-ドーン!!-
「けっほ・・ってえ・・おっさん!ダイは⁉」
「っつう・・安心しろポップ・・きちんと放さずに一緒だ。」
「そうか・・ってかここどこだ?」あの後すぐにダイとクロコダインと共にルーラで逃げた。
無我夢中でしたので場所設定を全くしていなかった。
-ヒィー・・・・-
「ダイ!ダイ!!・・っ手前!!!!ダイに何をしやがった⁉」
バランと紋章を共鳴をさせられたダイの紋章が光を消したと同時に、ダイ自身もポップの腕の中に崩れ落ち、呼び掛けに全く反応をしない。
見ればバラン自身も消耗をしている。
「ディーノ・・くだらん記憶を消した・・その子はディーノだ!!放せ人間!!!!」
弱っていても目には憎しみの色がこく輝き、視線だけで人を射殺せそうな力を放っている。
記憶を・・ダイの・・・逃げねえと!!
「イオ!!!」
ポップはダイを左手に抱えたまま、右手でイオを・・何と連射を始めた。
コスパの低い初級魔法の連発は最早現時点のポップでは可能であり、今回は敵を倒すのではなく目くらましになればいい。
土煙を起こした後は上空に数発撃ち、「おっさん!!眼を瞑れ!!!」メッラゾーマ!!!
上空でイオ同士をぶつけて閃光を作り、目が眩んだラ―ハルトにメラゾーマを放つと同時に一気にクロコダインの元に走り、ダイを素早く預けてルーラを掛けた。
ダイを受け取ったクロコダインも、咄嗟とはいえダイを放さずに無事に逃げおおせた。
ティファが敵に捕まり、ダイも記憶を消されてしまった。
あそこで戦っても、策のない、力が圧倒的に違い過ぎる自分達が戦っても万に一つの勝ち目はなかった。
今回の最善の策はせめてダイを敵の手に渡さない事。
瞬時に答えをはじき出したポップは逃げるのを躊躇わなかった。
逃げるのは恥ではない、その後逃げるだけなのが恥であり、反撃は生き残ってこそ出来る。
「・・・ここ・・デルムリン島だわ・・」
青い海と空に見覚えがあると思えば、デルムリン島だった。
咄嗟にダイにとっての安心できる場所を無意識に考えていたらしい。
ダイとティファの故郷はここだ。親もブラスさんがいる、人間を滅ぼす手伝いをしろ何ていう奴は親なんかじゃねえ!!
戦わないといけない!ダイを守り、ティファを取り戻すためにも。
「おっさん、ここをすぐに離れる。」
「どこへ行く?ここがデルムリン島ならばテランからは相当離れているだろう。」
「・・いや、あいつはダイの紋章と共鳴をしていた。もしかしたら繋がりが出来て居場所が分かっちまうかもしれねえ。」そうしたらこの島を戦場にしてしまうかもしれない。
ダイ達の美しい故郷を。
「ならばマトリフ殿を頼るか?」
「いや、あそこは足場が悪くて戦いづらい。開けていてそして他人が巻き込まれないテランに戻る。」
「・・そうか・・そうだな・・もしもお前の仮説が正しければどこに隠してもダイはすぐに見つかってしまうかもしれん。」ならば自分達が少しでも戦いやすい場所を選ぶべきだ。
「おっさん、ヒュンケル今どこにいるか分かるか?」
「詳しい話は省くが、もう少し偵察をしてからキメラの翼でマトリフ殿の洞穴に戻ると言っていた。」もしかしたら自分同様にテランに行っているかもしれない。
洞穴でのお茶会セットのリングの中には六枚のキメラの翼も入れられてた。
自分はルーラを覚えたからと、クロコダインとヒュンケルに3枚ずつ渡したのが功を奏してくれたようだ。
「・・したら戻ろう・・」ブラスさんに見つかる前に。
この平和な島を巻き込む前に。
俯いていると大きな手が自分の髪をくしゃくしゃとしてきた。
「・・んだよおっさん。」自分は餓鬼じゃねえと口をとがらせてクロコダインを見れば、深い瞳の色をしたクロコダインの目と合った。
「ポップよ、抱え込むな。お前達には俺達がいる、マトリフ殿がいる。ティファもすぐに戻ってくる。仲間で戦えば何とかなるのだろう。」
優しく決して大きな声ではなくとも力強い声が、励ましてくれる。
自分の弱った心を包み込んでくれるように。
今までも死にそうな時はあったが、今回はそれ以上だ。ダイとティファの親が見つかったと単純に喜べることだったらどれほどよかったか。
二人は優しくていつでも人を助ける良い子達が、実の親と戦わないといけないだなんて!!
