鋼鉄の魂   作:雑草弁士

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『エピソード-007 降下船問題』

『お前の名前と階級、所属は?何処の部隊だ?』

『俺はアキトモ・タナカ軍曹、第4アン・ティン軍団C大隊第3中隊所属だ。バレンチナから遠征してきた。』

『何故この惑星に遠征を?』

『それは知らされていない……。』

 

 ドリステラⅢ駐屯軍基地では、捕虜の尋問が行われていた。尋問官は、エルンスト・デルブリュック曹長……以前キース達がこの惑星に到着した時、迎えのマイクロバスを運転していた男である。ちなみにキースの部下の整備兵、パメラ伍長も尋問に付き添い、その調書を取っていた。パメラ伍長は尋問技術の初歩を学んでおり、補助と勉強の目的で付き添っていたのだ。

 キースとアルバート中尉は、尋問室の隣の部屋――マジックミラーと盗聴器で、尋問室の中の様子がわかる――で尋問室の様子を伺っていた。キースは小さく呟く。

 

「なかなか、しぶとい……。」

「そうだな。けれど時間の問題だよ。エルンスト曹長は尋問のエキスパートだ。」

 

 アルバート中尉の言う通り、アキトモ軍曹は少しずつ態度を変えて行った。

 

『……遠征目的は知らされていないが、整備兵などの技術者、偵察兵、それにバトルメックを持ってないメック戦士養成校出身者の、メック戦士階級の家の3男やら4男やらが数多く、すし詰め状態で乗せられて来たのが気になった。』

『ほう?つまりはメックを継承させてもらえなかった、バトルメック操縦能力を持つ者たちと言うことだな。』

『ああ、その通りだ。』

 

 嫌な予感を覚えたキースは、思わずその懸念を口にする。それはバトルメックや気圏戦闘機、戦車や降下船まで奪われた傭兵大隊『BMCOS』の悪夢が蘇ったからだ。

 

「メックを持たないメック操縦者たちと、偵察兵に整備兵を大量に……。まさか、奴らは我々のバトルメックをそいつらに与えるつもりでは無いでしょうね。」

「いや、それはどうかな……。いやまさか……。」

「しかしやつらがこの惑星に連れて来た大量のメック操縦者にサポートの整備兵、偵察兵。この惑星でバトルメックが手に入るとでも言わんばかりじゃないですか。」

「うん。だが我々のバトルメックが狙いというよりは、この編成……。なんか遺跡発掘隊とでも言いたい編成だね。」

「!!」

 

 尋問室の中では、新たな展開になっていた。

 

『ところでアキトモ・タナカ軍曹。お前はハリー・ヤマシタ、トマス・スターリングのどちらかを知っているかね?』

『……両方知っている。』

 

 アキトモ軍曹が、嫌そうに顰められる。どうやらその人物が嫌いな様だ。

 

『そのハリー・ヤマシタは、最近……つい半年前に新設されたD大隊の大隊長に就任した男だ。嫌な奴さ。そのうちD大隊を拡張して、第13アン・ティン軍団を創設するって噂もある。だが俺は奴がそんな栄光ある地位に相応しい人物だとは思えないね。

 そしてトマス・スターリングはそのハリー・ヤマシタと随分親しい人間だ。元々は外部の傭兵部隊の長をやってた人間が抜擢されて、これも半年前に俺が所属するC大隊の大隊長になったんだ。そんな下賤な輩が気に入る物かよ。……と、あんたらも傭兵部隊だったな。すまん。』

『いや、かまわんさ。』

『……あんたらは、傭兵部隊でもトマス・スターリングとは随分違うな。今、C大隊とD大隊の半分がところは、奴の子飼いか、ハリー・ヤマシタの子飼いが入ってる。脱出したメック戦士を殺せと命じた火力小隊の小隊長も、ハリー・ヤマシタの腹心の1人さ。

 元からC大隊にいた連中は、半分がD大隊に移籍させられた上で場合によっては降格させられて、スターリングかヤマシタの手下の、更にその部下に組み入れられた。C大隊に残った者たちも同じような状況だ。だから今C大隊とD大隊の半数ほどは、面従腹背の奴らが多いよ。それどころか、クリタ家のやり方に疑問を持ってるやつも出て来てる。』

 

 アルバート中尉は、手元の計器に目を落とす。

 

