ようこそ事なかれ主義者の教室へ   作:Sakiru

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佐倉愛里の分岐点 Ⅰ

 

 大型ショッピングモール、ケヤキモール。その家電量販店の搬入口。

 私はその場所で、一人の男性と向き合っていた。

 相手は()()()()()()で、私が恐れている人。

 勇気を出して彼の顔を見上げると──彼はどちらかと言うと小柄だが、私よりは大きいからだ──、彼はその動作を待っていたのだろう、目が合った。そしてにっこりと笑い掛けてくる。

 

「ぁ……!」

 

 無音の悲鳴を上げて視線をすぐに逸らす。

 視界を遮るようにしてスクールバッグを(かざ)し、私は一歩、二歩と後ずさった。

 

「どうしたんだい?」

 

 さも不思議そうな声が届く。近付く気配。

 完全に間合いが無くなる前に、私はさらに後退した。

 一歩、二歩、三歩、四歩──そこで背中が、固い何かに当たった。じんわりとした小さな痛みと、冷たい感触が全身に伝わっていく。

 

「あぁ……大丈夫かい? 怪我、していないかい?」

 

 心配そうな声色。事実、男性店員は私を心配しているのだろう。気遣っているのだろう。

 だから気付かない。察しない。あるいは、そんな考えなんてものは彼の中にはないのかもしれない。

 全てが彼の所為なのに……。

 私が当たったのは、どうやら倉庫のシャッターのようだ。

 退路は絶たれ……彼我(ひが)の距離が怪物の進行によってじわじわと詰められていく──。

 

「もう、私に連絡してくるのはやめて下さい……!」

 

 その直前に、私は悲痛な叫び声をもってして防ぐ。

 行進が止まる気配。

 スクールバッグを少し下にずらす。眼鏡のレンズ越しに私の目が男性店員の姿を捉える。

 そこには、理解出来ないとばかりに純粋な表情を浮かべている、醜悪な怪物の顔があった。

 目が合う。

 

「ぁ……うぁ……!」

 

 だが、私は逸らさなかった。

 本能に従いそうになるけれど……理性で無理矢理抑える。

 

「どうしてそんなことを言うんだい?」

 

 絶句した。

 衝撃のあまり思考が停止する。

 

「僕はきみのことが好きなんだ。本当に……本当に好きなんだよ。雑誌できみを初めて見た時からね……」

 

「……雑誌……」

 

 呟いてから、鋭く息を呑んだ。

 やっぱり、目の前に居る彼は私の『秘密』を知っている。私の『仮面』を知っている。

 

「いやあ、あの時の僕の興奮を、きみは分かってくれるかな? きみみたいな天使を、僕はこれまで見たことがない!」

 

「ひ、人違いです……!」

 

 慌てて否定するが、それが意味を為すことはなく。

 彼はきょとんと瞬きしてから言った。

 

「人違いなんかじゃないよ。そうだよね愛里(あいり)……──いや、この名前じゃ不適切か──(しずく)?」

 

 彼はズボンの右ポケットから自身の携帯端末を取り出し、何やら慣れた手付きで操作を始めた。

 

 ──逃げなくちゃ……!

 

 脳が警戒音を最大音量で鳴らし警告してくる。いや違う。警告は誤用だ。これは──()()

 

「今きみのブログにアクセスするね」

 

 一緒に見よう? と怪物は嗤う。

 彼は今携帯の操作に夢中だ。逃げるなら今しかない。

 私は気取られない程度に退路を探す。正面突破は彼が居るため無理だ。

 残されたルートは二つしかない。右か──左か。

 逡巡の(のち)、左を選ぶ。そうすればケヤキモール、つまり多くの人が居るからだ。流石の彼も追ってこれないだろう。

 

「はあ……はあ……!」

 

 自然と呼吸が荒くなる。心臓は嘗てない程に早く脈打ち、汗が薄らと額に浮かぶ。

 脳内でカウントダウンを始める。

 五、四、三──

 

「だ、大丈夫かな? 体調でも崩したのかな? けどもうちょっと待ってね」

 

 ──二、のタイミングで怪物が私の変化に気付いてしまった。

 二、一、ゼロ……逃亡の合図は鳴らされていたけれど……私は動けなかった。

 立っているのもやっとな状態の私を他所(よそ)に、彼はようやく液晶画面から顔を離す。

 

「ほら、見てよこれ!」

 

「それ、は……」

 

 それは、私がよく見慣れたものだった。下手したら毎日見ているかもしれない。

 男性店員が携帯を操作してアクセスしたのは、一つのブログ。

 個人が趣味で作成したとは思えない程に……そのページは作りが()っていた。まるで──その手の業者が時間を割いたかのように。

 私の『仮面』が怪物の手によって、容赦なく(あば)かれ、晒される。

 

