勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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よろしくお願いします。


じいちゃんもダイ兄も素晴らしい人達です

「おーい、ティファ~」

 

浜辺迄まだ距離あるのに私の事見つけたダイ兄元気よく手を振ってくれてるけれど、隣のじいちゃんの顔が怖い!

じいちゃんメッチャ怒り顔してる!!後で説教の嵐決定だけど私に悔いは・・あとで考えよう。

何より、じいちゃんの顔は怒ってるのよりも不安そうな方が強く見える。

そりゃそうか・・ここに流れて来た理由は、人間の迫害から逃げるためで、四年目にして初めて私たち以外の、それも大勢の大人の男達が来たんだもん‥。

でもここまで来たからにはもう引き返す道などないのだ!!

 

「ダイ兄、じいちゃんただいま~。」 

 

船から飛び降りて二人に思いっきり飛びついて押し倒す。

 

「あ~・・ティファ~。」

「こりゃティファ・・。」

「ごめんなさい・・心配かけて・・。あのおじちゃん達が助けてくれたの。」

 

うる目で謝りつつ、さり気なく船員さん達を紹介したら、ダイ兄はあっさりと許してくれた。

 

「もういいよ~。ティファ無事に帰ってきたんだもん。」

「こりゃティファ。」

「なにじいちゃん。」こっから勝負か。

「あの方たちに助けてもらったのか?」

「うん、そうだよ。」

「きちんとお礼をしなければ駄目じゃろうが‼」

 

大勢の人間が急に来た不安よりも、私の事助けてくれた事に感謝してお礼を言いに行ってくれるじいちゃんは本当にいい人だ。

こんなに素晴らしいじいちゃんの孫娘であることが誇らしい(´∀`∩

 

並みに流された孫娘がモンスターの祖父との感動の再会と、大勢のモンスターの群れに囲まれても無事でいる自分達の現状と、どちらに反応していいのか微妙な感じの船員さん達に、じいちゃんは短い足で出来得る限りの速さで走って直ぐにお礼を言いに行って、船員さん達が面食らう。

 

「初めてお目にかかりますじゃ。儂はティファの育ての親でブラスといいますじゃ。

この度はティファを助けてくださり、お礼のいいようもありませんじゃ。何とお礼をすればよいのやら・・。」

 

面食らっている船員さん達よ、じいちゃんの礼儀正しさは折り紙つきだ。そこらの人よりも出来たじいちゃんなのよ。

 

「あのね・・ティファ助けてくれて・・ありがとう・・。」

 

ダイ兄もじいちゃんの背中に隠れるように顔を出してお礼を言ってくれている。

照れ笑いしながらっていうのが超かわい~い‼

じいちゃんに驚いていたおじさん達の顔も、ダイ兄の可愛さにやられて緩んでる。

 

「お嬢さんを助けたのは当然の事です。名乗るのが遅くなりましたが、私がこの船の船長をしているウォーリアといいます。」

 

あり私とした事が、船長さんの名前聞くの忘れてた。

年の頃は五十代っぽい。

よく日に焼けていて、赤い船長帽子と上着が似合う伊達男さんで、帽子脱いだら短髪の青い髪が素敵なおじさんだ。

もうじいちゃんに驚いておらず、普通に話してる。大海原を腕一本で渡る海の男らしい胆の太さがかっこいい!!

 

ティファが感じたように、ウォーリアー船長から胆力とそして誠実さを感じ、悪い人では無かろうと判断し、島に招き入れてきちんとお礼をする事にした。

 

「ひとまずわしらの家にお越しくだされ。」

「いやそんな・・。」

「大丈夫ですじゃ。ここには船に悪さをする者はおりませんぞ。」

「いえ、そんなことは思っておりませんが、大勢で押しかけては・・。」

「ティファを助けてくれたお礼をゆっくりとさせてくだされ。」

「そうですか。ではお言葉に甘えて代表で私と若いのを二人・・カイとラック、付いてこい。

お邪魔させていただきます。」

 

一連の遣り取りをじっと見ていたティファは、ウォーリアーがブラスの提案を受け入れたのを見てほっとする。

爺ちゃんだったら、船員さん達をきっと気に入ってくれると思っていたが、きちんと招き入れられるかはまた別の話だから、PR活動がうまくいきそうで内心とってもほくほくしている。

ようやく話しがまとまりウォーリアーと船員と若い船員二人が、家に招かれる事決まった。

 

 

「残りは船の点検を。それとモンスター達に失礼の無いようにしろ。」

「「「へい、船長!!」」」

 

船長さんすごくテキパキと指示出してる。

船員さん達もビシッと返事をしてみていて気持ちのいい人達だ。後で美味しい果物持ってこよう。

この時期ならオレンの実とパパイヤがいいかな?南海の島は南国の果物に困らない。

 

