鋼鉄の魂   作:雑草弁士

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『エピソード-016 降下船来れり』

 レパード級降下船ヴァリアント号が、恒星連邦ドリステラⅢ駐屯軍基地付属宇宙港の滑走路に、見事な着陸を決める。カイル・カークランド船長の腕前は、あいかわらず健在な様だ。カイル船長は、ユニオン級降下船ゾディアック号の船長と副長の要員をスカウトするためと、恒星連邦では手に入り難いバトルメックの部品を購入するために、ヴァリアント号と共に星系外へ出ていたのだ。ただし人員のスカウトという面では、カイル船長の活動は予定以上の成果を出していた。

 着陸したヴァリアント号がタキシングして、屋外駐機場の定位置にやって来る。既に送迎用のマイクロバスで迎えに出ていたキースは、ヴァリアント号から出迎えるべき人たちが降りて来るのを待っていた。やがてヴァリアント号の人間用ハッチが開き、16人の男女が降りて来た。先頭に立っていた壮年の男性が、キースの姿を認め、敬礼する。残りの人員も、それに習った。

 

「お出迎えありがとうございます。傭兵小隊『鋼鉄の魂』隊長、キース・ハワード中尉であられますか?私、いえ自分アリー・イブン・ハーリド少尉以下12名、着任を許可願います。」

「同じく航空兵ミケーレ・チェスティ少尉以下2名、着任を許可願います!」

「同じく航空兵コルネリア・ゲルステンビュッテル少尉以下2名。着任許可願います。」

 

 本来船長と副長だけ雇うはずであった降下船の要員が、総勢16人と随分増えていた。しかも全く予定外の航空兵2人が、この中に含まれている。だがキースはあらかじめ、航宙艦からの通信で4日前にそれを知っていたので、今更驚かない。彼は敬礼を返すと、口を開いた。

 

「貴官らの着任を許可する。ようこそ、ドリステラⅢへ。アリー・イブン・ハーリド船長、マンフレート・グートハイル副長。君たちに任せるユニオン級降下船は、あちらにあるアレだ。ゾディアック号と言う。機関士のユーリー・アキモヴィチ・コルバソフ伍長、ライナス・ゲイル伍長もよろしく頼むぞ。

 そして航法士見習いのレオニード・ミロノヴィチ・ゲオルギエフスキー曹長、マシュー・マクレーン曹長、エルゼ・ディーボルト曹長、エレーナ・アルセニエヴナ・ゴリシニコワ曹長。機関士見習いのフォルカス・ロウントゥリー上等兵、アデル・ドラモンド上等兵、オティーリエ・ハイゼンベルク上等兵、メイベル・ゴールドバーグ上等兵。貴官らも良く上官を補佐し、頑張って働いて欲しい。

 ミケーレ・チェスティ少尉、コルネリア・ゲルステンビュッテル少尉。我々は今、1機でも多くの気圏戦闘機を必要としている。その際に、貴官らの様な優秀な気圏戦闘機パイロットを確保できたのは、まさしく僥倖と言える。今後の活躍に期待する。それは無論、2人の整備兵であるディートリヒ・ブランデンブルク伍長とフランツ・ボルツマン伍長にも言える。2人の郎党である君たちに今更言うまでもないことであるが、よく2人を助けて尽力して欲しい。」

 

 彼らがわずかだけ騒めく。アリー船長が、彼らの気持ちを代表してキースに言った。

 

「全員の顔と名前を、覚えていてくださったんですな。」

「ああ。全員の履歴書は、4日前に航宙艦クレメント号のアーダルベルト・ディックハウト艦長より、深宇宙通信施設を介してデータ通信で受け取っている。4日もあれば、全員分の履歴書を丸暗記するのはそう難しくない。

 では諸君、これからマイクロバスに乗り、まずは基地本部棟まで行く。そこでこの……。」

 

 と、ここでキースの斜め後ろに控えていたネイサン軍曹が前に出る。

 

「このネイサン・ノーランド軍曹が基地内を案内してくれる。できるだけ早く建物の配置を覚えてくれ。ではマイクロバスへ搭乗してくれたまえ。」

 

 彼らの後方では、ふたたびヴァリアント号がタキシングして、格納庫へと向かっている。彼らはマイクロバスに乗り込み、基地の本部棟まで向かった。ちなみに運転手は、いつものジャスティン一等兵であった。

 

 

 

