轟音と共に、惑星タワスⅣサオルジャン大陸のヘルツォーク城宙港施設離着床に、長球型あるいは球型の降下船が次々に着陸する。更にそれに隣接した滑走路には、航空機型の降下船がこれもまた次々に着陸した。混成傭兵連隊『SOTS』が、本拠地であるこの惑星に帰還してきたのである。
着陸直後、司令執務室にジャスティン大尉のコーヒーをたかりに来たアンドリュー准尉とエリーザ准尉が、マグカップ片手に船窓から外を眺めつつ
「いやー、やっぱり帰って来る
「そうねー。休暇は出るのかな。首都行って、食べ歩きしたいなー」
「お前たち、まだ身体検査済んでないだろう。ちゃんと船医のアッカースン先生のところ行って、検査受けろよ? エリーザ准尉はこないだ滅茶苦茶に時間に遅れて、仕方なしに順番飛ばされて、キャスリン曹長に泣きついただろ」
「ヴ……」
キースの台詞に、エリーザ准尉は硬直する。キャスリン曹長はエリーザ准尉の郎党であり、超一流の軍医でもある。ディファイアント号には専任の船医であるブラッドフォード・アッカースン医師が居るが、実のところキャスリン曹長の方が腕前は上だったりするのだ。だがキャスリン曹長は同時に超一流の整備兵でもあり、戦闘直後や着陸直後は泣くほど忙しいのである。
つまりはそんなクソ忙しいときに、いかに自分の
「やれやれ、しょうがないですねえ。順番の時間に遅れちゃダメですよ2人とも」
「わ、わかったよマテュー大尉。って言うかなんで俺まで、まるごと
「そういうマテュー大尉は? 隊長やジャスティン副官の順番は、色々忙しそうだから後の方だってのは知ってるけど」
「わたしは今からですね。ちょうどコーヒーも飲み終わった事ですし、それでは退出許可願います隊長」
「うむ、退出を許可する」
マテュー大尉とキースは、敬礼と答礼で挨拶を交わす。そしてマテュー大尉は司令執務室を出て行った。ジャスティン大尉が、マテュー大尉の使っていたマグカップを片付ける。
「じゃ、俺も行くわ隊長。退出許可、願います」
「あたしもー。退出許可願います」
「うむ、2人とも退出を許可する。……ほんとに遅れるなよ?」
こちらも敬礼と答礼で、アンドリュー准尉とエリーザ准尉は司令執務室を出て行った。ふとキースが見遣ると、ジャスティン大尉の目線が2人の後を追って、今まさに閉じたドアに注がれている。いや、ジャスティン大尉の視線が追っていたのは、明らかにエリーザ准尉だった。
(……これは、下手に突っつかない方がいいかな?)
キースはエリーザ准尉がときどきジャスティン大尉を挑発しているらしい事に気づいていた。挑発と言っても、悪意あって
ただエリーザ准尉は少々いたずら好きで、なおかつその手の冗談を好いている。その事もあり、彼女が本気なのかどうか、キースにはいまひとつ確証が持てなかった。それにエリーザ准尉は現時点で21歳、ジャスティン大尉は必要性や能力から昇進が早かったが18歳だ。
(それは無いだろと言うほどでは無いが、ちょっとジャスティン大尉側が若すぎるかもな。ジャスティン大尉の方でもエリーザ准尉の行動に戸惑ってるんだろ。エリーザ准尉が本気でジャスティン大尉を想ってるなら、応援するにやぶさかじゃ無いんだけどな)
まあ、キースは他人の事は言えない。彼もまた、イヴリン曹長から恋慕の情を寄せられている事は、まあ間違いが無かった。ただキースは自身でも認めているが、そう言った方向性、自分自身がからんだ恋愛関係の感情にはかなり鈍い。何せ前世も含めて○○年ばかり、女性には縁遠かったのだ。
そう言ったわけで彼はイヴリン曹長に対し、どの様な態度で
そんな事もあって、キースは今のところイヴリン曹長に対し、師匠であり兄であると言う様な立ち位置を崩せないでいる。だが彼は、何時までもこのままではいけないのでは、とも思っていた。
*
まあキース個人の悩みとは別に、タワスⅣに帰って来たからには伯爵としての仕事が待っている。それに加え、『SOTS』部隊司令としての仕事も放って置くわけにもいかない。3028年8月1日、キースは惑星首都ワロキエ市のホテルのホールを借りて、盛大なパーティーを開いていた。