「ふむ、嘘発見器に反応は無いね。本気でトマス・スターリングとハリー・ヤマシタを嫌ってる様だ。」

「すいません、俺たちの私事であるのに尋問内容に組み入れてもらってしまって。」

「かまわんさ。」

 

 尋問室の中では、エルンスト曹長が新たな質問をしていた。ある意味これが最も大事な質問だ。

 

『で、降下船ゾディアック号は今どこにあるのかな?教えてくれないか?』

『……ッ!?なんでその船名を!?ニューアーク号と名乗っていたはずだ!』

『おっと、質問してるのはこっちだ。』

『……そうか、スパイかなんかが居るんだな。正直、自分の命は惜しいから、話したいのは山々なんだが、今上官になってる奴らとその取り巻きの、スターリングやヤマシタの手下どもはどうでもいいが、苦楽を共にした下っ端仲間や降格させられた元上官なんかが、あの船には乗ってるんだ。着陸場所を教えるわけにはいかない……。処刑されても、だ。』

『衛星管理システムが復旧すれば、すぐに見つかるぞ?そうなればどうせその情報は秘匿しても意味のない物になる。ここで点数を稼いでおいて、情状酌量の余地を残しておいた方がいいと思うが。脱出したメック戦士を殺そうとしたのは、いかに命令で未遂とは言え、ちょっとまずい。』

『いや!なんと言われてもそれだけはできない!積極的に裏切りたいやつもあの船にはいるが、絶対に裏切れない者も同じ船にいるんだ!』

『……。』

 

 

 

 尋問が終了し、キースとアルバート中尉は司令室にやってきた。指令室ではなく司令室、司令官の部屋のことであり、今現在はアルバート中尉が使用している。アルバート中尉はため息をついた。

 

「ゾディアック号の位置は、分からないか。エルンスト曹長はああ言ったけども、惑星軍の衛星管理基地のシステム復旧は、この星の技術者の力量じゃあかなり先になりそうだって報告が入ってる。

 君の小隊の偵察兵はどうだった?逃げた敵メックの足跡を追ったんだろう?」

「それが駄目でした。途中で河川があって、その中を歩いていった様です。フェレット偵察ヘリコプターを飛ばしたんですが、河川から上陸した地点は見つからなかった、と言うより判別できなかった模様です。ボートかホバークラフトでもあれば、地上側からじっくりと偵察できたんですが。

 気圏戦闘機の部品は手配できませんか。ライトニング戦闘機が直れば、超高高度からの偵察で、ユニオン級降下船のようなデカブツなら発見が可能かと。」

「いや、発注はしてるんだ発注は。次か、次の次の補給船には載って来ると思う……んだけどねえ。その補給船がいつ来るか、ちょっとわからん状態なんだ。こんなことなら、最初にライトニングの部品も買っておけばよかったなあ。装甲板と弾薬だけなら、恒星連邦も沢山備蓄を用意してくれてたんだけどねえ。

 それに『デヴィッドソン装甲巨人隊』のバトルメックの修理も頭が痛いなあ。特にウィットワースとクリントは、それぞれ片脚を折られて駆動装置をいくつかやられてるし。フェニックスホーク2機も、致命的損傷こそ無いもののマイアマーをやられてるから……。『デヴィッドソン装甲巨人隊』が持ってきた修理部品じゃあ、フェニックスホークどちらか1機を完動状態に持っていくのが関の山だよ、はぁ……。」

 

 キースは考え込む。と、そのとき基地の外から轟音が聞こえてきた。キースとアルバート中尉は窓に駆け寄る。駐屯基地付属の小さな宇宙港の滑走路に、1隻のズタボロのレパード級降下船が、滑空はできないほど船体が痛んでいるので、推進剤を大量に使うがやむなく垂直着陸する所だった。

 

「おお、リライアント号か。回収に成功したんだね。」

「サイモン曹長の手腕があれば、短時間飛べるくらいに応急修理するのは不可能ではありません。それにうちのレパード級ヴァリアント号を操船しているカイル船長の技量があれば、半壊状態の船であろうと、なんとかここまで持ってくることも……。サイモン爺さんか……。もしかしたら……。

 すいません、今大事な時期だとはわかってますが、サイモン曹長を少し整備の仕事から外してかまいませんか?」

「いかにサイモン曹長が達人とは言え、部品が無ければ腕の振るいようが無いからね。かまわないよ。装甲板の修理と弾薬の補充程度しか、今はできる事がないんだ。それなら、他の整備兵でも簡単にできる。

