タイムリミットまであと五日を切った。
時間の
事情を知っている生徒が櫛田の
どうにもいつもの彼女らしくない。緊張しているのだろうか。
無理もない。
「佐倉さんっ」
「……!? ……な、なに……?」
まるで恐怖に怯える
オレが不安を覚える中、櫛田は再度アクションを試みる。
「ちょっと佐倉さんに聞きたいことがあるんだけど、良いかな? 須藤くんのことで……」
「ご、ごめんなさい……私この後、用事があるので……」
遠回しに会話を拒絶する佐倉。
視線を逸らし、櫛田の顔を見ようともしない。話すことはありませんと、そういった雰囲気がありありと見て取れる。
しかしここで
櫛田はなおも続行しようと、体を佐倉に一歩近付けた。だが佐倉は一歩……いや、二歩程椅子を引く。
「そんなに時間取らせないよ? とても大切なことだから話をさせて欲しいの。須藤くんが『暴力事件』に巻き込まれた時、佐倉さん、近くに居たって……」
「ぁ……。し、知らないです。堀北さんにもそれは言われたけど、全然、全く、これっぽっちも何も知りません」
いやその反応は何かを知っているものだぞ。
とはいえ、佐倉は弱々しくもキッパリと否定した。
てっきりもっと話すことが苦手だと思っていたのだが、意外にも、『芯』はしっかりと通っているようだ。
彼女の態度にはさしもの櫛田も
『どうしよう?』とオレに助けを求める視線を送ってくる。いや、どうしてオレなんだ。そこは
オレは嘆息してから、一度頷くことで続行を指示した。
ここで諦めるわけにはいかない。佐倉の存在が、須藤救出の実質的な鍵なのだから。
「……もう、帰って良いですか……」
櫛田が沈黙している
佐倉
しかしどこか様子がおかしい。例えば、上記にも述べたが彼女は未だに、櫛田と目を合わせていない。ずっとだ。
これが異性だったらまだ分かるが──実際、みーちゃんという前例がある──、仮にも彼女たちは連絡先を交換している。そんな相手に対して、佐倉の態度は異常だ。
「お願い。少しだけで良いから時間を貰えないかな?」
「ど、どうしてですか……? 私は何も知らないのに……」
「厳しいわね。櫛田さんでダメなら、もう無理じゃないかしら」
彼女の言う通りだろう。誰とでもすぐに仲良くなれる櫛田がダメなら、少なくともDクラスの生徒じゃハードルは一気に高くなる。
異性ではなく同性だったら
佐倉が大きく距離を取ったからだ。
その光景に、大勢の生徒が目を見張らせたことだろう。
──人は誰しも、『パーソナルスペース』を持っている。
これは別名、『パーソナルエリア』や、『対人距離』とも言われ、
女性よりも男性の方が一般的にはこの空間は広いと言われているが、これは民族や文化などによって変わることもある。
当然だが、親密な相手程に空間は狭くなり、逆に敵視している相手程広くなる。
そのパーソナルスペースを、文化人類学者のエドワード・ホールは主に四つに分けた。
その四つとは、
例えば密接距離は、家族や恋人など、ごく親しい者だけに許される距離だ。近接相は0~15cm。遠方相は15~45cm。当然、この距離に他人が侵入すればする程、人間は激しい不快感を抱く。
今回の場合は、お互いの表情がハッキリと
櫛田は個体距離の、遠方相を選んでいた。そして近接相の範囲内に踏み込もうとした。彼女の凄いところは、遠方相から近接相に急激的に移行したとしても、相手に不快感を与えないところ。
パーソナルスペースを発動させないとでも言ったら良いだろうか。
だが佐倉愛里はそれを
時間が経つにつれて収束する視線という矢に、佐倉は泣きそうな表情になりながら荷物を纏める。
「さ、さよなら……!」
今にも
そして、机の上に置かれていたデジカメを両手で抱え、教室の外に出ようとする。
そんな時だった。
「「あっ!」」
悲鳴が出される。
