勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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ようやくの決着です。





親子決戦④決着

とうとうティファはバランを父さんと呼んだ。

本当はもっとずっと前から言いたかった、今だって-敵-のバランを父と呼ぶのを躊躇っていたが、己の心の中を叫び上げに、心の声に従った。

 

「ガルダンディーさん・ボラホーンさん・ラーハルトさんもティファと同じ事を言ってる!」必死に・・

「母さんが生きていたらきっと父さんの助けをしてくれるはずだよ!

だからこの世界でティファがする!!」なんと不遜に傲慢に、そして限りなく優しいのだろう・・

 

「・・それだけじゃ足りない?ティファ一人が助けるだけじゃ・・」返事をしない父親に切に切に訴える。

 

 

足りないはずがある訳がない!!一体ティファの心はどこまで広く温かく正に太陽のようではないか!

あの心にどれほど救われたかとクロコダイン達は痛感をする。

一体どこの世界に戦っている最中の敵に手を伸ばす者がいるというのだろう。

甘いのかもしれない、子供の綺麗事なのかもしれない、それでも懐柔しようというその場しのぎの嘘では決してなかろう。

いつだって本気で自分達にぶつかって来た、あの娘の言葉に偽りは無いのを知っている。

バランに言っている今の言葉も本心なのを。

ティファこそ、まさに生き物たちに恵みをもたらす太陽ではないか。

 

ティファよ・・

 

バランもティファの言葉が本気だと分かってる。

それでもティファの手をとる事が出来ない・・自分の犯した罪はあまりにも大きすぎ、そしてくだらない矜持と人間への憎しみを捨てきれずに-ズバァ――!!-

剣の返答となった。

 

 

父さん・・

打ち合っている剣からは最早覇気はなく、まるで泣いているようだ。

重すぎる罪・全てを知っても捨てきれない人間への憎しみがすぐに消えるはずがない。

全てを察したティファは全てを受けることにした。

父の悲しみ・戸惑い・憎しみ恨みつらみ・やるせない思い全てを・・受けるつもりであった。

しかし小柄で女性のティファは、完成をされた強さを持っていても体力面ではバランに劣ってしまう。

ガルダンディー達も相手にしたティファの闘気量が底をつきはじめ、バランの一撃を受け止めようと気を練ったが発動をしなかった。

 

しまった!!「避けろティファ!!」 「ティファよ!!」

ヒュンケル達もすぐに察したが体が動かずに助けに行けない。

打ち込んだバランも自身を止められずに心中でよけろと叫んだがどうにもならず、誰もがティファは斬られるかと思っったその時「ティファ―――!!!」

ティファの万能薬で回復をしたダイが妹を肩に引っ担ぎ助け出す。

 

「ダイ・・兄・・」体力の限界も近く、肩で荒い息をする妹の頬をそっと撫でる。

「ティファ、ここからは俺が何とかする。ティファは休んでいて。」

「兄、どうするの?」倒すの?

「・・俺もあの人に言いたい事がある。でもねティファ、俺は勇者なんだよ。」

「分かった、お願い兄!」

妹が何を願ったのか、分からない程自分はぼんくらな兄ではない。

「ティファは優しいね。大好きだよティファ。」たとえ敵を助けてほしいというとんでもない事を願う妹であっても、だからこそ愛おしく思う。

優しく温かい妹を。

「行ってくる!!」

 

ティファと違い最早右手の拳の紋章を使いこなしているダイは気負いなくバランの前に立ちはだかりいきなり撃ちかかる。

言いたい事とは何か、自分の所業に対しての罵詈雑言かと考えたが全く違った。

ダイだとて父がいたという事実は純粋に嬉しかったのだ!自分だってティファと同様に父だと言いたい程に!!

それでもティファに言った通り、自分は勇者であり-敵-は倒さなければならない!だから!!

 

「ボコって!!」兄弟子のポップが言っていた言葉。

「とっ捕まえて説教だ!!」悪さをした自分にティファが言っていた言葉。

 

              -そして助ける!!-

 

ダイはポップとティファの言葉を口に出し、心の中で自分達三人の考えを叫び上げる。

自分達は兄妹の絆を結び、三人で旅に出た。

ティファが-兄-と呼ぶのは自分とポップだけ、ティファを妹としているのも自分達二人だけ。

-兄妹の総意-で心が闇に堕ちてしまったバランを、父を必ず助ける!!!

