遅えな、ダイの奴大丈夫か?
待てど暮らせどダイが帰って来ないとポップは湖の周りをうろうろとする。
「ちょっとポップ君、落ち着いて・・」
「だって姫さん!・・あ――もう!!」」
先程のメルルの言葉気が気になってしょうがない、竜の騎士は一つの時代に一人しかいない筈。
そう言われてもダイとティファには紋章がある、これをどう判断をすべきか分からずとにかくダイの無事な姿を見たいと、先程から苛々としている。
師匠・マトリフが見たら、魔法使いの冷静さはどこ行ったと雷落とされているところだが、弟の心配をして何が悪いと心の中で開き直ったポップであった。
「おお!ここに居たかお前達!!」あれ⁉
「何でここに居んだよおっさん!」偵察に行ったはずのクロコダインが何でテランに?
「実は知らせたい事が・・俺がいていいのか?」
息を切らしてダッシュで来たクロコダインが、姫のみならずメルルとナバラに気がついて遠慮をしようと止まってしまった。
「大丈夫だよ、おっさん達の事はきちんと話してあるから。」
城から湖に来る途中の道々で自分達一行の事をきちんと正直に話してある。
「あの・・メルルと言います・・・初めまして・・」顔を赤くしながら、メルルはクロコダインに挨拶をする。
「む!あ・・や・・俺は獣王クロコダインという・・・おいポップよ!」武骨な武人の自分に、こんなお淑やかな年ごろの娘の相手は無理だと早々にポップに助けを求める。
「ふんむ・・お前さんは良い子のようじゃの~。」酸いも甘いも嚙み分けたナバラは、マトリフの様にクロコダインを好ましく思う。
この年まで生きていると、敵だ味方だ、種族だ何だだの馬鹿馬鹿しい事に思えるのだった。
「で、おっさんはどうしてここに?」本当にどうやって自分達を見つけたんだか。
「いや、先にマトリフ殿の所に行った、お前達を水晶で見つけてくれてな。」あいつ等テランか。
「・・・師匠すげえ・・」
「本当にマトリフ様って凄いわね。」
普段ちゃらんぽらんの女好きに見えても、当代屈指の大魔導士の呼び声は伊達ではない。
「それでお前達はどうしてここに?」言っては何だが、魔王軍も目を付けなかった衰退している国に来た理由が分からない。
ポップは端的に説明をする。
「それではティファも竜の騎士とやらか?そんなに何人も居るのか・・」
「いや、ティファはダイの妹だからだろう?」
「ちょっと待て!ティファはダイの妹なのか?」
「おっさんも知らねえのかよ!」世界を相手にしようという魔王軍はきっと情報力収集力の桁が違うと思っていたが、その魔王軍の軍団長でさえ、勇者ダイの事を知っていてもその妹を知らないだなんて。
ティファはまるで陽炎のようだ、確かに存在をしているのに不確かな者のようで胸がざわざわとする。
ダイに早く戻ってきてほしい「あっ!!」
ポップの焦りを受けたように、メルルがびくりと揺れて大声を出す。
「来ます!底知れない力を持った二人が!!湖の底から!!!」
メルルの言葉に呼応するように、湖の中心が渦巻き始める!
「取り消せ!人間を滅ぼすなんて!!」
湖の底の神殿では、ダイが怒りに燃えている。
竜の騎士とは正しく優しきものだとナバラが言っていた!なのに自分の父だという者が魔王軍だと名乗り、あまつ人間を滅ぼすといったのだ!許せるわけがない!!
「ディーノよ、その年でそれほどまで紋章の力を使いこなすとはな。だがしかし、まだまだ未熟!!!」-ヒィー――――ン!!!!!-
二つの紋章の力が激突をし、耐えきれずに水晶と神殿は崩れ落ち-ズッド――――ン!!!-
水柱が十メートル以上も上がり、「ダイ―――!!」ダイが水柱から吹き飛ばされてきた!
ポップはトベルーラでダイを受け止めて、素早く仲間たちの下へと戻る。
ダイの顔色は青ざめて震えている。
「つぅ!!」湖から物凄い気配がしたので見てみれば、知らない男が宙に浮いて自分を憎々し気な眼差しで見ている!
「バラン!何故貴様がここに居る!!」超竜軍団の長が、何故テランに!!
