勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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ポップはやはりお兄ちゃんキャラです。




渡せねえ!

それは戦いと言うには一方的で、蹂躙と言った方が正しい状況だった。

百戦錬磨のクロコダインもなすすべなく、バランの右手にギリギリと襟首を握られて宙吊りにされているポップを助けに行こうとしても体が動かない。

 

バランが見たことも無い、体は竜・血は魔族の青となった―竜魔人―とバラン自身が言っていた姿のバランは、一度も技も魔法も使うことなく自分達を圧倒した。

 

手から闘気を放っただけでレオナを気絶させ、膝蹴り一つで自分を蹲らせ、深々と手刀を背に受けたクロコダインは呻き声すら上げておらず、ポップは一瞬で捕まってしまった。

 

「小僧、ディーノとティファを誑かした罪は重いと知れ。」

お髭のおじさんと自分を慕っていたあの子が変わってしまったのはこの男のせいだとバランは思い込むことにした。

愛娘で気に入った娘に剣を向けられた衝撃は凄まじく、尚の事認めたくはなかった。

おのれの行いが娘と敵対をすると。

「っへ・・伝説の騎士様が八つ当たりかよ・・」

 

馬鹿馬鹿しくて笑えらと、ポップは窒息寸前であっても悪態をつく。

自分だって今まさに怒って・・いや、ティファは実力の事で疑念だらけだが・・憎めない!

仮に先生を見殺しにしたとしても・・・こいつ等にはやはり渡したくはないと思ってしまう自分にも笑える。

 

「・・・余程死にたいらしいな小僧・・」

 

自分の言葉がバランの憎しみを煽っていると分かっても、黙ってやる気はねえ!!

 

「本当のこったろ、ブラスさんなら死んでもこんなことを-ダイ達-にはしねえよ。あの人こそが・・」-ダン!-

「ぐっ!!」-グシャ!-

「・・黙れ小僧・・・あの子等の親は私一人だ!!!!」

 

ポップの発言は、バランの憎しみを増すだけではなく傷口に塩まで塗ってしまった。

―お前なんて親じゃない!!-

探し続けてようやく会えた我が子に言われた言葉が、思い出すだけでも生々しく自分を苦しめる!

それを知ってか知らずか人間の小僧如きが!!!

地面に打ち据え、頭を踏みつぶしても気が収まらない!塵も残さずに消し飛ばす!!生きていた痕跡すらも残さぬように!

 

バランは無言で空中に行き、両手を組んでポップに突き出す。

竜魔人化で最大の技、ドルオーラでポップ達を灰燼に帰す。

城の中にはディーノの気配が伝わる、威力は小さめに絞り、それでも人間なぞは残らない。

姫の方はディーノの嫁にと考えたが、記憶がなくなったあの子には必要はなくなった。

諸共にしても惜しくは・・-ギィー-

 

 

バランがドルオーラの威力を調節をしながらつらつらと考えていれば、城の裏門がそっと開き、黒髪の男の子が出てきた。

白い服に身を包み、頭に包帯を巻いたダイだった!

 

「ダイ!!何で出てきた!!!」

ポップはものすごい焦りの声を出した。いざとなったらメルルが逃がすはずのダイが何でここに居る⁉

「うぇ!!だって・・俺を呼ぶ声がして・・・行かなきゃって思ったらおねえちゃん達が止めて来て・・行くんだって思ったら俺の体が光っておねえちゃん達寝ちゃって・・・」

 

・・・記憶がなくなっても説明下手か・・ようはバランがダイを感知できるように、ダイもバランを感知をしたわけで、無意識に力使ってメルル達を突破してきちまったのか。

「・・お兄ちゃん達どこか痛いの?」

危機感のまったくなくなったダイはひょこひょことポップに近寄り背中をそっと撫でる。

蹲っていたそうなお兄ちゃんを助けたいと。

 

「・・・ディーノ・・」

「・・だれ?」

そっと人を呼ぶ声がして、ダイが上を見れば

「ひぃ!!」-化け物-が居た!!

「や!お兄ちゃん!!あいつ何?お兄ちゃん達をあいつが虐めたの?」

実の父と分からず、目が覚めて何も分からなくなっていた自分に優しかったお兄ちゃんにしがみつく。

「・・・ダイ・・大丈夫だ・・・大丈夫だ、お前の事は絶対に俺が守るから。」

痛む体を無理やり起こし、ポップは悲しみと憎しみと殺気をない混ぜた瞳をしたバランからダイを守るように立ちふさがる。

バランは無言で構えを解いて地面に降り立つ。

我が子に何度も拒絶をされて心が痛い・・一刻も早く自分の手元に抱きしめたいというのに!!この人間に懐くとはわ!!

 

はは、守るってどうすりゃいいんだ?こんな気配だけで俺の事を殺せそうな奴相手。

「一度だけ言おう、ディーノは渡せば一時は見逃す。」

 

その言葉にポップは本気でカチンときた・・超上から目線な言葉だな!

こいつが言っているのは嘘はねえ、ならば息子を渡せばッてか?は!そんなの・・

 

 

 

 

 

           

 

            「冗談じゃねえ!!!」

 

 

 

 

 

 

ポップの怒声が周囲に散らばる。

ポップは持てる全ての力を返答に使い、全身で叫んだ。

「こいつは俺の可愛い弟弟子だ!!誰が手前に渡すもんか!・・こいつにであってなけりゃ・・俺はお前が言うような最低な人間になってたかもしんねえ。

強い奴にぺこぺこして、弱い自分を嘆くだけのダメ人間に!・・それを変えてくれたのがこいつだ!こいつと一緒に世界見捨てねえために!!こいつ等と一緒に世界助けるために!!!こいつを守る為に俺は強くなろうとしたんだ!こいつは俺の大事な大切な仲間だ!誰が仲間を売るか馬鹿野郎――――!!!!!」

 

まさしくそれは魂の叫びであった。

偽る事のないポップの本心であり、死しても渡さない気迫はバランをも圧した。

ただの、それも自分に万に一つも勝つ見込みのない少年が、他人のディーノの為に命を懸けた叫びは・・認めたくなぞない!!人間によきものなぞいるはずがない!

 

 

圧倒的強者を、心理的にとはいえ圧倒していることに気がついていない叫んだポップ本人は内心でどうすりゃいいんだと超嘆いている。

 

あ~あ啖呵切ったがさてどうしたものか、姫さんとおっさんは無理・・でも!ここで俺が諦めたらダイを守れねえ!!

 

可哀想に、震えてべそかいて俺の服を握りしめて・・俺しかいねえ!今こいつを守れるのは!!

先生!どうした・・・ら・・・・アバン先生?・・・・・・手はあった・・でもそれをしたら・・・それでも・・・・・あいつにダイを渡すよりはましだ!

 

-シュルリ-

ポップは自分のトレンドマークである黄色いバンダナを外してダイの頭に結んだ。

「ダイ、これをやる。」

「・・・お兄ちゃん?」

「お前にはティファっていう妹がいる。お前は兄ちゃんだ、何があっても泣いてるだけじゃ駄目だ。」

 

大丈夫だ。-お前達-は兄貴の俺が守るから。




バ「ディーノよ!私がお前の・・」
ダ「俺はダイだ!お兄ちゃんがそう言ってた!!」
バ「おのれ人間如きが!!」
ダ「お兄ちゃん達大好きだ!!」
ポ「俺の死亡率が鰻登りだけどもっと言ってやれダイ!」
ダ「イエッサー!お兄ちゃん!!」

記憶を消されても、根っこは変わらずにポップに懐きまくっているダイでした。

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