キース、アルバート中尉、アーリン中尉の3名は、尋問室の隣室で尋問の様子を窺っていた。キースがこの部屋に来るのは、アキトモ・タナカ軍曹と名乗る人物の尋問時以来である。
隣の尋問室では、恒星連邦ドリステラⅢ駐屯軍基地への攻撃をかけてきた部隊の部隊長に対し、尋問が行われている。尋問官は、エルンスト曹長だ。パメラ伍長も一緒になって調書を取っている。
『お前の名前と階級、それに所属部隊名をまずは教えてもらおうか。』
『マーカス・ギボンズ大尉、だ、第4アン・ティン軍団D大隊第4中隊の指揮官、だ。』
『大隊で第4中隊?』
『現在D大隊は、だ、第13アン・ティン軍団として再編するために規模拡張中だ。今の規模は5個中隊と2個小隊になっている。わ、わしらがバレンチナを出て来てから随分経つから、今ではもう少し増強されているのではないかと思う。』
男の様子は始終おどおどして、卑屈になっている。問われたことにも全て正直に話しているらしく、嘘発見器には反応が無い。
「……今のところ、素直に喋ってるわね。」
「生き延びるためには、それ以外方法が無いだろうからね。調査に協力的になったことで、司法取引みたいな形で自らの命を贖うしか無いだろうさ。
もっとも、それで非合法活動が全部が全部チャラにはならんだろう。」
「……。」
アーリン中尉とアルバート中尉の言葉を聞きながら、キースはじっと隣室の様子を窺う。
『マーカス・ギボンズとは、ドラコ連合っぽくない名前だな?』
『……わ、わしはドラコ人ではない。元は恒星連邦の士官だった。だったんだ……。恒星連邦政府の命令で、自殺的任務を与えられて失機するまではな。
ハンス国王の前の代、イアン・ダヴィオンは「国王であるまえに戦士である」と言われた脳筋だった……。軍事的勝利のため、陰では無茶もそうとうやったのだ。そしてダヴィオン王家のせいでメック戦士としての全てを失ったわしは、ドラコ連合に、クリタ家に雇われる様になった、と言うわけだよ。自分のメックを手に入れるためにな。』
マーカス大尉の口調は、自分の恨みつらみを語るうちに、徐々に滑らかになっていく。その目には、憎悪の色が溢れた。エルンスト曹長は続けて問う。
『……で、ハリー・ヤマシタの指揮下に入る様になったってわけかね?』
『そうだ。ヤマシタは敵に対しては手段を選ばない悪魔的な人物であったが、自分直属の部下に対してはそう悪い人物でもなかった。恩着せがましいことは良く言うし、無茶な命令も下すがね。
奴を好いているわけではないが、奴が非合法な手練手管でライラ共和国や恒星連邦からメックを鹵獲したおかげで、そのメックを与えられた奴も多い。だから直属の部下は、奴に従っておるよ。唾棄すべき品性の持ち主であろうとも、な。』
『人の事を言えた義理でもないだろう?『BMCOS』の件では、お前さん方は休戦期間中に休戦破りをやって、戦闘員だけじゃなしに非戦闘員まで巻き添えにして皆殺しにしたそうじゃないか。』
『非戦闘員まで皆殺し、と言うのはよくやらされたからな。何も感じなくなっておったよ。以前にも、メック戦士が出撃している間に基地に潜入し、基地の人員すべてを爆殺すると言った任務も幾度かあった。』
マジックミラーの裏側で、キースは拳を握りしめる。その肩に、掌が置かれた。アルバート中尉の物だ。キースは息を吐くと、アルバート中尉に軽く会釈をする。
『全ては命令だった、って言いたいのかね?まあ、続きを聞くとしよう。』
『……ヤマシタは、そう言う時に一番危険な任務を自ら行っていた。敵中に工作員として入り込み、我々特殊部隊員を呼び込む、と言ったものもそうだ。敵部隊に潜り込み、戦場で肝心かなめの時に裏切ると言うのも。
……いや、裏切りと言う言葉はあたらないな。最初から敵なんだから。だがその一見勇敢にも見える行為は、自分でもっとも危険な任務を負うことで、責任を果たすってためじゃない。単に敵を騙し、単にスリルを味わう……そう言う行為が好きだからだ。』
『ハリー・ヤマシタの性格はわかった。トマス・スターリングと『アルヘナ光輝隊』が奴に乗せられて恒星連邦を裏切った理由はわかるかね。』
