鋼鉄の魂   作:雑草弁士

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『プロローグ-2 幼少期』

 キースは7歳になっていた。彼は今、傭兵部隊『BMCOS』と共に、惑星ニューアヴァロンへとやって来ていた。この時代、傭兵部隊の家族が傭兵部隊と行動を共にすることは当たり前なのである。彼の身体は、7歳とは思えないほど大柄であった。まあ、それでもまだまだ子供であるのだが。

 今、キースは大きなお屋敷へとやって来ていた。父親であるウォルトと、母親であるニコラに連れられて来たのだ。傭兵大隊『BMCOS』の第3中隊中隊長であるウォルトは、バトルメックの操縦者たるメック戦士としては例外的に、非常に顔の広い人物であった。彼はそれを活かして、所属する部隊のために色々と恒星連邦上層部などへの働きかけを行っていたのである。そして今日この屋敷に来たのは、この屋敷の主ベネット・バートンという人物に家族を会わせるという名目で、仕事の話をしに来たのだ。

 応接間に通されてさほど待たないうちに、ベネット氏は顔を見せた。

 

「やあウォルト!元気そうだね!」

「ベネットさんも、お変わりなく。」

 

 ウォルトとベネット氏はにこやかに挨拶すると、握手をする。ベネット氏は、ニコラとキースの方に顔を向けた。

 

「奥方も、相変わらずお美しいですな。それにそちらのお子さんは初めてだね?こんにちは、坊や。」

「こんにちは、ベネットさん。」

「こんにちは、ベネットさん。僕はキースと言います。よろしくお願いします。」

「ははは、よろしく。」

 

 一通りの挨拶が終わると、ウォルトとベネット氏は色々と難しい話を始めた。キースは黙ったまま、その話を聞いている。しばらくして、ふとベネット氏が不思議そうな顔になった。

 

「……キース君は、おとなしいね?退屈じゃあないかね?」

「いえ、お気づかいなくお願いします。僕は大丈夫です。それに父さ……父の跡継ぎとして、こう言う場にも慣れておかないといけないって、そう思って、いえ思いまして。」

「ほう……。凄いねウォルト、君の跡継ぎは。」

「いや、もう少しわがままを言ってくれても良いと思うのですがね。ちょっと良い子すぎるところがありまして。」

 

 ウォルトは苦笑する。ニコラもキースを挟んだ反対側で、似たような表情を作る。ベネット氏は微笑むと、キースに向かって口を開いた。

 

「キース君。もしよかったら、うちの子と遊んであげてくれないかね。いや、何と言うか……少し引っ込み思案でね。友達がいないのだよ。ちょっとわがままな所もあるのだが……。そういう所を直させないと、とも思うしね。」

「……はい、わかりました。父さん母さん、いいかな?」

「ああ、行っておいで。」

「行ってらっしゃい。」

 

 ベネット氏はハンドベルを鳴らす。執事がすぐにやって来た。

 

「ああ、ロベール。この子をジョナスのところに案内してやってくれ。ジョナスと遊んでくれるそうだ。」

「はい。ええと……。」

「キースです。」

「はい。ではキース様、こちらへいらしてください。」

 

 キースは執事のロベールに連れられて、子供部屋へ案内される。執事はドアをノックした。

 

「ジョナス様、いらっしゃいますか?お客人のお子さんがいらしてます。お父上から、ご一緒に遊ぶようとのことでございます。」

「………………どうぞ。」

 

 ロベールの台詞からしばらく待ってから、か細い蚊の鳴くような返事があった。キースは思う。

 

(……こりゃ、もしかしたら大変かも知れないぞ。)

 

 ロベールがドアを開ける。中にいたのは先ほど出した声と印象が変わらない、今にも消えてしまいそうな細身の少年だった。

 キースは声をかける。

 

「こんにちは、僕はキース・ハワード。君のお父さんの知人の、メック戦士ウォルト・ハワード大尉の息子なんだ。君は?」

「……。」

 

 少年はうつむいてしまう。ロベールが口を挟もうとした。

 

「キース様、この方は……。」

「……。」

 

