鋼鉄の魂   作:雑草弁士

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『エピソード-026 いざ鎌倉』

 今日は3025年11月1日である。トマス・スターリング率いるドラコ連合第4アン・ティン軍団C大隊が惑星に降下してきてから、3日目であった。キースはドアの影で他から見えない様に栄養ドリンクの瓶をぐいっと呷ってから、駐屯軍基地本部棟のシミュレーター室に入って行く。そこでは13~16歳の子供たちが必死に仮想空間の中で、バトルメックの機体を操っていた。

 彼らがこの特訓を始めてから、2日が過ぎている。キースが仕事でいない間の監督を頼んだアンドリュー軍曹、エリーザ軍曹、ヴィルフリート軍曹、ヴェラ伍長が、教官卓から各シミュレーターに繋がる通信機にがなっていた。

 

「馬鹿野郎!ライフルマンの機体でいっぺんに両手の大口径レーザーを撃つな!ライフルマンの両手に大口径レーザーが付いているのは、いっぺんに撃つためじゃねえ!

 機体を捻ることと合わせて、機体の向き自体を変えなくとも広い範囲をその正面から側面の射界に収めて、最悪の場合でもオートキャノン1門と大口径レーザー1門をどの敵にも撃てるようにするためだ!両手の大口径レーザーをいちどに撃つのは、本当に最後の最後の手段だ!」

「全員の連携を考えなさい!ライフルマン3機とグリフィンを後ろに置いて、装甲の分厚いマッキー改とサイクロプス改で前線を構築、ウルバリーンとD型フェニックスホークは遊撃と言う様に、機体の特性を考えて動きなさい!」

「ああ、もう!何度言ったらわかるんです!D型が多少放熱性能が高いからって、長距離ジャンプして全開射撃しちゃ駄目です!熱が溜まってマイアマーがダレて、機体の機動力が落ちます!

 D型も通常型も、フェニックスホークの命は機動力です!貴方たちの腕前じゃあジャンプ直後には絶対に当たらないんですから、いっそのことジャンプする羽目になったら撃つのやめなさい!

 ウルバリーンは装甲の薄いD型フェニックスホークをかばう様に動いて!ウルバリーンは熱が溜まりにくい機体だから、逆にどんな場合でも当たり目があると思ったらがんがん撃っていきなさい!」

「グリフィンは熱が溜まり易い!だからいっぺんに全武器発射は控えろ!ただし味方が危地にある時はそうも言っていられん!その時は迷わず全武器を発射する臨機応変さも身につけろ!」

 

 エリーザ軍曹が全体的な指摘を、その他の面々が自分の乗機や良く知っている機体についてのアドバイスを受け持っている様だ。ちなみに子供たちは、ライフルマンのうち1機、サイクロプス改、マッキー改までは自分の本来の乗機だが、その他の子供たちは『SOTS』から貸し出される予定の機体を操って訓練している。キースは声を掛けた。

 

「やっている様だな。」

「あ、隊長。いや、しんどいわコレ。こいつら基本的な常識から叩き込まないと、ライフルマン乗りっつーか、支援機乗りとして役に立たねー。それでも多少はマシになって来た、かな?」

「隊長、ご苦労さま。全体的な連携はまだまだだけど、指揮には従って動ける様にはなってきたから、きちんと命令してやれば大丈夫ね。」

「た、大尉。ご苦労様です。この子たち、まだときどきフルにジャンプして全力で射撃する癖が抜けていません。出撃までには矯正しないと、と思ってウルバリーン以外のD型フェニックスホークを宛がわれる予定の子たちが全力ジャンプ後に全開で撃ったら、連帯責任で全員腕立て伏せ100回やらせてますけど……。」

「大尉。グリフィン乗りの小僧は、多少マシになってきました。ただ同じくジャンプ後に全開で撃つ悪い癖がついております。同じく100回の腕立て伏せで制裁を加えていますが……。」

 

 臨時教官たちの報告に、キースは難しい顔になる。ふと教官卓に表示されている画像を見ると、仮想空間でキックを外して転倒するマッキー改の姿があった。彼は各シミュレーター筐体への有線通信をオンにすると、全員に繋ぐ。

 

「シミュレーション一時停止!全員、傾聴!!いいか、お前たちの腕前ではキックを外したときの転倒が怖い!接近しての格闘時には、できるだけパンチ2発を使え!ただし相手の脚部装甲がダメージを受けているとき、両手装備の火器を使用したいときなど、どうしてもキックを使いたい時もある!そうした時のために、キックを外した際の機体バランスを保つコツを1つ教えてやろう!

