。

 

王城と街が見えてきたところで、クロコダインとヒュンケルの二人はティファに頼みごとをされた。

「このマジックリングを兄達に渡してください。」青い色のマジックリングを渡された。

「・・・お前はついてこんのか?」てっきり一緒に来てくれるものだとばかりに思ったのだが。

「実は先の戦いで私達が使っている薬が尽きてしまったので、申し訳ありませんが別行動で作ってきます。材料は市販では手に入り辛くて、テランとロモスへも行かなければならないんです。

 詳しい話は後日しますが、よろしくお願いします。中には残った薬が入っています。

 効能は瓶にラベルが貼ってありますので私がいなくとも大丈夫ですよ。」

「・・もっと作り置きは出来ないのか?」ヒュンケルはとても不満そうに言った。

薬よりもティファ本人にいてほしいというのに、本人はにっこりと笑って行こうとするのが嫌だと。

「この薬は既存の物よりも効果が高い分、薬の効能を殺さないように防腐の物を使っていないのです。

腐るのが早いので、作って二・三日で腐り始めてしまうのです。」万能薬はそこが難しい。

これは市販薬には向いていないのだ。

 

「その代わりいい薬を沢山作ってきます。材料もなるたけ採ってきて、ストックをしておくようにしますので今回はよろしくお願いします。」

「分かった、我等の為に作ってくれるものだ。ヒュンケルよ、」

「・・・・分かった、すぐに帰って来てくれ。」

「はい、皆さんがどこにいるのかは魔王軍との戦闘を聞けばすぐに分かります。」

 

終わっていたらその周辺を探せばいい。

 

「しっかりとしているな~お前は。」

「気を付けて行けよ。」

「はい、行ってきます。お二人も頑張ってください、ダイ兄達がきっと味方をしてくれます。ガルーダ!!」-ギシャ~-

 

挨拶もそこそこにティファは自前のガルーダに乗って行ってしまった・・というかガルーダに乗って行くって・・まあいい、ティファだしと二人は深く考える事を放棄して、目の前の現実を見据えてパプニカの城下町へと入っていった。

人、人、人。とにかく人だかりで、王城自体が攻撃を受けていないせいか、人々はどこか大戦とは縁遠く見えた。

どこかで大変な事が起きているが、いまいちピンと来ていない活気がそこにはあった。

誰もが笑い、普通の生活をしている。二人には縁遠く知らない人間の生活がそこでは当たり前にされている。

 

「ヒュンケル・・」

「ああ・・・俺達は・・碌に人間を見ていなかったのだな・・」

人間は弱く、それゆえに卑劣だと思って生きてきた。他者を騙し、自分と違うモンスター達を数で囲んで虐殺し、強き者におもねり、醜い生き物だと何故思ってきたのだろう?

答えは簡単だ、人間の一部しか見ていなかったのだから。

それは種族が違うからの一言では済まされまい、何故ならばその場にいなくとも情報が収集できる、悪魔の目玉を使えば済む話だからだ。

しなかったのは人間に興味がなかったから、もっと言えば最初から決めてかかっていたから、人間は存在するに値せずと。

しかしここに住まう人間はどうだ?子供達の笑顔と、モンスターの仔の笑顔とどこに差異がある?

そんな事も知ろうともせずに、人間を滅ぼしてモンスター達の楽園を作ろうとしたクロコダインは己の思い上がりを恥じ、父の仇の人間なぞ死んでも構わんと勝手な憎しみに囚われていたヒュンケルも同様で、処刑にされた方がいっそ楽なほどの罪悪感に攻め立てられる。

「・・行こうヒュンケル・・」今この国にリザードマンがいては騒ぎになると、大きな布を被って正体を隠しているクロコダインが、下にうつ向いたまま動けなくなったヒュンケルを促す。

顔を上げたヒュンケルの瞳には、罪悪感と悲しみと、わずかながらも安堵の色がある。

それはきっと、この国を滅ぼさずに良かった、ダイ達が止めてくれてよかったと思っているのだろう。

 

 

王城の門番にまずダイ達を呼んでもらうことにした。あの三人ならばすぐに駆けつけてくれると思ったのだが、来たのは金のイカールと、青の宝珠を埋め込んだ男が、呼びに行った門番と共にやってきた。

「貴方達がダイ君の・・貴方のその胸にあるのは、もしやアバン様の弟子の証の輝聖石では!!」

男は何か焦っているようで、右足を引きずりながらも観察力はたいしたものだ。

「その通り、ダイ達の同門だ・・」嘘は言っていない!もしも償う機会を与えてくれるのならば、生涯師の教えを守り抜き、ダイ達の助けて守っていくのだから。

 

「ああ!!神よ!感謝をします!!!」・・急にどうしたのだ?