扉から顔だけ出して櫛田と佐倉のやり取りを不安そうに見守っていたみーちゃんと、佐倉がぶつかってしまった。
そしてデジカメが床に落ちてしまう。小さな音がやけに大きく反響した。
どちらが悪いという話ではない。
顔を青くするみーちゃんを
「嘘……。映らない……!」
デジカメが映らないことに、佐倉は誰の目から見ても分かる程にショックを受けていた。みーちゃんはそんな佐倉を見てますます顔色を悪くする。
どうやら落ちた衝撃で、デジカメが壊れた……にしては言い過ぎだろうから、故障してしまったようだ。
何度も電源ボタンを押したり、バッテリーを入れ直したりするが、ついぞ光が
「ご、ごめんなさいっ。私がぶつかったから……」
「違うんです……私が悪いんです。ちゃんと前を向いて歩かなかったから……!」
「それも違うよ。悪いのは急に話し掛けた私だよ……」
櫛田の謝罪も、佐倉には届かない。
「……ごめんなさい。もう行きますね……さよなら……」
結局最後まで、佐倉は誰かの顔を直視することはなかった。彼女はそそくさと教室から出ていってしまった。
みーちゃんや櫛田はそんな彼女の背中を見届けることしか出来なかった。
重たい空気が教室に流れる中、須藤が唇をキツく噛み締め悔しそうに拳を握った。
「どうすりゃ良いんだよ……!」
答える者は居なかった。
しんと教室内が静まり返る中、しかし、思わぬところから言葉が飛ばされる。
「──諦めたらどうだね、レッドヘアーくん」
その男は須藤を見ることなくそう言った。
いつものように、持参している手鏡を見て髪の手入れをしている。自分のことにしか関心がないと
「哀れなレッドヘアーくんにアドバイスしよう。きみの無実はどう
クールガールとは恐らく、堀北のことだろう。
「それは、そうだけどよ……」
「あのガールが仮に目撃者だとしても、彼女は証言しないだろうさ。なら最初から自分の罪を認めれば、罪は軽くなるだろうねえ」
佐倉に頼れないと判別したこの状況なら、それが唯一出来る最善なのだろう。
高円寺六助は唯我独尊、傲慢な男だが、彼はいつだって真実を口にする。
「まぁボーイやガールが何をしようとそれは勝手だ。精々頑張ると良い。それでは see you」
笑みを深め、高円寺はスクールバッグを片手に教室から出ていった。多分、寮に帰るんだろうな。
呆然と見送る者が殆どの中、池が悔しそうに言う。
「なんだよあいつ! 英語、滅茶苦茶発音良いじゃん!」
「池くん、そこに突っ込むのは間違っていると思うよ」
「お、おう
あれだけオドオドしていた沖谷の成長具合に、大勢の生徒が驚きを表しているだろう。
あれだな、天使から堕天して小悪魔になったとでも表現すれば良いだろうか。
さて、オレももう行くとしよう。
放課後の賑わいをだんだんと見せ始めるDクラスの教室を出る。
昇降口には既に
「椎名」
「
「まあ、そんな所だ」
いつもはオレの方が先に着いて、椎名を待っているのが常だからな。
Dクラスの担任は用がない時はすぐにSHRを終わらせるから、その点に関しては、生徒からは評価されていたりする。
移動しながら彼女に
目撃者Xが事実上発覚したこと。それがDクラスの生徒であること、しかし説得に失敗し逃げられてしまったこと。
「Dクラスはどうするつもりですか?」
「さあ。櫛田が上手く佐倉を説得することを願うしか出来ないんじゃないか?」
「中々難しいものですね……──綾小路くん」
靴を履いて玄関から出ようとしたところで、椎名が小さな声で囁く。
オレは無言で頷いて、数十メートル先を歩く女子生徒を見据える。
鮮やかなピンク色の、ツインテール。体を小さくして歩くその姿は、佐倉愛里だった。オレよりも早く教室から出ていって、てっきりもう寮に帰ったとばかり思っていたのだが……。
──ここで呼び留め、オレが佐倉を説得するか?