 駐屯軍基地本部棟にあるキースの執務室で、軍隊特有のあまり美味とは言えないコーヒーを飲みながら、キースはレパード級ヴァリアント号のカイル船長、イングヴェ副長と話をしていた。

 

「最初は驚いたよ。本来ならば船長と副長の2人だけだと思っていたからな。アーダルベルト艦長から通信で教えられたときには、何事かと思った。いきなり16人だからな。ははは。」

「いや、私もこんなことになるとはね。最初は、ある商用降下船2隻の副長を引き抜くだけのつもりだったんだよ。ちょうど船長と折り合いが悪くなってたらしくて、どこか新しい就職先が無いかって話を、以前から聞いていたからね。アリー船長とマンフレート副長は。ただ、彼らを慕っていた航法士見習いや機関士、機関士見習いが、いっしょにごっそりとその商用降下船を抜けて来たのには、私も驚いたけどね。あはは。薄給でかまわないから、彼らと一緒に行かせてくれって言われては、断れなくてねえ。」

「あー、相当その商用降下船での扱い、悪かったんですかね?船長?」

 

 イングヴェ副長の言葉に、カイル船長は頷く。

 

「馬車馬どころか、奴隷の様に働かされていたらしいね、どちらの船でも。当時副長だったアリー船長は公然と船長に反論し、マンフレート副長は控え目に文句を言ったという違いこそあれ、同じように船員たちをかばったそうだ。それで各々の船の船長たちと言い争いになって、関係が悪くなったらしい。」

「……だが、傭兵部隊での軍用降下船の船員なんて、商用降下船の乗組員よりもキツいぞ?それこそ馬車馬の様に働いてもらわねばならないかも知れない。」

「だがキース隊長は、仕事した分ボーナスもはずんでくれるだろう?隊員たちへの労りも忘れない。部下を奴隷扱いなど、せんだろう?」

 

 キースは頷く。前世の記憶によって、21世紀の日本人の感覚を持つキースには、他者を捨て駒や奴隷の様に扱うということに対し、感情的に忌避感がある。この31世紀バトルテック世界の世界観は、この世界で生まれ直し、この世界で育ってきた彼の中にも根付いてはいるから、他所での非道にまでわざわざ出向いて行って口出ししたりはしない。だが自分の手の届く場所では、彼は力の無い者を踏みにじるような真似はしないしさせない。彼が対メック戦闘に歩兵部隊を駆り出さないのも、その様な理由による。彼らはゲームの駒ではないのだ。卓上ゲームであるバトルテックの歩兵の様に、ポコポコ死なれたら非常に心が痛い。

 ちなみに彼のその様な様子を見て、周囲の人間は彼の行動を、メック戦士としてのノブレス・オブリージュ――高貴なる義務――をわきまえているが故の行いだと誤解していたりする。根底の部分では違うのだが、結果的には同じことであるので、まあ構わないだろう。

 キースは残り4人の人材について聞く。

 

「ミケーレ少尉、コルネリア少尉と、その郎党のディートリヒ伍長、フランツ伍長は、どういう経緯で?」

「いや、アリー船長たちを上手くスカウトできたんで、私のおごりで酒場に行ったんだよ。そうしたらそこで暗く飲んでるミケーレ少尉とコルネリア少尉に出会ってね。聞けば彼らがいた傭兵部隊が、彼らの気圏戦闘機がメーカー修理に送られている間に壊滅して部隊解散に追い込まれたんだそうな。不幸中の幸い、機体の修理は終わっていて、修理代も振り込み済みだったそうだ。あとは機体が戻って来るのが間に合っていれば、部隊壊滅が避けられたかもしれない、と悔やんでいてねえ……。

 で、私はその時酒が入っていて気が大きくなっていてね……。元航空兵として、気圏戦闘機乗りの心得について一席ぶってしまったんだ。自分たちがいれば負けなかったかもしれないなどとは思い上がりだ、とか色々ね。」

 

 それを聞いたイングヴェ副長は、あちゃー、と言う感じで顔に右手を当てている。ひきつった笑いを顔に浮かべ、カイル船長は続けた。

 

「で、それでも今後の展望が無いと落ち込む彼らに、私にまかせておけと啖呵を切ってしまったんだ。その時私の頭には、レパード級ヴァリアント号と、ユニオン級ゾディアック号で気圏戦闘機は合計4機搭載可能だと言う事実だけがあってね。あと2機搭載する余裕があると……。それで、私が隊長を説得するから、うちの部隊に来い、と……。

