や!駄目だ・・駄目だ!!今自分がティファだと知られれるのは最悪で、悪手もいところだ!
私は父さんだって最初から知っていた・・でも!お髭のおじさんが大好きなのは本当だ!あの三人組とルード君が大好きなのも本当だ!!偽りなぞない。でも今この状況で聞いた父さんは、どう思うのか考えるのも怖い。
「ふ・・・・ふっくっく・・はっはっはっは!!!」
娘だと!!ティファだと⁉散々あの娘を娘と呼んでおいて!実の娘と気が付かなかった私は愚か者だ!
そうか・・私があの娘を愛おしく思ったのは、無意識にティファだと知っていたから!私が!!この私がただの人間の娘なぞ愛する訳がなかったのだ!!!
ティファの考えてた通り、バランはティファを知って-人間の娘-に対する思いを自分の都合の様に書き換えて行く。
あれは自分の本当の娘、ならば!娘は人間ではない!!ディーノと同じく自分とソアラの最愛の子供達で竜の騎士!薄汚い人間では決してない!
「その子を毛筋程でも傷をつけてみろ!貴様を粉々にして私は大魔王バーンと決別をする!!人間は我等のみで滅ぼす!!!心得ておけキルバーンよ!!」
「だ・・む!!」
「了解だよバラン君、君の娘さんは僕が保護をしておく。君は君の物語を存分に語りたまえよ。」
「ふん!貴様に言われるまでもない・・」
人間を滅ぼすなんて言ってはいけないと叫びたいのに!キルバーンの手が邪魔をする!!
「しぃ~、今君のお父さんが大事な話をしているんだよ。
静かに聞こうねお嬢ちゃん。」
完全に虜化している、如何せん体形に差があり過ぎて振りほどけない。
常の力があれば!両手を壊して逃げながら脱出方法を考えるのに!!
ああ・・父さんが血を吐くように、呻くように母さんの死を話している。
知っている、だって・・私はそれを見捨てたんだ!赤ん坊だからと言い訳をして、-その後の為-といって神様達と共に見捨てたんだ!!
「ふ・・っく・・ひっう・・」
「泣かないでお嬢ちゃん、君のお母さんの仇は皆死んだんだよ。小賢しい人間は僕達で滅ぼしてあげるからね。だから泣かなくていいんだよ。」違う・・父さんを・・憎しみに走らせた一旦は私にもあるんだ・・本当に何かほかにできなかったのかを話し合っていれば、今日の出来事は・・少なくともダイ兄にこんな悲しい事を知られる日なんて来ず!父さんが憎しみに堕ちる事もなかったのに・・
泣くティファをキルは愛おしそうに包み込む。母の死を知り悲嘆にくれていると勘違いをして。
ティファの心の中は罪悪感で溢れて折れそうになる。楽をしたつけが、守れたかもしれない家族を壊してしまったのではないかと。
俺の・・母さんが実のお父さんに?
父さんは・・人間を守ったのに・・裏切られた?
あまりの話にダイも流されかけた。父の言っている事が本当ならば、人間は身勝手で、どうしようもない・・・・・けれど!!
ダイはしんとしてしまったポップを見る。
青ざめて少しだけ涙が見える。
ポップは優しい、会ったことも無い、俺でさえ実感が出来ない母の為に泣いてくれている。
少しだけ臆病で、でも最後は命を張って自分達を守ろうとしてくれる頼もしい魔法使いで兄のような人。
それに自分達兄妹を見守ってくれていたウォーリアさん達は、デルムリン島の仲間達にも優しい。決してモンスターだからと虐めない。
自分の好きなレオナも自分が人間でなくとも好きだと言ってくれた。
-種族じゃない!!その人をきちんと見ないといけないんだよ!-
いつも妹が言っている口癖。人間もモンスターも魔族も半魔も変わらないよと眩しい笑顔で言っているティファ。
今ティファは捕らわれているが、危害はくわえられないと考えてよさそうだ。
ティファならば自分できっと戻ってくる。だから!!
「俺は行かない、あんたと行かない!!人間を滅ぼすなんて間違ってる!!!ティファだって行くって言う訳がない!!!!」-ヒィーン!!-
俺は戦う!間違った思いを打ち砕いて!!闇を取り払うのが勇者だ!!!!
ああ・・ああ!ダイ兄・・強くて、本当の勇気ある勇者様だ!・・私なんかの薄っぺらい勇気と違う、いけない事はいけないと真正面から言える正しい人だ。
幾度兄を尊敬している事か、兄のあの真っ直ぐな心を幾度美しいと思ったか知れない。
自分なんかが決して勝てない最強の勇者様だ。
母の死の真相を知って悲しかっただろうに迷っただろうに、悲しみにくれず、闇に堕ちず、灯りをともすように額の紋章が輝いている。
「ディーノよ、これ程に言ってもなお逆らうか・・」
理解が出来ない、母が恋しくはなかったのだろうか?父がいないと泣いた事は無かったのだろうか?
ティファの様に、人間の甘い面を知っているからだろうか。
ならば方法は一つ!先程は邪魔が入ったが!!
-ヒィ――――――!!!!!-
「あ!!」-ビクリ!!-
「いやだ・・嫌だ!!!やめろ!!入って来るな――――!!」
「ダイ!!」
「ダイよ!!おのれバラン!獣王・・」
「させぬ!!」
バランは先程と同じように紋章を最大限に発動をし、ダイの紋章と強制共鳴をさせて頭の中を掻き乱していく。
ダイの異変にポップは崩れて痛みに暴れるダイを抱え込み、クロコダインがやめさせようとバランに攻撃を仕掛けたが、神速の速さを持つラ―ハルトが槍でクロコダインの必殺技を止めて戦闘が起こった。
ラ―ハルト達にも確かに迷いがある、テランのあの村を思うとどうしても。
それでも!あの日自分達を救ってくださったバラン様の為に!!
「嫌だ!!やめて!!!!皆やめて―――っ!!!!」
大好きな者達が、それぞれの大好きな者達の為に戦い合う。
何と悲しく、なんと厭うべき事か!
それに・・兄との繋がりが薄れてゆく・・双子で、遠くに居ても必ず互いを感じていた兄のあの気配が・・「嫌だ!やめろ!!ティファ―――!!」
自分の名を呼んで苦しみながら、気配が!!-ヒィー・・-
その思いを断ち切るように、ダイの紋章を消えはて意識もうしないポップの腕の中に崩れ落ちる。
「あ・・・あ・・嫌だ!!ダイ兄――――っ!!!!」
消えてしまった、消されてしまった・・・あの温かい-ダイ兄-の全てが・・
様々な思いで罪悪感を募らせていく主人公と、反対に強くなっていく兄です。
間に合ったのですか、ここは原作通りにしました。