勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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守るものの為にはおのれの力量以上の事をするのがポップです。




やっぱり俺は・・

お兄ちゃんの体が震えている、それなのに笑っているのはなんでだろう。

「お兄ちゃん・・。」

心配になって服の袖をぎゅっと握れば、そっと優しく放された。

「大丈夫だダイ。」

 

優しく、でも力強く笑って・・お兄ちゃんがあの化け物に向かって走っていちゃった!!

 

 

「・・何をする積りか知らぬが・・」

バランは走ってくるポップを打ち砕こうと右手に闘気を込めて、走り寄ってきたポップめがけて振り下ろしたが、紙一重でよけられた!

近頃は身体強化にも勤しんでいた努力のたまものだ、おかげでこいつを倒せる!

 

空中でポップは両手にありったけの魔力を溜めてバランの両肩に乗っかりこめかみに両手全ての指を潜り込ませた!!

 

「グウアアアアアア!!!!」

非力な魔法使いからはあり得ない力を感じたバランは激痛に苛まれながらもポップの両腕をひき散ろうと試みるが、察したポップは全力で魔力を注いで阻止をする。

今抜かれてたまるか!!

 

まさか・・あれは!!

 

「止せポップ!!!」

クロコダインはようやく目を覚まし、痛む体を引きずり起してポップを止めようと叫び上げる。

「お前が死んでしまう!!やめろポップ!!!!」

「へ・・こいつを倒さなけりゃどのみち死んじまう、だったら俺の命と引き換えにこいつも道連れだ!!」

やはり!メガンテを・・

「馬鹿な!貴様!!何故ここまでの事をする⁉」

メガンテと聞いてさしものバランも青褪める。

自分が倒される事よりも、たった一月しか経っていない仲間の為に自爆呪文を使うなぞ正気の沙汰とは思えない!!

ポップの死をも恐れぬ心が、バランの心に恐れを生じさせたのだ。

 

「・・分かんねえよ・・でもな!理屈じゃねえんだよ!!俺が!あいつを守りたいんだよ!!!!」

 

一言いう度にポップは魔力をバランに注ぎ込む。

チャンスはこのたった一度きり!失敗をすれば・・ダイがも泣きそうな顔をして・・

 

「お兄・・」

「来るな!!!」-びくり!-

 

駆け寄ろうとするダイを叱責をして止める。

記憶がなくなって、力も使えないのに優しいままでホッとする。

きっと状況は分かっていなくとも、無意識に自分を助けようと走ってこようとしたんだ。

あいつは本物の勇者様だ、世界には-勇者ダイ-が必要だ。

「ダイ・・」

 

俺の初めての弟は自慢の弟だ。

 

どうしよう・・どうしよう!お兄ちゃんが危ないのに!!・・前にもこんな事があった?

頭が痛い!何かしないといけないって俺の中の何かが言っているのに!

 

「駄目よポップ君!!」

「・・ポップよ!やめてくれ!!」

倒れている、今まで寝ていた金の髪のお姉ちゃんとモンスタ―のおじさんが起きて言っているのに!「止めてよ!!お兄ちゃ・・」

 

 

 

 

 

        「メガンテなんてしないでポップ兄!!!!!!」

 

 

 

 

 

ダイ達の声をかき消すほどの大音声の少女の声に、その場の全員が動きを止めた。

ここに居るはずのない,いたとしたらそれは最悪の事が起きたとしか思えないからだ。

 

魔力溜めを維持しつつ、ポップもバランもクロコダイン達も森の方から出てきた者を見れば、

髪はぐしゃぐしゃで掠り傷はあるが、軽傷のティファが出てきた。

頬に切り傷、袖も切れており・・左手に握られている鋼の剣にはうっすらと血が付いていた!

「・・・ティファ・・お前・・」

 

ポップはティファが戻ってきたのを喜ぶ前に戸惑ってしまった。

あの剣にうっすらと血がついている。何故三人に連れてこられたのではなく一人で戻って来られたのか。

振り切って追われているのかとも考えられるが、一向に三人が来る気配はない!つまりティファが・・

 

「あの三人を倒したかティファよ。」

 

ポップ達の疑問を代弁するように、バランが静かに尋ねた。

その問いに、ティファの表情はぐしゃぐしゃと崩れる。

泣くのを堪えるように唇をかみしめ、泣くまいと堪えるように瞳を歪ませながらバランを見る。

 

「親しき者達をその手に掛けるか・・」

 

「そうだよ・・・あの三人は!貴方に従うことを決めていたんだ!!どんな事があろうとも!誰を敵に回す事になっても!!テランのあの子供達よりもあなたを選んで殉じたんだ!!」

 

 

来て欲しかったのに・・手をとって欲しくてテランの子供達の伝言を伝えたのに!!伝言を喜んだくせにそれでもいけないと断られたんだ!!

「バラン様を裏切る事は決してしないと、一人にはしないと、最後まで共に行くんだと言って!・・・・手加減なんて出来るはずがないでしょう・・」

激昂をしながらも徐々に落ち着いたティファはバランから目をそらさない様にしながらも呻きながら話す。

好きで戦ったんじゃない、倒したくはなかった!