パーティーの名目は、1つ目はサオルジャン伯爵にしてテナール男爵であるキース、ヴィオネ男爵であるヒューバート少佐、ジロ女男爵であるアーリン少佐と、そして『SOTS』のタワスⅣ帰還を祝うものである。2つ目は、これまで惑星を護っていた恒星連邦駐屯軍『ゲージ螺旋槍隊』の送別の宴だ。『ゲージ螺旋槍隊』は任期切れで、次の任地へ向かう事になっている。
パーティーの3つ目の名目は、『ゲージ螺旋槍隊』の代わりに送り込まれてきた『烈火の嵐(SEF)』『金剛石の輝(BOD)』『ティッチマーシュ閃光小隊』の3個傭兵小隊の歓迎会である。ちなみに今まさに、それら傭兵小隊の指揮官たちがキースの前で挨拶をしているところだった。
「『烈火の嵐』小隊、略称『SEF』の部隊指揮官にして、3個傭兵小隊を中隊として指揮するにあたり、恒星連邦より大尉待遇を命じられたエドマンド・グリーンハルジュ中尉であります!」
「自分は『金剛石の輝』小隊、略称『BOD』の指揮官、ヒューゴー・メイスフィールド中尉であります!」
「『ティッチマーシュ閃光小隊』指揮官の、ハミルトン・ティッチマーシュ中尉! キース卿サオルジャン伯爵閣下にお目もじ叶いまして、光栄です!」
3小隊の指揮官たちは、キースの威に飲まれてかなり緊張気味だ。いや、キースとしては普段通りにしているだけで、威圧しようと言うつもりはまったく無いのだが。
「うむ、わたしと『SOTS』はしょっちゅう恒星連邦からの依頼で出征し、惑星タワスⅣを空ける事になる。惑星の護りの
うん、ほんとうに頼むぞ、と心の中で思いながら、キースは3人と握手をする。敬礼と答礼をもって挨拶を終えると、3人の指揮官たちは今度はヒューバート少佐とアーリン少佐に挨拶するため、その場を辞去して行った。
とりあえず一通りの人物がキースのところに挨拶に来て、ようやく一息吐いたキースはパーティー会場を見回す。と、パーティー開始直後に挨拶に来ていた『ゲージ螺旋槍隊』の部隊司令、ジュリエット・ゲージ大尉が目についた。彼女はキースの他にも色々と挨拶回りに行かねばならず、かなり疲れている様子である。
キースはゲージ大尉を放って置くのが親切だろうと、他所へ行こうとするが、その直前に彼女と目が合ってしまった。知らん顔をするわけにもいかない。キースはゲージ大尉に話しかける。
「ゲージ大尉、これまでタワスⅣを護ってくれて、ほんとうにご苦労だった。心より感謝する」
「! は、伯爵閣下! いえ、自分たちは任務を果たしただけですので!」
「それでも、だ。我々の
「……ありがとうございます!」
まあ実のところ、恒星連邦の比較的内側、南十字星境界域の端にあるタワスⅣに侵攻してくる様な敵は、そうそう存在しない。『ゲージ螺旋槍隊』にとっては今回のタワスⅣ駐屯任務は、半ばこれまでの忠勤に対するボーナスの様な物だったはずだ。
実際『ゲージ螺旋槍隊』の仕事は、惑星軍と肩を並べての災害救助や犯罪摘発などが主だった物であった。彼らにはいい骨休めになったはずだ。
「ゲージ大尉、貴官らの次の任務は何処に……。ああ、いや。守秘義務があるのだよな。言わなくてもいい。だが、貴官らの更なる活躍を祈っている」
「ありがとうございます。いえ、まあ詳細な場所はお教えするわけにはまいりませんが……。次の任地で本来の恒星連邦駐屯軍が一時的に引き抜かれ、別惑星への増援に駆り出されたので、急遽代理で送り込まれる事になったのですけれど」
(……それ、どこかで聞いた話だな)
どこかで聞いた話も何も、それは『SOTS』が小隊規模であった頃に、惑星ドリステラⅢの恒星連邦駐屯軍の一部として送り込まれた時の事情そのものであった。キースは一瞬、懐かしさに目を細める。かつて先達であり当時大尉待遇として駐屯軍司令官であった、アルバート中尉の姿が脳裏に思い出された。
「そうか……。そこの駐屯軍が引き抜かれた事ぐらい、敵対している継承王家の
