ああもう!!俺って奴はなんて最低なんだ!!!
夜の小屋の見回りをしているポップは、全身で周囲を警戒しつつ内心で悶絶をしているという器用な事をやってのけている。
目を覚ました時はダイに抱きつかれた。
ティファはどうしたのだろうと聞いてみれば、薬作りに行ってしまったと聞いてビックリ仰天して飛び出そうとしたのをヒュンケルにとっ捕まって鬼の形相で説教をされた。
「命を粗末にするなと言っていたお前が一体何をしている!!!」
「いや・・・俺だってな!考えがあって・・」
「問答無用!!!」
必死の抗弁も一蹴されて物凄く怒られた・・・アバン先生怒らすよりもおっかねえ・・
「ポップ・・もう二度としないで・・」
ダイに手をとられて泣かれたのは説教の何倍もこたえた。
「分かってる、二度としねえ。次は全員が助かる方法考えるよ。」その為にも師匠の特訓受けてえなって言ったら青い顔をされたのが解せん。
死にかけた人間が、更に死にかけそうな地獄の特訓を自ら課そうとしたら普通そうなるという心理をすかんと抜け落ちてしまった気の毒なポップであった。
しかしだ、兄弟子の説教・弟弟子の悲しみよりも深く心に突き刺さったのはクロコダインからの警告であった。
「・・・ポップよ、お前の言った通りだった。」
「何だよおっさん、急に改まって。」
自分達の事を一通り見ていたクロコダインが真剣な瞳をしている。
自分の言った通りと言っていたが、ティファに何かあったのだろうか?
しかしそれならばダイ達がティファの単独行動を容認するはずがない。ダイはティファの事になると過保護な面があるのは薄々知っている。
旅の途中でティファがくしゃみ一つしたら毛布を出してその日は休ませていた時には驚いた。
そのくらいの過保護なダイが許可をしたのなら大丈夫な気もするのだが。
「お前の言う通り、ティファは戦いに出すべきではない。」そっちか!
「でも・・強かったんだろ?」
クロコダインが言う通りに、竜騎衆のうちの二人を倒せる程に。
「・・・確かに力は強い、戦い方も俺やヒュンケルでもできないような戦い方をした。
いつか紋章を使いこなし、戦い方を会得したダイならば届く次元にいる。」つまるところ現時点では一行の誰よりも強い事になる。
あの戦いでクロコダインが確信した事を全て話すことにした。
所持していた武器・戦術・闘気量。
その話をヒュンケルは否定をせずに聞いている、つまりヒュンケルも同様の事を考えていたことに他ならない。
「・・ティファが・・そんな強さを・・」
「全く見えなかったわ・・」
本格的な戦いを一月と経験していないダイと、戦場を知らないレオナは驚かされることばかりだ。
「その話が本当なら、おっさんがさっき言った事が理屈に合わねえ。」
ポップも驚いたが、真実だと受け入れる覚悟をしていたので表面には出さなかった。
当代の竜の騎士が、親馬鹿であそこまでティファの実力を手放しで褒めるわけがないとあの時点で悟ってはいたのだ。
ティファは強いのだと、本物の実力者なのだと。
ならば妹を心配して止める自分達ならばともかく、長年軍に身を置き幾多の戦をしてきたクロコダインが戦力を低下させる発言をするのがおかしい。
今の自分達は魔王軍の一番の標的になりえているというのにだ。それこそティファがこの場を離れると言った時、何故反対をしなかったのか?
「おそらく俺のモンスターとしての勘なのだが、ティファの心は強くはない。」
クロコダインが苦しそうに答える。
竜騎衆達を斬った事を告げた時、ポップがメガンテをしようとした時、バランが己の罪に苦しんだ時、ティファは泣いていた。
戦場で命を懸けた戦いをしていたというのにだ。
敵に手を差し伸べるのならばまだ分からなくもないが、敵を倒したというのを嘆く者がいるなぞ自分は聞いた事がない。
仲間の死を悲しむのも分かる、あの時自分も悲しみの底に堕ちかけたが「ティファは・・壊れる寸前に見えた・・」
自分やダイ達の様に嘆くでなく、悲鳴を上げるでなく、立ち尽くして壊れる陶器のように。
「ティファは戦いには全く向かぬ者だ。」たとえ力があろうとも。
仲間の死で心を乱すではなくひびの入る者・戦っている相手の苦しみを共有してしまう者を戦士とは言わないのだと、そう結ばれた。
そうだよ、ティファは女の子なんだよ!どうして・・自分達はいつからその事を忘れてしまったのだろう。
近頃はみんなが思っていた-ティファがいれば-
パプニカ王の病気の事で、今回のバランとの戦いにおいて、十二歳の女の子がいれば心強いだなんて・・「馬鹿だ俺は・・」
ちっとも強くなっていない、最後にはダイかティファ頼みだなんて弱いからか。
強く、力も心も全て強くなりたい!いや!!なるんだ!!!
増々兄貴ポジを強化したポップでした。
クロコダインが言った通り、主人公の心は強くありません。
それでも前にひた走ろうとする姿に、仲間たちが支えて行こうとしていきます。
次回辺りで因縁の二人が出せたらと思います。