だが同じクラスとはいえ、オレと彼女の接点は皆無。櫛田が失敗してしまった今日のタイミングで、下手に刺激しない方が得策だろう。
隣を歩く椎名に目配せをして、何も見なかったことにしようとした。
だがそうはならなかった。
校門に行くと思われていた佐倉が、別の方向に足を動かしたのだ。その方角にあるのは一つの建物だけ。
彼女が向かう先は──特別棟。
──さて、どうしたものか。
悩んでいると、椎名が言う。
「追い掛けたらどうでしょうか。
「分かった」
「私は先に図書館に行っていますね。彼女も、他クラスの私が居ると困るでしょうし」
「ああ。じゃあ椎名、また後で」
椎名と一旦別れ、オレは気配を殺して佐倉の背中に
さっきの櫛田と彼女のやり取りから察するに、多分、佐倉愛里という人間はパーソナルスペースがとても広いのだろう。
オレは公共距離の中で、遠方相を採用する。これは複数の人間が見渡せる空間のことで、距離は7m以上だ。
佐倉は特別棟の出入口の前で辺りをキョロキョロと見渡す。オレはすぐに近くの物陰に隠れる。
──バレたか?
危惧するが、どうやら違うようだ。多分、特別棟に入る姿を目撃されたくないのだろう。
人影がないことを何度も確認してから、彼女は特別棟の中に入って行った。
オレも後を追おうとするが、近くの自動販売機が目に留まった。
人間とは学ぶ生き物だ。特別棟の中は、今日もとても暑いだろう。
二本分の飲料水を購入してから、オレは地獄への門を潜った。
建物内に侵入すればするほど、蒸し暑さがオレの体を襲う。
佐倉は窓から見える景色を眺めているようだった。
「──どうして、こうなっちゃったのかな……」
ぽつりと漏らされた独り言。
椎名が気に掛けるのも分かる。佐倉はもう、精神的に参っていた。
彼女の内面を正確に推し量ることはオレには出来ない。しかし、勝手な想像は出来る。
オレはわざと靴音を鳴らし、彼女の関心を寄せた。
狙い通り、佐倉は両肩を震わせながらすぐに反応する。
「誰──あなたは……?」
「同じ一年Dクラス、綾小路
「あっ、はい……佐倉、愛里です……」
礼儀は弁えているのか、佐倉はオレの簡素な自己紹介に答えてくれた。
不審者じゃないことに安堵したのか(思われていたら傷付く)、彼女は一つ息を吐いた。
だがそれもすぐに疑念となり、オレに困惑の表情を見せる。どうしてオレがと思っているのだろう。
嘘を吐いたら良くないだろうと思い、オレは真実を口にした。
「佐倉が特別棟に入っていくのがたまたま視界に映ってな。悪い、尾行させて貰った」
「……」
ふと、自分でも思った。
あれ、これってストーカーじゃないか?
しまった、本当に不審者じゃないか。
これで佐倉が警察に突き出しても、文句は言えないだろう。
その光景を想像していると、しかし佐倉は悲鳴を上げることも、糾弾することもしなかった。
何がどうなっているのかは分からないが、兎に角話を続けよう。こんなことで警察に捕まりたくない。
「佐倉はどうしてここに?」
「あっ、えっと……その……私は、写真を撮るのが趣味で……今日はその下見に……。デジカメはさっき壊れてしまいましたから……」
その言葉に嘘は無いのだろう。
事実、佐倉の手には携帯端末が握られている。
だがそれは本当の理由ではない。とはいえ、それを追及したりはしない。
疑問に思ったので、もっと別のことを尋ねる。
「写真を撮るって……いったい、何を撮っているんだ?」
「廊下とか……窓から見える景色とか……自然が多いです……」
そう言って、佐倉は携帯端末を操作してから恐る恐る画面を見せてくれた。
そこには彼女が言った通り、色とりどりの自然の景色が映っていた。朝焼けや、夕焼け、風に揺れる
素人のオレでも分かる程に、撮り方がとても上手い。
「
思わず感想を呟くと、佐倉は少しだけ……本当に少しだけだがオレに体を近付かせた。
「……分かりますかっ? この景色を撮るためにかなり時間を使ったんです」
