鋼鉄の魂   作:雑草弁士

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『エピソード-031 ドリステラⅢ撤退』

 惑星首都ドリステル宇宙港ドリスポートに停泊中の降下船、フォートレス級ディファイアント号の士官用船室を流用した執務室で、キースは1ヶ月後の惑星撤退に関わる書類を作成していた。その中には、できれば役に立って欲しくない「ドリスポート使用許可延長願い」等も含まれている。

 今現在、傭兵部隊『SOTS』が専属契約を結んでいる航宙艦は、マーチャント級クレメント号ただ1隻である。しかしマーチャント級航宙艦が1回の航宙で運べる降下船は2隻。『SOTS』が現在所有している降下船は4隻であるため、全ての降下船をマーチャント級航宙艦1隻で運ぶには、ピストン輸送が必要になるのだ。つまり2隻を運んで行ったクレメント号が戻って来るまで、残りの2隻は惑星上でじっと待っていなければならない。そのために「ドリスポート使用許可延長願い」が必要になるのである。

 その現状をなんとかするべく、航宙艦クレメント号のアーダルベルト・ディックハウト艦長とクヌート・オールソン副長は、自分たちの伝手を使って他の航宙艦を所有している艦長相手に、『SOTS』と専属契約を結んでくれる様に打診していたのだ。しかし今のところ状況は芳しくなく、専属契約を結ぶことに成功したという報告は来ていなかった。このままでは「ドリスポート使用許可延長願い」が本当に必要になってしまうだろう。

 キースは作成した書類を分類して幾つかに分けると、バインダーに挟んで仕舞い込む。彼は首をぐるぐると回した。

 

(一段落ついた、か。さて、いつもならシミュレーター室かトレーニングルームにでも行くんだが、シミュレーターは大半が駐屯軍基地備え付けの物だし、わずかなウチの部隊所有の筐体は分解して積み込んでるからなあ。トレーニング施設も船内に無いし。……外をランニングして、あとはスクワットと腕立て伏せ、腹筋運動、ダンベル運動なんかで誤魔化すか。)

 

 衣服を特大サイズのトレーニングウェアに着替えようとしたところで、室内のインターホンが鳴る。ブリッジからだ。彼はインターホンのスイッチを入れ、着信を受ける。

 

「こちら部隊司令室、キースだ。」

『こちらブリッジのマシュー・マクレーン副長です少佐。』

 

 船長のキャプテンと、大尉のキャプテンを区別するために、降下船に乗船中はキースは一時的に上の階級である少佐で呼ばれる。以前陸上施設で暮らしていた頃はこの慣習が適用されるのは、たまに降下船に乗ったときだけだった。

 だが駐屯軍基地を『ハミルトン大鎚騎士団』に明け渡して以来、部隊を収容する施設がこの惑星に足りないため、宇宙港に停泊させた降下船を施設代わりに使って、彼らは生活している。つまり四六時中乗船中なのだ。当然四六時中彼は少佐と呼ばれることになる。

 

「何かあったのか、副長?」

『少佐にお客様です。先ほど降りて来たミュール級の降下船に乗って来た様ですが。』

「わかった。案内は……。」

『あ、いいえ。ご案内はサイモン曹長が行うそうです。サイモン曹長のお知り合いの様でしたが。』

「そうか、通してくれ。」

 

 ブリッジとの通話を終えたキースは、来客について考える。

 

(……誰だろう。サイモン爺さんの知り合いと言う事は、頼んでおいた自由執事関連かな?)

 

 そこへ執務室の扉のブザーが鳴る。キースはインターホンの回線を繋ぐ。

 

「誰か?」

『サイモン曹長ですわ。お客さんをお連れしましたでのう。』

「入室を許可する、サイモン曹長。」

 

 扉を開けて、サイモン曹長が1人の人物を誘って入室してきた。その人物は、脚が不自由なのか右手で杖をついて歩いている。さらに左腕も妙にぶらぶらしている。どうやら右脚と左腕が義肢の様だ。キースはその人物を見て、思わず声を上げた。

 

「ライナー!ライナー・ファーベルク!」

「お久しぶりです。だいたい半年ぶりですかな、キース坊ちゃん。いえ、大尉殿。」

 

 それは傭兵大隊『BMCOS』に所属していた元偵察兵、ライナー・ファーベルクであった。彼はしみじみと言う。

 