 勝手をして、申し訳ない!」

 

 がば、と頭を下げるカイル船長に、キースは厳しい口調で言う。

 

「結果的には気圏戦闘機が増加して助かったとは言えど、貴官が俺の当初の命令、ゾディアック号船長と副長のスカウトの範疇を超えた行為をしたのは事実だ。それでもゾディアック号機関員やその見習い、航法士見習いまでなら目を瞑ることもできただろう。しかし航空兵2名については、明らかに俺の職分を冒している。新規隊員の雇用は俺の権限、しかも戦闘部隊の隊員ともなればな。」

「うむ……。私も覚悟はしているよ、隊長。」

「譴責処分と、3ヶ月の30%減俸程度が妥当だな。それで……。」

「それだけで良いのかね!」

 

 カイル船長は驚きの表情を浮かべる。更にキースは続けた。

 

「それで任務を100%以上達成したことで、ボーナスを出さねばならないな。ええと……。」

 

 キースは電卓を叩く。

 

「ざっと減俸分と相殺、だな。」

「甘いですねえ隊長。ま、その甘さが良いところなのですが。」

 

 イングヴェ副長が、こみ上げる笑いを噛み殺しつつ言った。キースもにやりと笑って返す。カイル船長は、目を丸くしたが、やがてくすくすと笑いだす。キースはそんなカイル船長に、真面目くさった顔で言う。

 

「カイル・カークランド船長、貴官は今、譴責処分を受けている最中なのだがね。笑うとは何事かね。」

「は、失礼いたしました隊長。ですが……。」

「ま、そうだな。俺としてもこれ以上何か言う気は無いからな。ははは。ただ、どうせならメックの無いメック戦士候補者も何名か連れて来てくれれば良かったな。そうすれば予備のバトルメックを貸与して戦力増強した上で、船長の給料を大幅に減らせたんだが。ははは。」

 

 キースの笑えない冗談に、ちょっと引き攣り笑いになるカイル船長とイングヴェ副長だった。

 

 

 

 基地本部棟の指令室発令所にて、キースはアルバート中尉、アーリン中尉とCAP(戦闘空中哨戒)の計画を練っていた。ちなみに以前からある2機のライトニング戦闘機を駆るマイク少尉とジョアナ少尉は、旧来の計画に従ってCAPに出撃していた。アーリン中尉がおもむろに言葉を発する。

 

「しかし気圏戦闘機が4機に増えたのは助かるわね。哨戒の範囲が一気に広がるじゃない。」

「確かにそうだがねえ。それでもまだまだ、惑星全域をカバーするには足りないよ。」

 

 アルバート中尉は溜息を吐く。溜息を吐くと幸せが逃げると言うが、そうであれば彼の幸せはダース単位で逃げ出しているかもしれない。と、ここでグロス単位で幸せが逃げ出していそうな人物が声を上げる。無論、キースのことだ。溜息の数は、彼が群を抜いて多い。

 

「とりあえず、計画を練ってしまいましょう。ミケーレ少尉とコルネリア少尉は、今のところやることが無い状況です。早目に任務を宛がう方が、彼らとしても気が楽でしょう。」

「そうだね。じゃあこっちの……。」

 

 アルバート中尉が、CAP計画について何か言いかけたときである。発令所に詰めていたオペレーターが声を上げた。

 

「ライトニング戦闘機1番機、マイク少尉機より入電!緊急事態だそうです!」

「内容は!」

「所属不明の降下船群を発見!IFFも恒星連邦所属船の信号ではありません!現在所属と目的を問い質し、停船を命じたそうです!ライトニング戦闘機2番機、ジョアナ少尉機もそちらへ急速接近中です!」

 

 とっさのアルバート中尉の声に、答えるオペレーター。アルバート中尉はキースにアイコンタクトを送る。キースは頷いて館内放送機器に飛びつき、指示を出した。流石の阿吽の呼吸である。

 

「エマージェンシー!エマージェンシー!全部隊、総員戦闘配置につけ!繰り返す、総員戦闘配置につけ!ミケーレ・チェスティ少尉、コルネリア・ゲルステンビュッテル少尉両名は緊急発進せよ!目標ポイントは追ってオペレーターより通達する!繰り返す、ミケーレ少尉、コルネリア少尉両名は緊急発進!」

「オペレーター!ミケーレ少尉のライトニング戦闘機3番機、コルネリア少尉のライトニング4番機に、目標の降下船群の位置を送りなさい!」

 

 アーリン中尉もオペレーターに指示を出す。そしてキースは、自分でマイク少尉機との通信に出た。

 

「ライトニング戦闘機1番機、こちら駐屯軍指令室!目標の降下船群の陣容を報告せよ!」

『こちら1番機っす!目標は……あっ!確実に敵っす!今、気圏戦闘機隊が発進しました!