 

「悪いなガキンチョ・・あの人の事を頼まぁ・・」

レイピアで来たガルダンディーを竜巻閃ですれ違いざまに首の動脈を斬った。

「娘よ・・せめて・・・バラン様の御心を・・」

氷の吹雪を吐いて私を生け捕ろうとしたボラホーンさんも、闘気の壁を作って防いでアックスと打ち合った末に・・

「二人は・・貴方の事を最後まで・・」

「・・・ラーハルトはどうした。」

あの二人とは強さの格が違う、いかにティファだとてそう易々とは倒せまい。

 

「・・ヒュンケルが来ました・・」

ヒュンケル!・・そうか・・あいつは間に合ったか!!

どうやってティファの元に辿り着けたかは分からないが!天佑と言う奴に大感謝だ!

二人を倒した事で、ティファの心はボロボロになっているのが分かる。

もう一人倒していたら、ティファの心が持つかどうか分からない。

「ティファ、安心しろ。もう戦わなくていいぞ。」

 

先程の疑念なぞ、今のティファを見て吹き飛んだ。

やはりティファは戦いには向いていない、確かにクロコダイン達の言う通り強いのかもしれないが、知ってしまった相手を魔王軍と割り切れず、倒したことに傷ついてしまう優しい女の子なんだティファは・・だから自分が!!

 

「止せポップ!俺に命を簡単に捨てるなと言っていたお前が何をしている⁉」

この声は!!

 

「ヒュンケル!!」

「・・ヒュンケル・・」

 

常の剣の魔装ではなく、槍を持った見た事がない鎧を纏っているがヒュンケルであることには違いなく、ポップは力強く、ティファは弱々しく名を呼ぶ。

 

ここに来たという事はきっと・・

 

「ティファ・・ラーハルトは俺が・・」

案の定ヒュンケルは申し訳なさそうにティファの横に来て詫びる。

 

「・・違う・・ラ―ハルトさんが決めた事だ・・」

 

その詫びをティファは否定をする。

ティファの元に辿り着いた時、ティファとラーハルトの話が聞こえてあらかたを察したヒュンケルがラーハルトを引き受けてバランの下に向かわせたのだ。

 

戦いながらヒュンケルもラーハルトを止めようとした。ティファの手をとりバランを説得すべきだと。

 

だがラーハルトも戦いを止めなかった。

戦いながらバランの過去と、己自身の過去を語る。

 

「俺達は皆バラン様に救われた恩に報いる。」

 

そう決めたのだと。

ギリギリで勝てたがどこかラ―ハルトは自分と重なり涙があふれた。

共に最愛の者を喪い、世界を憎んだことが、その憎しみの心をティファによって救われたことも。

「・・何か俺にできる事は無いか?」

その申し出に、ラーハルトは面食らった顔をした。

「ふふ、甘いな貴様は。噂に聞いた氷の剣士とは偽りか・・」情に厚い人間はどうやら沢山いるようだ・・

 

「頼もう・・バラン様の事は・・ティファ様がきっと救ってくれる。お前には・・」

その内容にヒュンケルは驚いたが、力強くうなずいた。

死にゆく忠義の士の心を確かに受け止めたと。

「・・・その剣の魔装は持つまい・・俺のをやる・・・手を握れ・・」「ああ・・」

ラーハルトの技を幾度もくらってしまい、最早自己修復が追い付かず、それでは約束は果たせまいとラーハルトは苦笑をしながら右手を握らせ槍の魔装を渡した。

 

槍の魔装は嫌がることなくすんなりとヒュンケルに馴染んでくれた。

これでいい、バラン様なら小娘が救ってくれる。

後の事もこの男に託せた。

 

「俺は・・あいつの問いに・・・とうとう答えを出せなんだか・・」

心残りがあるとすればそれのみ、-種族-を見ていなかったティファの風景を、自分も・・みた・・か・・・っ・・た・・

 

呟いたことが何かを問う前にラーハルトは逝ってしまい、ヒュンケルは倒れ伏した三人に頭を下げた後、岩の陰に隠していたベほを回収してすぐにティファの言った方に走っていった。

着いてみれば!バランの異様な姿とポップがメガンテをしようとしているとんでもない場面だった!!

 

二人が止めに入る前にやるんた!!

 

「ダイ!ティファ!!後を・・」

「嫌だ!!!」・・は?

頼んだぞと言う前にティファに断られた!

「皆・・勝手ばっかり言って!!人間滅ぼすとか!後を頼むとか!!勝手言ってティファを置いて行って!!!」

もう・・置いて行かないで・・

 

「ティファを置いて行かないでよポップ兄!!!!」

 

 

ティファが泣いてる・・・そうだ・・どうして忘れていたんだろう、島でのあいつは少しの事で泣いていたじゃないか・・はは・・したらやっぱ、あいつは俺が守らなくちゃいけない可愛い妹分じゃねえかよ。

先程までの震えが完全に止まり、心は不思議と静かだ。

「ダイ。」

服を握りしめて泣いているもう一人の弟を見る。

「俺が死んでも、間抜けな面をしてたら許さねえぞ。」

衝撃で全てを思い出してくれよ。

ーメガンテー・、・俺の旅はここまでだけど、後は任せたぞダイ、ティファ・・皆・・




今夜はここまで。

強さを持っていても、心の弱さを感じたポップは、主人公の兄貴分の立場を一貫しました。

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