()()()()()()()()()。凄いよね……あの有名少年誌にすら堂々と載っているんだからさ! もうほんと……掲載された時はとても嬉しかったよ!」

 

 鼻息荒く怪物は語った。

 そう、確かに彼の言う通りだ。

 私の名前は佐倉愛里。けれど同時に、私はもう一つの名前を、別の側面を持っている。それこそがグラビアアイドルの雫という少女だ。

 

「どうして私の正体が……!?」

 

「うふふふ、眼鏡を掛けていようと髪型を変えていようとすぐに分かるさ。それにレンズに度が入ってなかったからね。確信したよ。きみが四月に僕の店を訪ねて来た時は、嬉しさのあまり泣きそうになった!」

 

 これなんか凄いよ! 彼は一枚の写真をアップし、拡大させた。

 普段の私とは違い、撮られた『私』は柔和(にゅうわ)に笑っている。クラスメイトの誰が見ても、佐倉(さくら)愛里が雫であることを信じないだろう。

 ところが彼は恐ろしいことに一目見ただけで私の正体に気付いたという。

 

「きみがグラドルデビューしてからもう二年かあ……僕の色褪(いろあ)せた人生はきみと出会ったことで色付いたよ」

 

 私が『私』になったのは二年前。中学二年生の頃だ。

 何故芸能界の世界に踏み出したのか、その理由は自分でも分からない。

 けれど私はグラビアアイドル雫として活動を開始した。

 グラビアアイドルの仕事の一つとしてブログを強制的にやらされた。

 それは別に良い。

 予め説明は受けていたし、『私』を見た他人がどのような感想を抱くか興味があったから。

 

『可愛いね!』

 

 この初めての感想が送られてきた時、私はとても嬉しかった。それからも私を応援してくれるメッセージが少しずつだが増えてきて……嬉しさのあまり泣きそうになったことは良い思い出だ。

 もちろん純粋なものだけじゃないことは分かっている。性的なものも多分に含まれていただろう。

 事務所からは毎日の更新はしなくて良いと言われていたけれど、私はデビューしてからほぼ一年間、三百六十五日書き続けた。

 内容はごくありふれたもの。その日楽しかったことや悲しかったこと、思ったことなど私が書きたいと思ったことを綴った。

 一年が経ち、私は中学三年生、受験生になった。流石に勉学を疎かにするのはダメだと思い、事務所に相談、グラビアアイドルの活動を停止した。ブログでは更新が出来ないので、専用のSNSアカウントを作成。ファンの人たちはわざわざ足を運んでくれて、不定期更新の私のツイートに答えてくれた。

 進学先が高度育成高等学校に正式に決まり、私はグラビアアイドルの活動を再開出来ると(たか)を括っていたけれど……現実は無情だった。

 予め学校のルールは説明されていたが、まさかここまで徹底して外部との連絡を遮断されるとは思ってなかったのだ。

 ブログの活動は一方的なものになった。写真を投稿することは出来るけれど、寄せられた感想に反応することが出来ないのだ。

 罪悪感を覚えながらも、私は、せめて多くの写真を投稿することで彼らの期待に応えようと思った。

 しかし私がケヤキモールの家電量販店でデジカメを購入したあの日──全てが崩壊した。

 

『運命って信じる? 僕は信じるよ。これからはずっと一緒だね』

 

 最初はただの行き過ぎた妄想(もうそう)だと思った。事実、これまでにも何件かこういった機会には遭遇したから。

 だが……同じような内容の文面はそれから毎日送られてきて、エスカレートしていった。

 

『いつもきみを近くに感じるよ』

 

『今日は一段と可愛かったね』

 

『目が合ったことに気付いた? 僕は気付いたよ』

 

 とても怖かった。

 初めて感じた、本物の恐怖。

 そして極め付けに……この前の日曜日。友達になったみーちゃんと綾小路(あやのこうじ)くんと一緒に壊れてしまったデジカメの修理に行き、私と男性店員は会ってしまった。

 もちろん予想はしていた。最悪の展開は前もって準備していた。

 けれど私は立ち尽くすばかりで何も出来なかった。

 もし綾小路くんがあの時助けてくれなければ、私の詳細な個人情報を怪物に与えてしまっていた。

 そして、その日の夜。

 男性店員のだと思われるメッセージがブログに届けられた。

 

『ほら、神様は居たよ。きみの友達の女の子、とても可愛かったね。流石だよ。けどどうして男が居たんだい? ねえ、どうして? もしかして彼氏だったりするのかな? 教えてよ』

 

 私は決めた。

 怪物と直々に話をしようと。

 彼は日頃から私を観察している。それはこれまでのメッセージから明らかだった。

 もしかしたらみーちゃんや綾小路くんにも彼は近付くかもしれない。

 だとしたらとても危険だ。

 私に初めて出来た友達。

 もし、もし大怪我でも負わされたら──。

 それに良い加減……『成長』するべきだと思った。生まれ変わるべきだと思ったのだ。

 だからこそ私は、『私』から脱却するためにここに居る。

 ……けど、けれど。

 私は今、逃げたくてしょうがない。

 この、顔が視えない化け物から逃げて、逃げて逃げて、逃げて逃げて逃げて……逃げて──どうするんだろう? 