「いや、仇討ちの成功、本当におめでとうございます。手紙を貰って、何度も読み返しましたよ。そして本当だと実感してからは、喜びの涙が溢れてきましてね……。」

「そうか……。ありがとう、ライナー。」

「しかし、あっと言う間でしたな。いや仇討ちの話ではなく、キース大尉がこれだけ大きな部隊を率いる様になるとは……。」

 

 ライナーは感心しきりと言った様子だ。キースは苦笑する。

 

「いや、『BMCOS』の遺産あったればこその話だよ。」

「それでも、それを取り戻したのはキース大尉の努力によるものですよ。運もあったでしょうが、キース大尉の意志がまず最初に無ければ、この部隊……『SOTS』でしたか。これは存在すらしていなかったのですからね。」

「そうですぞ、隊長。確かにハリー・ヤマシタやトマス・スターリングの奴がこの惑星に攻め寄せて来なければ、『BMCOS』の遺産を取り戻すことも叶いませんでしたでしょうがの。まず第一に、隊長が動いたのがきっかけで『SOTS』が生まれ、『SOTS』があったればこそ奴らを討てたんですわい。もし『SOTS』が無かったら、今頃奴らに良いようにやられておったかも知れませんのう。」

 

 ライナーとサイモン老の言葉に、キースは照れて苦笑を漏らす。そこへサイモン老が言葉を被せた。

 

「おっと、今回ライナーをわざわざ招聘した理由を忘れるところでしたわい。」

「招聘?ライナーを呼んだのはサイモン曹長だったのか。いったい何が目的で?」

「いや、ライナーは左腕と右脚を失って偵察兵としての活躍が見込めなくなりましたのは、隊長も知っての通りですがの。それでライナーは何か適当な仕事に就くため、簿記や経理の勉強をしておったんだそうですわ。今は2級の資格も取ったそうですわい。そして人間的にもわしらにとって、これ以上信頼できる人物はそうはおらんでしょう。」

 

 思わずキースは、目を見開く。サイモン老の考えが読めたからだ。

 

「なるほど、サイモン曹長。では彼を推薦すると言うわけだな?」

「はい。我が部隊の自由執事に、ライナー・ファーベルクを推薦したいと思う次第でありますわい。」

 

 顔をライナーに向けて、キースは真面目な表情で尋ねる。

 

「ライナー、わざわざ来てくれたと言う事は、うちの部隊の自由執事になってくれると考えてかまわないのか?」

「はい、願っても無い話です。第一線で働ける身体ではありませんが、この仕事であれば私でもキース大尉たちの助けになれる。元『BMCOS』第3中隊付き偵察兵であった私からすれば、この上ない再就職先です。」

「そうか……。ライナー、給与などの関係から、君の扱いは少尉待遇になる。もっとも実戦部隊への命令権は無いし、指揮系統にも組み込まれない。それでかまわないか?」

 

 ライナーは驚く。彼は『BMCOS』での最終階級は、軍曹だったのである。

 

「キース坊ちゃん、いえ大尉。少尉待遇など行き過ぎですよ。」

「いや、自由執事ともなれば、部隊の資産全体について責任を負ってもらうことになる。少尉待遇ですら、本当は足りないぐらいなんだ。

 ああ、サイモン曹長も正式に上級整備兵として、この仕事が一段落ついたら少尉昇進してもらわないとな。全バトルメック、全気圏戦闘機、全整備兵と全助整兵に責任を負う立場なんだから。まあライナーと違い正式な士官だから、士官任用試験は受けてもらわんといかんが。

 『SOTS』は急速に拡大し過ぎたせいで、人材がまだまだ足りない。自由執事の他にその手足となって働いてもらう総務の面々も必要だし、武器担当官もいないから他の役職の者が兼任しているザマだ。これで隊の者が何処かから嫁取り婿取りでもして家族でもできたら、その子供に対する教育を行う教育担当官も必要だ。

 と、話がずれたな。ある程度の権限と権威を君に持たせる必要性から、少尉待遇は最低ラインなんだ。受けてくれないか?」

「むむむ……。」

 

 一時は過剰な待遇だと固辞しようとしていたライナーだったが、キースの説明を聞いて唸る。やがて彼は頷いた。

 