しかも!ティファはあの四人ととても縁が深く、親しい間柄で、最低な話だが敵であってもあの場から連れ出されて良かったと思う自分がいる!
それでも戦わないといけないと考えると心は重く暗くなる。
そんな自分の思いを見透かしたような、それでいて戦う前にと叱責をするのではなく、励ましてくれるクロコダインの優しさが胸に染みてしまう。
「うう・・く・・行くぞ・・おっさん・・」
涙をこぼすまいと、ポップは乱暴に目をこすってルーラをする。戦い守る為に。
「ブラスさん、やはり誰も・・」
「おかしいですじゃの~、確かにルーラの音が・・」
ポップ達のいた海岸に、ほどなくしてブラスと護衛につけられたロモスの魔法使いが姿を現した。
「ここに来るとしたらダイさん達ですよね。彼等ならば来たとしたらあなたに挨拶をしていくかと。」
「・・そうですじゃのう。」
ザボエラの時のような事が二度とないようにと護衛を付けてもらい、幸いにもモンスターに理解がある魔法使いが丁度いたので島に来てもらい、近頃はダイ達の幼少時代の話が弾んでいる。
少し前にルーラの着地音が聞こえた気がしたのでともに来てもらったが、誰もいなかった。
気のせいだったのだろうか?
ダイ、ティファ、ポップ君も無事に帰ってくるんじゃぞ。
育て子達と優しい少年の無事を祈り待つばかりだ。
テランの城門前でルーラを着地したポップは門番にクロコダインの身分を保障して中に通してもらい、真っ先にレオナ達の元に向かい、戦いの経緯と顛末を手早く話した。
「あいつ等はすぐに追ってきます、城にはなるたけ被害が出ない様に離れた場所で戦います。」
ルーラをしながら考えていた作戦の説明もしてテラン王に許可を求める。
時間は待ってはくれない、刻一刻とバランが迫っている。
「・・魔法使いポップよ、勝算はあるのかね?」
老王は、一気に十歳も年を取ったような顔をして重々しい声で尋ねる。
よもや生きとし生ける者達の守護者が敵に・・それも自分達が信仰をしている聖母竜の子を討たねばなるまいとは。
「・・正直分かりません・・それでも!座して死を待つつもりはありません!!足掻いて足掻けば道は見つかるはずです。」その為にも戦う!
「そうか、許可をしよう。我らの事は心配せずに、思う存分に戦うがよい。
幸いといってはなんだが、巻き込むほどの民はおらんからな。」
フォルケンは優しくふんわりと笑い、許可を出す。
炎の様に熱い少年の強さに励まされる思いがした、年端もいかない子供が強い決意のもと戦っている、ならば自分達が悲しみにひたってなんとする。
「ポップ君!私も今回は行くわよ!!回復役がいた方が絶対に便利よ!!!」
話を聞いて、眠り続けるダイの手をとって泣いていたレオナの心にもポップの決意の炎がうつり、名乗りを上げる。
さっきはティファがいたが、今回は自分が仲間の回復役をするのだと。
「いや・・姫さん・・今回は守り切れるか分かんねんだよ・・」
あの時はダイがいたから勝算が高くティファに許可を出したが・・・
仕方がない、どこにいても危険ならば手元で守ろう。
いざとなればダイを連れて逃げるように作戦を立てて全員で伝説の騎士に立ち向かうしかない!!
十五歳の少年の肩に重いものを乗せましたが、今のポップと仲間がいれば乗り超えられると筆者は信じて乗せてみました。
原作でも中盤辺りでポップが魔法の連発をしていたので前倒しをして、頑張って今回使ってもらい脱出をする事が出来ました。
追記
ストーリー上話を修正させていただきました。