 

「僕が如何にきみのことが好きなのかは分かってくれたと思う……。好きだ、好きなんだ。愛していると言っても過言(かごん)じゃない! この気持ちを抑えることは無理だよ!」

 

「やめて……やめて下さい!」

 

 私はあらん限り叫んだ。

 ほへ? 思わぬ反撃に男性店員が間抜けな表情を作る。

 その隙にスクールバッグのチャックを開け、中を漁った。……いや、漁る必要はない。

 (ひも)で纏めた物体の束を摑み、私は迷うことなく地面に叩き付けた。落ちた衝撃で紐が緩んだのだろう、不快な音と共に辺りに散らかる。

 それは手紙だった。色とりどりの封筒に入れられた手紙。

 

「あ……あぁ……! なんてことを……これは僕たちの愛の結晶じゃないか!」

 

 慟哭(どうこく)の悲鳴を上げる彼に私は追及する。

 

「どうして私の部屋知っているんですか! ……どうして、どうしてこんなものを送ってきたんですか!?」

 

「……」

 

「答えて下さい!」

 

「……決まっているじゃないか。僕たちは心で繋がっているんだよ」

 

 うふふふふと……と、歪んだ笑み。

 怪物はしばらくの間嗤っていたが……不意にぴたりと動作をやめた。狂気に満ちた瞳がぎょろりと私の肉体を捉える。

 これは……これは知っている。

 女性なら絶対に一度は体験したことがある。

 汚らわしく、いやらしい目。

 

「ひどいじゃないか……僕たちの愛の結晶をこんな風に扱うなんて……。いくら雫……いや、愛里でも許されないことがあるんだよ?」

 

「ぁ……ぅあ……!」

 

 蛇に睨まれた(かえる)のように、私は何もすることが出来なかった。

 悲鳴をあげることも、逃げることも、思考そのものすら奪われてしまったのだ。

 気付けば私の両肩は腐った両手によってがしっと摑まれていて……身動きが取れない状況に遭った。

 携帯端末を使って誰かに助けを求めたいけれど、それは望み薄だ。流石に事前にとめられるだろう。

 出来ることと言えば両足をじたばたと(ちゅう)を蹴ることと、精一杯睨むことだけ。

 しかし私の決死の反抗はますます彼を興奮させてしまい……形勢は一向に変わらない。

 

「あは、あははははははははッ!」

 

 怪物が狂ったように嗤う。

 嗤い続ける。

 そして──押し倒された。

 すぐ近くにあるのは彼の醜い顔。()り切れていない(ひげ)が顎に生えていて、肌に掛かる息は腐っている。彼の視線が向かう先は私の胸。

 下卑(げび)た笑みと下卑た目だ。

 

「一つになろう愛里。大丈夫、痛くないから……」

 

「やめ、やめて……!」

 

 当然、私の訴えが聞き届けられるはずもなく。

 男性店員は「大丈夫。大丈夫だからね」と呪文を唱えてから──私の胸を摑んだ。

 布越しとはいえ、他人に触られることに強い不快感を覚える。

 

「わぁ、大きいね……。これが、これが愛里のおっぱいかぁ……!」

 

 感極まったかのように吐息を漏らす。

 ぐにゃぐにゃと優しさなど欠片もない手付きで胸が揉まれる。

 

 ──私、レイプされそうになっているんだ……。ううん、レイプされているのかな? 

 

 思考が混濁(こんだく)する。

 何が正常なのか判別が付かない。

 せめて涙は流すまいと誓う。

 私は最後に足掻く。

 精一杯睨む。

 

「なんだよ……なんだよその表情は! 気に入らないなあ! 気に入らない、気に入らない!」

 

 怪物はとても情緒不安定で、ぶつぶつと呟いた。

 澱んで濁った目が私に向けられ、無言でおもむろに腕が引かれた。

 何をしようとしているのか、何をされようとしているのか。

 

 ──殴られる! 

 

 私は襲い掛かってくる痛みに備え、きつく目を閉じた──

 

 

 

「──()()()

 

 

 

 不意に投げられた声。

 私のものじゃない。男性店員のものでもない。

 ──じゃあ誰が……? 