 

「兄・・兄・・。」

その光景を、ティファは涙を流して食い入るように見つめる。

父の罪は重く、それもポップを殺しかけている。それでも助けようという自分の思いを受けとめてくれた兄は何と偉大なのだろう。

 

それでもダイが不利なのには変わらない、剣がない状態のは次第にジリ貧になるのが目に見えている。

闘気が尽きたティファの手から、いつの間にか-雪白-はなく銀のマジックリングに戻っている。

発動条件はティファの闘気を受け取る事で刀になる。

闘気が尽きてしまえば使えず、仮に使えてもティファの手から離れて他の者が使用をしようとすればたちまち銀のマジックリングとなり自動的にティファの首元にネックレス上に戻ってしまう、まさにティファ専用の武器と言っても過言ではない。

だからこそダイに貸せずに焦りもある。

 

「クロコダイン!!あとどれくらいで動ける!!!」

「あと少しだ!それで、どうする?」

話が早くて助かる。動けるようになれば-剣-をダイに渡す!!

ポップとティファの全てを見聞きして動けない奴は男じゃない!!!

ティファがバランを助けることを決めた、それはおそらくダイも、倒れ伏しているポップも同じはずだ。

世間が許さなくとも、仲間である自分達はその考えを支持をして願いをかなえてやりたい。

その為にも出来ることは最大限にする!たとえボロボロであってもだ。

 

 

「もう大丈夫だメルル。ヒュンケル!」

「こっちもだ、大丈夫だ姫様。」

二人はそれぞれ回復をしてくれた者達に礼を言う。

その様をメルルとレオナは泣きそうになるが止める事は決してしなかった。

回復をしてもまた傷だらけになるだろう男達の強さを信じて。

 

「行くぞヒュンケル!!」

「おう!ダイ――!!!」

 

二人は連携で動き、クロコダインが先行をして空中のバランに会心檄を放ってバランの気をひき、そのすきにヒュンケルが宙にとびダイに-魔剣-を渡そうとした。

 

「小癪なり!!消えよ!!!」

クロコダインの技を闘気でかき消し、ヒュンケルにライデインを放ち退ける。

しかしライデインを喰らいながらもヒュンケルは笑っている。

ダイに剣を投げ渡せたのだ。

「それを使えダイ!!その魔剣ならば一度はもつ!!!壊しても構わん!!!!」

 

 

叫んだあとは落下のダメージを覚悟をしたが-ガシャン!!-・・受け止められた・・

「つぅう・・」受け止めたのは・・「・・無茶が過ぎるぞティファ!!」

自分よりもはるかに小柄なティファが、全身を使って受け止めてしまった。

体格も違い、鎧の重さと落下の速度は確実にティファのダメージとなっているはずだとさしものヒュンケルもティファを怒鳴りつける。

「大丈夫です、少し休ませてもらっている間に体力用の薬を飲んで回復はしています。

戦えなくともやれることはやらないと。」

 

にこりと言われてしまっては返す言葉がない。

「怒鳴ってすまん、助かった。」

「それよりもヒュンケル、ライデインは体の中に火傷を作ります。

それ専用の薬を飲んで、レオナ姫・・また・・・」 「-ティファ!!!-」

 

ヒュンケルとクロコダインの薬を渡そうとしたティファはまたもや叫ぶべほの声に血相を変えてすっ飛んで行った。

 

まさか!!

予感がしてポップの胸に耳を充ててみれば、心音が確実に弱っている!!

どうしよう・・どうすればいい⁉もう・・薬がない!!

 

魔法が使えれば・・死ぬ気でベホマを覚えるのに!!ザオリク級の回復呪文を!!!

 

        「私の役立たず!!何で魔法が使えないの!!!」

 

-あの時-と同じだ!ノヴァを助けられなかったあの時の無力な自分と・・・

 

 

ティファが役立たずだと!

ティファは思い違いをしている!!

役に立たないのは自分達の方だ。

自分達の力が足りずに、だからこそポップがメガンテをする羽目になったのだ!

今だとてダイに剣を渡してそれで終わりではないか!

もしもティファを役立たずだと言うものがあれば、切り殺したい程にヒュンケルとクロコダインの胸中はティファの叫びに荒れ狂った。

 

ティファさんは役立たずなんかじゃない!

誰よりも頑張っている人だ!!・・お願いですポップさん、死なないでください!!

竜の神様、この素晴らしい人達をどうかご加護を!!

 

 

ティファの嘆きが、ヒュンケル達の怒りが、メルルの心優しき祈りが通じたのか、ポップの魂にティファの嘆きの声が確かに届いた。

 

-こいつは何を言っているんだ?ティファは料理人なんだろう。

魔法使いは俺なんだぞ。しゃあねえな、泣き虫の妹は-

 

意識のないポップは、それでも-妹-を泣かせた-元凶-許せなかった。

 

 

 

 

その怒りはギガデインを剣に纏わせ、一撃必殺のタイミングを狙うバランの背にイオをくらわせた程に!!