 キースはロベールに向かって、首を鋭く左右に振った。ロベールは言葉に詰まる。キースは屈み込んで、うつむいている少年と視線を合わせようとする。キースは7歳にしては身体がかなり大きかった。3~4歳は少なくとも鯖を読んでいる様にも思われる。その彼が屈み込むと、灰色熊か何かの子供が丸まっている様な印象を受けた。

 少年はなおも沈黙する。キースはじっと待った。やがて少年は根負けしたのか、小さく口を開く。

 

「……ジョナス。ジョナス・バートン。」

「よろしく!ジョナス!」

 

 キースはにっこりと微笑んだ。その傍らで、ロベールが驚いたような、感心したような顔をしていた。

 

 

 

 キースと少年……ジョナスは、チェスで対局していた。このチェス盤と駒は、キースが持ち歩いていた、携帯用の物である。ジョナスの部屋には遊び道具の類がほとんど無かった。唯一ジョナスの遊具と言えるものは、スケッチブックと色鉛筆のセットぐらいである。あとは勉強のための教科書やら参考書やらは豊富であった。

 黒のポーンが敵陣に斬り込み、ナイトにプロモーションして白のキングを追い詰めた。キースは呟く。

 

「チェックメイト。」

「…………強い、ね。」

「まあ……。練習してるからね。戦術的思考の訓練にもなるし。将来は強いメック戦士にならなくちゃ、いけないからね。」

「…………そっかあ。僕は……このままなら良くてコムスター送り、かな。」

 

 儚げに笑うジョナスに、キースは一瞬笑みがこわばりそうになった。コムスターと言うのは、中心領域のまさに中心、地球を根城にしている結社である。元は星間通信ネットワークの組織であり、今まで3度に渡る継承権戦争で荒廃し科学技術の衰退したこの世界において、超光速通信技術をはじめとする高度な科学技術を自分たちだけで秘匿して維持している集団だ。彼らは中心領域の星系間の超光速通信を一手に握っており、彼ら無くして星間文明の維持はできないだろう。ちなみに彼らは独自の紙幣、C(コムスター)ビルさえも発行しているほどの権力を持っている。

 もっとも彼ら自身も、この衰退し荒廃した世界で、科学技術を「信仰」する、異様な宗教的組織と成り果ててしまっているのだ。そしてコムスターは、中世の宗教組織がそうであったように、この中心領域の王族貴族メック戦士階級から、僧侶になる人材を登用している。家や財産、バトルメックを継げない次男3男次女3女と言った、継承順位の低い者たちの行き場所となっているのだ。

 そしてキースの笑みがこわばりそうになった理由は、もう1つある。コムスターは実は世界征服をたくらんでいるのだ……それも本気で。

 このバトルテック世界は、星間連盟が崩壊した後に、5つの王家が相争い、いわゆる継承権戦争という戦いを引き起こした。どの王家も、自分たちこそが星間連盟の後継者に相応しい、と言っている。そして引き起こされた戦争により、文明は荒廃し後退し衰退し、今では中心領域の大半の星で、20世紀程度の技術文明しか維持できていないのである。そう、バトルメック、気圏戦闘機、降下船や航宙艦と言った宇宙船などは、既にオーバーテクノロジーなのだ。いや、ロストテクノロジー、遺失技術と言った方が良いだろう。

 そしてコムスターは……少なくともそのトップに近しい者は、高度な科学技術を秘匿し、更に中心領域の科学文明が衰退したときを見計らい、人類の救済者として歴史上に姿を現すつもりなのである。そのとき、彼らの持つ遺失技術に人類はひれ伏すしか無いであろう。

 キースには前世の記憶により、バトルテック世界の誰も知らないような情報を多数保有している。たとえば将来、3022年に恒星連邦ダヴィオン家と、ライラ共和国シュタイナー家は秘密協定を結ぶ、などの情報がある。このことは、今現在3016年現在では誰も思いつきもしないし、キースが話したとしても誰も相手にもしないだろう。コムスターに関する情報も、その類だ。3067年にコムスターの一派である『ワード・オブ・ブレイク(WOB)』が、凄惨なテロ活動を繰り広げることなども、夢物語としか思われないだろう。