「……お受けします。キース大尉。これからよろしくお願いします。」

「ありがとう、ライナー。本当に助かる。これで書類仕事が随分楽になる。ああ、それと隊の総務の人間なんだが、君の権限で選任して雇用してかまわない。信頼できる人間を選んでくれ。ライナーの執務室は早急に用意するから、そうしたら早速仕事を始めてくれ。」

「了解しました。まずは自分が寝泊まりする船室の手配が初仕事になりそうですな。ははは。」

 

 ライナー自由執事は笑った。それを見て、キースとサイモン老も笑みを浮かべる。この日を境に、キースの書類仕事は格段に楽になった。

 

 

 

 その日キースは喜びを隠しきれずに、時折にやにやと笑みを浮かべていた。アーリン中尉とヒューバート中尉が、怪訝な顔をする。

 

「どうしたんです?キース大尉。やたらご機嫌な様ですが。」

「深宇宙通信施設から帰って来てから、様子が変ですな……。」

「……む、そんなに変か。いかんな、気を付けないと。いや、な。この書類を見てくれ。深宇宙通信施設に、圧縮データ通信で届いていた物だ。」

 

 アーリン中尉とヒューバート中尉は、手渡されたその書類を読んで目を見張った。

 

「インベーダー級航宙艦イントレピッド号艦長イクセル・ノートクヴィスト艦長と暫定契約成立!?」

「凄い、やったじゃないか!なになに、元傭兵中隊『ヴィンセント軽装機団』の持ち船だったが、同傭兵中隊は壊滅により解散、それ以後は他の傭兵部隊などの降下船を運んだり、商用の不定期貨客船を運ぶことで生計を立てていた、か。」

「仲介と交渉を受け持ってくれたマーチャント級クレメント号のアーダルベルト艦長によると、我々がこの惑星を撤退する際は、俺の乗った降下船はイントレピッド号にドッキングして欲しいそうだ。イクセル艦長は、そこで俺個人を見定めてから、本契約を結ぶかどうか決めると言っているらしい。俺の責任は重大だな。」

 

 アーリン中尉とヒューバート中尉は、それを聞いても安心した表情だ。

 

「なら大丈夫ですよ。」

「ええ、自分もそう思います。キース大尉と会えば、きっとその人柄がわかってもらえます。」

「そう持ち上げないでくれ。増長しかねない。それに絶対に大丈夫とは言い切れないだろう?俺は若僧だぞ?」

 

 頭を掻きつつ、照れくさそうにキースは応える。アーリン中尉は苦笑し、ヒューバート中尉はやれやれと言った風情で、両者とも肩を竦めた。

 

「なんでこう自分に自信が無いのかしらね。」

「メック戦士養成校時代から、その優秀さとはうらはらに高慢さとは無縁だったんだが……。良いところでもあるが、欠点でもあるな。自分を過小評価すると言う意味で。」

「……まあ何はともあれ、だ。これで惑星から退去する際には、航宙艦によるピストン輸送をせずに済んだな。」

 

 強引に話題を変えるキースだった。

 

 

 

 年が明けた3026年1月7日、惑星公爵邸にてキースたちの送別会を兼ねた新年会が開かれた。キースをはじめとする『SOTS』の士官及びメック戦士や航空兵たちは、惑星公爵より全員が参加するよう要請――実際のところ命令――されている。キースは主だった人々に挨拶回りを終え、ようやく一息ついていたところだった。

 アンドリュー軍曹が、アイスティーを持って来てくれる。

 

「ご苦労さん、隊長。」

「ああ、ありがとう。やれやれ、これだけ人が多いと挨拶回りも大変だ。だが、だれかに任せるわけにもいかんからな。」

「そう言えば惑星軍の新前……。いや、戦いを潜り抜けたんだからいつまでも新前扱いは可哀想か。若僧、ガキども、う~ん。まあいいや、例の子供たちが隊長を探してたぜ?」

「ほう?じゃあちょっと行ってみるか。」

 

 アイスティーを飲み干し、キースは席を立つ。幸いにも、目的の人物たちはすぐに見つかった。

 

「あ……。大尉!敬礼!」

 

 惑星軍の若手メック戦士たちは、一斉に敬礼を送ってくる。キースは答礼をすると、できるだけ柔らかい口調で言った。

 