 でも、何をするつもりだい?」

「実は……。」

 

 アルバート中尉は、キースの考えに承認を与えた。キースは即座にサイモン老を連れて、この星のコムスター施設へと出向いていった。

 やがて数日後、この惑星の保有貴族である、ドリステラ公爵ザヴィエ・カルノーから直々に依頼があり、雑多な手続きをすっ飛ばして駐屯軍の整備兵を、惑星軍の故障したレーダー基地と、これも惑星軍の故障した衛星管理基地に派遣することが決まった。これはサイモン老が恒星連邦政府の高官に送った、コムスターによる超光速通信メッセージの結果である。サイモン老は、恒星連邦政府の上層部に複数のコネクションを保有しているのだ。ちなみにライラ共和国の上層部にもコネクションを持っているが、今は関係ない。

 サイモン老とキースは恒星連邦政府の高官に頼み、恒星連邦政府からの指示という形でドリステラ公爵に対し、「惑星軍が駐屯軍に助けを求めるように命令を出せ」と言うメッセージを出してもらったのである。

 そしてドリステラ公爵のお墨付きをもらった駐屯軍は、整備兵を惑星軍の2つの基地に派遣した。サイモン老が衛星管理基地、アルバート中尉の郎党であるヴァランティーヌ曹長がレーダー基地に派遣された。

 

 

 

 戻って来たサイモン老と、ヴァランティーヌ曹長を、アルバート中尉、アーリン中尉、そしてキースが迎える。整備兵2人にはそれぞれ、ネイサン軍曹とエルンスト曹長が付き従っている。アルバート中尉はヴァランティーヌ曹長に片手を上げて見せた。

 

「よう、どうだった?」

「あぶないところでしたわ。潜り込んでいたスパイに、もう少しで射殺されるところでしたの。エルンスト曹長がいなければ、今頃は……。それと、ちゃんとレーダーシステムの破壊工作は証拠も見つけて、機能修復しておきましたわ。」

「こっちも同じでしたのう。ネイサン軍曹が、高速振動剣で襲い掛かって来たスパイを、同じく高速振動剣で首をはねたんですわ。衛星との通信は、既に復旧しております。今、猛烈な勢いでリライアント号不時着地点を中心に、周辺の地上写真を撮影しまくっておりますわい。」

 

 キースは肝が冷える。襲われる可能性を承知の上でサイモン老を派遣し、護衛にネイサン軍曹を付けてやったのだが、それでも万が一サイモン老が喪われていたらと思うと、ぞっとした。だが、彼は責任ある立場だ。無理矢理動揺を抑え込むと、笑顔でネイサン軍曹に礼を言う。

 

「ネイサン軍曹、サイモン曹長を守ってくれてありがとう。」

「はい。ですがスパイを生かして捕らえることができませんでしたよ。達人とまでは言いませんけど、けっこうな腕前でしたし、こっちもそれほど強いわけじゃありませんから。」

「それは仕方ないなあ。無理に相手を捕らえようとして、こちらが死んじゃあたまらんよ。」

 

 ネイサン軍曹の言葉に、アルバート中尉が慰めるような調子で応えた。エルンスト曹長が頷く。

 

「そうですな。スパイ網の調査は惑星軍に任せておきましょう。それよりこちら側として大事なのは、降下船ゾディアック号の位置です。」

 

 その言葉に、その場の全員が頷く。アーリン中尉がアルバート中尉に質問をした。

 

「見つけたら、具体的にどうするつもりなのかしら?」

「うん、放って置くわけには絶対にいかないからなあ。かと言って、直接当たってもユニオン級の火力には負けるし……。」

「メック部隊とレパード級降下船を囮にして、迷彩服で偽装した歩兵を降下船内に突入させるのは……やっぱり難しいですかね。」

 

 そう言ったのは、エルンスト曹長だ。彼はアルバート中尉麾下の『機兵狩人小隊』が集めた歩兵に対する、訓練教官の役割も受け持っていた。キースは驚いた。

 

「同じことを考えてたんだな、曹長。ユニオン級に限った話じゃないが、降下船を陥落させるのは、内部に侵入するしか無いと俺も思う。ただ、確かに問題は大きいな。」

「ええ、確かに。我々にとってレパード級降下船は虎の子です。それを囮に使うとなると、失敗したときのリスクが大きすぎる。それとメック戦士はメックに誇りを持ってますからなあ。それを囮に使うのは、感情が許さないかもしれません。」

