勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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主人公は相変わらず出てきませんが、その代わりをちょろっと出しました。



戦いの序幕

大戦の最中にあってもベンガーナ国は魔王軍の被害を受けていない国であった。

オーザム王国の様に滅亡もしなければ、リンガイア・ロモス・パプニカの様に端っこの村や田畑を焼かれてもおらず、かといってテランの様に侵攻価値がないからと放って置かれたわけではない。

シャドー・ゴースト達の軍が来ても退けたという自負があり、来るなら来てみろ魔王軍と考えていた。

 

今日までは。

 

 

「ダイ!そっち行ったぞ!!首が一頭の奴は俺が、お前はヒュドラを頼む!!」

「分かった!気を付けてねポップ!!」

四日前に魔王軍の軍団長を撃破して、今日は竜を二頭相手にって俺達なんか呪われてんのか⁉

何でこんなにトラブルが向こうからくんだよコンチクショウが!!

 

 

ダイと二人でマァムをネイル村の近くに送り届けた。本当は村まで送りたかったが、「ダイ達にもやる事があるでしょう。武器を新調しないとね。」勇者一行のすべきことを優先してほしいと言われたら、それ以上強く言えない。

「そう、マァムとは当分会えないのね。」武器を新調したいが、当てが無い二人はレオナに相談をし、レオナはマァムに会えないとがっかりをする。

同い年であっても、どこかお姉さんぽかったマァムに懐いていた分ガッカリ度合いも増す。

「大丈夫だよ姫さん、あいつはすぐ強くなって戻ってくるよ。」

「またすぐに会えるよ。」

「そうね、二人共武器の事なんだけれどもベンガーナに行った事はある?」

ダイとポップに慰められたレオナは気分を浮上させ、武器の相談に乗ってベンガーナ行きを提案する。

「まあ有るったらあるな、先生と旅してた時一度だけ。でもな姫さん、俺達はそんなに金持ってねえぞ。」

レオナがベンガーナと言ったのをポップはすぐに-デパート-だと察して表情を曇らせる。

先生とベンガーナに寄ったのも、世の中を見る勉強ですと連れて行ってもらったからだ。

 

「あのね、二人は私を助けてくれたのよ。」つまりパプニカという国を丸ごと守ってくれた大恩人。

武器の出資をするのは当たり前だと、マジックリングをアポロに言いつけて持ってこさせた。

「この中には五千ゴ-ルド入ってるわ。武器と装備を充実させることを、パプニカの王女・レオナが命じます。

そんなわけだから行ってらっしゃい二人共。」茶目っ気たっぷりとした命を出し、二人が受け取りやすいようにする配慮も忘れない。

「分かった、良い武器を買ってくるねレオナ。」

「ありがたく使わせてもらうぜ姫さん。」

 

行った事のある場所なのでポップのルーラであっという間に到着をした。

街には活気が溢れ「・・何だか、ギスギスしたところだね・・」ダイはすぐに嫌になった。

何となればダイはモンスター島で育ち、人間の欲望とは無縁に育った。交流をしているウォーリア達は皆気のいい人達で、ここにいる人達は何か違う。

「・・武器買ってすぐに師匠のところに帰るぞ。」

ポップもあまりここは好きではないのでサクッと帰ることにした。

 

「・・・ポップ・・もう帰りたい・・」どんな強敵が来ても負けないダイが、デパートの人の多さにに半べそをかく。

「ほらダイ、泣くなよ。さっきも言った通りすぐに帰るから頑張れ。」気持ちは分かる、ダイにはどこか過保護に育てられた箱入り感を感じていた。

ブラスとティファによって守られて、ウォーリア達に見守られてすくすくと育った自然児には、デパートは少々刺激が強すぎた。

案内状を見つけ、階段で武器の展示場に来たダイは少し落ち着いた。

ここに来るのは冒険者の類がほとんどで、あまり人がいないので伸び伸びと武器を見るのに専念できる。

 

「ポップ、あれは何?値札っていうのが付いてないよ。」

一通りの物を買ったダイが、目敏くドラゴンスレイヤーを見つけた。

「ああ、あれは買いたい奴等が値段をつけ合っていって、一番高い値段を言った奴が買えるオークションっていうのをするんだよ。」

「ふ~ん。」 「欲しいのか?」珍しくダイが物欲しそうにしている。

「うん・・鋼の剣より力を感じる。」先程買ったのは理力の杖と、ダイの鎧の一部だけ。

丸ごと売っていたのをダイが使える部分だけ見繕って店員に相談をして買ったのでお金は余っている。

「よしダイ、駄目もとでオークションに・・」

「止めとけよ兄ちゃん、そいつは俺のもんだ。」

「・・誰だあんた?」可愛い弟の為に一肌脱ごうとしたのは誰だと振りむけば、脂ぎったぽっちゃり体型の男だった。

「・・あんたがあれを使って戦うのかよ・・」どう見ても使いこなせないように見えるが。

「は?飾っておくに決まってんだろう。」

男の言い分に頭痛を感じる。この大戦の最中に武器を飾っておきたい馬鹿がいるなんて、最前線で戦っている者からすれば信じられない発言だ。

だが、極力関わりたくはない。

「行くぞダイ、オークション始まったら参加すればいいんだ。」なによりもダイの教育上よろしくはない。

「それがいいよ坊や達、そんな欲深な者に近づくではないよ。」

塩辛声の・・なんか雰囲気が師匠に似ている声がした!