 

「何だと!!」この状況で魔法を使えるのはあの小僧のみ!まさか死にかけの・・

 

「うおおお!!!」しまった!!!

 

奇跡のような一撃をダイは見逃さず、-全員―で作ってくれたこの一瞬を無駄になぞしない!!

 

          「ボコってとっ捕まえて説教だ――!!!」

 

 

技の名ではなく、先程と同じ言葉にバランはあらゆる意味で驚いた。

こんな事をしでかした自分を倒すのではなく説教をして・・助けようなぞと・・

バランは子等に完全に負けたのを悟り、技を受け入れた。

真魔剛竜剣は主の意思を受け入れ、魔剣に叩き折られバランも地に落ちる。

 

その様をダイは驚いたが「ダイ兄!!来てぇ―――!!!」

妹の叫びを聞いて一も二もなくティファの隣に降り立った。

 

「ダイ兄・・ポップ兄が死んじゃう!」そんな!!

「何か方法は無いの⁉」薬とか回復アイテムとか!!

「・・・不確かだけどある・・」

ティファはダイに-竜の血-の効能を話した。

綺麗な魂を持つ強靭な精神力の持ち主には効くことも。

「その条件ならポップは大丈夫だ!」ダイは力強く保証する。

ポップは少々臆病なところがあるが、それでも仲間を守る為には最後には踏ん張る強さがある!

「どうすればいい?」

「分からない・・・」効能は知っていてもした事はない、それでも!!

「ポップ兄を助けたいって心の底から思えばきっと!!」魔法もイメージが大切で、力は須らく自分の思いが大切なはずだ。

 

ダイとティファは祈りにも似た強い思いで掌を傷つけ血を振り絞れば、ほんの少しだけ七色になった血がにじみ出て、血を受けたポップの心音がわずかながらに強まった。

 

「ティファ!!」

「うん!ダイ兄!!もういち・・・」

ポップを助けるのに夢中な二人の頭上に腕が伸び、ダイ達同様拳を握りしめ、ダイ達よりも濃い七色の血がポップに降り注ぐ。

 

            -トックン・・ドックン-

 

 

その血を受けたポップの鼓動は力強さを取り戻し、白かった顔に赤みが増す。

 

ダイとティファは驚いて振り返れば、傷だらけのバランがふらついている。

 

父さんが・・ポップ兄を助けてくれた・・それって!!「「とうさ・・」」

「来るな二人共!!!」

 

バランの意を受け取り、喜んで駆け寄ろうとするティファとダイを、バランは拒絶をする。

その声にダイとティファは止まってしまった。

「なんで!!」「どうして!!」

二人は今すぐに駆け寄りたいのに、バランが気配でそれを許してはくれない。

 

「私はもう人間に敵対をしない!だから追ってくるな!!!」

大罪を犯せし自分はあの二人の下には行けない、だからこそ代わりに魔法使いの小僧を助けた。

-人はね、優しい人もいるんだよ-

かつてティファが言った通り、仲間の為に命も惜しまずに守ろうとした少年を。

 

償いをせねば・・人にティファにディーノに・・そしてあの三人に・・

 

落日の下バランは誓いを立てダイ達の下を去った。

 

 

 

 

父さんがなんと言おうと!必ず追いかけてやる!!いう事なんて聞いてやらない!

 

 

 




これにてバラン編は終了です。
長くなりましたがようやく決着がつきました。

裁判風のご感想をくださりありがとうございます。
後書きをノリノリで作らせていただきました。

裁判の結果

被告バランは一度は地上を救った功労者であることと、アルキードの悲劇は被告の力が不幸にも暴走をした結果であり、それらを鑑みて償いの機会を一度だけ与えるものとする。
なおその保護観察役を実子の勇者ダイと娘のティファに命じて、当裁判はこれを以て閉廷とする。
余計な手出しをした者は当裁判所の厳しい罰則をする旨を伝えるので余計な事を一切しない様に!!

キ「・・・これって伝説の-楽屋落ち-ってやつかなミスト?」
ミ「・・・・・・」
キ「ああ、早くバーン様の元に戻って全部報告したいのね・・僕としては今弱っているあの子を・・」
ミ「・・・・!!!!!」
キ「分かった、分かったよ。またの機会だねお嬢ちゃん♪」

テ「へっくしょん!!・・寒気が・・」



以上舞台裏でした。
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