変な事を口走る前に、オレは率直に用件を伝えた。数秒後、「分かった、良いだろう」と返答があり、オレの突然のアポイントメントが受け入れられる。取り付く島がない勢いで断られると最悪考えていた為、幸先が良いと言えるだろう。
エレベーターに乗り、上階へ。すぐに目当てのフロアに到着する。学生寮は驚く程静かで、人の気配はあまり感じられない。夏休みという事で、外出をしている生徒が多いのだろう。オレは目的地に到着すると、インタホーンを軽く押した。ピンポーン、と軽やかなメロディが出される。
静かな足音が近付いてきて、ガチャ、と解錠音が出された。扉が開き、この部屋の主が姿を現す。
「──
その人物──一年Aクラス所属の
オレと葛城の視線が交錯する。その一瞬の出来事で、葛城はこれが現実なのだと理解したようだった。
真剣な表情になると、オレが入れるように扉を大きく開ける。
「世間話をしに来たわけではないだろう。入ってくれ」
「話が早くて助かるな」
Dクラスのオレと、Aクラスの葛城が部屋の玄関前で堂々と話をしている所を見られたら、色々と面倒な事になる。少なくとも葛城にとってはそうだろう。
その言葉に頷いたオレは、部屋の中に入った。それを確認した葛城は鍵を施錠する。招かれざる客を阻止する為という意味合いもあるだろうが、逃げ場はないぞとオレに暗に伝えているのだ。
それから葛城は向き直ると、鋭い視線をオレに送った。
「お前を疑う訳ではないが、ボディチェックをさせて欲しい」
「分かった。携帯も電源を消そう」
オレは葛城の目の前で携帯端末の電源を落とすと、さらに、ポケットに入っている物を全て取り出して床に置いた。そして両手を上にあげて、邪な感情は抱いてないと誠意を見せる。しかし葛城からの懐疑的な眼差しは収まらず、「失礼する」と一言言ってからオレの身体を触り始めた。
「上着の内ポケットの中も見せて貰えないか」
「もちろんだ。好きなだけ調べてくれ」
出された指示に素直に従い、オレはブレザーを脱いだ。それを手渡すと、葛城は厳しい顔でポケットに次々と手を入れ始める。盗聴器の類がないか怪しんでいるのだろうが、オレは現在、そのような物は一切持ち合わせていない。
だが、どれだけオレがそう言っても意味はない。彼自身の目で確認して貰う事に意味がある。
それから葛城は入念に調べると、ようやく満足したのだろう。申し訳なさそうにしながら、オレにブレザーを返す。
「疑ってすまなかった。気分を害しただろう」
「オレが女ならそうなんだろうが、オレは男だからな。これくらいは全然気にしないさ。それに、葛城の気持ちは分かるつもりだ」
そう言うと、葛城はぴくりと眉間を動かした。
「……そうか。そう言って貰えると助かる」
葛城は再度謝罪の言葉を口にすると、リビングへ通じる扉のドアノブに手を掛けた。顔だけオレに振り向かせて言う。
「こちらだ。とはいえ、部屋の間取りは殆ど大差ないだろうから、ある程度は想像が付くだろうが」
葛城の言葉に導かれ、オレはリビングへ通された。へえ、とオレは内心で感想を洩らす。想像していたが、部屋はとても綺麗に整頓されていた。真面目な性格がそのまま反映されていると言えるだろう。
リビングに面している洋室、その勉強机の上には、参考書とノート、そして筆記用具が置かれていた。オレが来るまでは勉強していたのかもしれない。この男の事だ、長期休暇の課題は終わらせているだろう。自由な時間を一秒たりとも無駄にはしないという強い意志をオレは感じ取った。
「綾小路、あまりジロジロと見られては困る」
「悪い。あまり友人の部屋には来たことがなくてな、新鮮さを覚えていたんだ」
「意外だな。お前には友人が多い印象を受けていた」
「……自分で言うのも何だが、オレは地味で根暗だからな。友人はあまり多くないんだ」
自虐しながら肩を竦めて見せるも、葛城は腑に落ちないようだった。変わらずに疑わしい視線を送ってくる。
「本当にそのような人間なら、今俺の部屋にお前は来ていないだろう」
そう言うと、葛城は椅子に座るようオレに促した。そしてテーブルの上に湯呑みと菓子を置くと、自身も椅子に腰掛ける。
