三人が待っているのは城の裏手で目の前は森が広がっている。
ここならば平原の様にいきなり大技は来ないだろうと、戦い慣れをしているクロコダインが選んだ。
まさか大魔王の下で培った事がこんな所で役に立とうとは、皮肉ではあるがバランの行動も予測が付く。
向こうとて闘気は無限にはなく、ダイの記憶を消す為に体力も大分消耗をしたのだから無茶な進撃ではなく、用心をしてくるのであればこっちから来るだろうと。
「・・一旦休んで回復をしてから攻めてくるとは思わないの?」
バランがそこまで消耗をしたならば、そうするのが常套手段ではないだろうか?
「姫さん、あいつは人間憎さで凝り固まっている。一刻も早くダイを俺達の手からもぎ取りたいんだよ。」話し合いで何とかなる段階ではない。
自分を見る目は憎悪を固めた色をしていた、ティファに向けていたあの憂いを含んだ笑みが嘘のように。
「正直に言えばバランがあれ程人間を憎んでいたとは思わなんだ。」
元同僚の激情を、クロコダインは理解できなかった。
しかし理解できずとも止めねばならない!
ここで自分達が負けては魔王軍の勝利が決定的なものになってしまう!!
-ピィー!- -きぃい――― !!-
「・・おいでなすったか。」
森の中を何かが高速ものすごい速さで近づき、鳥や飛行小型モンスターが飛び立ち目印になっている。
その気配をポップは集中をして感じ取る。
(まだだ・・もッと・・今だ!!)メッラゾーマ―――!!-ゴ――――ゥ!!!-
近づく頃合いを見計らい、先手を取られない様に炎の壁を築いた。
「小癪な小僧が――!!」-ヒィ―――――!!!-
ポップが築いた炎の壁を闘気の鎧をまとったバランは苦も無く壁を突破して剣を抜き、一気にポップへと肉薄をする!
-ガッギィ――――ン!!-
「させんぞバラン!!」
その間を素早くクロコダインが立ちふさがり、間髪を入れずに-ボン!!-「獣王会心撃!!」
溜めていた闘気を一気にバランに向けて放った!相手は自分達とは強さの格どころか次元が違い過ぎる!休ませるわけにはいかない!!
「しゃらくさい・・」
バランは左手を闘気の渦に突き出し、「ふん!!」
纏わせた竜闘気のみでかき消してしまった。
だがポップは怯まずにバランの足元にイオラを連発をして、空宙に避けたところをさらにクロコダインはがすかさずにアックスを叩き込み、辛うじて頬をかすめたがけり一つで吹き飛ばされた。
「ふん、相変わらずの怪力だな、クロコダイン。」
バランの闘気の鎧を貫通をして、頬から紅い血が滴る。
効いてる、あいつだって不死身なんかじゃねえ!!
クロコダインのつけた傷は決して大きくはないが、それでも勝てない相手ではないと確信を持たせてくれる。
ポップは心の闘志が燃え盛るのを感じる、必ず勝ってダイとティファを守るのだと。
ここで持たせていれば必ずヒュンケルが間に合ってくれる、頼みの綱の兄弟子を心の支えに、ポップは持久戦を考えている。
たった一人だが必ず援軍は来る!それまで持ちこたえて見せる!!
そんなポップをバランは憎々しげに見ながら問いただすことにした。
「魔法使いの小僧よ!!一度だけ問う!偽れば慈悲亡き苦しみもがき死ぬ事と心得よ!!!」
何だ⁉俺だってティファの行方を聞きてえところだ!
「何を聞きてえんだよ。」
ポップは内心を押し殺して冷静を装う。
だが次の質問でポップの冷静さが吹き飛んだ。
「ティファを我等の元に差し向けたのは貴様の小賢しい策略か!!」・・・は?
「あの子の力と我等との絆を利用しようとはやはり人間は・・」「ちょっと待て!!!」
こいつは何を言っているんだ?