 困惑し、瞼を開けようとしたところで──カシャッ。

 高い機械音がやけに大きく反響した。

 カシャッ、カシャッ、カシャッ。

 聞き慣れた音。

 そうこれは──カメラのシャッター音。

 

「どけよおっさん」

 

 再度声が投げられた。向かう先は察するに、今まさに私に殴り掛かっていた男性店員だろうか。

 

「あっ、いや……えっ?」

 

 突然の出来事に狼狽する男性店員。

 

「ククッ、おいおい、意思疎通が出来ないのか? もう一度だけ言ってやる──どけ」

 

 鋭く、尖った、低い声。聞いたことがないものだ。

 だがそれは、他者を強引に従わせる覇気が込められていた。男性店員は私から離れ、すぐ隣に尻餅を突く。

 ここでようやく私は、声主を仰ぎ見ることが出来た。

 そこには一組の男女が立っていた。服装から察するに、私と同じ高度育成高等学校に在籍している生徒だろう。

 少なくとも私の知り合いではない。もしかしたら上級生かもしれない。

 

()()()、しっかりと写真を撮れよ」

 

 男性の指示に、ひよりと呼ばれた女性が首肯した。携帯端末のレンズを私……ではなく男性店員に集中させる。

 

「一応言いますが、やり過ぎないで下さいね」

 

「クククッ、俺たちは強姦されそうになった女を救うため、やむなくそこの犯罪者を返り討ちにした。これが筋書きだ。どうだ、中々に面白いだろう?」

 

「どうぞお好きになさって下さい。まあ、すぐそこに防犯カメラがありますから、龍園(りゅうえん)くんは過剰防衛で警察のご厄介になりますが」

 

 ひよりさんが無表情でそう言うと、龍園と呼ばれた男性は露骨なまでに舌打ちをした。

 

()()()()()()()()()()()()()()。どうだひより。Cクラスのために俺の傘下に下る決意は出来たか」

 

「龍園くん、そろそろしつこいですよ。何度もお伝えしていますが、私は争い事が嫌いなんです」

 

「クハハッ、面白いことを言うな。だとしたら何故今回俺に協力した」

 

「そういった内容の『契約』でしたから、仕方がないでしょう。それに──いえ、なんでもありません」

 

「奴が計画に関わったからだろう?」

 

 さも愉快そうに龍園くんがひよりさんに尋ねると、彼女は一瞬だけ無表情を崩して眉を(ひそ)めた。

 

「龍園くん、それ以上は……」

 

「分かってる。俺も、お前と奴を敵に回したくはないからな。少なくとも今は、身内で争っている暇なんかねえ」

 

「私も彼もあなたの身内になったつもりはありませんけどね」

 

「辛辣だなあ、おい」

 

 一度薄く笑った後、龍園くんは表情を百八十度変えた。

 私には目をくれることも無く、男性店員に一歩、また一歩とゆっくり近付いて行く。

 彼は残忍な笑みを浮かべながら見下ろした。

 

「一応言ってやる。俺たちはこの目で全部見たぜ」

 

「ななななななな、何のことかな?」

 

 唇を震わせて、男性店員は尋ねる。

 それが間違いだったことにすぐに気付かされた。

 

「言ったろ。全部だってな。お前が女子高生にストーカー行為をしていたことも、そして強姦をやろうとしていたこともな」

 

「す、ストーカー行為? ご、強姦? きみは何を言っているのかな? 大人をからかうのも……」

 

 その瞬間。

 龍園くんの瞳が爛々(らんらん)と輝いた。笑みを深め、(たの)しそうに喉を鳴らす。

 

「ほう。まだ逃げるか。その度胸は認めてやりたいが……残念なことに証拠はある。例えばそうだな──すぐそこの手紙とか、だな……」

 

「や、やめろ! 僕と愛里の神聖な手紙に触るな!」

 

「知るか」

 

 龍園くんは男性店員の訴えを無視し、地面に散らばっている手紙の一つを手に取った。

 封を手でびりびりと破りながら、ひよりさんに声を掛ける。

 

「綾小路はいつ来そうだ?」

 

 彼女は携帯端末を操作した。

 数秒後、わっ、と驚き声が漏らされた。

 

「えっと……かなりの速度でここに向かっているようですね」

 

「チッ、分かっちゃいたが、あいつはどれだけ実力を隠せば良いんだか……。──それとそこの女……佐倉だったか」

 

 一瞬、自分に投げられたものだとは考えが及ばなかった。

 

「……は、はい」

 

「お前はひよりの近くに居ろ。そこの男に強姦されたいならこれ以上は言わないがな」

 

 その言葉を聞いた直後、私は自分でも驚く程素早く立ち上がり、ひよりさんの元に駆け寄った。

 

「愛里!?」

 

 背後で名前が呼ばれたが、振り返ることはしなかったし、もう、声を聞くのも嫌だった。

 

「はじめまして。今更ですが自己紹介を。椎名(しいな)ひよりと申します。佐倉愛里さんですよね?」

 

「はい、佐倉愛里です……」

 