「……うちの『SOTS』小隊に限って言えば、それは我慢してくれると思う。ただ……。」

 

 キースは口ごもる。アルバート中尉はにやりと笑う。

 

「うちの『機兵狩人小隊』も、その辺は大丈夫だぞ?3人とも若いが、それだけに柔軟だ。」

「こっちの小隊も、そこは気にしないでいいわ。先日そちらから助けられたばかりだし。ただうちは今稼働メックが2機しかなくて、1機は装甲こそ張り替えたけど中身は傷んでるのよね。」

 

 アーリン中尉もアルバート中尉に追随する。ただキースの顔色は、まだ優れない。

 

「他にも問題はあります。歩兵たちに多大な負担をかけることもそうです。それにもう1つ……。仮に作戦が成功したとして、ゾディアック号を手に入れたとします。ただ、それで儲けることになるのは、うちの小隊だけという事になりかねないんです。」

「へ?」

「ああ、それ気にしてたんだ。」

 

 アーリン中尉は頭にクエスチョンマークを浮かべるが、アルバート中尉は思い当たることがあった様だ。

 

「ああ、あのユニオン級降下船ゾディアック号は、昨年の年末から今年の始めにかけての時期に、不法な手段でキース中尉の元の部隊から奪われた物なんだそうだよ。で、キース中尉がその部隊のメック戦士階級の、唯一の生き残りなんだよね。つまりはキース中尉に、あのユニオン級を相続する権利が正式にあるんだよ。」

「???」

「あー、まだわかんないか。あのユニオン級を奪還するとだね、キース中尉の物だから恒星連邦はアレを接収するわけにはいかないんだ。となると、恒星連邦はアレを奪還したことによる報奨金やなんかは出さない可能性が極めて高い。場合によっては戦闘一時金すら出ないかもね。その辺は、契約書なんかの文面をよ~く読んで、専門家やMRBの管理人のヒトにも聞いてみないといけないけどね。

 だからと言って、アレを放っておくわけには絶対にいかない。この惑星を守ると言う契約上、戦わないという選択肢は無いも同然だし。それ以前に、あれを放っておくと敵の拠点や補給源として使われるからね。あれを放置するということは、敵の戦闘力や勝率を上げるってことになる。」

 

 アーリン中尉は、がーん、と言った風情でのけぞる。キースは申し訳なさそうに言った。

 

「その分の、戦闘報奨金とかの分を、俺の部隊で補填できれば良いんですが……。そこまでうちの小隊は資金潤沢じゃないんで……。」

「そうですのう……。出せても普通に敵メックを1~2機ぐらい鹵獲した金額程度ですのう。ふう。しかもそれをやると、うちの経営は一気に赤字転落です。」

 

 電卓を叩きながら、サイモン老がぼそぼそと言う。心なしか、その肩が落ちている。アーリン中尉は俯いた。そしてその肩がぷるぷると震えだす。今にも怒鳴り出すんじゃないか、と、周囲の皆の腰が引ける。

 と、アーリン中尉はがばっと顔を上げた。そしてキースの両肩にその両手を置く。キースの身長は2mを軽く超えているので、小柄なアーリン中尉はまるで万歳をしているかの様だ。彼女は大声を上げた。

 

「キース中尉!」

「はい!?」

「ウチの部隊、丸ごと抱え込む気、ない!?」

「!?」

 

 キースは、わけがわからないよ、と言う顔をする。ちなみにアルバート中尉は、ああその手があったか、と手をぽんと叩く。アーリン中尉は言葉を続けた。

 

「うちの小隊、お金無いのよ。自前の降下船を持ってないから、移動の際にいちいち雇用先や他から借りなきゃならないのよね。それに航宙艦もないし。だから赤字スレスレのカツカツなのよ。降下船借りるのに片道6万Cビル、航宙艦で運んでもらうのに1ジャンプで降下船1隻につき5万Cビル、ちょっと遠い星系に行くならジャンプ2回3回はあたりまえ。

 なのに今回は、借りた降下船は騙されて後ろから例のユニオン級に撃たれるし、墜落現場には2個小隊が攻めて来て虎の子のメック2機も脚折られちゃって、部品ないから修理の目処立ってないし、部品代は泣くほど高いし。メックが直らないと、稼ごうにも稼げないし。って言うかこれで壊されたレパード級リライアント号の修理代とかまで請求されたらもう泣くわよ!?泣いちゃうわよ!?人目も憚らず!!」