「ティファはお前の仲間が攫っただろう!!何を訳の分からねえ事を言ってやがんだよ!!」
「・・何?・・・お前達の差し金では無かったのか・・」
あの子が、自分の判断で自分達の前に来たというのか。
少し遡った平原
「バラン様、いかがなさいます?」
「少し休まれた方がよろしいかと。」
「あの小僧は油断ならない奴ですぜ。」
バランの回復を待ち、ラーハルトがそっと尋ねる。
勇者ダイの記憶を消したのであれば、回復を待った方が良いのではないかと。
あの魔法使いの小僧は侮れない、よもやあのような真似をして気を失った仲間諸共逃げおおせるとは。
あれは油断をしていい相手ではないと、ポップは竜騎衆三人に目を付けられた。
万全の体調となって、慎重に行くべきだと進言がされるほどに。
「いいや、いいや!!ディーノを我が手に・・」-ビシ-
ラ―ハルト達の進言をバランが拒もうとした時、空中から何かが割れる音がした。
―ビシビシ・バッリーン!!!-
見てみれば、空間が割れた!!しかも出てきたのは、鋼の剣を左手に握ったティファだった!
地面に音もなく着地をしたティファは、鋼の剣を左肩に担いで自分達を見据えている!
「・・・ティファよ・・」愛娘が・・自分の前に立ちはだかるというのだろうか・・
「・・何て事をしたんですか、己の考えを受け入れてくれないからとて、無理やり言う事を聞かそうだなんて。」
それまで聞いたことも無いような冷たい声と瞳は、バランを凍りつかせた。
明るく優しい娘からは決して聞きたくない感じたくはなかった氷のような声と気配が、少女を怖ろしきものに感じさせる!
「ティファ!話を聞いたであろう!!私は人間を・・」
「お黙りなさい!!百歩譲って貴方が人間を許せなくとも!ダイ兄の記憶を消したのは貴方のたんなる都合でしょう!!!子をなんだとと思っているのですか⁉」「つう!!」
「私達は物じゃない!人形じゃない!!意志ある生きている者だ!!!」
ティファの怒りに満ちた咆哮に返せる言葉がない。人間達は愚かだからこそ滅ぼそうと思っているが、ディーノには・・自分が親として受け入れてもらえなかった事実も消してしまいたかったからだ・・
「・・そこまでにしてもらおう、いかにバラン様の御息女であっても許すわけにはいかんぞ小娘。」
迷いしバランの前に、ティファからの言葉から守ろうとしてラーハルト達が立ちふさがる。
「バラン様、ガキンチョは俺らが取り押さえます。・・三人ならいけるでしょう。」
「娘の事は任せてお行きください。」
「・・・お前達・・」
テランの少数とはいえ、人間の子供達を気にかけ、ティファと誼を通じた竜騎衆達が・・
「・・すぐに戻る!奴等を踏みつぶし!ディーノを取り戻して!!」
トベルーラでディーノの気配を頼りにとんだ。ティファを向かわせた小癪な小僧達を殺すべく。
だが問いただした小僧も嘘を言っているようには見えない、つまりティファは己の意思で敵対をしたのだろうか。
遠くの魔王軍
「・・ただいまーミスト・・・ごめん、お嬢ちゃんに逃げられちゃった。」
ポップ達とのやり取りを聞いていやな予感がしたミストは、案の定すごすごと戻ってきたキルを無言の圧でビシビシと叱りつけた。
意気揚々と出て行って一体何をしているのか!!
「だってあの子反則だよ!!あんな闘気量を隠し持っていただなんて!!」
ダイの記憶が消えて、意気消沈をしたかと思って連れ帰ろうとした矢先だった。
「・・さない・・ダイ兄を!!よくも―――!!!!!」-ズバァ――――ッ!!-
「っうう!!」
ティファの-白い闘気-が爆発をして-ビシ・・ビシビシ・・バッリーン!!-
亜空間の壁を壊すだなんて!!!