 敵降下船は3隻!ユニオン級が2隻に、自分が知らないタイプの船が1隻!映像を送ります!なお気圏戦闘機は65tのシロネ戦闘機が2機!75tのトランスグレッサー戦闘機が2機!すいません、逃げ回ってますから、増援の手配よろしくお願いっす!』

「今、2番機が間もなくそちらに、3、4番機もじきに到着する!ただし粘れそうにないなら、かまわんから逃げろ!」

 

 キースの台詞が終わると共に、発令所のスクリーンに降下船群の静止画像が大写しになる。アルバート中尉とアーリン中尉も、ユニオン級以外の最後の1隻はわからない様だ。だがキースは最後の1隻の船種を知っていた。『ロビンソン戦闘士官学校』で習った知識にあった事も確かだが、傭兵大隊『BMCOS』でも1隻そのタイプの降下船を使用していたのだ。

 

「あの船はフォートレス級ですね。火力も装甲も強力ですが、最大の特徴はロングトムⅢ間接砲を装備している点です。それに加え、1個中隊のバトルメック、1個中隊の機甲部隊、1個中隊の歩兵部隊という諸兵科連合部隊を搭載できる搭載力も驚異です。ただ気圏戦闘機の運用能力が無いのは救いですが。

 ……待てよ?オペレーター、データバンクに登録している元『BMCOS』の降下船群のデータと比較してくれ。」

「はい!……ええと。……一致しました!ユニオン級の1隻は元『BMCOS』第2中隊所属エンデバー号!フォートレス級は元『BMCOS』第1中隊所属のディファイアント号です!最後の1隻は情報ありません!」

(やはり、か。となると、たぶんおそらくは……。トマス・スターリングかハリー・ヤマシタのどちらかが居る可能性が極めて高い、よな。しかし……情報にあった、発掘部隊の迎えの船だとして、本当に空の船が入ってるのかな?万一メックを満載してたら……。)

 

 考えに沈むキースだった。アーリン中尉はアルバート中尉に尋ねる。

 

「至近距離までレーダーに引っ掛からなかったのは、どういうわけかしら?」

「高度なジャミングだろうね。今回は惑星軍基地に対する破壊工作もなかった様だし。以前にしてやられていたから、惑星軍でも警戒を密にしてたらしいんだ。だから手出ししようにも、できなかったんだろうね。

 ただ、そうなると……。高度なジャミング技術から予想されるのは、高度な技術者の存在だなあ。」

 

 アルバート中尉の言葉が終わった後、しばらく時間だけが経過する。戦いははるか大気圏外で行われており、メック部隊には手の出しようが無い。キースは祈るような気持ちで、じっと待つ。

 やがて気圏戦闘機隊から、報告が連続して届いた。

 

『こちらライトニング戦闘機2番機!敵シロネ戦闘機を撃墜!』

『こちらライトニング戦闘機1番機!敵機撃墜っす!相手はシロネ戦闘機!ただこちらも被害が多く、離脱許可が欲しいっす!』

『こちらライトニング戦闘機3番機!戦域到着直後、出会い頭にトランスグレッサー戦闘機を撃退しました!敵機は降下船に戻って行きます!ただこちらも相討ちで機体ダメージが多く、離脱許可を!』

『こちらライトニング戦闘機4番機!トランスグレッサー戦闘機を撃退!ですが当機もダメージを負い、これ以上の戦闘は困難!』

「全機離脱しろ!その状態で降下船3隻の相手は無理を通り越して無茶、無謀というものだ!」

 

 キースの叫びで、ライトニング戦闘機の群れは戦域から次々に離脱して行った。キースはアルバート中尉に報告する。

 

「敵気圏戦闘機の撃墜もしくは撃退には成功しましたが、敵の降下の阻止は不可能です。惑星軍の大型レーダー基地に連絡し、敵の降下ポイントを確定させてください。」

「うん、それはやるけれど、敵のジャミング能力は高い様だからねえ。難しいかもしれない。」

「ううむ……。」

 