テーブルを挟み、オレたちは真正面から向かい合う。
「思えば綾小路、こうしてお前と二人きりで話すのは初めてだな」
「そうだな」
オレは葛城の言葉に頷いた。
オレたちが会話をした事はたったの一回のみ。『無人島試験』の最中、オレはAクラスの情報を得る為に桔梗を伴って敵陣地に向かった事がある。その時応対したのが、この葛城という男だった。
普通の学校なら兎も角、クラス闘争の性質上、それは仕方のない事だろう。
「それで綾小路、話とは何だ。わざわざこうして目立つような真似をしているのだ、意味があるのだろう?」
「それはこれからの話し合いの『結果』によって変わってくるだろうさ」
ただ時間を浪費し無駄になるか、あるいは、有益な話になるのかは葛城次第。それを暗に伝えると、彼は険しい表情を浮かべた。
「あんた相手に駆け引きは通用しないだろうから、単刀直入に言う──葛城、手を貸してくれないか?」
「……手を貸す、とはどういう意味だ。お前は何を望んでいる」
もっと具体的に話をしろ、と目が語っていた。オレは頷き、話を続ける。
「二学期になれば生徒会選挙が行われる。この事は知っているか?」
「無論だ。学校に在籍する者として、興味を持たない筈がない」
「そうか、なら話は早い。実は、次期生徒会長の
「……何? それはどういう事だ?」
怪訝な表情を浮かべる、葛城。
オレはそれに構わず、話を続ける。
「オレは堀北生徒会長と個人的な繋がりがあるんだが、その堀北生徒会長から南雲雅という生徒の事を聞いた。何でも、来年からこの学校は大きく変わるらしい。堀北生徒会長はそれを憂慮している。出来る事ならそれを阻止したいともな。そこでオレに『南雲降ろし』の作戦を持ち掛けて来たんだ。オレはそれに賛同している」
事実をありのまま伝えるも、葛城は腑に落ちなかったようだった。それ所か疑問はますます増えたようで、鋭い視線はこちらに向けられたままだ。
「……正直、このような話を聞かせられるとは想像もしていなかった」
「そうだろうな、無理もないさ」
「それ故に俺の中には、幾つもの疑問が浮かんでいる。質問をしても良いか」
「もちろんだ。オレに答えられる範囲の質問なら、嘘偽ることなく答えよう」
オレと、葛城。二人の視線が交錯した。
「まずは一つ目だ。綾小路、お前は堀北生徒会長と個人的繋がりがあると言っていたが、それは本当なのか。俄には信じ難い話だ」
「質問を質問で返すようで悪いが、どうしてそう思うんだ?」
「三年生の堀北生徒会長と、一年生の綾小路。接点を持つのは難しいだろう。ましてや、俺の記憶が確かならお前は無所属。どこで知り合った?」
葛城の疑問は尤もなものだ。相手は最高学年、さらには生徒を統括する生徒会長。オレたち一年生からしたら、雲の上の存在に等しい。
そのような相手と、オレがいつ接点を持つようになったのか。言い換えれば、この話そのものを葛城は疑っている。
「『暴力事件』の時だな。オレがDクラスの代表として、審議会に出席したのは知っているだろう」
「ああ、聞いている」
「その時にオレは10万prを支払って審議会を延長させたんだが、それはあんたも知っている事だろう」
「……ああ、それも知っている。俺たち一年生だけではなく、二、三年生の耳にも届いているだろう」
オレはさらに言った。
「その時に目を付けられたんだ。Dクラスのオレが10万pr持っているのは不自然だろう。その時に連絡先を交換したんだ」
そう言うと、葛城は口を閉ざし黙考した。オレの言葉に虚偽がないか考えを巡らせている。
そして、その判断はとても正しい。何故ならオレは嘘を吐いているからだ。堀北学と出会ったのは、五月上旬。しかしその出会い方は最悪なものであり、またその場には堀北鈴音も居た。兄妹事情を説明する訳にもいかないだろう。
だがしかし、オレが今言った言葉に『矛盾』はない。何も知らない人間からすれば、それが真実だと思うだろう。
「証拠、と言ったら良いか分からないが。少なくともオレが堀北生徒会長と連絡を取り合う仲なのは、これを見て貰えれば分かると思う」