そう言って、一枚の写真を指差す。
それは、夕日の眩しい光が多くの水溜まりの水面に反射して輝く、とても幻想的な情景だった。
水溜まりの大きさによって、光の光量も千差万別。一つの芸術となっている。
「ちなみにどれくらい?」
「……一時間程だと思います……」
マジかよ、そんな単語が口から出そうになった。
オレは素直に感心してしまう。到底、オレには出来そうにない。多分……というか絶対に、飽きてしまうだろう。
そこまで考え、オレは確信した。
佐倉はきっと、椎名や須藤と同じ人種だ。つまり、好きなことに対してはどこまでも
「もっと話してくれないか? オレはほら、知ってるかもしれないけど読書しかこれと言った趣味がないから、ここ最近物足りなく感じていてな」
「えっ……でも……」
「ダメか?」
「う、ううん……! じゃあまずはこれを──」
佐倉はそのまま、オレに趣味について話してくれた。曰く、この写真は宝物だとか、曰く、この写真を撮るために遠出をしたとか。まぁ遠出と言っても、高度育成高等学校の施設内の話だが。
一通り話したいことは言ったのだろう、彼女は汗を流しながら息を長く吐く。暑いし疲れただろうと判断し、オレはスクールバッグの中を漁った。
「良ければ飲んでくれ。もちろん、封はしてある」
「えっと、良いんですか……? あっ、その前にお金……」
「大丈夫だ。渡しておいてなんだけど、それ、無料のものだから」
そういうことならと、佐倉は無料飲料水を受け取った。
一度
「どうかしたか?」
尋ねると、彼女は視線を少し逸らしてから答える。
「……綾小路くんは、私が目撃者だと聞かないんですね」
「なら逆に聞くが、『暴力事件』の現場を見たのか?」
「……それは……」
語尾を濁らせる佐倉。真実を彼女が見たのは間違いないだろう。そして多分、告白するかも迷っているだろう。
そんな彼女にだからこそ、オレはこの時、本心で言った。
「佐倉。仮にお前が目撃者だとしても、名乗り出る義務はない。無理矢理に証言しても意味はないし、何より──
「えっ……? それって……」
戸惑う佐倉に、オレはさらに言葉を畳み掛ける。
「もちろん、佐倉が証言してくれたら心強いのは確かだ。けど、誰かに強制されるんじゃなくて、自分の意思で決断して欲しい。そうしたら、佐倉は『成長』出来る。そう思う」
「成長、ですか……?」
「ああ。考えてみてくれ」
「う、うん…………」
「じゃあオレは帰るから。また明日」
また明日……小さな声で挨拶が返された。
オレは振り返ることなく、片手を挙げることで応えた。
さて……時間をかなり使ってしまった。
これ以上椎名を待たせるわけにもいかない。
足を出来るだけ早く動かす。数分程で図書館に着いた。
オレが図書館への入口に立つ少し前に、自動ドアが稼働した。ちょっとタイミングが悪い。
自動ドアが完全に開放されるのを待つ。
開け放たれたその先には三人の男と一人の女が居た。
邪魔だと思い、無言で彼らの道を開ける。
「──よう。今日もひよりと逢引か?」
通り過ぎるのかと思いきや、一人の男がオレに声を掛けた。
男の行動に、彼の仲間だと思われる生徒たちは怪訝そうに男を見る。しかし男はそれを無視し、オレに詰め寄る。
「
「
「Cクラスの生徒か、お前は」
「てめぇ、
「
龍園と呼ばれた男がそう言うと、石崎と呼ばれた男は口を
オレと龍園の視線が交錯する。
「忠告だ。これ以上ひよりに……Cクラスの人間に近付くな。もし継続するようなら──潰すぞ」
「そうか──断る」
そう告げると、龍園はオレの
ひんやりと冷たく、固いコンクリートの壁が背中に直撃し、痛みがじんわりと広がる。
「龍園!」
「黙っていろと言ったはずだ伊吹」
「そうじゃない。ここには人の目があるって言ってんの」
伊吹の鋭い声。
だがしかし、龍園は彼女の指摘を鼻で笑うだけだ。