「混乱していらっしゃると思いますが、あなたが安心できるだろうことを言いますね。薄々察していらっしゃるとは思いますが、もうすぐ綾小路くんがここに来ます」

 

「綾小路くんが……?」

 

 思わず椎名さんの顔をまじまじと見てしまう。

 彼女はこくりと頷いてから、優しく私を抱き締めた。

 

「ごめんなさい。本当ならもっと早い段階で助けられたのですが……決定的な瞬間を捉えるまでは手出しが出来なかったんです」

 

「い、いえそんな……むしろ私は助けて貰った身ですから……。それより、こうなることを予想していたんですか?」

 

 馬鹿な私でも分かる。

 まるで見計らったかのようなタイミングで、椎名さんと龍園くんは場に躍り出た。偶然にしては出来すぎだ。

 彼女は一度私の背中を摩ってから、抱擁を解いた。

 同性でも見蕩(みと)れる程に綺麗な顔がすぐそこにある。

 無表情じゃなかったら写真に映えるだろうなあ……と、私は何となく思った。

 そんな私の気など知らず、彼女は質問に答えてくれた。

 

「佐倉さんの仰る通りです。綾小路くんは今日のあなたの様子の変化から、()()()()()()()()()()()()()。しかし再審議会に彼は出席しないといけません。そこで彼は私に電話をして、あなたの護衛を依頼したんです」

 

「えっとつまり……私を尾行していたんですか?」

 

 恐る恐る確認すると、椎名さんは表情を微塵も崩さず頷いた。

 

「そういうことになりますね。不快にさせてしまいごめんなさい。ちなみに龍園くんが居るのは、私が彼を頼ったからです」

 

「だ、大丈夫ですから……」

 

 ただちょっと……いやかなり驚いただけだ。

 まぁそれを抜きにしても引いてしまったけれど。

 何ていうか……摑み所がない女性だ。ふわふわと雲のような不思議な雰囲気、とでも言ったら良いのかもしれない。

 

「──ククククッ、クハハハハハハッ!」

 

 哄笑(こうしょう)が突然出された。

 何事かと思い発生源を見ると、そこには大声で笑っている龍園くんの姿が。

 彼の手には一枚の手紙。近くには破られた封筒が捨てられている。

 

「何がおかしい!」

 

 男性店員が抗議の声を上げる。

 龍園くんは一頻(ひとしき)り笑った後に……けれど男性店員を一瞥してからまた笑った。

 

「これが笑えずにいられるかよ。こりゃあ想像以上だぜ。まさか本当に、本気のラブレターを大の大人が女子高生に送るなんてなあ……。ひよりはどう思う?」

 

「愛情表現は人それぞれです」

 

「ハッ、これだから優等生は──」

 

「ですが、それを考慮しても度を越していると思います。相手の気持ちを考えないのは悲しいですね」

 

「だそうだぜ、変態野郎」

 

「ぼ、僕は変態なんかじゃない!」

 

 龍園くんは鼻で笑った。

 男性店員は顔を歪ませるが、彼は気にも掛けない。

 持っていた便箋を高々と掲げた後にねじ曲がった一方的な想いが綴られた文書を読む。

 

「『今日は見たところ体調が悪そうだったけど大丈夫かな? 風邪を引いたのなら学校を休むんだよ? 返信がなくて僕は悲しいよ。読んでくれているのかな? あぁだけど、体調が悪いなら仕方がないよね。快復することを神様に祈っているよ』……ちなみに聞くが、これは何だ?」

 

「決まっているだろう! その日……今から一ヶ月と十一日前、愛里は顔色が悪かったんだ。だから僕は彼女を心配して──」

 

「もう良い、黙ってろ」

 

「そ、そんな言い方はない──」

 

 ダン! 盛大な衝突音が響く。

 男性店員を黙らせるようにして、龍園くんが倉庫のシャッターを強く蹴ったのだ。

 彼と、そして私も平生では有り得ないことに直面しているからか、身を震わせる。

 

「ひより、俺はもう行く。あとは好きにしろ」

 

「犯罪者と女子高生を一緒に放置するって、かなりの鬼畜ですね、龍園くん」

 

「あ? 俺が奴から請けた依頼は佐倉の救助だけだ。充分達成したはずだぜ。それに安心しろ、奴はすぐに来る」

 

「……仕方がないですね。分かりました、それでは龍園くん、ごきげんよう」

 

 龍園くんは面倒臭そうに嘆息した。

 椎名さんの独特な空気についていくのはそれだけ苦労するのだろうか。

 彼はズボンの両ポケットに手を突っ込みながら立ち去った。

 残されたのは私と、椎名さんと、犯罪者。

 今なら逃げられると判断したのか、彼は冷たいコンクリートから臀部(でんぶ)を離そうとする──。

 

「逃亡はおすすめ出来ませんよ。このまま警察署に自首するのが最も刑が軽くなるでしょう」

 