 まあそんなわけで、キースはジョナスの台詞にあやうく顔をこわばらせるところだったのだ。

 

「……そっかあ。でも、コムスターで僧侶になっても、まあ悪いことばかりじゃないよ。きっと。」

「…………うん。」

 

 キースはおもむろに立ち上がった。と、そのときである。彼の服の袖が、机の上に置かれた教科書や参考書の山に引っ掛かったのだ。ばらばらと本が床にばらまかれる。

 

「あ、しまった!……ん!?」

「あ……。」

 

 床にばらまかれた本が、ちょうど開いた状態になっている。そのページを見たキースは、今度こそ顔をこわばらせた。

 

『死ね。』

『卑しい生まれのクソ虫。』

『犬畜生。』

 

 そこには大量の悪口雑言が、目立つ色のマーカーで乱雑に書き込まれていた。悪口雑言は、何のひねりも無い単純な物ばかりだ。おそらくは子供の書いたものだろう。ジョナスの持ち物に書かれているということは、これはジョナスの書いたものであるわけがない。

 

「これは……。」

「……。」

 

 ふとキースは、ジョナスが袖口を押さえているのに気付く。まるで袖の中身を見せたくないかの様だ。キースは直感する。

 間違いない。ジョナスは誰かから、いじめや虐待を受けている。

 突然ジョナスが走り出す。ばん、と子供部屋のドアを開けて、キースから逃走する。キースは後を追った。だがジョナスに取っては勝手知ったる自分の家だ。キースの能力がどれだけ高かろうと、逃げることに不自由はしない。

 

「くそ、撒かれた。……ん?」

 

 その時、キースの「第六感」に引っ掛かる物があった。これはあの薄明の空間にて修得した、生得能力の1つであり、勘が鋭くなる便利な能力である。彼はその勘に従って、廊下を走った。やがて彼は、裏庭に辿り着く。が、そこで彼は物陰に身を隠した。

 そこではジョナスが、3人のもう少し年かさの少年少女たちに取り囲まれていた。

 

「あ……。あ……。か、帰ってきてたんで、すか、姉さん兄さん……。」

「あー!?誰が兄さんだよ!マリオさまって呼べよ!」

「俺はマイルズさま、だ!さま付けを忘れんな!」

「私はアデライドさまよ!まったく犬畜生はしょうがないわね。卑しい生まれだけはあるわ。お仕置きが必要なようね!マリオ!マイルズ!押さえつけなさい!」

 

 ジョナスは抵抗もせずに押さえつけられる。アデライドと名乗った女の子が、棒切れを振り上げてジョナスを打とうとする。

 キースは全力で走り出した。

 

ガンッ!

 

「な、なによアンタ!なんのつもりよ!」

「……。」

 

 キースはアデライドの棒切れを、頭で受けた。裂傷が走り、血が派手に吹き出す。だが出血が派手なだけで、ダメージはそれほどではない。キースは流れる血をぬぐいもせずに、ぎろりとマリオ、マイルズと言う悪ガキどもを睨めつける。悪ガキどもは、ひっと息を飲むとジョナスから手を放し、後ずさった。ジョナスは呆然としたまま、立ち尽くしている。

 キースは再びアデライドへ顔を向ける。その表情は悪鬼羅刹の様だ。アデライドは腰が引けている。彼女は手に持った木の棒で、何度もキースを打った。だがどの一撃も腰が入っていない。大したダメージにはなっていないのだ。

 

「ひ……。な、なによ、なんなのよアンタ!この……!」

「何をしているっ!!」

 

 そのとき、大音響の叫び声が全員の耳を打った。そこにはベネット氏とウォルト、ニコラ夫妻が立っていた。アデライドは声がした瞬間、反射的に棒切れを捨てていた。彼女は下手な言い訳を試みる。

 

「こ、これはジョナスが……。そう、ジョナスがやったのよ!突然その子に襲い掛かって!そうよね、マリオ、マイルズ!」

「あ、ああそうです父さん!」

「ジョナスがやったんだ!」

 