『又聞きでしかないが、かまわないかね?』
頷くエルンスト曹長。マーカス大尉は、その事について話し始める。キースはごくりと唾を飲み込んだ。
『トマス・スターリングの『アルヘナ光輝隊』は、恒星連邦が派遣した連絡武官の将校に、色々と寄生されて不正により甘い汁を吸われていたらしいな。鹵獲したバトルメックの報奨金を横から何割かかすめ取られたり、『アルヘナ光輝隊』に渡るはずの補給物資を勝手に横領されて横流しされたり。
証拠を掴んで訴えて出たらしいが、上の方で握りつぶされて、くだんの連絡将校は処罰されずに潮時だと見て異動していったらしい。だが代わりに来た連絡将校も、同じことをやったそうだ。
なんと『アルヘナ光輝隊』は、甘い汁を吸うための良いカモだと言う伝統が、上の方の部署内にできてたと言う話も聞く。生かさぬ様に、殺さぬ様にってな。……恒星連邦の官僚組織は、わしらどころじゃなく闇が深いぞ。』
『そんな事が、他所や監査役にばれなかったってのか?』
『監査役にも鼻薬が効かされてたんだそうだ。証拠を掴んで訴え出られたときには流石に慌てたらしいが……。今では訴え出たと言う記録自体が抹消されている、らしい。何やら訴え出たことに対する陰湿な報復さえもあったらしいよ。
そんな事が続けば、忠誠心とてすり減るさ。そこへヤマシタの奴がすり寄ったんだ。ドラコ連合の正規軍に入れてやるって。ドラコ連合では、信頼できる最上級の傭兵部隊よりも、もっとも信頼されない正規軍の方が優遇されるからな。『アルヘナ光輝隊』の中には反対する者もいた様だが、そいつらについては家族を人質に取った。そしてそういう奴らは今では、厳重な監視下に置かれるか、人知れず消されるか、あるいは激戦区に送られて……。』
マーカス大尉は、掌を一度握って、ぱっと開いた。つまりはそう言う者たちは激戦区に送られてドカン!と言うわけである。
『……で、裏切りの際に第1の目標に選ばれたのが『鋼の勇者隊』……傭兵大隊『BMCOS』だ。自分たちが苦しんでいるのに、偉いさんに取り入って上手く立ち回って、潤沢な補給や鹵獲品に対するある程度の権利と言う正規軍にも準ずる扱いを受けている裕福な部隊ってのが気に入らなかったんだろう。
ま、『チェックメイト騎士団』の方が相手としては楽だって意見もあったらしいがね。妬みと僻みの方が大きかった様だ。だが実際に潜入して破壊工作を行ったわしら特殊部隊の面々の被害は、おかげでかなり大きくなったがね。』
キースは隣の部屋で、ぶるぶると身体を震わせていた。『BMCOS』は妬みと僻みで目標に選ばれたのだと言う。許せることではなかった。思わずマジックミラーを叩き割って乱入したくなる。彼を押しとどめていたのは、鋼の如き自制心と、肩に置かれたアルバート中尉の掌だった。
尋問室の中では、エルンスト曹長が最後の質問をしている。
『さて、とりあえず質問はこれで最後だ。ハリー・ヤマシタとトマス・スターリングの居所と目的だ。』
『スターリングの奴は第4アン・ティン軍団C大隊大隊長に納まって、とりあえずの目的は今以上の出世だろうさ。いるのは惑星バレンチナだ……の、ハズだ。だがヤマシタは今、この惑星にいる。
わしの乗って来た降下船エンデバー号の金庫に、古文書の写しが入っておるがね。その古文書にはこの惑星に存在する、バトルメック製作施設の位置が書かれておった、らしい。わしには読めないがね。金庫のナンバーはGTT-337-BYO-4だ。ヤマシタはそこへ向かったよ。あらいざらいそこの設備他を持って帰るつもりらしい。部隊も1個中隊連れていった。部隊の編成表は、同じ金庫に入っている。』
マジックミラーの裏側で、キースたちは驚愕する。アルバート中尉が眉を顰めて言った。
「まさか、あれだけの物を発掘した他に、まだ存在したのか!?」
「しかもバトルメックの生産工場……じゃなくて、製作施設?なんか微妙にニュアンスが違うわね。」
「確かに……。ですが、バトルメックを造れるとしたら、えらい発見です。」