「ふん!久しいなクロコダイン!!よもや貴様とヒュンケルが裏切り者になろうとはな。
正直がっかりとしたわ!」特にヒュンケルは自分と同じく人を憎むものと、どこか身内のように感じていただけに落胆が大きかった。
「・・・確かに裏切りは褒められたものではない、しかし!俺は、俺達はこの一行を助けると誓ったのだ!!それが誰に誹られようとも。」クロコダインの瞳には後悔の色はなく、いっそ清々しく澄んでいる。
「良かろう、それが貴様らの選んだ道だというのならば我が手で潰すのみ!!」
クロコダインとバランが言い合っている間に、ポップはダイの肩をそっと包む。
「ダイ、湖の底で何があった?」ダイがうろたえているなんて尋常じゃない。
「あいつが・・俺の父さんだって・・その後・・人間を滅ぼすって!!」訳が分からないとダイは泣き叫びたくなる。
「その通り!私はそこにいるディーノの父であり、本当の竜の騎士だ!!」
ダイの言葉を耳ざとく聞きつけたバランは、すかさずにダイの父であると堂々と言いきった。
「お前がダイの父親だと・・」クロコダインは完全に唖然とした。
まさか元同僚が、伝説の騎士だとは思いもよらなかった。
・・・・あんの野郎!!!実の息子かもしれない奴にいきなり人間を滅ぼせだ⁉
あいつが魔王軍ならばダイは地上を守らんとする勇者だと知っているはずだろうに、そのダイに向かって何て事を!
「ディーノよ!何故妹を伴ってこなかった?」共に神殿に来ると思ったのだが、やはり少女であるゆえに一行が島に帰したのだろうか?
やはりソアラに似て優しい子に育っているのか、ディーノを説得したらすぐに迎えに行こう。
それに、ちらりとディーノに寄り添う娘を見る。
金の髪の中々美しい娘だ、聡明そうでディーノに相応しい。人間の娘だが認めてやらなくもない。
ソアラもかつては一国の王女だったしな。
まさか連れて行かれる要員で品定めをされているとは知らないレオナは、バランは自分達の戦力を図っていると勘違いをして、頭の中で素早く算段をする。
自分は王族であり、魔王軍の長を相手に早々にしっぽを巻いて逃げるわけにもいかない。
引き際は肝心だが、今はまだその時ではない。
メルルとナバラは非戦闘員でありどう逃がし、魔法騎士団をどう呼ぶかを必死に考えている。
「さてディーノ、もう一度聞こう。」
バランはゆっくりと湖のふちに立ち、我が子に尋ねる。愛娘ティファの行方を。
「うっせえ!!ベタン!!!」-ズン!-
「こいつは俺達のダイだ!!ディーノ何て名前じゃねえ!!!!」先手必勝だ!!
確かにダイの親かもしれない、竜の騎士に子が出来たというのは記録上ないとされてメルルとナバラが驚いていたが、何事も例外はある!
だからと言ってバランがダイに言った事が許せない!!今は自分達の敵であると決めた!
「小僧が・・」・・嘘だろう・・重力の中をゆっくりとだが歩いている!
「図に乗るな!!!!」-ヒィ――――ン!!!!-
ポップの切り札である重力の魔法ベタンを、バランは紋章の力でポップ達ごと吹き飛ばした!
「っつうう!野郎!!メッラゾーマ!!!!」ありったけの魔力くれてやる!あいつを焼き尽くしやがれ!!
手加減通じる相手なんかじゃねえ!やる気でやんねえとこっちが死ぬ!!
ポップは体内にある魔力を全て込めて最大火力のメラゾーマをバランに放った!
「ふううん!!」-ゴオオウ!!-
飛来してきた炎の塊を、竜闘気で覆った右手で受け止めて微動だにしないが、
「成る程、我が闘気を破るか。私の掌を火傷させるとは大した小僧だ。」
バランは嘲ることなく本気でポップを称賛をする。
竜闘気に覆われた体は生半可な魔法は自然消滅をして全くダメージにはなりえない。
自分を傷つけるものなぞ、ヴェルザーとその配下達と戦った時以来だ!
「返礼をせねばな・・」-イオラ!!-
しまった!魔力の使い過ぎで体が!!「ポップ!!」
動けないポップの前に、素早くダイが立ちふさがり紋章を全開にしてシールドを張って庇った。
「大丈夫ポップ⁉」先程まで泣きそうだったのが嘘のように、ダイの目は戦う男の目をしていた。
仲間を傷つけるものは誰であれ許す気はない!