言いながら、オレは携帯端末の電源を付けた。それをテーブルの上に載せ、葛城が見えるように端末する。電話帳を開き、履歴が表示される。その中には『堀北学』の名前と電話番号がある。
「今ここで電話を掛けても構わない。何だったら葛城、あんた自ら堀北生徒会長に話を聞くと良い」
ここまで言えば葛城も、態度を変えざるを得ない。
「……いや、やめておこう。これから、お前の話に価値があるものとして聞かせて貰う」
葛城はそう言うと、湯呑みに手を伸ばした。少しでも時間を稼ぎたいのだろう。
単純に喉が渇いていたオレも、湯呑みに手を伸ばす。ひんやりとした液体が身体へ流れるのを感じた。これは、麦茶だろうか。
「綾小路、お前と堀北生徒会長との関係性は分かった。未だ疑問は残っているがな」
そうか、とオレは相槌を打つ。
「南雲雅という男は俺も知っている。とはいえ、あまり深くは知らないがな。最初はBクラスに配属されていたがクラスを率いてAクラスに成り上がった男である事、そして、現生徒会副会長である事くらいだ」
「南雲が二年生を支配しているという事は?」
「それも耳には入れていたが、今日この瞬間まではただの噂程度の認識だった。だがその認識は間違いだったようだな」
葛城の認識を責める事は出来ないだろう。
一つの学年を支配するのは、クラス闘争の性質上不可能に近い。だが堀北学と
つまり不可能に近い事を南雲雅は可能にした、という事。同時に、かなりの実力を有している事にも繋がる。
「南雲副会長が次期生徒会長となるのは確定だろう。俺もその見解には同意見だ。しかし、学校を変えるという話はあまり想像出来ないな」
「堀北生徒会長曰く、学校の根幹そのものを変えるつもりらしい。来年の今頃は退学者で溢れ出ているそうだ」
「……なるほどな。それが実現可能かどうかはまた話が変わってくるだろうが、もしそうなれば確かに問題だろう」
そうは言いながらも、葛城は実感が湧かない様子だった。
それは仕方のない事だろう。現にオレだって、その光景はいまいち想像出来ない。とはいえ、これにはオレの育ってきた環境にも原因があるだろうが。
『百聞は一見に如かず』。つまるところどれだけ話をしていても、その現実に直面しなければ人間は何も学ばないという事だ。
それで対応が間に合えば良いが、堀北学の口調からして、既に後手に回っている状況だ。つまり、形勢はとても不利だと言える。
「敵は『二年生全員』だと想定しよう。対抗勢力はどれくらいいる?」
「今の所分かっているのは堀北生徒会長、そしてオレだけだ。他にも協力者は居ると聞いてはいるが、まだ知らされていない」
「……つまり、たった数人で戦いを挑むという事か。綾小路、それはあまりにも無謀なのではないか?」
呆れを含ませながら、葛城は正論を告げてくる。古今東西より、『数』というのは戦況に大きく左右する。たとえ一騎当千の実力者が居たとしても、やがて『数の暴力』によって地に伏すだろう。
オレは反論せず、その言葉を受け入れる。
「……先の『暴力事件』もそうだが、堀北生徒会長がお前を高く買っている事から、お前に底知れぬ実力があるのは間違いない事実なのだろうな」
「……」
「だがしかし、逆に言えばそれだけだ。『台風の目』である事は認めよう。だがどれだけの実力者なのか分からない以上、簡単には頷けない話だ」
堀北生徒会長はまだしも、オレを信頼する事は難しいと暗に告げてくる。
これはクラス闘争の弊害と言えるだろう。クラスメイトなら兎も角、オレたちは本来敵対関係にある。オレが一之瀬帆波や平田洋介のような人格者ならまた話は違ってくるが、葛城からすればオレは未知数の不気味な存在。
そのオレが突然部屋に押しかけ協力してくれと助けを求めた所で、この慎重な男がすぐに頷く訳がない。
「そもそも何故、今になってお前が表舞台に姿を現す? これまでお前は目立つような行動を避けていた印象を受けている。そのお前が、何故今更?」
どうやら、葛城の疑念はそこに集約しているようだった。
オレの真意を知り、そして納得するまで、この男は