 いいか、キックを外したり、相手から逆にキックを受けたりしたときは機体のバランスが崩れる!そうした時は、思い切っていったん操縦桿から手を放せ!そして自分の身体を可能なかぎり真っ直ぐに立てようとするんだ!そうすれば神経反応ヘルメットが働いて、自律的にバトルメックの機体を真っ直ぐに立て直してくれる!

 ただし、あくまでコレは初心者向けの話だと言う事を忘れるなよ!今はお前らは時間的に間に合わんからこの方法を勧めるが、将来的には操縦桿を小刻みに動かすことで機体バランスを保てる様になれ!……返事はどうした!!」

『『『『『『了解!!』』』』』』

「ようし……。それと1つ話しておくことがある。いくら憎い敵でも、脱出した者や降伏した者を殺すなよ。もし敵が無法を働いたとしても、だ。

 仮に敵が無法を働いたとしても、お前たちが同じような人間になってしまっては、命を捨ててお前たちを救ってくださった中佐殿が無念に思うだろう。自分たちはそんな無法者を救うために命を捨てたのではない、とな。わかったか!わかったら返事をしろ!!」

『『『『『『……了解!!』』』』』』

「ようし、シミュレーション再開!」

 

 臨時の教官達が、ほう、と息を吐く。そんな彼らに、キースはおもむろに問う。

 

「単純な技量自体は多少上がってきている様に見えるが、どうだ?」

「そうね。あたしの目から見てですけど、初心者としては良いんじゃないですか?」

 

 エリーザ軍曹が一同を代表して答えた。キースは頷く。

 

「そうか……。だがそろそろ時間切れかもしれん。最新の衛星写真で、首都の各地に点在して配備されていた独立小隊が集結し、占領された惑星軍本部基地に移動中なのが確認された。ここを総攻撃する前兆と見るべきだろう。」

「「「「!!」」」」

「子供たちの乗る機体は、サイモン曹長の話では完璧に仕上がっているそうだ。適当なところで切り上げて休ませてやれ。それとお前たちも休憩を取っておくんだ。栄養ドリンクを持ってきたから、お前たちからと言う事にして渡してやれ。お前たちの分もあるからな。」

 

 アンドリュー軍曹は、にやりと笑って言う。

 

「俺のライフルマンの予備部品を回してやるんだから、活躍してもらわねーとな。」

「そうだな……。奴ら自身のためにも。」

 

 キースもにやりと笑って応えた。

 

 

 

 子供たちをひとしきり絞った後、色々な雑用を済ませたキースが指令室に戻って来ると、そこは喧噪に包まれていた。キースはそれに負けない大声を出す。

 

「報告を!ヒューバート中尉!」

「衛星写真の解析結果ですが、つい先ほど惑星軍本部基地の前に整列したバトルメック群を確認しました!」

「よし、トランスグレッサー戦闘機1番機と2番機、ライトニング戦闘機3番機と4番機の爆装、発進準備は整っているな?発進を急がせろ。首都近郊に伏兵させた惑星軍歩兵部隊はどうか?アーリン中尉!」

「準備は整っています!発見されていません!」

 

 ヒューバート中尉とアーリン中尉に頷きを返すと、キースはパメラ伍長とアイラ伍長、エリオット少尉に通信を入れる。

 

「パメラ伍長、コンピュータのデータバンクはどうか?」

『はい、例の地雷配置図情報にアクセスした形跡が、しっかり残っています。足跡を消したつもりなんでしょうが、裏ログにしっかり残存してますね。』

「そうか、ご苦労。アイラ伍長、例の一般職員スパイは?」

『先頃外部に向けて、圧縮データ通信を送信しました。それを傍受して解凍してみたところ、ばっちりです。用済みですし、拘束しますか?』

「戦闘開始と共に、やってくれ。エリオット少尉、駐屯軍歩兵部隊は重要区域の警備に就けたな?万一スリーパー状態のスパイが残っていて、破壊工作を行うとやばい。」

『はっ!ご指示の通りに、特に弾薬庫や動力区画の警備を重点的にしております!』

 

 その時、指令室のドアが開き、惑星公爵ザヴィエ・カルノーが入室してくる。キースは敬礼を送った。ザヴィエ公爵は、手を上げてそれに応える。

 