 アルバート中尉は、惑星軍への連絡用に最近設置された、直通の電話に向かう。これはザヴィエ・カルノー公爵の直接のお声掛かりが無ければ、今でも設置されていなかったはずの物だ。惑星政府はお役所仕事の悪い面が出ており、相互の人員の遣り取りなども手続きが煩雑で難しいのである。本来であれば駐屯軍と惑星軍は、相互に連絡士官を置いて協力体制を敷いていてもおかしくないはずなのだが。

 唸るキースに向かい、アーリン中尉が話しかける。

 

「けど、気圏戦闘機隊の被害が大きいわね。」

「ですが今回は以前と違い、ライトニング戦闘機用に多少の部品ストックがあります。また、ジョアナ少尉の2番機は損害軽微で、すぐにでも偵察や哨戒活動に出せます。……カイル船長の独断に、感謝ですね。2機しか気圏戦闘機が無かったらと思うと、ぞっとしますよ。」

「新しい2機が、同じライトニング戦闘機だっていうのも幸運だったわね。部品の共有ができるもの。」

 

 確かにそれは幸いだった。これで全機がばらばらの種類の機体だったりしたら、目も当てられない。キースは今後の方針を相談する。

 

「とりあえず気圏戦闘機が戻ってきたら、損傷の軽度な機体から優先して修理しましょう。修復完了次第、敵降下船降下予想地点上空の高高度偵察に出すと言う事で。」

「そうね。それが妥当だと思うわ。」

「ただいま。惑星軍には連絡つけたよ。ただやっぱり難しそうだなあ。ジャミング云々以前に、惑星軍のレーダー技術者の能力が低い……。」

 

 嘆息して、キースは物思いに沈む。

 

(流石に田舎の農業惑星だけはあるのか……。たしか大学も無いし、識字率が39.8%……。文字を知ってるってだけで、エリートだもんなあ。一般の農家なんか、よくコンバインやトラクターを使えるな。マニュアルも読めないんだろ?

 うちの助整兵やら歩兵やらに志願してきた連中は、エリート階級ってことか。文字が読めないやつは居なかったからなあ……。)

 

 アーリン中尉はアルバート中尉に報告を行う。

 

「さっきキース中尉と相談してたんだけど、気圏戦闘機が戻ってきたら、損傷の軽度な機体から順に修理して、敵降下船の降りた地点上空の高高度偵察に出そうって……。でも、惑星軍のレーダーで場所がわからなかったらどうしようかしら。」

「うん、それは……。」

 

 アルバート中尉が何か言いかけた瞬間、惑星軍からの直通電話が鳴る。彼は即座にその電話を取った。

 

「こちら恒星連邦ドリステラⅢ駐屯軍基地指令室!……!!了解です!ご助力に感謝します!では!」

 

 電話を切ったアルバート中尉が、血相を変えてアーリン中尉とキースに言った。

 

「まだ戦闘配置は解除してないね!?」

「……はい!全員バトルメックへの搭乗準備、整っております!」

「我々もバトルメックへ急ぐぞ!敵降下船のうち2隻が、こちらに強襲降下してくる!1隻はジャミングで何処に行ったかわからないが、2隻はレーダーに映ったらしい!オペレーター!メック戦士たちに搭乗を指示!」

 

 言うやアルバート中尉は、バトルメックの格納庫へ駆け出す。キースとアーリン中尉もまた、彼と並んで走り出した。キースは叫ぶ。

 

「気圏戦闘機は損傷の大きい1、3、4番機は近隣の惑星軍基地に退避させましょう!ただ2番機も、推進剤が足りないはずです!一撃させたら同じく離脱させます!」

「ああ!それで構わない!しかし……何故2隻はジャミングを外した!?」

「本命は、おそらく姿の見えない1隻でしょう!何処に降りたかは気圏戦闘機の記録映像を解析して割り出すしかありません!ですが、まずはこちらに来る2隻です!」

「あなたたち、よく、走りながら、そこまで、喋れる、わね!」

 

 アーリン中尉の言葉に、キースとアルバート中尉は、異口同音に返す。

 

「鍛え方が違います。」

「鍛え方が違うからね。」

「どういう、鍛え方、よ、まったく。」

 

 3人は、全力で走った。




ついに新たな敵がやって来ました。しかも堂々と主人公たちの基地に強襲を仕掛けて来ます。自信があるのか、それとも……。
次回、さあ戦いだあ!!
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