「……はっ! ご忠告、ありがたく!」
そしてキースとゲージ大尉は、敬礼と答礼をもって別れた。
*
キースは自分の直卒小隊を引き連れて、サオルジャン大陸内ではあるがヘルツォーク城からはかなり離れた位置にある、ヴィアンデン城まで出向いて来た。ヴィアンデン城はこれまで恒星連邦駐屯軍であった『ゲージ螺旋槍隊』が駐屯していた場所であり、これからは『SEF』『BOD』『ティッチマーシュ閃光小隊』の3個小隊が駐屯する場所になる。
キースが何故にここまで出向いて来たかと言うと、本日このとき惑星タワスⅣを撤退する、『ゲージ螺旋槍隊』の見送りに来たのだ。ヴィアンデン城の宙港施設の滑走路に降りたレパード級ヴァリアント号よりキース直卒小隊4機の強襲級メックが降りる。
彼らのメックは、これより駐屯軍となる『SEF』『BOD』『ティッチマーシュ閃光小隊』のメックが並んだ隣に整列した。駐屯軍メックが敬礼を送って来る。キースらのメックも、見事な答礼を返した。
やがて滑走路に、『ゲージ螺旋槍隊』の3隻のレパード級降下船がタキシングしてくる。キースは号令をかけた。
「総員、『ゲージ螺旋槍隊』に敬礼!……礼砲、撃て!」
全メックから、空砲あるいはレーザー、
(『SOTS』がこの惑星に居るのに、『ゲージ螺旋槍隊』の代理の部隊をかき集めて即座に送り込んで来たって事は……。やはり『SOTS』には引き続き、かなり近い時期に新たな任務が割り振られるって事なんだろうな。
いったい何処になるのかね? 今この時点で知らされていないって事は、第4次継承権戦争ラット作戦でカペラ大連邦国攻撃に参加するってのは、無いな。となると、ドラコ境界域か……)
蒼空に、レパード級3隻の噴射炎が遠く消えていく。キースは次なる戦いに思いを馳せた。
*
あくる8月3日の事である。ヘルツォーク城の司令執務室は、いつになく緊張した空気に包まれていた。そこではアンドリュー准尉、エリーザ准尉、イヴリン曹長、ネイサン曹長、エルンスト曹長が直立不動の姿勢で立っている。キースの声が響いた。
「アンドリュー・ホーエンハイム准尉。貴様は先日の士官任用試験に、優秀な成績で合格した。おめでとう。これより貴官を少尉に任じる。連隊副官ジャスティン大尉より、辞令と新しい階級章を受け取りたまえ」
「謹んで拝命します!」
そう、今回彼らが司令執務室に呼び出されていたのは、昇進の通達であったのだ。アンドリュー少尉に続き、エリーザ准尉の順番が来る。
「エリーザ・ファーバー准尉。貴様は先日の士官任用試験に、見事合格した。おめでとう。貴官を少尉に任じる。ジャスティン大尉、彼女に辞令と階級章を」
「はっ!」
「謹んで拝命しますっ!」
キースは頷く。これで彼ら2名の郎党である、アイラ曹長やキャスリン曹長を遠慮なしに昇進させられると言うものだ。とりあえずは2人を准尉に、そしてアンドリュー少尉やエリーザ少尉が中尉になったら、郎党の2人にも士官任用試験を勧め、少尉になってもらうつもりだ。アイラ曹長はともかく、キャスリン曹長は少なくとも少尉か中尉にならないと、軍医のリーダーとしての立ち位置が少々難しい。
そしてキースは、並んでいるメック戦士の中で最後の1人、イヴリン曹長へと目を向けた。彼は
「イヴリン・イェーガー曹長。貴様は士官任用試験に、非常に優秀な成績で合格した。うむ、おめでとう。貴様を教えた俺も、鼻が高いと言うものだ。……貴官を少尉に任じる。貴官はこれより、サラ中尉待遇少尉の元で小隊指揮について色々と学べ。そして何時かは火力小隊を……『機兵狩人小隊』を見事率いてみせろ」
「はっ! 謹んで、拝命いたします!」
「うむ。ジャスティン大尉、辞令と階級章を渡してやってくれ」
「はっ!」
キースはしみじみとした物を感じる。イヴリン少尉は、未だ14歳だ。12歳でキースと出会い、メック戦士訓練生になったのがつい先日の事の様な気がする。