アーリン中尉の言葉に応えるキース。マジックミラーの向こう側でも、エルンスト曹長が驚愕していた。
『バトルメックの生産工場だと!?』
『いや、違う。製作施設、だ。あくまで製作……少量の試作品などを造ったり、改造が関の山だ。あとは以前にこの惑星にやって来たはずの、メック倉庫発掘部隊の回収と発掘品の回収も任務のうちだったが……。その発掘部隊は壊滅、発掘品はすべてあんたらが接収したらしい、と現地スパイ網から連絡があったからな。だからわしらの部隊でこの基地を襲撃したんだ。あわよくば、発掘品を奪い返せ、と命じられてな。
……戦車部隊や歩兵部隊の使い捨ても、内々で命じられておったよ。荷を積むスペースを空けねばならんからな。』
『そのスパイ網についても訊きたいところだが、長くなったからまた後にするとしよう。』
『なんでも訊いてくれ。なんでも話すとも。……わしには、誇りなどないからな。』
吐き捨てる様に、マーカス大尉は言い捨てた。
キースは一人、自分の執務室にてユニオン級降下船エンデバー号の司令室金庫から持ち出してきた古文書――日本語の東北弁――の、連盟共通語への翻訳作業を行っていた。だが集中力が続かない。苛立つ気持ちが、作業の邪魔をしていた。他の面々は、整備の作業が可能な者は先の戦いでメックや気圏戦闘機に負った損傷を、総出で修理している。整備の作業ができない者は、ハリー・ヤマシタとの戦いに向けて休みを取っていた。ただしアルバート中尉だけは指令室に詰めている。
おもむろに立ち上がると、キースは窓を開ける。この惑星の短い夏の夜風が、彼の頬を撫でた。もっとも夏に限らず、この惑星の季節は全て短いのだが。彼の視線は、エクスターミネーター……彼の父親の機体であるデスサイズが、彼の手によって爆散した現場の方角へ向く。
(あのとき、砲撃しないでデスサイズの足を蹴り折っていれば……。そうでなくても、あれだけ意気地のない男だとわかっていたなら降伏勧告を先にしていれば……。デスサイズを取り戻せていたかも知れない……。)
それが後知恵だと言う事は、重々キースには分かっていた。それにあのとき、キースの仲間たち『SOTS』の残りと、アルバート中尉の『機兵狩人小隊』は、戦車部隊とやりあっていた。戦意も低く技量も拙いとは言え、中口径オートキャノンが4門、20連長距離ミサイル発射筒が4門、粒子ビーム砲が4門、6連短距離ミサイル発射筒が4門、10連長距離ミサイル発射筒が4門、そして中口径レーザーが4門と、総数にしてこれだけの火器が味方に向けられていたのだ。
これだけの砲火が向けられていれば、何発かのまぐれ当たりは充分にあり得る、いや実際にあった。致命打こそなかったものの、味方のバトルメックは各々かなり装甲板を削られていた。あのときは、一刻も早く戦闘を終わらせる必要があったのだ。そのためには、悠長にやっている余裕はない。あの時は、後ろから撃つのが最善だったのだ。
その時、ドアをノックする音が執務室に響く。キースは応えた。
「どうぞ。」
「失礼します。」
入って来たのは、『機兵狩人小隊』の副隊長であるサラ・グリソム少尉であった。作業ツナギを着用しているが、何処と無しにビシッとした印象を受ける。
「キース中尉のマローダーは、装甲板の修理と弾薬の補充を終えました。ウォーハンマー、ライフルマン、ウルバリーンも同じく。『機兵狩人小隊』『デヴィッドソン装甲巨人隊』のメックは、もうすぐ完了です。
4機の気圏戦闘機についても、予備部品はほとんど無くなりましたが修理完了まであと1時間と少しです。鹵獲した中にあった、元『BMCOS』のバトルメック、戦車、気圏戦闘機については、修理部品と時間、および恒星連邦へ届け出る書類などの関係で、今回の修理はとりあえず見送りたいとサイモン曹長からの伝言です。」
淡々とした口調で伝えるサラ少尉に、キースは内心で圧迫感を感じる。彼はできる限り平常な声音で、彼女に伝えるべきことを伝えた。
「そうか、ありがとうサラ少尉。こちらの翻訳作業は、まだ半ばと言ったところだ。完了したら、すぐにアルバート中尉に連絡を入れる。」
「了解。失礼します。」