振り返ってみれば、しわだらけの黒いローブを来た老女と・・「綺麗だ・・」

同行しているとみられる女の子を見て、ポップがぽつりと漏らす。

長いサラサラの黒髪にアメジストの瞳を持つ、儚げでどこか神秘的な感じのする女の子だ。

ポップのつぶやきが聞こえたのか真っ赤になり、「おばあさまが失礼を言いました、さ行きましょうおばあ様。」

欲深と言われた男が怒りだす前に、ポップ達の前からすたこらと行ってしまった。

文句を言えなかった男がぶつくさ言っているのも気にならない程、ポップは行ってしまった少女を惜しむ。もう少しだけ話がしたかった。

 

気を取り直してオークションに参加をしたら、手に入れたのは欲深男でも、ポップ達でもなく、八千ゴールドで落札をした男だった。

これといった特徴のない男で、手に入れてもさほど喜んだ顔をしていないのが特徴といえなくもない、平凡そうな顔をした男だった。

「あれがあれば便利だったよな~。」

「仕方がないよポップ、それよりもこの後・・」

 

            -グギャアアアアア―――!!-

 

「ドラゴンだ!!」

「なんでこんなところにドラゴンが!!」

デパートの中にまで響いた咆哮に、デパートの中はパニックになった。

「・・嘘だろう・・ドラゴンが、それも二頭って・・」トラブルが早々にやってきたと頭痛がするが、ここは戦うしか「おい!少年!これを使え!!」

先程ドラゴンスレイヤーを手に入れた男が来てダイに渡してくれた。

「おい!・・いいのかよ・・」大金投じて買ったんだろうにと躊躇ってしまう。

「いいんだ、あれを倒さなければ私も死んでしまうだろう?私は血なまぐさい事が大嫌いだ、貸し出す条件はさっさとスマートに倒す事、以上だ。」

「あ、ちょ!・・行っちまった・・」

「ポップ!早く行こう!!」

 

借りたダイも変わった条件だと思いつつ、なによりもドラゴン退治を優先し撃って出る。

「スマートにか・・」ダイと別れたポップは杖を出し「ベダン!!」いきなりの大技を出した。

昨日の特訓はこれを会得するためのものであり、死ぬ気でやってドラゴンをねじ伏せる。

重力の重みで苦しんで開いた口の中に「メッラゾーマ!!!」-ゴオオオオウ!!-

最大火力をぶち込んで一気に倒す。特訓をしてくれた師匠に大感謝だ。

周りは歓声を上げるがポップは意にも介さずダイを探しに行く。

あいつならすぐに、そう思ったが苦戦をしていた!背には逃げ損ねた母子がおり思うように戦えないのがすぐに分かった。

トベルーラの要領で親子の側に行きすぐにその場を離れる。

「ダイ!もう大丈夫だ!!やっちまえ!!!」

「ありがとうポップ!」庇う者のいなくなったダイは、一気に片を付けに行く!

「君達こっちだ!」親子を助けたポップの元に、先程の男がまたもや現われて避難誘導をしている。

「お前達も!巻き添えで死にたいのか!!!」・・何か焦っているような。

「くらえ!!ライデイン!!!!」-バリバリ!!!-

避難した人達を見送ったポップが振り返って見れば、ドラゴンに馬乗りになって血にまみれたダイが止めを刺す瞬間だった。

(ダイの奴、戦いに夢中になり過ぎだ・・)この光景を先程の親子・・特に小さな女の子が見れば、ダイの凄すぎる力に怖れて泣いていたかもしれない・・先程の男にはあらゆる意味で感謝をしたくなる。

人間の弱さは、臆病者の自分がよく知っている。ダイの事をきちんと知らなければ、自分もダイの力に恐れをなしているのが目に浮かぶ。

 

 

 

「お役目を果たしましたよ主様。」

ポップの考える事は当然ティファも考えていた。

本来ならば自分自身がデパートに同行をして事態を収集したかったが、ほんの少しだけ薬作りに間に合わず、やむをえずに式でダイ達を細かくサポートするように男を作り、送り出したのだ。

-人間が自分を怖れるならば、自分は地上を去る-原作で言った言葉を兄に言わせないために、人から怖れさせないようにと徹底的に守り抜くつもりだ。

 




原作のフラグの一つを叩き折りました。
以外に過保護に育ったダイですが、戦いになれば強い子です。

次回はいよいよ親子の対面です。

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