(ちょっと早すぎる気もするが……。メック戦士の家系の人間としては、仕方ないところもあるんだよなあ……。可能ならば、もう少しただの子供としての時間を与えてやりたかった気もするんだが……。いや、それが無理だと言うのは分かっているが)
キースは一瞬目を瞑ると、ネイサン曹長に顔を向ける。
「ネイサン・ノーランド曹長。貴様は先日の士官任用試験に見事合格した。おめでとう。これより貴官を少尉に任じ、現在の偵察兵小隊暫定小隊長エルンスト少尉待遇曹長の希望もあって、貴官を偵察兵小隊の小隊長に任命する。ジャスティン大尉から辞令と階級章を受け取るように」
「はっ!謹んで拝命します!」
「そしてエルンスト・デルブリュック曹長。これより貴様を准尉に昇進させ、偵察兵小隊の副隊長に任命する。ネイサン小隊長を補佐し、これからも部隊に貢献してくれ。ジャスティン大尉から、辞令と新しい階級章を受け取れ」
「了解です。謹んで拝命いたします」
「以上だ。解散してくれ」
「「「「「はっ!」」」」」
アンドリュー、エリーザ、イヴリン、ネイサンの各新任少尉とエルンスト准尉は、キースに敬礼を送る。キースも答礼で返すと、昇進した面々は司令執務室を退室して行った。
「ふう……。第一陣は終わりか」
「は。では次に昇進する面々を呼ぶ前に、コーヒーでもいかがですか?」
「うむ、貰おうか」
キースは頷く。今回昇進するのは、先ほどまで居た面々だけでは無い。他にもまだまだ昇進する連中は多いのだ。キースの仕事はまだまだ終わらない。
まあ大半はジーン少佐、ヒューバート少佐、アーリン少佐などの直接の上司に任せておいてもかまわない。だが今の面々の様に、昔馴染みの者たちや直接の部下、そして少なくとも尉官の者たちにはキースが声をかけてやる事にしていたのだ。
*
この日キースはイヴリン少尉と共に、ヘルツォーク城の城壁内周を軽く流してランニングしていた。いや、軽く流して5周と言うのは、この2人の体力はどうなっているのかとアンドリュー少尉やエリーザ少尉、エドウィン曹長にエルフリーデ曹長あたりが唖然とするところではあるのだが。
2人はクールダウンのストレッチを終えると、シャワーを浴びるべく城の本部棟に向かう。そしてとある曲がり角を曲がった時の事だった。
「……っと」
「!?」
2人は急ぎ回れ右をして、曲がり角の陰に引っ込む。そしてちょっと遠回りをして本部棟へと向かった。いや、何があったかと言うと、曲がり角の先で2人の男女が熱烈な口づけを交わしていたのである。まあキースは気配でその2人が居る事には気づいていたが、何をしているかまでは分からなかったのだ。
「むう、ケネス大尉とドロテア准尉か……。ふむ、ドロテア准尉の数年越しの気持ちは、きちんと実った模様だな」
「あ、キース大佐はあのお二人の事、と言いますかドロテア准尉のお気持ち、知っておいででしたか」
「ん? うむ。彼らが『SOTS』に加わった時、ドロテア准尉がケネス大尉に……当時はまだ入隊直前で階級とか無かったが、そのときにドロテア准尉がケネス大尉に、せつなげなと言うか、熱烈なと言うか、そんな視線を送っていたもんでな。
その手の事にニブい俺にすら分かるほどだったんだが、ケネス大尉は気づいていたのか、いなかったのか……。まあ、安心した。『
そう言いながら2人が歩いていると、今度は真正面からアンドリュー少尉とアイラ准尉が腕を組みながら歩いてくるのを発見する。まあ2人が付き合っているのは、部隊の皆が知っている。彼らの側でも今更ながら恥ずかしがるほどでも無いが、キースはアンドリュー少尉の直属の上司だ。
アンドリュー少尉とアイラ准尉はちょっとばかり名残惜しそうに腕を離すと、キースに敬礼をして来る。キースとイヴリン少尉もまた、答礼を返した。
「よお隊長、ランニングか?」
「ああ。今終わったところだ。お前らはこれからデートか? たしか2人とも有休の申請出てたな」
「おう、ちょっと首都まで行って来る」
「気をつけてな。まあ、お前らの戦闘技能だったら襲ってくるやつらの方を可哀想に思わねばならんが……。襲われても、相手にもよるが普通の不良なんかだったら、下手に殺すなよ?」