「実はダイ君達一行が来る前に、化け物が現れて姫様を攫って行ったのです!!」

それは氷と炎が合わさった化け物で、王国の騎士団も魔法使い達も歯が立たずにむざと姫君を!!

「・・私はご覧の通り右足を焼かれ、同僚の一人が瀕死の重傷を負ってしまったのです。」

三賢者と呼ばれながらもこの体たらくで不甲斐ないと男は己を呪っている。

「今ダイ君達が我が国の者達と追っています、あの化け物は自らバルジ島にいると告げて行ったのです。」

明らかな罠だが、ダイ達は聞いた瞬間一も二もなく飛び出していった。

ダイ達だけではと、バダックと、ほぼ無傷で済んだ三賢者の一人エイミと共に気球で乗り込んでいった。

「幸い私はかの島へといった事があるのです。今すぐにキメラの翼で!!」

「いや、すまないがその志だけ頂こう。島へは俺とこの男と二人で行く。」

 

この男の覚悟は本物なのだろうが、フレイザードの相手にはなるまい。怪我を差し引いたとしてもだ。

ヒュンケルはフレイザードの強さをよく知っている。伊達に魔王軍の同僚はしていない。

「しかし!!ご存知ないかと思いいますが、バルジ島には・・」

「知っている、大渦があるのだろう。それを承知した上での事だ、移動手段も持っている。」

口には出せないが、パプニカを攻める時の為と、下調べを十分しておりバルジ島の事も把握をしている。

万が一その島に逃げ込まれた時の対策も練ってあったとは言えないが・・

 

「・・・私では足手まといでしょうか?」

「・・すまない、俺はその化け物の正体と、実力をよく知っている。足にけがをしたものが敵う相手では決してない。命を粗末にするな。」・・・ダイ達を救おうと、命を投げ出した自分が言えた義理では無いが、この若者の目は真っ直ぐで、死なすには惜しいと思ってしまったのだからしょうがないではないか。

ヒュンケルは苦笑をしながらも止め、真摯な説得は相手に届いたのか、死を覚悟をした瞳から力が抜けた。

「分かりました、情けないと御思いでしょうが、どうか姫君を・・」泣きながら、腕を押し頂く。

大切で、心の底から忠誠をその姫に誓っているのだろう。そこまで大切な相手を、己が助けられない無念さはいかばかりか。

「・・俺の名はヒュンケル、ダイ達と共に必ず姫君を助ける。」

「俺はクロコダインだ、この身に代えても約束を果たそう。」

「・・・貴方達は・・申し遅れました、私は三賢者の筆頭アポロと申します。

 貴方達もダイ君も、姫君と共に必ず無事にお戻りください!」

 

アポロはレオナ姫を助けると言ってくれた二人の覚悟を瞬時に見抜いた。本当に自分達の命を懸けてしまいそうな危うさも。

自分達三賢者が生きて、だが二人が命を懸けるのは間違っていると言外に込めて無事を祈る。

 

 

「いい青年だったな。」

「ああ、俺はこの国を滅ぼさなくて良かったと心底思う。」案じる姫と勇者一行のみならず、怪しい自分達の身さへ案じてくれた優しい者がいる国を滅ぼさずに。

「・・約束をしてしまったな・・」ティファ同様に、生きて帰る事を。

「生きて帰るぞクロコダイン。」たとえあの青年が自分達の真実の姿を知り、案じてくれた瞳が憎しみに変わる事になろうともだ。

 

 

そしてクロコダインのガルーダで島に乗り込み、別々の柱に分かれて氷の柱に到着し、無事にポップの危機に間に合ったと神に感謝をしたくなった。

ティファの不在であっても、必ず姫を助けてあの青年の元へと帰ろう!




本当に遅くなりました。

やっと出ました、三賢者の筆頭アポロンさんです。
物語りの中盤で、早々にヒュンケル達と深く関わりました。

これからはもう少し定期的に更新をしていきたいと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。