「大尉、忙しいところ、すまんのう。」

「はい、いいえ大丈夫です。しかして突然のご来訪、何かまずいことでもありましたでしょうか?」

「いや、そうではないわい。戦闘中、わしがここにいても良いかの?いや、大尉の指揮に口を挟むことはせん。惑星軍への指揮権も、全面的に委譲しておるしの。ただ……。自分の目で、見届けたいだけなのじゃよ。」

 

 キースは一瞬考えるが、すぐに首肯する。

 

「ではその間、この発令所司令席でご観戦ください。ここからならば、全ての情報が一目瞭然です。自分はバトルメックで出撃いたしますので、ご遠慮なさる必要はございません。」

「うむ。感謝するぞ、大尉。」

「はっ!」

 

 そしてキースは軍服の襟元を緩めつつ放送設備に移動し、スイッチを入れて言葉を発する。

 

「駐屯軍、惑星軍全メック戦士及び航空兵、戦車兵は自身に割り当てられた機体に搭乗準備!発進に備えよ!繰り返す、駐屯軍、惑星軍全メック戦士及び航空兵、戦車兵は自身に割り当てられた機体に搭乗準備!発進に備えよ!」

 

 キースは自身の上着をはだけながら、周囲のオペレーターたちに言い放った。

 

「あとの指示は、俺のマローダーから行う!俺たちは格納庫へ行くから、マローダーとの間に回線を空けておけ!行くぞアーリン中尉!ヒューバート中尉!」

 

 キースは格納庫へ向けて疾走する。その後を、アーリン中尉とヒューバート中尉が追った。

 

 

 

 マローダーの通信装置に、推進剤をほとんど消費しない低速巡航で上空待機しているライトニング戦闘機1番機と2番機からの報告が入る。

 

『こちらライトニング戦闘機1番機マイク少尉。隊長、北方に多数の機影を確認。招いてないお客さんがやって来た様っす。』

『ライトニング戦闘機2番機ジョアナ少尉です。敵機の数は……40機。隊長の予想通り、分進合撃とかしないで一塊になって来ました。』

「ご苦労、マイク少尉、ジョアナ少尉。スナイパー間接砲サイモン曹長、およびフォートレス級降下船、ロングトムⅢ間接砲ボールドウィン伍長、準備はどうか?」

『こちらは万全ですわい、隊長。基地周辺の風力もあらかじめ調査済みですからの。撃ち込むポイントを指示してくれるだけで、いつでも完璧ですわ。』

『はい、大尉。こちらも準備完了です。あらかじめ照準を完了している地点に砲弾を送り込むだけですので、自分の未熟な腕でも誤射はありません。』

 

 サイモン老と、ボールドウィン・アクロイド伍長が自信満々に請け負う。更にキースは、基地に2基ある砲台にも通信を送る。そこの指揮官代理はネイサン軍曹と、ジェレミー・ゲイル伍長だ。

 

「A砲台指揮官代理ネイサン軍曹、B砲台指揮官代理ジェレミー伍長、今回はそちらの射程に敵機が入ることは滅多にないと思うが、その際は頼んだぞ。」

『こちらネイサン軍曹。隊長、任せてください。』

『ジェレミー伍長です。隊長、お任せください。』

 

 ここでキースのマローダーに、秘匿通信が2本入った。発信元を確かめてみると、エリオット少尉とアイラ伍長だ。キースは双方に向けて回線を開く。

 

「アイラ伍長、ちょうどエリオット少尉と通信が重なったんだ。少し待っていてくれ。エリオット少尉、どうした?」

『はっ!キース大尉、ご報告します!やはり敵スパイのスリーパーがいたと見えて、破壊工作のために弾薬庫と動力区画、それに本部棟を狙ってまいりました。ですが何れも阻止、工作員は全員射殺いたしました。』

「ご苦労、エリオット少尉。だが、まだ警戒は続けておいてくれ。待たせたな、アイラ伍長。」

『はい、いいえそれ程でもありません。例の一般職員に成りすました敵スパイですが、敵の攻撃がはじまりそうなので、そわそわしています。攻撃前に、なんとか脱出したいと考えているのでしょう。少し予定を早めて拘束しますか?』

「……いや、できれば捕縛したいが逃げられてもそこまで惜しくは無い。そいつが送った情報の信ぴょう性の方が大事だからな。敵が罠にかかるか、罠が見破られていることが明らかになるまで様子を見ていてくれ。」

『了解です。』

 