「難しい注文だよなー」
笑いながらアンドリュー少尉とアイラ准尉は再度の敬礼と答礼をもって、その場を辞去する。残されたキースとイヴリン少尉は、溜息を吐いた。
「ふう……。こうも連続して見せつけられるとはな。さっさと答えを出せと言う事か?」
「え?」
「ああ、いや気にするな。本部棟へ急ごう。さっさとシャワーを浴びねば、仕事が待っている」
「は、はい!」
そしてキースは歩きながら考える。
(……やっぱりサイモン爺さんが一番いいかな。エリーザ少尉と違って、ちゃんと茶化さずに相談に乗ってくれるだろ。近いうちにイヴリン少尉の気持ちとか、彼女との関係をどうしたものかとか、サイモン爺さんの意見を聞いてみよう。
問題は……。サイモン爺さんも俺も、むっちゃ忙しくて中々時間が取れない事か……)
キースは歩きながら大きく、大きく溜息を吐く。その様子を、イヴリン少尉が心配そうに見つめていた。
*
ヘルツォーク城の司令執務室には、キースとジャスティン大尉の他、相談役にしてキースの惑星不在時には代官のクリスティアン・ウォーターハウス氏、そして恒星連邦との連絡将校であるリアム・オールドリッチ大尉が集まっていた。リアム大尉が
「伯爵閣下。近いうちに、中心領域では大規模な混乱が起きる可能性があります」
(……いや、そりゃ起きるだろう。今月の20日に第4次継承権戦争が始まるんだし。……まあリアム大尉と傭兵関係局の立場としては、直接言うわけにもいかんだろう。可能な限り婉曲表現で話してくれたと見るべきか)
「おそらく、いえ間違いなくクリタ家は、恒星連邦のドラコ境界域に攻撃を仕掛けて来るでしょう。それに備え恒星連邦の傭兵関係局では、航宙艦と降下船を擁し星系間移動力に長じた連隊である『SOTS』を、惑星ニューイヴァーセンへ駐留させたく考えています。
ニューイヴァーセンからであれば、その周辺の星系に対し1ジャンプから3ジャンプ程度で至急戦力派遣が叶います。いざ事が起こった時に、すぐに『SOTS』を使える様にしておきたいのです。
経費は月毎に支払いし、戦闘報酬は別計算で。最終的な報酬は、領地の加増などになる予定ですな」
キースはリアム大尉に頷く。
「了解した。ただそうなると、かなりの長期に渡ってわたしはタワスⅣを留守にしなければならないな。クリスティアン、その間かなり大変だとは思うが、任せても大丈夫だな?」
「お任せを。方針としては?」
「リアム大尉の言葉では、中心領域全域を巻き込むような混乱が起きると『上』は見ている様だ。そうだな、リアム大尉?」
リアム大尉は、キースの言葉に頷きを返した。
「はっ。そう考えていただければ間違いは無いかと」
「ではクリスティアン。わたしが留守の間は、出来得る限り星系外には頼らずに、タワス星系内部で流通が完結できる様な経済を重視してくれ。おそらくそれほどの混乱となると、軍事に使うために航宙艦の数が足りなくなるのは、目に見えている」
「なるほど……。やむを得ない物以外は星系内で物資を調達し、輸出もできるだけ削減するのですな? 混乱が長引かない事を祈らざるを得ませんなあ……」
キース、クリスティアン氏、リアム大尉はその後も色々と話し合った。まあリアム大尉は第4次継承権戦争における恒星連邦の戦争計画については漏らさなかったが。
そして『SOTS』の次の出征が決定する。行く先は、恒星連邦ドラコ境界域惑星ニューイヴァーセン。『SOTS』はそこを拠点として第4次継承権戦争を戦う事になるのだ。
続編、投稿いたしました。『SOTS』の次の任地は、ドラコ境界域の惑星ニューイヴァーセンです。ただしそこを護るわけではなく、そこを拠点にして緊急事態に備え、あちこちに飛ばされる事になりますね。けっこうな激務になりそうな……。
そしてキース、個人的にも悩み事が。けれど公務がとんでもなく忙しいので、それに対処するための時間ががが。どうしたもんでしょうな。