よろしくお願いします。
その武器が異様ならば、その武器で構えをとったティファの姿もまた異様であった。
すらりと鞘から抜かれた剣は片刃であるのは真魔剛竜剣と同じであるが、色は鋼の色ではなく炎を閉じ込め剣にしたが如く真っ赤であり、抜いた鞘をポーチ止めのベルトの右腰に差し落としたティファは、左肩に剣を担ぎ右手を地面すれすれに突けるような低い前傾姿勢をとったのだ。
「・・・それが、真魔剛竜剣と同じ強度を持つ刀だというのか。」
神より賜りし天界製のオリハルコンと同等であると!
「そうです、お宝洞窟で見つけて数十回挑んでようやく手に入れた私の-雪白-です。
手に入れた時、素材はヒヒイロカネでオリハルコンと同等の力を持ち、かつオリハルコンよりも粘りがあり破壊困難であると声がしました。」
お宝洞窟や試練の洞窟では時折-神の声-がする。
その武器を・アイテムを・伝説級の魔法契約を手に入れるにふさわしいかどうか試練の神の声が。
死にかけたけど手に入れられてよかった、今日本当にそう思う。
話しながらもティファはバランから一切目をそらさずに、獲物に喰らいつく寸前の狼の様な気配を漂わしている。
強い、バランは背に汗が伝うのを感じ怯みそうになる。
実力があるのは五年前から知っていたが、まさかここまでの手練れとなっていたとは!
ディーノよりも、いや魔界で戦ったヴェルザー配下の幹部クラスに届いているかもしれない!!
-ポタン-
バランの汗が地面に堕ちたと同時に-風-がバランにはしった。「つう!!」-ガギィー―ン!-
瞬間的に剣を構えればティファの初太刀を辛うじて受け止められた。
ティファの超前傾姿勢は、自分のトップスピードを瞬時に出せるための姿勢だった。
両足の筋肉に闘気を流してばねの力と脚力を強化をし、右手を狼の様に爪を立てて前足でけり上げるようにして一気に敵に迫り、デルムリン島での洞窟ではほぼそれで階層のボス達を圧勝をしてきた。
流石は天下の竜の騎士であるが、一撃で倒せるとはもとより微塵も頭にはなく、受け止められても驚かず流れるように二の太刀・三の太刀を次々と放ち決してバランを休ませなかった。
素早く正確に、それでいて一撃ずつがとてつもなく重く、狙いは人体の急所ばかりで一つでも受ければ致命傷になりかねないものばかり!!
何という子に成長をしたのだこの子は!!
娘は強くなくてよかった!ルードを甘やかし、三人と賑やかにしていたあの子のままであって欲しかった!!
自分をお髭のおじさんとにこやかにしていた顔が今は古参の兵の如くで、そんな顔を見たくはなかった!!
「オオ―――!!」
だがいかに強くとも体格の差はいかんともしがたく、バランの横一閃の攻撃に吹き飛ばされ、そこからバランが追撃をする形となった。
不味いか、空中に行っても足場はない踏ん張りがきかないのは不利に変わりはないしここは!
「土龍閃!!」-ズバァ―――!!!-
後方に跳んで一旦距離をとり、追撃をしてくるバランにたいして-白い闘気-を纏った土砂を思い切り浴びせて素早くまた距離をとり今度は正眼に構える。
追撃をされてもティファは慌てた様子はなく呼吸も乱れておらず、それどころか策を練りながら戦っている。
「・・・ガルダンディーとボラホーンが手加減をしたわけではないか・・」
この実力では、二人を倒せるのは自明であったと思わずつぶやく。
その言葉にティファは泣きそうになる。
倒したくなかった二人を思い出して。
「どうしても戦うのですか!!」
バランが行った後、ティファは必死に説得を試みた。
「ニーナからの伝言です!-あの日何故魔王軍が来るのを鳥のお兄ちゃんが知っていたのか分からないけど、数日間は国の外に出るなって言ってくれたからルックの家族は助かりました-って。」
全世界同時襲撃の日程が決まり、テランは侵攻がないのを知ったガルダンディーは真っ先にテランのニーナの下に向かい、真剣な表情で村の子供達に伝えろと言って守ったのだ。
ニーナもガルダンディーの真剣な表情と声に驚いたが力強く頷いて実行もした。
「・・・そのルックの一家に腹痛を起こす軽い薬を一服盛って、行商の旅を断念させたそうです。」やり方が超過激な方法で。
「・・・・あいつ何やってんだ・・」命無くすよりもましかはしれんが、友人とその家族にためらいもなく一服盛るって怖いぞニーナ。
助けられてホッとするが、聞いて脱力をするガルダンディーに同僚二人が物申す。
「ガルダンディーよ、いかに何でも侵攻作戦をばらすのは・・」
「不味いぞ、バラン様がお知りになれば・・」
「いいだろう、さっきだってバラン様あの村は残してもいいって言ってただろう?」だったら問題ないとガルダンディーは開き直り、同僚二人は頭を痛める。
「続きましてはボラホーンさん。」
「・・俺は人助けは!!」 「二年前の冬!!」・・あっ!!あれか・・
ガルダンディーのような事はしていないと言おうとしたのを止められた。しかも二年前の冬には覚えがある!