「堀北生徒会長にも言った事だが、欲しい物が出来た。それを手に入れる為に、オレは今後、Dクラスとしてではなく個人で動くつもりだ」
それはつまり、
葛城は表情を揺るがす事なく、淡々と言った。
「個人で動くという事は、お前は仲間であるクラスメイトすら裏切るつもりなのか」
「それはどうだろうな。時と場合による、としか言えない。だがそれも考えている」
「あくまでも自分の目的の為だけに動くという事か。自己中心的な考え方だな、綾小路」
「否定はしない」
オレと葛城の視線が交錯する。
それから暫くして、葛城はため息を吐いた。緊迫した空気がゆっくりと霧散する。
「綾小路、お前の覚悟は分かった。お前の目的が何かは分からないが、これからの学校生活を変える程の決意だ。余程大事な事なのだろうな」
そう言うと、葛城はもう一度ため息を吐いた。
「……もう一つ聞かせて欲しい。今日俺の所に来たのは、誰の意思だ? 堀北生徒会長か?」
「他ならないオレだ。葛城の言った通り、敵はあまりにも強大だ。少しでも戦力が欲しい。そう考えた時、あんたの存在が真っ先に浮かんだ」
堀北学の実の妹である
「……何故、俺なのだ。何故、俺にこの話を持ち掛けてきた?」
当然、葛城もそれは疑問に思う。
「何故とは変な事を聞くな。優秀な人材を味方にしようと考えるのは普通の事だろう。あんたはAクラス。是非とも力が欲しい」
「やめてくれ、自分が虚しくなるだけだ。知っているだろう、俺は今や『終わった人間』だ」
「あんたが率いる『葛城派』が事実上の壊滅状態なのを言っているのか?」
「……ああ、その通りだ。お前が来るまで俺は、その事について考えていた。ここでの選択が、今後に大きく左右すると考えているからだ」
そうだろうな、とオレは相槌を打つ。そして言葉を続ける。
「だからこそオレは、あんたを選んだ」
「……何?」
「葛城、あんたの立場は理解出来る。『葛城派』と『坂柳派』の比率は恐らく、3:7……いや、下手したら2:8と言った所か。降伏するなら今しかない」
比率は適当に想像して言っただけだが、どうやら当たっていたようだ。葛城は悔しそうに顔を歪める。
「
「……」
「あんたは今、究極の選択を迫られている。坂柳の軍門に降り、負う必要のないリスクを冒しながら──仲間を失う危険性を伴いながらクラス闘争に臨むか。それとも自らこそがリーダーに相応しいと虚勢を張り続けるか。お前が仲間思いなのは話していれば分かる。どちらの選択も非常にリスキーだ。タイムリミットは目前。だからこそあんたは、悩んでいる。違うか?」
葛城が既に決断していたなら、この話を聞いた時点で断っていた筈だ。だが彼はそれをしなかった。
「この『南雲降ろし』に参加するという事は、そういう事だ。戦うか、戦わないか。葛城、あんたはどうしたい? 何をしたい?」
「……」
「聡いあんたの事だ、クラスの内紛がいかに愚かなのかは分かっている筈だ。坂柳がリーダーに立候補した時、彼女に譲る事も一つの手だった。だが葛城、あんたはそれをしなかった。クラスが今後辿る厳しい道を誰よりも憂慮したからこそ、あんたは同士を募り愚行だと分かっていながら対立したんじゃないのか?」
「…………」
「今回の話も同じだ。もし南雲が生徒会長になったら、この学校は大きく変わる。規律は乱れ、不必要な犠牲者だって出るだろう。葛城、あんたはそれを見過ごせるのか?」
葛城康平は求めている。
背中を押してくれる『誰か』を、無意識で求めている。
「葛城、選べ。オレはあんたの選択を尊重する」
葛城は瞳を伏せ、沈黙した。そして夜の帳が降りた頃、男は遂に決断する。
「──お前の話に乗ろう。その『南雲降ろし』に、俺も参加させてくれ」
『終わった人間』など、目の前には居ない。
敗北を味わい泥を被った男は、瞳に強い意思を宿して再起した。
オレが右手を差し出すと、葛城は迷うことなく手にとった。
「もう少し話を深く聞かせてくれ。まさか無策で挑むという訳ではないだろう。具体的にはどうするつもりだ?」
オレはそれに答えようと口をおもむろに開ける。先程堀北学に伝えた、オレの意思を改めて言葉にした。