 秘匿通信を終えたキースは、惑星軍と駐屯軍の機甲部隊に通信を繋ぐ。

 

「惑星軍ジョニー・カートライト大尉待遇中尉、貴官の部隊スコーピオン戦車14輛は、惑星軍の新人メック戦士たち12名の支援を中心に行ってくれ。ただし遠距離支援にとどめ、絶対に前に出ない様に。」

『了解です。アントナン・カレ司令が命を捨ててまでして逃がした雛鳥たちですからな。しっかり支援してみせますとも。』

「本当に前に出るなよ?駐屯軍イスマエル少尉待遇軍曹、ベンジャミン少尉待遇軍曹、レオポルト少尉待遇軍曹、貴様たちの部隊の戦車は俺たち駐屯軍メック部隊の支援だ。背中は任せたぞ。」

『了解。お任せあれ、大尉。』

『了解です、大尉。ハンター戦車の主武装は長距離ミサイル発射筒ですからな。かなり後ろからでも届きますよ。』

『了解、大尉。まだ雛どもの腕前には不安が残りますが、なんとかやらせてみます。』

 

 機甲部隊の戦車は、そこそこ頼りになりそうだと見て取ったキースは、指令室との回線を開いた。

 

「指令室、こちらキース・ハワード大尉。ライトニング戦闘機3番機と4番機、トランスグレッサー戦闘機1番機と2番機の様子はどうだ?」

『まだ報告ありません。いえ、今入電中です。回線をそちらにお回しします。』

『……こちらライトニング戦闘機3番機、爆撃隊臨時指揮官ミケーレ・チェスティ少尉です。爆撃任務、完了しました。敵ユニオン級3隻の着陸脚の足元に大穴を掘って、船体を斜めに傾けさせることに成功しました。敵ユニオン級は駐屯軍基地攻撃部隊を支援するために発進しようとしていた物と見えましたが、船体があれだけ傾いでいれば腕利きの船長でも発進は不可能でしょう。再度の発進は、反対側に同じくらいの穴を掘るなりなんなりして、船体の傾きを許容範囲に収めなければ、相当な腕前の船長でも不可能でしょう。少なくとも、自分には無理です。

 ですが当機をはじめ、ライトニング戦闘機4番機、トランスグレッサー戦闘機1番機2番機、全機が敵ユニオン級の対空砲火を受け、装甲がかなりやられています。致命的なところに喰らった機体はありませんが、戦闘参加は不可能です。』

「いや、良くやったミケーレ少尉。コルネリア少尉、ヘルガ少尉、アードリアン少尉にも良くやったと伝えてくれ。君たちは今後高度を上げ、高高度にて低速巡航に移り、高高度偵察に従事してくれ。」

『はっ!了解しました。』

 

 そしてキースは指令室に、もう1つの作戦の推移状況を尋ねる。

 

「指令室、惑星軍歩兵部隊の方は、どうなっている?」

『ただ今首都ドリステルの要所を占拠しているドラコ連合歩兵部隊と交戦中です。数が圧倒的に違うので、有利に戦闘を進めている模様です。』

「敵を追い詰めた際に、バンザイ突撃にだけは注意しろと伝えてやってくれ。そうなったドラコ歩兵は、脅威……いや、恐怖そのものだ。」

『了解しました。』

 

 次にキースは、駐屯軍および惑星軍双方のバトルメック部隊に通信回線を繋いだ。

 

「アーリン中尉、ヒューバート中尉、偵察小隊と火力小隊はどうだ?」

『こちらアーリン・デヴィッドソン中尉。偵察小隊は全員準備万端整ってます!』

『こちらヒューバート・イーガン中尉。こちらも戦闘準備OKです。ただ、メック戦が初めての2人に、ちょっとお言葉をかけていただけますか?』

「了解だ。」

 

 ヒューバート中尉の言葉に、キースは承諾の意を返す。

 

「ロタール軍曹、今日がお前のメック戦士としての初陣だな。なに、気負うことは無い。お前は既に戦闘を潜り抜けてきているのだ。それがちょっとばかり規模が大きくなっただけだ。ただ、ちょっとだけ注意しておくぞ?お前の乗るクルセイダーは、装甲こそ厚いもののミサイル弾薬庫の様な物だ。15連長距離ミサイル発射筒の弾薬を使い切るまでは、前には出るな。