踵を返すサラ少尉。だが彼女は、ふと足を止める。そして振り向かずに、呟く様に言った。
「……アルバート中尉は、かつて裏切りにあって、そしてその裏切り者と決着をつけた経験をお持ちです。ですので……。」
彼女は言葉を探している様に、多少詰まった。だがすぐに話し出す。
「ですのでアルバート中尉に、キース中尉のお気持ちが100%わかるとは言えませんが、幾ばくかなりはおわかりになっていると思えます。以上です。では。」
今度こそサラ少尉は出て行った。キースはしばし立ち尽くしていたが、やがて両掌で自分の顔をパン!と叩いて気合を入れると、執務机に向かって翻訳作業を精力的に続けた。その効率は、先ほどまでとは比べものにならなかった。
「……と、言うわけで、この翻訳文と添付した惑星詳細マップによれば、この惑星の北極圏近くにあるこの島、ベルゲングリューン島にバトルメックの製作施設が存在することになっています。降下船の着陸可能な地点は何か所かありますが、問題の遺跡のすぐ傍らにはおそらく敵のユニオン級が着陸していると思われます。敵の規模は1個中隊。気圏戦闘機はシロネ戦闘機が2機ありましたが、いずれもこちらのライトニング戦闘機に撃墜されています。」
古文書の写しの翻訳が終了し、キースはアルバート中尉にそれを報告していた。その場には、今までバトルメックの修理作業を手伝っていたアーリン中尉も、ツナギ姿のまま立っている。ちなみにアーリン中尉の顔はかなり眠そうだが、必死で眠気を噛み殺している様だ。
アルバート中尉は難しい顔で、地図のコピーを検討する。
「相手の規模からして、可能な限りの戦力を注ぎ込む全力出撃をしたいが……。他の敵は来てないから、この基地に戦力を残しておく必要は考えないことにしよう。敵の陣容は……こっちの書類か。
ええと、指揮小隊が75tオリオン1、65tサンダーボルト1、55tK型シャドウホーク2、65tシロネ戦闘機2……と、このシロネ戦闘機は考えなくて良かったんだな。
火力小隊が60tライフルマン2、55tシャドウホーク1、55tK型ウルバリーン1。この火力小隊に気圏戦闘機隊をぶつけるのは危険だな。ライフルマンが2機もいる上に、シャドウホークの中口径オートキャノンも対空能力は高い。
偵察小隊が、45tD型フェニックスホーク1、55tグリフィン1、55tK型ウルバリーン1、45tフェニックスホーク1……。D型フェニックスホークは、まず間違いなく奪われた『BMCOS』の機体だろうな。」
「はい。ですが間違っても手加減なんかしないでください。完全破壊してしまっても、諦めはつきます。それより味方の方が大事です。」
頷きつつも、キースは言う。彼は惑星政府の気象予報部から取り寄せた気象データをアルバート中尉とアーリン中尉に配った。
「ベルゲングリューン島は北極圏近くにあるとは言っても、今は北半球は夏真っ盛りです。気温データはメックの再調整が不要なことを示しています。」
「凄いわね。キース中尉、惑星学者でも務まるんじゃないの?」
「流石にそこまでは行きませんよ。約束通り『デヴィッドソン装甲巨人隊』と合併して部隊規模拡大したら、自前の専属惑星学者を雇わないと。アーリン中尉も、今からだれか心当たりが無いか、伝手を辿ってみてください。俺も自分の伝手で探してみますから。もし両方見つかっても、それはそれで構いません。惑星学者はチームで雇用した方が心強いですから。
……っと、そうじゃない。遺跡のポイントがXポイント、我々の着陸地点はA、B、CのうちAかBが良いと思われます。移動に使用する降下船ですが、今回はゾディアック号、ヴァリアント号、ゴダード号の勢揃いで行きましょう。ライトニング戦闘機1番機と2番機及び『SOTS』バトルメック部隊にスナイパー砲車輛はヴァリアント号、3番機と4番機及び『デヴィッドソン装甲巨人隊』バトルメック部隊はゴダード号、『機兵狩人小隊』と3個歩兵小隊のうち2個小隊をゾディアック号へ、それぞれ載せましょう。歩兵部隊には先の戦いで若干の負傷者が出てますから、1個小隊減らして再編成します。