ダイもまたバランを敵とみなしたのだ。
「へ、悪いなダイ。お前こそ怪我は?」 「大丈夫だよポップ。」
「二人共、傷ついても私が治すわ。」
レオナもまた戦うことを決意して、回復は任せろと胸を張る。
その姫とナバラ達を守るように、クロコダインもアックスを握りしめてバランと対峙をする。
良い一行だ、しかし自分はよく知っている!優しかった人間が、本当は酷き者だと!!
「ディーノよ!くだらない人間との記憶など忘れるがいい!!!」
バランは竜の紋章を最大限にまで高め、ダイの紋章に干渉を始めた!
「ぐ!・・・ああああ!!」痛い!頭の中を掻きまわされるような・・・嫌だ!!入って・・
-ぼふん!!!-
ダイがのたうち始めるのと同時に、-何か-が上空より落ちてきた!
普通の麻袋を十倍大きくした物が落ちてきたと同時に、砂埃が舞ったように辺りは見えなくなった!
「誰・・」-バッチ――ン!!!-
「グウ・・アアアアア!!!!!」
何者が邪魔をすると言いかけたバランの額に、小袋が当たり中の粉末と思しき物を浴びたバランがのたうち回り絶叫をする!
「・・何・・」
「一体・・」
「この場より失せなさい!!!」-ギュウ――ン!-
それぞれの疑問を吹き飛ばすよな凛とした声の後にルーラ特有の音がして、「ガルーダ、一気に吹き飛ばしてください。」 バサア―――!
上空から突風が吹き荒れ、砂埃の様なものが一気に晴れた。
「遅くなって申し訳ありません。ただいまダイ兄・ポップ兄・クロコダイン。」
バランの立っていた位置にいたのは何と!「「「ティファ!!!」」」
黒縁眼鏡をかけ、長いふんわりとした黒髪をポニーテールに結わえ、左右の耳の横に一房ずつ垂らした少女。・ティファが立っていた。
相変わらずリュックを背負っているところがティファらしい。
「お前遅いぞ!今までどこほっつき歩いてた!!」
「ティファ・・無事でよかった・・心配したんだよ。」
地底魔城が溶岩で壊滅した時にティファが巻き込まれていなかったかと胸が冷たくなった。
「御免なさい兄達、でも美味しいもの作るから許してね?」ああまったく、にっこりと笑うのが本当に可愛いんだからこの妹は!
兄二人は死闘の直後だというのにすっかりと忘れてティファを撫でて愛で始める。
兄二人に髪の毛をぐしゃぐしゃにされてもニコニコとしているティファもある意味凄い。
「ダイ君!ポップ君!!今は・・・」
レオナは色んな事が一度に起こりついていけないが、敵が戻ってきたらどうするのだと辛うじて警告を発せられた!
「そうだ!・・ティファ・・今俺達敵と・・」
「先ほどの人なら強制的にキメラの翼を発動させて・・多分・・ベンガーナの南端に行ったと思います。」
ガルーダで皆を見つけたのはいいが、何やらピンチのようなのでいざという時の為の目くらましになる石灰を入れた特製の袋を落として、これまた特性の目つぶしを眉間に叩きつけたから大丈夫だと。
「目つぶしって・・何を使ったんだよ・・」ニコニコしながら言っている妹分に、ポップはおそるおそると聞いた。
先程のバランの叫び声は尋常では無かった・・自分の最大火力を受けても平然としていたのに。
その頃のアルゴ岬
「う・・くう・・ぐうわああ!!!!」バランは身も世もなくもだえ苦しんでいた。
一体自分は何をされたのか!竜闘気に覆われた自分に魔法は通じず、物理攻撃をも半減させられるというのに!!
「あ!・・くう・・」のたうち回るほどの痛みが両目を襲う!!このような事はヴェルザー達との死闘でもなかったというのにだ!
まさか実の娘が、-目つぶし-を使ってきたとは思うまい。
それも中身が-ハバネロ・キャロライナリーパー―に相当する、この世界屈指の辛い物をブレンドした粉末を浴びせられたとは・・。
オマケに「フエックション!!アッツウウ・・」胡椒の実もブレンドをしていたのであった。
(子供に否定されたからって記憶消すようなダメ父にする容赦は無し。)
思いっきり鬼の所業をしてやったが、「中身は秘密です。」にっこりと答えを拒否する。
良い子は知らなくてよろしい!
主「大好きなお髭のおじさんであっても容赦しません!」
筆「実の父ですよね?」
主「尚更アウトです!性根叩き直します!!」
以上主人公に突撃インタビューでした。