「と、逃亡って……きみと言いさっきの男の子と言い、やっぱりまだ勘違いしているようだね。僕はそこの女の子にデジカメの使い方を教えていただけで──」

 

「何度目になるか分かりませんが、良い加減認めたらどうですか? あなたの過ちは私がこの携帯でしっかりと撮りましたし、すぐそこには防犯カメラがあります」

 

「……」

 

「近日中に一件のニュースが流れるでしょう。大人が女子高生をストーカーし、暴行し、さらには強姦未遂で逮捕、というニュースが。あなたの社会的地位は永遠に失われ、一度失ったものは返ってきません。一つだけアドバイスするなら、やっぱり自首がベストだと思います。逃亡しても構いませんが、日本の警察の力は凄いですし、近年は顔認証システムを試験的ながらも採用しています。──諦めて下さい」

 

 椎名さんは朗々と語った。

 犯罪者が辿る結末を。傍から聞いているだけでも、未来に光が灯らないことは明らかだった。

 彼はしばらくの間は呆然としていたが──。

 

「く、クソ──!」

 

 立ち上がり、椎名さんに殴り掛かる。

 涙で顔をぐしゃぐしゃに濡らしながら、ふらふらとした足取りで、けれど確たる意識が乗せられて。

 腐っても彼は男だ。全力で殴られたらかなりの大怪我を負ってしまう。

 私は咄嗟に、私を庇ってくれている恩人を救おうとした。背中を押して、彼女を横にずらそうと試みる。

 そう、これで良い。代わりに私が攻撃ルートに入って殴打されるだろうけれど、これで良いんだ。

 しかし、それよりも早く。

 

 

 

「──()()()()()()()()()()()

 

 

 

 感情の一切が消え去った、冷徹な声。

 結論を告げるのならば、椎名さんが殴られることはなかった。

 握り拳が彼女の端正な顔に直撃するその直前で、暴行者の手首が摑まれたからだ。

 

「あ、綾小路くん……!」

 

 自分でも驚く程に、この時の私は驚愕していたと思う。

 割って入っていたのは綾小路清隆(きよたか)くんだった。

 彼がこの場に登場したことに対して驚いたわけではない。彼が来ていることは椎名さんから知らされていたからだ。

 私が驚いたのはそこじゃなくて──。

 

「い、痛い痛い! や、やめてくれ!」

 

 綾小路くんは静かに怒っていた。

 怒鳴ることも、憤怒の色に顔を染めることもせず……ただ静かに彼は怒っている。

 悲鳴を上げる男性店員を、彼は冷徹な眼差しで見据える。いや、『見据える』じゃない。見下ろしているんだ。

 

「椎名、警察は?」

 

「いえ、まだ呼んでいません。大事になったら、佐倉さんが『悲劇のヒロイン』となってしまいますから」

 

「そうか。それじゃあ悪いが、今から呼んで貰えるか?」

 

「分かりました」

 

 椎名さんが警察に電話を掛け、事情を説明する。

 通話が途切れた。

 あと数十分もすれば警察官が駆け付けるらしい。

 

「あんたの社会的地位はゼロどころかマイナスになった。あんたがどうして佐倉を執拗に狙っていたのかは知らないし興味もない。けどあんたは彼女を傷付け、そして捕まる。あんた──終わったな」

 

「ヒッ……!」

 

「綾小路くん。それは先程私がお伝えしました。これ以上は傷口を抉るだけですよ」

 

「……そうか」

 

 少し残念そうに彼は眉を下げた。

 

「ごめんなさい、傷付けちゃいましたね」

 

「いや、良いんだ。むしろそう言われると余計にへこむから……」

 

 状況にそぐわぬ会話にぱちくりと瞬きしてしまう。

 程なくして、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。

 流石にここまで来れば、自分がどうなるか分かったらしい犯罪者は項垂れて脱力した。

 それでも綾小路くんは拘束の手を緩めなかった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 複数のパトカーが近くに停止して、男性警察官の群れが駆け寄ってくる。

 皆、表情はとても固い。まるで映画のワンシーンのようだと、当事者の私は他人事のように考えた。

 

「彼が犯罪者です。引き渡します」

 

 慎重に犯罪者を引き渡す。

 ガチャ! 手錠の鍵が架かった音が、やけに大きく鳴った。彼の両側に二人の警察官が控え、パトカーの中に連行していく。

 最後まで男性店員は無言だった。彼が何を考えているのか、それは分からないし分かりたくもない。

 

「ありがとう。けどきみは……いや、きみたちは自分が大変な危険な状況に遭ったことは自覚しているね?」

 

 綾小路くんが代表して答えた。

 

「ええ。そこの男を捕まえようとはせずに逃げるべきだったとは思います。反省はしていますよ」

 