 キースは冷静な声でそれを否定する。

 

「僕はそこの彼女、アデライドとか言いましたか?彼女が何もしていないジョナスをそこの棒で打とうとしていたので、割って入って代わりに僕が打たれただけです。

 そこのマリオ、マイルズと言われている子たちは、その間ジョナスを押さえつけていました。」

「で、でたらめを言わないで!」

「そうだ、そうだ!」

「お前もジョナスの仲間なんだろ!」

 

 彼らの主張では、ジョナスがキースを襲ったということになっている。にもかかわらず、キースがジョナスの仲間だと言う。論理が破たんしていることに気付いていない。

 しばし黙って聞いていたベネット氏は、沈痛な表情でジョナスに尋ねる。

 

「ジョナス、何があったんだい?正直に話しておくれ?」

「…………。」

 

 アデライド、マリオ、マイルズは、わかってるんだろうな、とでも言いたげな様子でジョナスを威圧している。ジョナスは口を開こうとした。

 

「あ……僕……。」

「ジョナス。」

 

 そのとき、キースが割って入る。彼のところにニコラが来て、傷の手当てをしようとした。だがキースはそれを手で制する。

 

「ジョナス。その袖口をまくって見せてくれ。」

「「「「!?」」」」

 

 ジョナスだけでなく、アデライド、マリオ、マイルズもぎょっとする。

 

「や、やめろ!」

「そうだ、そんなこと今関係ないだろ!」

「やめなさい犬……ジョナス!」

 

 だがキースはジョナスに向かい合う。頭から派手に血を流したままで。

 

「ジョナス……。たしかに君が彼らに気を遣っていることは何となくわかるよ。だけどもうダメだ。彼らを切り捨てるんだ。」

「……キース。」

「痛みが伴うかもしれない。だけど彼らは信用にも信頼にも値しない。切り捨てるべきときが来たんだ。」

 

 真摯なキースの血まみれの視線に、ジョナスは覚悟を決めたかの様に頷いた。ジョナスは袖口をまくり上げる。

 そこにはライターを押し当てたような痕、何かで打たれた赤黒い痕、生々しい傷跡などが所せましと並んでいた。周囲の者たちの口からはうめき声が上がる。更にジョナスは上着とインナーもまくり上げる。あらわになった背中には、同じような無数の傷があった。顔など一見してダメージが残るような場所を狙わないのがいやらしい。

 キースは血まみれのままベネット氏に語る。

 

「ジョナスはあきらかに日常的にこういう扱いを受けてきたと思います。内に閉じこもるのも当然です。わがままだったのは、ジョナスじゃなくそっちの子供たちでしょうし、その嘘のせいでジョナスが誤解されたこともあったんでしょう。」

 

 するとアデライド、マリオ、マイルズが、慌てた口調で一斉にしゃべり始めた。

 

「な、なによ!悪いのはその犬畜生とその母親の売女じゃないの!妾の息子のくせに、あたしたちと姉弟だなんて認められるわけないじゃない!そんなやつ、どうしようが勝手でしょう!?」

「そ、そうだそうだ!そんな卑しい生まれの奴が弟だなんて認めてたまるか!死ね!死んじゃえ!」

「そうだ、そいつが皆悪いんだブギャッ!」

 

 マイルズが吹き飛ぶ。ベネット氏が鉄拳を振るったのだ。アデライドとマリオは信じられないという顔をして呆然としている。ベネット氏はその2人にも鉄拳を見舞った。形ばかりとは言えど彼も現役メック戦士だ。その体力は高い。その容赦ない一撃は、子供たちを吹き飛ばした。

 

「グキュウウッ!」

「ヒギャァッ!」

「……何という馬鹿者なんだ!……いや、子供たちのことが何もわかっていなかった私が、一番馬鹿か?」

 

 肩を落とすベネット氏に、キースは声をかける。

 