視線を横に向ければ、確かに伊吹の言う通り、通行人が二、三人程居る。彼ら彼女らは遠巻きに眺めるだけだ。
助けは期待出来ないだろう。
「そろそろ、手を離してくれると嬉しいんだけどな」
「クククッ……面白いな、お前。良いぜ、今日はこのくらいにしてやる」
龍園は
支えを無くしたオレはずるずると壁を滑り、地面に尻もちをついてしまった。
「悪い悪い。ほら、手を貸してやるよ」
龍園はそう言って、ポケットから右腕を差し出す。
どうやら、今の一連の流れはあくまでも『事故』として処理するつもりらしい。
「そりゃどうも」
上から目線が鼻についたが、オレは差し出された手を摑む。まさかオレがそうするとは思ってなかったのか、取り巻きの石崎や伊吹たちは何やら驚いているようだった。
「せいぜい、惨めに踊るんだな」
そう言い残し、龍園は去って行った。慌てて後を追う石崎と、アルベルトと呼ばれた屈強な男。
伊吹は何か言いたそうにオレを数秒見つめたが、やがて彼らの背中を追行していった。
それにしても……なかなか、龍園は粋なことをするものだ。
まぁ確かにこちらの方が確実だが、それでも他の方法もあっただろうに。
いや……これも龍園
どうにも奴は、スリルを求める傾向にあるな。これで負けるようなら『王』失格だが、そんなことはまず起こらないだろう。
彼らが去っていった方向を軽く
図書館に入ると、冷たい風が館内に流れていた。冷房のありがたさを肌に感じつつ、いつもの席に向かう。
途中、顔見知りの女性職員とすれ違う。相手もオレに気付いたのか、軽く会釈をしてきた。オレも会釈を返す。
椎名はいつもと同じように読書に勤しんでいた。
彼女の右隣の席に座る。
「随分と遅かったですね。何かありましたか?」
「ああ。佐倉と話していた。やっぱり彼女が、目撃者で間違いない」
「やけに断言しますね。根拠はあるのですか?」
「質問を質問で返すようで悪いが、椎名は『コールドリーディング』って知ってるか?」
「ええ。まさか、綾小路くん……」
首肯する。
椎名の想像通り、オレは佐倉に対して、コールドリーディングと呼ばれる話術の一つを使用した。
これは、外観を観察したり何気ない会話を交わしたりするだけで相手のことを言い当て、相手に『わたしはあなたよりもあなたのことをよく知っている』と信じさせる話術。
一般的には詐欺師や宗教家、占い師や手品師が使用するが、警察官による誘導尋問や恋愛など、その幅はとても広い。
そしてこれの一番凄いところは、
コールドリーディングは意図して使う者だけに限らず、無意識下の中で使う者も居る。
身近な人間を例に上げるとするならば、それはやはり櫛田
彼女は『パーソナルスペース』を発動させず、さらには『コールドリーディング』を無意識で使っているがために、人とのコミュニケーションが容易に出来る。次点なら池
「オレは佐倉の趣味……撮影に対して興味を持ったことをアピールすることで、彼女の警戒心を薄くしたんだ」
「そして綾小路くんからは『暴力事件』について尋ねなかったんですね」
「ああ。特別棟に行った時点で、佐倉が告白するかどうか葛藤していたのは分かっていた。ある程度会話をすることで、オレが『無害』であると彼女に思い込ませたんだ」
「なるほど。結果、彼女は共感してくれる人……
「実際に認めこそしなかったが、それでも、佐倉愛里が目撃者だという決定的な情報をオレに漏らしてしまった」
とはいえ、オレは佐倉がXであることを椎名以外に口にはしない。
佐倉が証言したところでCクラス側に致命傷は与えられないし、何より、その
そう、オレたちの中ではもう、『暴力事件』は解決している。
読書の皆さんが思う、一学期の間に最も実力を示したDクラスの生徒は?
-
綾小路清隆
-
堀北鈴音
-
平田洋介
-
櫛田桔梗
-
須藤健
-
松下千秋
-
王美雨
-
池寛治
-
山内春樹
-
高円寺六助
-
軽井沢恵
-
佐倉愛里
-
上記以外の生徒