家に着いたら、船長さん達中を珍しそうに見回してる。そりゃそうだ。

いかに礼儀正しいとは言え、そこはモンスターの鬼面導士のおうち。

もっと散らかってるのをイメージしたんだろうな~。

家の中が清潔に保たれているのに驚いたんだろう。

この家はダイ兄と私とじいちゃんの三人暮らしなので、原作の家よりも広く作られてる。

家具も漂着してきた物をじいちゃんが修理して使ってる。

さすがに全員が入るとやっぱり狭いので、外にテーブル出してココナッツの殻で作ったコップを出して、今朝作っておいたオレンの実のジュースを船員さん達にお出しする。

ちゃんと準備は抜かりなくバッチリです。

 

「・・お構いなく・・。」 出された船長さん達は当然驚いてる。

「いやいや、大したものは出せませぬが・・。」

「いえいえ・・」

 

大人の面倒挨拶がまた始まったなと、ティファはダイとジュースを飲みながら挨拶合戦が一段落するのをしばし待ち、ウォーリアーの言葉で程の良いところで切り上げられた。

 

「おや、あれは・・。」

 

挨拶合戦をしていたウォーリアの目に、戸口からちょうど見える棚に置いてあった二つの揺り篭が見えた。

 

「あ~・・、あれはですの~」

 

ウォーリアが見ているのが揺り篭だと分かったブラスはおもむろに立ち上がり、懐かし顔をしながら揺り籠二つを取り出し、昔語りをする事にした。

何故このモンスターの島に人間の子供二人がいるのか、そしてその二人は島の皆の宝物であり、ティファを助けてもらってどれほど感謝しているのかを伝えるために。

大嵐の二日後に浜に打ち上げられた私たちを見つけて、以来育ててくれた事。

そして・・、いつか両親が私達を探し当てて迎えに来るのを待っている事も・・。

 

「ただ・・ダイの名前だけが気がかりですのじゃ。」

「・・ダイ?」

「このティファの兄ですじゃ。ティファの揺り篭には名前がしっかりと着いておったのですが。」

ブラスは一端言葉を切り、家に入って揺り篭をひとつ持って出てきた。

「これですじゃ。」

持ってきた揺り篭のネームプレートにはーDーしか書かれておらず、後は何かでこすれた跡がある。

 

「本当はご両親がつけた名前がわかれば一番いいのですがの~。」

 

分からないので勝手に名前をつけてしまったのが、ブラスの心の中で一番の気がかりとなっている。

両親が必死に考えていたであろう名前と全く違うかもしれない事を気に病んで。

名前とはその子供の幸を願ってつけるものだというのを知っているブラスだからこその悩みであった。

 

「本当の両親が現れた時、謝らないといけませんの。」

 

今まで胸に秘めていたブラスの悩みを聞いたティファは、胸を打たれる。

 

本当になんていいじちゃんなの!!

 

よく覚えてる、名前がこすれちゃったのは、嵐の中に赤ん坊の私達が篭から放り出されないようにアルキードの船員さん達がロープをぐるぐる巻きにしたあとだ。そのおかげでダイ兄と私は無事だった。

こんな縁も所縁もどころか種族が全く違う・・自分達を迫害した人間の赤ん坊を育ててくれているのに・・、

迎えに来た親が名前でグダスカ抜かしたら、私が力の限りぶん殴る!!

・・バラン父さん来ないけど・・再会した時抜かしたら全力でそうしよう。

 

自分が話した後静かになったので、ブラスが周り見回したら船長達ぼろしてる泣きしてるのを見てしまった。

ダイは不思議そうに急に泣き出した船長達を心配して撫ぜはじめる。

 

「どうしたの?どこか痛いの?」

 

怪我して泣いた時にブラスが自分達にしてくれているのと同じ事を、ダイは小さな手で懸命にウォーリアー達の背中を撫で始める。

 

痛いの痛いのどっか行けと言いながら背を撫でてくれる幼く小さな手の温かさに、ウォーリアー達の胸が様々な温かい思いでいっぱいになる。

 

この子供達は何といい子に育っているのだろう‼この鬼面導士・・いや!ブラスさんが素晴らしい人物だから、こんなにも素晴らしい子になったのか。

船長のウォーリアは様々なことでボロボロと泣きながら胸の中に誓う。

これで、名前の事をがたがた言う親なら、俺がぶっ飛ばすと心の中でティファと似たような事を叫び上げる。

 

 

 

・・船長さん達・・じいちゃん達の良さ分かってくれたのかな?

じいちゃんもダイ兄も、とっても素晴らしいんだから!




いかがでしたでしょうか。ブラスさんがとっても素晴らしい人物です。
主人公を助けた船員さん達も負けず劣らずに素敵な人達です。

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