吹き飛ばされてティファが空間を出ていくのを止められず、追おうとしたが殺気にも似た瞳でじろりと睨まれて、不覚にも体がすくんで動けなくなってしまった!-殺人人形・オート・ドール-の自分がだ!
こんな経験は初めてだ、様々な悪意・殺気は散々浴びても何ともなかった自分がだ。
-動くな、追ってくるな-少女の無言の圧に負ける・・いや、従ってしまった気がする。
-魔物の自分-が従ってしまった?何故だろうって、「ミスト、ハドラー君は?」
よく周りを見てみれば、ミストと小物のザボエラしかいない。
(・・見切りをつけるの早くないかな?)
結果を見る気が無いのは、バランの勝利を確信してか、それとも・・
「まあいいや、僕達はもっと近くに行こうミスト。」
下手に手を出さず、今の一行と-ティファ-の実力を見定めるべく。
「てんめえ!!あいつを巻き込むな!あいつは威勢と度胸はいいが碌に戦った事がないんだぞ!!!」今頃あの三人に取り押さえられているか?下手に抵抗をしないで大人しくしていてくれれば怪我はないか・・無事でいてくれ。
「・・・貴様はそこまで未熟か。」「ああ⁉」
「貴様のような弱き者と同一視をするな!あの子は貴様なんぞ一瞬で倒せる実力を持っているのだぞ!竜騎衆達が三人がかりでようやく取り押さえられる強さをだ!!」
「・・何言ってるんだ・・」
「分からぬか小僧、はっきりと言えば、デルムリン島であの子と対峙をしたハドラーがなぜ生きて戻ったのか不思議なくらいだ。
あの時点のハドラーなぞ、あの子にとっては討つのが容易かったろうに、アバンと言う元勇者の死を看過したのが信じられない程だ。」
「・・何言ってるんだよ・・あいつは!!」-ティファは弱くはないぞポップ-
訳の分からない事を言うバランを止めようとしたポップの脳裏に、先程のクロコダインの言葉がよみがえる。
クロコダインもティファは実力を秘めた持ち主だと言っていた・・バランのような奴は嘘は言わないタイプだ。
攪乱なぞさせなくとも、自分達を倒す実力があるものが下らない嘘を言うはずがない・・つまりティファは実力を今まで隠しており・・・アバン先生を見捨てたのか⁉
何の為に!いやそんな事はどうでもいい!!目的なぞどうでもいい!先生を助けられたかもしれない妹分を・・今すぐに締め上げて白状をさせたい激情が胸の中からどす黒く湧き起こるのを止められない・・自分は先生が好きだった・・大好きだった!!家を捨ててもいい程に!家族と別れてもいいと思うほどに!!!
「ふん、どうやら本当にあの子の実力を知らなんだか。」
ポップの驚愕と生じた疑念はバランの不快さを増していく、碌に我が子を見ていなかったのかと!!
こんな下らないものがあの子達の仲間を名乗るなぞ不愉快だ!!-グオオオ――!!-
バランは左目の竜の爪を模したモノクルを握りしめて赤い血を流し始め、闘気を増すごとにその血は青へと変わった!!
下らぬ人間なぞ殺せばいい。
「覚悟しろ、この姿になった私は手加減なぞ出来んぞ。」無慈悲な言葉が辺りに降り注ぐ。
今宵はここまで。
バランは早々に決着をつけるために姿を変えました。
自分の葛藤や思い、子に拒絶をされた悲しみを振り切るように。
主人公の実力を知ってしまったポップは疑念だらけとなりましたがそんな事が吹き飛ぶような展開が待っていますのでこうご期待を。
追記・キルバーンは今作では機械人形決定で、-殺人人形・オート・ドール-は筆者の発案です。
更に追記
ストーリー上の都合でヒュンケルはまだ到着をしていない話に修正をしました。