「……子供である僕がいう事じゃないんですが、子供ってけっこう狡猾です。こういう事態を隠す事って、悪魔みたいに上手いんですよ。」

「キース……。そろそろニコラの治療を受けなさい。それと父親である私も、本当にお前が7歳なのか自信が無くなってくるね。」

「そうね、でも頭もいいし優しいし、いい子よ?はいキース、ちょっと染みるわよ……って、これ縫わないとだめじゃないの。ゾディアック号に戻ったら、処置室いらっしゃい。次はジョナス君、貴方よ?」

 

 ニコラは子供たちを落ち着かせるように、微笑みながら言う。彼女は傭兵部隊『BMCOS』所属の医務官をやっているのだ。キースの傷に暫定的な手当てをした後、彼女はジョナスの身体の傷跡を調べ始める。

 ベネット氏は、地面に倒れ伏して動けない3人の子供を使用人に運ばせる。彼らはしばらく謹慎することになる。ベネット氏は、ニコラに身を任せているジョナスに尋ねた。

 

「お前の母さんが亡くなったとき、私がお前を無理に実家に連れて来たのは間違いだったか?」

「…………いえ、あのときは嬉しく思いました。でも……あの人たちと仲良くは、もうできません。この家を出て暮らした方がいいと思います。」

「そうか……。たまに会いに行くことはかまわんな?」

 

 頷くジョナスに、ベネット氏は苦く微笑んだ。と、ジョナスが変な顔をした。ベネット氏は尋ねる。

 

「どうしたね?ジョナス。」

「…………いえ。何かとんでもないことを聞いた気が……。ねえキース、君、今いくつ?さっき7歳って聞こえたんだけど、間違いだよね。」

「いや?僕はまだこの間4月頭で7歳になったばかりだよ。背は異様に伸びたけどね。」

 

 ベネット氏とジョナスは目を見開いた。

 

「じょ、ジョナスよりも5つも年下!?」

「…………。」

 

 彼らはしばらく硬直していたと言う。

 

 

 

 そして7年後のことである。キースは復興相成ったメック戦士養成校『ロビンソン戦闘士官学校』に就学中であった。彼とジョナスはあれ以来手紙を出し合い、時には顔を合わせる親友になっていた。実家から離れて暮らす様になってからのジョナスは性格も明るく変わり、眠っていた才能が目覚めたのか政治に対し強力な能力を発揮するようになっている。また戦闘における指揮能力、戦術能力も高く、彼自身が行う戦闘行為そのものではあまり活躍できないが、指揮官型の戦士として部下を率いることには非常に長けている人物になった。

 

「何々、ジョナスからの手紙か……。父が身体を壊したので、僕が後を継ぐことになった。何か僕にできることがあれば、いつでも言ってくれ。7年前の恩義は、未だに1日たりとも忘れたことはない。……か。んー、なんて返事を書いたものかな。おめでとうの言葉は入れた方がいいかな。しかしお父上が身体を壊した結果だしなあ。先に気遣う言葉を入れた方がいいかもな。」

 

 そう、ジョナスは父ベネット・バートンに代わり、家伝のバトルメック他の財産を受け継ぎ、貴族の地位を継承したのである。彼には正妻の子である兄姉たちがいたはずだったのであるが、3年前に正妻諸共に事故死していた。そのため唯一残されたジョナスが、バートン家を継ぐことになったのだ。バートン家は代々恒星連邦政府高官の地位を占めており、ダヴィオン家にすら多少は顔が効く存在である。

 ジョナスの家督相続を知った時、キースはこう思った。

 

(そうか……。これが生得能力で得た「親友」の能力か。ジョナスが「親友」だったとは……。)

 

 生得能力の「親友」とは、高い地位にいる親しい知人がおり、そのため色々と便宜を図ってもらったり情報を教えてもらったりできるという能力である。彼はキャラクター作成の際に、作成ポイントを費やして「親友」を修得していたのだ。

 キースはさらに考えを続ける。

 

(ま、だからと言って、大事な本物の親友だもんな。ゲーム上の無味乾燥な、機械的なNPCの親友じゃあない。あまり無理をかけるのもなー。)

 

 手紙を畳みつつ、彼はそれを仕舞い込んで、今日の訓練メニューを確認するために学生寮の掲示板まで出向いていった。

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