「まずは二学期から、オレと葛城が生徒会に所属する。そしてオレは堀北生徒会長の推薦によって、生徒会副会長に就任する」
そう伝えると、葛城は目を見開いた。流石にこれは完全に想像外だったようだ。
湯呑みに手を伸ばし、思考を回す。そして、思わずと言ったように呟いた。
「生徒会……? 俺とお前がか? そしてお前が、副会長だと?」
「ああ、そうだ。不服か?」
「……不服ではない。だが、複雑な心境だ。お前も知っているだろうが、俺は以前生徒会に入ろうと足を運んだが、生徒会長に断られている」
そのような話は全く知らなかったが、ここは言わないでおこう。
だが今思い返せば、オレが葛城をスカウトしようと提案した時堀北学はどこか気まずさそうな表情を浮かべていた気がする。
「数時間前、俺とお前は学校ですれ違っていただろう。個人的な相談も兼ねていたが、改めて生徒会に入らせて欲しいと頼んでいた」
「そうだったのか」
「その反応からすると、堀北生徒会長からは何も聞かされていなかったみたいだな」
オレが頷くと、葛城はさらに続けて言った。
「小学校に中学校と、俺はこれまで学校の重要な委員会や生徒会に所属してきた。この学校でもそうしようと思ったのだが、堀北生徒会長に断られてしまった」
「ならどうして、もう一度生徒会に入らせて欲しいと頼んだんだ。堀北生徒会長の性格なら、一度決めた事は変えないと思うが」
「それは俺も思っていた。だが、俺と同じ境遇だった一之瀬が生徒会に入ったと聞いてな。無所属の場合、四月から六月末の間か十月の生徒会との面接で合格をする必要がある。俺と一之瀬はそれが出来なかったが、期間外なのにも関わらず一之瀬が入ったと聞いた。一之瀬に確認したら、彼女を気に入った南雲が堀北生徒会長に直談判をしたそうだ」
気になる点はあるが、一旦置いておこう。話を聞いた葛城は一縷の望みをかけて先程再度生徒会に突撃したが、生徒会長の回答は変わらず撃沈したという事か。
それなら確かに気まずいな。
「だがそれも、状況は変わった。堀北生徒会長はあんたを迎え入れてくれるだろう。実際、反対もされなかったからな。多分、何らかの理由があったんだ。また今度聞けば良いさ」
「……そうだな。だが綾小路、もし堀北生徒会長が俺の能力不足を理由に断っていたのなら、俺は生徒会に入らない。もちろん、『南雲降ろし』には協力するがな」
「そうか、分かった。その時はあんたの意思を尊重する」
とはいえ、葛城の心配は杞憂だと思うがな。
「堀北生徒会長には、オレから話を通しておく。恐らく一度顔を合わせて話をする機会があると思うから、そのつもりでいてくれ」
「分かった。分かり次第連絡してくれ」
オレは葛城と連絡先を互いに交換する。久し振りに電話帳が埋まり、少し嬉しい。
それからオレたちは軽く雑談を交わした。話してみると、葛城とは思いの外話が合った。
「──そう言えば、さっき個人的な相談があると言っていたな。それは解決出来たのか?」
ふと思い出した事を振ってみると、葛城は渋い表情を浮かべた。
「……いや、まだだ。だが、良いのだ。これは入学前、校則の確認を疎かにした俺の責任だ」
「……? どういう事だ?」
再度尋ねても、葛城は中々口を割らなかった。オレは打算抜きで言う。
「何か力になれるかもしれない。あんたさえ良ければ、話だけでも聞かせて欲しい」
そう追及すると、葛城は逡巡の末口を開けるのだった。彼の口から出される悩みはとても深刻なものだった。
話を全て聞いたオレは、「なるほど」と相槌を打つ。
「オレ一人なら難しいが、あと一人居れば何とかなりそうだ」
「……何? それは本当か?」
オレは自信を持って深く頷くと、携帯端末を操作する。そして強力な助っ人に、今から来れるかと連絡するのだった。
読書の皆さんが思う、一学期の間に最も実力を示したDクラスの生徒は?
-
綾小路清隆
-
堀北鈴音
-
平田洋介
-
櫛田桔梗
-
須藤健
-
松下千秋
-
王美雨
-
池寛治
-
山内春樹
-
高円寺六助
-
軽井沢恵
-
佐倉愛里
-
上記以外の生徒