 カーリン伍長、お前は戦闘自体が初めてだったな。まあ心配することは無いぞ。お前の周りには、心強い戦友がいる。皆、お前を守ってくれる。だからお前も皆を守るんだ。グリフィンは俺も使ったことがあるが、良いメックだ。敵に接近さえされなければ、格上の敵ともしぶとく戦い抜ける。そしてお前の仲間たちはお前に敵を近づけさせはしないだろう。いいな?仲間を信じろ。」

『了解です、大尉!ありがとうございます!』

『大尉……。了解っ!』

 

 いよいよキースは、惑星軍のメック部隊に声をかける。まずは指揮官と副指揮官の2機のフェニックスホークだ。

 

「ケヴィン大尉待遇中尉、レオナルド中尉、準備はいいか?」

『はい、ありがとうございます大尉。うちの雛鳥どもがご迷惑をおかけした様で……。』

『本当なら、我々がやらねばならなかったことですが……。』

「気にするな……と言っても難しいか。なら、せいぜい恩に着てくれ。その借りは、この戦場で返してくれると嬉しいんだがな。それと、雛鳥たちに君たちの頭を飛び越えて直接命令しなければならないこともあると思う。先に謝っておく。すまん。」

『了解です。気にしないでください。』

『了解。あの雛鳥たちを鍛えていただいたのです、そのぐらいのこと……。』

 

 指揮官機たちの次は、3機のD型フェニックスホークとウルバリーンである。

 

「イルヴァ伍長、ヴィルジール伍長、マックス伍長、テオドール伍長。貴様たちの仕事は何だ?」

『『『『遊撃です!』』』』

「そうだ、非常に臨機応変さを必要とするポジションだ。あるときは味方の盾になり、あるときは支援し、あるときは主力の代わりを務めることすらある。ケヴィン大尉待遇中尉とレオナルド中尉の指示を、聞き損ねるなよ。」

『『『『了解!』』』』

 

 その次は、マッキー改2機とサイクロプス改2機の試験機たちだ。

 

「ハビエル伍長、ワンダ伍長、クリスティーナ伍長、ロベルト伍長。貴様たちが乗る機体は何か?」

『『『『テスト機です!』』』』

「そうだ、テスト機だ。貴様たちの機体は強力ではあるが、いつ何時不具合が表面化するかわからん。そうなったらさっさと後退するんだ。味方の邪魔はするなよ。

 それとマッキー改の2人、マッキー改は右側の胴体に弾薬を積んでいる。あまりそちらを敵に向けるなよ。シミュレーターでも、何度そこに直撃をくらって機体が吹き飛んだかわからんだろう。それ以外の場所であれば、その重装甲はかなり頼りになるがな。覚えておけ。

 サイクロプス改の2人、サイクロプス改は接近戦を得手とするバトルメックだ。敵が地雷原を突破してきたら、前に立って戦うんだ。憶するな。できるな?それまでは大口径レーザーで支援に努めていろ。」

『『『『了解!』』』』

 

 そしてライフルマン3機とグリフィンの支援機組の番が来た。

 

「ジャスパー伍長、ベネディクトゥス伍長、アリス伍長、デクスター伍長。貴様らのメックに共通する弱点を言ってみろ。」

『『『『過熱しやすいことです!』』』』

「その通りだ。だからできる限り過熱は避けなければならん。が、そうも言っていられない場合も多々ある。だから過熱を恐れろ、しかし恐れすぎるな。いざという時は、仲間を救うために全力射撃も辞さない覚悟でいけ。

 それといったん過熱したら、放熱のためにしばらくは撃つな。今度は仲間を信じて撃たずに耐えるんだ。シミュレーターで散々やった呼吸だ、身に染みて覚えているな?できるな?」

『『『『はい!』』』』

 

 キースは頷くと、今度は惑星軍の若手メック戦士たち12人全員に向けて言う。

 

「いいか。貴様たちのメックは、半数が畏れ多くも公爵閣下から貸与された品であり、半数は俺たち傭兵部隊『鋼鉄の魂』……『SOTS』から貸し出された物だ。壊すな、とは言わん。だが最低限動く状態で公爵閣下にお返しし、俺たちに返却しろ。いいな。」

『『『『『『はいっ!』』』』』』

『……隊長、それじゃ全然わからねえってばよ。』

『そうよ?いえ、そうですよ?いい、あんたたち。隊長はね、あんたたちに「死ぬな」って言ってるのよ?』

『『『『『『……了解っ!!』』』』』』

 