「は、はあ……。」

「あー、それは大丈夫だと思うぞ。リライアント号が後ろから撃たれたとき、騙されたのはお前さん方じゃなくてリライアント号の船長たちだからな。キース中尉のとこのライトニング戦闘機との交信記録はきちんと取ってあるから、証拠として使えるし。」

「ほんと!?よかったー……って、問題はぜんぜん解決してないのよ!今のままでも充分赤字なの!」

 

 アーリン中尉は、叫ぶ。キースは、最初の印象と随分違う人だなと、場違いなことを思う。

 

「でもね、君がうちの小隊を丸ごと抱え込んでくれれば、問題はかなり減るのよ!ゾディアック号だったわよね、あのユニオン級!あのユニオン級と今あるレパード級ヴァリアント号だっけ?全部で4個小隊載せられるわけでしょ。うちの部隊とキース君のとこの部隊、2個小隊載せてもまだ余る!しかもキース君ところは航宙艦もマーチャント級があるって言ってたわよね!」

「は、はあ。今は駐屯任務中ですので小銭稼ぎに商用降下船とか運ぶ旅に出てますが。」

「素敵!それって駐屯任務中にも別口でお金が入って来るってことじゃない!……正直、私ってメック戦士や指揮官としてはともかく、商売人としては赤点が付くと思うのよね。自分で部隊経営までやらなきゃならない、独立傭兵部隊のトップとしては失格じゃないかって……。

 だから下請けでも吸収合併でもいいから、お願い!キース君のところで面倒見てちょうだい!」

 

 キースは慌てる。アルバート中尉は後ろを向いて肩を震わせている。たぶん笑っているのだろう。

 

「ま、待ってください。まだゾディアック号を取り戻したわけでは無いんですよ?獲らぬ狸の皮算用です……。」

「だったら狸を獲ってみせるだけよ!待ってなさい狸!今猟師が大口径レーザー持って狩りに行くから!」

「そちらやこちらの部隊員たちに相談も無しで、いいんですか?」

「こっちは文句は言わせないわ!いつも私が赤字スレスレの帳簿に苦労してるの、見てただけなんだから!」

 

 がっくりと肩を落とし、キースは観念する。

 

「……うちの部隊員に相談してみます。アルバート中尉の方は、どうしますか?」

「うちは余裕があるからね。なあヴァランティーヌ曹長。私の郎党である彼女が、うちの隊の財布をきっちり握ってるんだよ。」

「はい、こういうアクシデントに備えて、資金の備蓄はしっかりしていますわ。それにうちの部隊はまだ戦闘に参加していませんから、戦闘報奨金や危険手当はありませんが、その分メックの保全も十全ですし、修理用予備部品も各機充分に揃えてありますの。」

「という事だよ。君は心配しないでゾディアック号を取り戻すことに専念しなさい。……って、私も作戦に参加するから人ごとじゃないな。ははは。」

 

 その後、両小隊の隊員たちを交えた話し合いの結果、今回の2ヶ月間の駐屯契約が終了するまでは、MRBを介しての恒星連邦との契約が絡んできて事がややこしくなるため、それまでは傭兵小隊『SOTS』と傭兵小隊『デヴィッドソン装甲巨人隊』は提携関係を結ぶことに留め、2ヶ月間の契約が満了後、『SOTS』が『デヴィッドソン装甲巨人隊』を吸収合併することで話がついた。ただし大前提として、ユニオン級降下船ゾディアック号の奪還作戦が成功することが条件となっている。ゾディアック号がなければ『SOTS』側に部隊を拡張する余裕は無く、また作戦が失敗したとなれば『デヴィッドソン装甲巨人隊』は更なる経済的危機に見舞われて、部隊維持すら困難になることは目に見えていたからだ。

 

 

 

 そして3日後、衛星写真の解析が終了し、ユニオン級降下船ゾディアック号の着陸地点が判明したとの連絡が、惑星軍から送られてきた。いよいよ作戦開始である。




アーリン中尉たち『デヴィッドソン装甲巨人隊』、経済危機!だいぴんち!!さあ、主人公達の出番だ!
いや、主人公達の財布にも、そんなにいっぱい余裕は無いんですけれどね。でも、この場合彼らを受け入れた方が利益は大きいでしょうね。降下船を敵から取り戻せることが、大前提ですが。
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