「暖冬で毎年湖に張る氷でする氷像祭が出来ないと困っていた村人たちに、氷の息吹で湖を凍らせてくれたおかげで、小規模ながらも祭りが出来たのをぜひ感謝をしたいと村一同でお礼がしたいそうです。」
テランはただでさえ人口が百いくかどうかで、娯楽も少ない。
その数少ない氷像祭を出来たのは本当に嬉しかったのだと言っていた。
氷を作った後は何も言わずに立ち去った相手に、二年が経ってもお礼がしたいというほどに。
「最後はラーハルトさんです。」
「俺はこの二人のような事はしていないぞ!!」
助けるような事も、困りごとを解決も!そもそも直接かかわったのはったった一度しか・・
「いいえあります!あらかじめ言っておきますがこれはニーナ以外の女子達からです。
-いつも昼寝のお姿と草笛を吹くカッコいい御姿を拝見させていただいております。
是非一度でいいのでお茶をしてください!!-だそうです。」
その伝言にラーハルトも凍り付いた。
確かに子供の気配がして・・その気配に敵意は全くなくまるで憧れを向けられているようではじめは戸惑い、次第に心地よく感じていたのは事実で、くすぐったくて・・そしていつしか草笛を聞かせていた。
半魔の耳は魔族並みであり、草笛の音を聞いて楽しそうにしていた子供の声が自分を優しい気持ちにしてしまったのも分かっている。
「・・・言っとくがガルダンディー、小娘はニーナ以外の女子と言っていたぞ・・」
「なん!!・・あいつがお前とお茶したがってたって俺の知った事か!!」
「だったら人を噛み殺しそうな顔を向けるな。」うっとおしい。
三人はこの伝言を聞いても互いに驚く事は無かった。
あの村の名も、ニーナ以外の子のまして大人達の事なぞ碌に知らずとも、自分達はいつの間にか心を傾けていた。
村を・同族を・自分達を迫害をしていた-人間-として見れなくなってしまったから。
それでも自分達はバラン様の行く道を共に歩くと言えば、ティファはくしゃくしゃの泣き顔になり、そして戦ったのだ。
「ボラホーンさんの氷像の今でも村の氷室に安置をされて鎮守様扱いです!!」
「ラ―ハルトさんは男の子たちも憧れて、どうしたらあんなにカッコいい大人になれるのか教えてほしいと言っていました!!」
ティファはバランに攻撃をしながらテランの子供達の伝言とその続きをバランにぶちまける。
「あの三人は!もう人間嫌いでは無かったのです!!それでも!貴方を一番にしたんです
!!」
バランは攻撃を受け止めながら、あの三人の思いも受け止めさせられていた。
どこかで自分も気が付いていた。
ティファと知らずに出会い、テランの子供達と短い交流とも呼べない出会いをした後には最早人間を憎む気が薄らいだのを。
それに気がつかない振りをして、戦いの道から外さなかった自分が三人を死なせたというのも分かっている!!
「ガルダンディーさんは・・ニーナが将来お嫁さんになりたいと言っていました!」
「・・なん・・だと・・・ガルダンディーは鳥人で!!あの娘は人の子だろうが!!」
最後のティファの言葉が一番衝撃的であり、思わず攻撃の手を止めてしまったほどだ。
魔族と人間はままあるが、獣人族と人の女性なぞ聞いた事は無く、仮にあったとしても万に一つあるかないかを。
「だから何ですか、好きであればそれでいいじゃないですか!!」
自分の気持ちを見透かしたように真剣な瞳で言い放つ。
「あの村は子供達も含めて本当に三人を好きになったんです!三人もきっと同じはずです。」
ティファの言葉はバランを切り刻む。
その三人を死に追いやったのは己自身だと突き付けられて!
「人が全てそうであろうはずがない!!!」
ティファの言葉を振り切るようにバランは叫ぶ。
「現に我ら親子を壊したのは私を魔物と怖れたのは人間達ではないか!!!」
今でも思い出すだけでもたやすく己の胸を黒焦げにする、怒りが憎しみが支配をする思いをさせたのは人間だ!
「・・・先に人間を・・母さんを怖れたのは貴方の方だ!!」
「・・・何だと・・」
その遣る瀬無い思いを、ティファはひていをする。
「魔物だと嫌疑をかけられた時、何故弁明をしなかったのですか!!
貴方は確かに人間ではない!それでも聖母竜・マザードラゴンから生まれし竜の騎士であると言えば!テランのフォルケン王に問うてほしいと言えば!!あるいは受け入れられたかもしれないのを貴方はしたのですか⁉」
「・・・それは・・・」
「ソアラ母さんが受け入れないと思ったのですか?あるいは-人間-ではないと知られれば怖れると思ったのですか?
母さんが貴方の言う通りの人の素晴らしい人ならば、貴方の全てを受け入れたかもしれないとは考えなかったのですか!」
その言葉はバランの深きところまで届いた。
いつでも太陽のように明るく優しかった娘。
瀕死であった見知らぬ自分を王女という身分であってもためらいもなく手を差し伸べてくれた慈悲深き女性であった・・だからこそ自分は心の底から彼女を愛したのだ、ティファの言う通りの素晴らしい女性だから。
沈黙が辺りを覆い、それを破ったのはやはりティファの声であった。
「-お髭のおじさん-を愛してくれた素晴らしい人だったなら、貴方がただ人だろうが竜の騎士だろうが。」
ここまではまっとうな言い分であった。人でも竜の騎士でもで終われば。
しかしそこはティファである。
「天族だろうが魔族だろうが-魔王-だろうが-大魔王-であっても受け入れてくれたかもしれなかったでしょう!!!!」
綺麗事ではなく、主人公の混じりけのない本音で一度終わります。
次で決戦は終了です。