 割り込んだアンドリュー軍曹とエリーザ軍曹が、キースの台詞の裏をネタばらしする。キースはごほん、と咳払いをする。キースはおもむろに指揮小隊だけの小隊内秘匿回線を繋ぐ。

 

「はずかしいから、言わんでくれないか。アンドリュー軍曹、エリーザ軍曹。」

『何言ってるのよ。こういう事は、きちんと言ってやらなきゃ駄目!』

『そうだそうだ。その通り。』

『隊長は照れ屋さんなんですよ。』

 

 キースは苦笑しつつ言葉を紡ぐ。

 

「……いよいよトマス・スターリングがやって来る。皆、すまんが力を貸してくれ。」

『あったりまえだろ!?ハリー・ヤマシタのときに、あれだけ世話になったんだ。今度は俺らの番だぜ!』

『そうよ、隊長。今さら変な遠慮しないの!』

『そうですとも。下手な遠慮していると、トマス・スターリングの首を私たちが貰ってしまうことになりますよ?』

「それは困るな。ははは。」

 

 キースは全体に通信を繋ぎ直した。彼は気迫を込めて言う。

 

「皆、多くは言わん。勝つぞ!」

『『『『『『おおーーーっ!!』』』』』』

 

 味方の士気が一斉に高まる。キースは叫んだ。

 

「サイモン曹長!ボールドウィン伍長!予定通り敵がイエローラインを超えたらロングトムⅢが指定ポイント1へ、レッドラインを超えたらスナイパー砲がBASE-ON-29831ポイントへ射撃開始だ!」

『了解ですわい!』

『了解!』

 

 そして敵が姿を見せる。地雷原のある場所を、警戒もせずに無造作に突き進んだ敵だったが、やがて先頭にいたウルバリーンとシャドウホークの足元で爆発が起きた。敵は何やら泡を食った様子である。一部の敵が慌てて後退しようとしたが、そこへスナイパー砲とロングトムⅢの砲弾が、連続して着弾する。

 

 ヒュウウゥゥ……、ドガッ!!

 ヒュウウゥゥ……、ドゴオォン!!

 

 後退しかけた敵の鼻先に間接砲撃が着弾し、若干の被害をその敵に与えた。更にその地点の周辺に、次々と砲弾が降ってくる。進むもならず、戻るもならずと言った状況に追い込まれた敵部隊は、最も重い80tのヴィクターを先頭にして遮二無二進んで来た。ヴィクターの重量が引き起こす重い震動に、数多くの地雷がヴィクターのかなり先で爆発する。だが幾ばくかの地雷はヴィクターの足元で爆発し、その脚に被害を与えていた。

 キースはアイラ伍長に通信を入れる。

 

「アイラ伍長、もういいぞ。もしまだ例のスパイが残っているなら、拘束してしまってくれ。敵は罠にかかった。」

 

 そう、敵のスパイが盗んだ地雷原の配置情報は、キースの命によりコンピュータのスペシャリストであるパメラ伍長が作成した、偽データであったのだ。保険どころか宝くじ程度にしか思っていなかったキースであったが、宝くじは見事に当たったのである。

 だがキースは、地雷原を強引に突破せんとするヴィクターに目を向ける。

 

「……思っていたよりも勇敢だな、トマス・スターリング。先頭に立って地雷原を突破せんとするとは。いや、士気を保つためにはそれしか無いと踏んだか?ふむ……。この距離では命中の目があるのは、指揮小隊だけだな。だが撃たない理由も無い。

 指揮小隊、目標は敵の二番手、70tアーチャー!射撃用意……撃て!」

 

 号令と共に、指揮小隊のバトルメックから長距離兵器の斉射が行われる。その攻撃はほとんど外れなしで目標のアーチャーに突き刺さる。目標となったアーチャーと、その次に位置するアーチャーも応射するが、これは指揮小隊にかすりもしない。ついにヴィクターが地雷原を突破した。だがその両脚はもはやボロボロである。後ろに続いていたバトルメックが、一斉に展開と射撃を開始した。

 

「各員機動回避!全部隊、撃ち方始め!」

 

 壮絶な火力の応酬が、今始まったのである。




いよいよ本番の戦いが始まりました。惑星軍の少年少女メック戦士たちは、上手く戦えるでしょうか。
そしていきなり罠にかかった敵総大将にして主人公の宿敵、トマス・スターリング。はたして主人公は、家族やかつての仲間たちの仇を討てるのか!?
次回、ご期待ください!
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