「楽にしろ。で、俺を探していたそうだな?ハビエル軍曹、ワンダ軍曹、クリスティーナ軍曹、ロベルト軍曹、ジャスパー軍曹、テオドール軍曹、イルヴァ軍曹、ヴィルジール軍曹、マックス軍曹、ベネディクトゥス軍曹、アリス軍曹、デクスター軍曹。

 ああ、言い忘れるところだった。遅くなって済まんな。昇進おめでとう。」

「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」

 

 そう、例の子供たちは戦闘を潜り抜けたこと、戦果をあげたこと、そして技量の向上を鑑みられて、全員1階級昇進していた。キースはふと思う。

 

(そうだ。火力小隊のカーリン・オングストローム伍長も、実力から言って伍長のままにしておくのは何だな。他にも歩兵部隊や機甲部隊に、昇進させたい奴らが何人かいる。この惑星から撤退したら、部隊の人員の階級を見直して昇進させるところはさせておこう。)

「あ、あの、大尉!……で、デクスター。お前が言いだしっぺなんだから、お前から言えよ。」

「あ、う、うん。わかった。大尉!その節は本当に、その、ご教導とご鞭撻、ありがとうございました!おかげさまで自分たちは、アントナン准将の仇討に、その、幾ばくかなりとも……。自分たちの勘違いや己惚れでなければ、少しだけでも貢献できたと思います。全ては大尉とその部下の方々のおかげです。本当に感謝しています。」

「……そうか。俺としては、俺自身のしたことは些細な物で、全てはお前たちの努力と覚悟があの結果を引き寄せたのだ、と思っているのだが。だがお前たちがそこまで言ってくれるのは、悪い気はしないな。」

 

 キースは惑星軍の若手メック戦士たちの姿に、思わず笑みがこぼれた。デクスター軍曹は続ける。

 

「大尉と部下の方々が教えて下さったことは、忘れません!いつかまたこの惑星においでになったときは、今以上に成長した姿をお見せしたいと思っています!」

「ああ。またいつか会えることを祈っている。それまで壮健でな、戦友たち。」

「せ、戦友……!はっ!ありがとうございます!」

「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」

 

 子供たちが揃って唱和し、再度敬礼をしてくる。キースもまた答礼を返す。そして惑星軍若手メック戦士たちは、去って行った。それをしばらく見つめていたキースだったが、後ろから近寄って来る気配に気付く。

 

「ほっほっほ。たいした人気じゃの、ハワード大尉。」

「これは閣下。先ほどは挨拶もそこそこに、ご無礼申し上げました。」

「なに、わしの方こそ他の客人の相手を優先せねばならず、お主も他に挨拶回りせねばならん相手も多かったのじゃろう?気にしてはおらぬよ。」

 

 そう、その気配はドリステラ公爵ザヴィエ・カルノーその人であった。キースが敬礼を送ると、ザヴィエ公爵は片手を上げて応えた。

 

「しかし、早かったのう。お主がはじめてわしの前に現れたのは8月末じゃったから、もう4ヶ月と少しか。あのときお主は、血気にはやる若手士官を演じていたものじゃったが。あの頃に比べると、肩の力が程よく抜けたのう。お主はその様に、演技などせず自然体の方が交渉事も上手く行くと思うぞ。のう?」

「は、あのときは失礼いたしました。」

「良い良い、自分たちの部隊のため、駐屯軍全体のため、必死だったのはわかる故にの。それは転じて我が惑星のためじゃ。」

 

 ザヴィエ公爵は、楽しそうに笑った。キースは気になっていたことを聞いてみる。

 

「閣下、お孫様のご様子はいかがでございましょうや?」

「ふむ、お主が気になっておるのは、孫ではなしにバレロン伯爵ジョナス・バートン卿の方であろう?ほっほっほ。孫からの手紙では、バレロン伯爵は相も変わらず身持ちが固く、中々物にできんそうじゃ。

 孫のシャロンも、バレロン伯爵のことは憎からず思っていたそうなのじゃが、難しい物よのう……。それでも多少は話のできる間柄にはなった様じゃがの。」

「そうでありますか……。いえ、自分といたしましても、バレロン伯爵に個人的な友人ができることは歓迎するものでありますし、その関係が更に進むとしても何か言うことはございません。