「……なら良いんだ。被害者の彼女ときみたちには事情聴取をお願いしたいが……いや、今日はよそうか」

 

「ええ、その方が佐倉のために──」

 

 私は言葉を遮って、話を進めようとする彼らに割り込んだ。

 

「わ、私は大丈夫です。調査に協力します……」

 

「いや、しかし……」

 

「大丈夫ですから……!」

 

「……分かりました。きみたちはどうする?」

 

「私もご一緒します」

 

「そうか。……きみは?」

 

「あー……そのことなんですけど。実はオレ、全部を見たわけじゃないんです。そこの彼女……椎名から連絡を貰って駆け付けたんですよ。だからオレに聞いても意味は無いと思います」

 

「なるほど……だとしたら尚更早く我々を呼ぶべきだったと言いたいが……まぁ良い。きみたちが安全なら小言を言うのはもうやめよう。きみ、名前は?」

 

「綾小路清隆です」

 

「では綾小路くんに関してはまた後日事情聴取をするかもしれないということで良いかな?」

 

「ええ、構いませんよ。あぁ実は、椎名の他にももう一人目撃者が居たようなんですが……椎名、彼はどこに?」

 

「帰りました」

 

 これには綾小路くんも男性警察官も頭を抱えた。

 

「まったく……今どきの高校生は何を考えているか分からないよ。帰った男の子の名前は?」

 

「龍園(かける)くんです」

 

「椎名さん、きみと彼は同じ光景を見ていたんだよね?」

 

「そうですね」

 

「なら彼にもまた後日、事情聴取をお願いすると伝えてくれないかな?」

 

「分かりました。しっかりと伝えておきます」

 

「それでは行きましょうか」

 

 警察官に促され、椎名さんと私はパトカーに乗るべく移動する。

 先に椎名さんが乗った。

 私も続こうとしたところで、声が掛けられる。綾小路くんからだった。

 

「まったく……無茶しすぎだ」

 

「ご、ごめんなさい……。けどどうしても、必要なことだと思ったから」

 

「もし佐倉の身に何かあったらみーちゃんが心配するぞ。もちろんオレもだ」

 

 呆れたように言う彼に、私は乾いた笑みを貼りつかせることで答えた。

 苦笑の後に、改めて謝罪する。

 

「あはは……うん、本当にごめんなさい。あ、あのね綾小路くん。私、綾小路とみーちゃんに話したいことがあるんだ……。聞いて、くれるかな?」

 

「ああ」

 

「うんっ。綾小路くん──」

 

 ありがとう、と私は彼に言った。

 そして綾小路くんは言葉少なめに言った。

 

「よく頑張ったな」

 

 その瞬間、固く引かれていた糸が緩くなった。

 私は胸の内から込み上げてくる名前のない感情に抗って彼に振り返り、一度笑顔を見せた。

 いつもの取り繕った偽物の笑顔じゃなくて、人が心の底から浮かべる本物の笑顔を、私は浮かべることが出来た。

 

 

 

§

 

 

 

 去っていくパトカーを見送ってから、オレは長いため息を吐いた。

 オレの嫌な予感は当たってしまった。

 佐倉愛里の『成長』の速度は、凄まじいの一言に尽きるだろう。

 オレは短く言った。

 

「──居るんだろう、龍園?」

 

 オレ以外に人影はない。事実さっき、椎名は龍園は帰宅したと言っていた。

 だが確信があった。

 彼はこの場に残っていると。

 

「お前は気配を察知出来る特技も持っているのかよ」

 

 背後から届く男の声。

 振り返ると、そこには一年C組龍園翔が立っていた。呆れを含んだ表情を浮かべている。

 

「まずは礼を言わせてくれ。佐倉を助けてくれてありがとう」

 

「ハッ、お前にそんな対応をされると明日の天気が心配になるぜ」

 

「まるでオレが、日頃から誠意を見せていないかのように言うんだな」

 

「ククッ。違うのか?」

 

「少なくとも今回は本心だ」

 

「なら受け取ってやる。しかし驚いたぜ、まさかお前が俺を頼るとはな」

 

 龍園の言う通りだった。

 再審議会のためにオレが生徒会に赴いている途中、オレは佐倉に呼び止められ会話をした。

 いつもの彼女らしくないと直観したオレは、彼女が何かをしようとしているのを朧気(おぼろげ)ながら察した。

 そうは言っても心当たりは一つだけ。

 あの男性店員に一人で会うのだろうことは、少し頭を捻れば考えがつく。

 もちろん違ったかもしれない。だがその可能性はあった。

 故にオレは彼女と別れた後に龍園翔に連絡を取った。

 理想を言うのなら平田(ひらた)洋介(ようすけ)が良かったが、彼はその時間は『協力者』として、石崎(いしざき)ら三人を陽動しなければならなかった。

 堀北(ほりきた)(まなぶ)に頼ることも視野に入れたが、彼も生徒会長として席は外せない。

 残ったのが龍園だった。

 