レパード級2隻で先行して『SOTS』と『デヴィッドソン装甲巨人隊』を降ろし、着陸ポイント地点を警戒。そこへユニオン級ゾディアック号を降ろして3個小隊が揃ったら歩兵小隊と共にXポイントへ進発します。」
アルバート中尉は地図を眺めていたが、頷いて言う。
「Bポイントにしよう。Bポイントの方が若干遠い上に、間に丘陵があって迂回する必要がある。しかしスナイパー砲をこの丘陵陰に置けば、距離的には充分届くし、相手からは完全に死角になる。」
「そうね、私も賛成だわ。そちらの方がAポイントよりも平地が広いから、着陸が楽でしょう。ゾディアック号の船員は、船長副長含め、まだまだ船に慣れていないでしょう?」
「ではBポイントと言う事で。」
ふとアーリン中尉は、眠い目をこすりながらキースに尋ねる。
「フォートレス級ディファイアント号と、ユニオン級エンデバー号はどうするの?」
「まだ使えません。船長や航法士、機関士はゾディアック号副長や航法士見習い、機関士見習いたちを昇格させればいいでしょうが、動かすだけならともかくまともに戦闘させようとすると船員が圧倒的に足りません。それに権利関係の書類手続きも、資産継承の処理が終わったばかりで恒星連邦政府への船籍再登録とかがまだ……。今船を動かすと、未登録船での戦闘行為ということで、良くて罰金ですね。
勿論、緊急事態にて鹵獲品を用いた場合の条項とか、いくらでも抜け道はあるんですが、船員が足りない状況で、無理を通して戦闘させる必要も余裕もありません。」
「大量の捕虜にも頭が痛いよ。船員だけで2隻合わせて50人余、これに各メック戦士や戦車乗員、ユニオン級エンデバー号に搭載されてた損傷した気圏戦闘機のパイロット……。基地に付属の収容施設許容量をオーバーしそうだ。MRBから派遣された管理人のパオロ氏は、MRBが恒星連邦政府と交渉したから、契約に従って近いうちに鹵獲バトルメック共々引き取りに来てくれるそうなんだけどね。きっとドラコ側に、馬鹿高い身代金を吹っ掛けるんだろうなあ。一部のメック戦士などを除いて……。」
一部のメック戦士とは、無論のこと元『BMCOS』の機体に乗っていた者たちのことだ。彼らには、『BMCOS』を互いの協定に従って決められた休戦時間中に強襲した、失機者を集めて訓練した特殊部隊員の疑いがかかっている。いや、疑いどころかほぼ間違いは無いだろう。ただ、彼らも命は惜しいため、正規の軍事行動の結果捕縛された「普通の捕虜」のふりをしている。尋問官であるエルンスト曹長は今後しばらく大忙しだ。
「ふ~ん……。ところで作戦開始は連盟標準時間で明朝、と言うか0時過ぎたから今朝のマルゴーマルマル(05:00)で良かったかしら?あと4時間50分しか無い……。もう休んだ方良いわよね。っていうかこの惑星、惑星時間で1日が25時間だから、少しずつ連盟標準時間からズレちゃうのよね。」
「そうだね。じゃあ、そろそろ皆休もう。あー君、後は任せる。何か起きたら遠慮なしに起こす様に。」
アルバート中尉は夜番のオペレーターに後を任せると、キースたちの先頭に立って歩き始める。行く先は宿舎の自室ではなく、本部棟の宿直室だったりするのが何とはなしに悲しい。宿直室はここ1ヶ月半近く、アルバート中尉の巣となっていた。宿舎の彼の部屋は、半分空き部屋である。キースもまた、今日はそこで寝るべく移動を開始。アーリン中尉は非常に眠かったが、それでも野郎どもと雑魚寝するわけにもいかず、ここから宿舎まで走ることになる。
そして朝である。連盟標準時間で午前5時ちょうど、3隻の降下船が轟音と共に基地を飛び立った。レパード級ヴァリアント号とゴダード号の2隻は滑走路から高速で、ユニオン級ゾディアック号は離着床からゆっくりとした速度でと言う違いこそあれ、それはかなりの迫力ある光景であった。
いよいよ敵の本隊の居所がわかりました。敵はこの惑星で1~2を争うお宝の片方(もう片方は自動整備施設)であるバトルメック制作施設を、発掘して持って行くつもりです。主人公たちはそれを阻止できるのでしょうか。