 ですがバレロン伯爵の個人的な事情は、非常にデリケートな問題であると言う事を念頭に置いていただきたく存じます。」

「そうか。シャロンには気を付ける様に手紙で伝えておくとするかの。」

 

 キースは息を吐く。だがここでザヴィエ公爵は爆弾を落とした。

 

「じゃがの……。孫のシャロンではなしに、別の伝手からの情報での。例のバレロン伯爵に袖にされた女性が、何やら企んでおるかも知れんと言う情報を掴んだそうじゃ。」

「!!」

「確定情報ではない。ないのじゃが……。お主からもバレロン伯爵に気を付けるよう、伝えた方が良いかも知れぬて。ああ言った女性は、何をやらかすかわかった物ではないからの。」

 

 キースの背に、冷たい汗が流れる。彼はザヴィエ公爵に尋ねた。

 

「その女性の名前は……教えていただけませんでしょうか。」

「いや、最初から教えるつもりじゃったわい。少し勿体ぶり過ぎたの、すまぬ。サルバーン女伯爵、レイディ・ローレッタ・グリフィスじゃ。夫は以前いたが、今は死んでしまって居らぬ。その、なんと言うかの……。

 古臭い表現になるのじゃが、若いツバメを何匹も囲っておるそうじゃ。プライドが無闇に高く、美人ではあるのじゃが、わしの好みでは無いのう。政治的影響力もそこそこの物がある。真正面からではバレロン伯爵の声望には到底敵わんじゃろうが、さて……。」

 

 政治的暗闘では、キースの直接的力はあまり役に立たない。彼にできるとすればサイモン老の伝手を使い、有力者にジョナス・バートンを支援してもらうことぐらいか。彼は拳を握りしめる。

 

「む?脅かし過ぎたの。そこまで心配せんでもええじゃろうて。バレロン伯爵とて無防備ではあるまいに。お主から警告する程度で良かろうよ。」

「はっ。ありがとうございます。」

「やれやれ、このパーティーが終わり次第、コムスターのHPG施設に飛んで行きそうじゃの。お主ほどの人材にそこまで慕われるバレロン伯爵が、羨ましいわい。ほっほっほ。」

 

 ザヴィエ公爵は、笑い声を響かせながら去って行く。キースはパーティーが早く終わることを祈った。ザヴィエ公爵の言う通り、コムスターのHPG施設に飛んで行くつもりだったのだ。

 

 

 

 そしていよいよ、キースたちがこの惑星を離れる日がやってきた。惑星首都ドリステルの宇宙港ドリスポートより、4隻の降下船が発進して行く。1隻はレパード級降下船ヴァリアント号で、滑走路から颯爽と飛び立って行く。2隻はユニオン級ゾディアック号とエンデバー号で、これは離着床からゆっくりと上昇して行った。最後の1隻、フォートレス級ディファイアント号に、キースは指揮小隊の面々およびそのバトルメックと共に乗り込んでいた。

 キースは降下船の船窓から外を眺める。季節は夏真っ盛りだ。いや、少しばかり盛りを過ぎているかも知れない。この惑星の公転周期は短く、110.44日しかない。1年に3回強、季節が巡ることになる。

 

(これでこの惑星とも、お別れか……。5ヶ月しかいなかったんだが、なんか色々あり過ぎたなあ。惑星ガラテアに行ったら、次の仕事を探す前に部隊員の階級見直しが先かなあ。仕事に入っちゃったら、そういう事をゆっくりやってられないもんな。

 おや?あれは……。)

 

 キースの目に飛び込んで来たのは、惑星軍のバトルメック部隊と戦車部隊だった。それらは一斉に空へ向けて礼砲として、空砲やレーザー砲を撃ち上げる。そしてバトルメック部隊が敬礼をした。ローカストやライフルマンの敬礼は、機体の腕の構造上ちょっとばかり変だったが。キースは、彼らに見えないのを承知の上で答礼を返した。ディファイアント号はゆっくりと上昇して行く。傭兵中隊『鋼鉄の魂』、略称『SOTS』は、惑星ドリステラⅢの駐屯任務を終えて、この惑星を撤退した。




ようやくの事で、ドリステラⅢ編、終了いたしました。長かったような短かったような。この時点で集まった彼らが、後々『SOTS』の中核となりますねー。
さて、頑張って続きをUPしないと……!!
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