「一つ分からないことがある。どうして椎名が居たんだ?」

 

「決まってるだろ。一人で佐倉を尾行するのはつまらないからな、暇そうなひよりを誘っただけだ。実際暇そうだったぜ? ここ最近はお前と逢引していなかったからな」

 

「あー……それについてはまた今度お詫びするさ」

 

「まっ、ひよりを誘ったのは失敗だったけどな。あいつ、マイペースにも程がある」

 

 苦々しそうに龍園はため息を零した。

 確かに彼と椎名の相性はあまり良くないだろうな。彼は言わずもがなだが、彼女も自分本位な考えを微細だが所持している。

 会話が噛み合わない光景がありありと脳裏に浮かび上がった。

 

「さて、『契約』は果たされた。綾小路、お前は今後どうする? 俺的には友好的な付き合いを望むがな」

 

「それは一年Cクラスの『王』という意味でか? それとも龍園翔という個人的な意味合いでか?」

 

「前者が望ましいが……後者だ。お前も椎名も、仮に敵に回すにしても今は遠慮したいのが正直なところだぜ。特にお前とはな。お前を完全に手中に入れられるとは思わない」

 

 言外で、()()()()()()()()()と告げられる。

 自問する。仮にオレが龍園の仲間になったとして、裏切るだろうか? 

 自答する。答えは決まっているだろう──。

 

「賢明な判断だな。オレもお前とはなるべく戦いたくない。あまり認めたくはないが、オレたちは思考回路が似ているからな」

 

 全面衝突したら斃すのに手間が掛かる。

 

「クククッ。戦うにしても今じゃねえ。まずはAクラスを斃すことが先決だ」

 

「Aクラス、か……」

 

 龍園の言葉を反芻(はんすう)する。

 オレの態度が癪に障ったのか、彼は目尻を上げた。

 

「俺が負けるとでも?」

 

「どうだろうな。Bクラスも、Aクラスもまだ不確定要素が多い。Bクラスは一之瀬(いちのせ)帆波(ほなみ)がリーダーだろうが──」

 

「なるほど。確かにAクラスは謎が多いな。俺が知っている情報を公開してやろう。今Aクラスは内部分裂中だ。リーダーの選出で争っている」

 

「……誰なんだ?」

 

「二人居る。一人は葛城(かつらぎ)という男。もう一人は坂柳(さかやなぎ)という女だ。前者は兎も角として、後者は調べてもなかなか情報が摑めねえ」

 

 それだけでも充分だ。

 葛城と坂柳か……櫛田を使って調べさせるにしても、彼女の扱いには気を付けないといけないか。

 

「さっきの話だけどな、俺個人としても龍園翔個人と繋がりを持つことは歓迎だな」

 

 他クラスとの繋がりはあった方が良い。

 もちろん、使えるか使えないかで天秤に掛けた上で、という条件はあるが。

 

「クラス闘争に、お前は参加しないんだよな?」

 

「少なくとも自分からはな。この前も言ったが、オレにも事情がある。龍園。仮にお前がAクラスに上り詰めてオレに勝負を仕掛けてきたとしても、オレは余程のことがない限りその申し出を受けないだろう」

 

「ククククッ。ならその時は、強引にでもお前を勝負の場に出させてやる」

 

「そうか」

 

 とはいえ、仮定の話ではなくオレたちはいつか必ず衝突するだろう。

 ──ならその時は全力で相手をしてやろう。そして龍園、お前を倒そう。

 

「話は終わりだ」

 

 言うや否や、龍園は足早に立ち去った。

 オレは彼の背中を見届けてから、帰路につくことにした。

 この一週間はとても長かった。

 今後、オレが表立って行動をする気はない。それは彼に言った通りであり、オレの本心でもある。いや──ただの願望か。

 ()()()()()()()()

 今回の一件でオレはしばらくの間は悪目立ちするだろう。再三述べるがオレからはなにもするつもりは無いが……もしもの時は戦う必要があるだろう。

 そのためにやるべきことは何か? 

 

『駒』が必要だ。

 

 思い通りに動かせる『駒』が、今後は必要になるだろう。

 今度の夏休みに『何か』が起こる。

 ちょうど良い機会だ。有効活用させて貰うとしよう。

『駒』を選ぶのはその時で良い。

 

読書の皆さんが思う、一学期の間に最も実力を示したDクラスの生徒は?

  • 綾小路清隆
  • 堀北鈴音
  • 平田洋介
  • 櫛田桔梗
  • 須藤健
  • 松下千秋
  • 王美雨
  • 池寛治
  • 山内春樹
  • 高円寺六助
  • 軽井沢恵
  • 佐倉愛里
  • 上記以外の生徒

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