インベーダー級航宙艦イントレピッド号のブリッジで、キースはこの艦の艦長イクセル・ノートクヴィストと面談をしていた。イクセル艦長はキースの目を見て言う。
「キース・ハワード部隊司令。見せていただいた部隊の経営状況等々、非常に満足いく物だったと思う。気圏戦闘機を6機も保有し、予備バトルメックも未だ一部は稼働不能機もあるものの、充分に豊富だ。また恒星連邦からの評価も高まっているらしいね。部隊の状況に関しては、こちらからは何も言う事は無いよ。」
「ありがとう、ノートクヴィスト艦長。」
「だからそう言った面から言えば、貴部隊との専属契約を結ぶことに、問題は無いと思う。ただ、最後に君に聞いておきたいこと……いや、約束して欲しいことがある。」
イクセル艦長は、その視線をキースの目からわずかにも外さない。最近出会うキースと初対面の人間は、キースがそう言う意図が無いのにも関わらず、勝手に気圧されていたりしたことが多かったため、キースにはその反応は新鮮に思えた。と同時に、ここが正念場だとキースは感じる。イクセル艦長は口を開いた。
「わしらイントレピッド号の乗員は、元々傭兵中隊『ヴィンセント軽装機団』に所属しておった。その司令官バーソロミュー・ヴィンセント中隊長とは、上手くやっていたと思う。『ヴィンセント軽装機団』隊員たちも、気のいい連中だった……。
だが彼らはある戦場から、帰ってこんかったよ。メックと隊員の大半を失い、ボロボロになったユニオン級降下船がジャンプポイントに戻って来たときは、本当に心が痛かった。そして部隊解散が決まったと報せを受けたときは、胸にぽっかりと穴が空いた様な気になった物だ。」
「……。」
「その後もこの艦は、時々傭兵部隊を運ぶ仕事を引き受けた。だが、それらの部隊は無事に戻って来ることもあれば、そうでないこともあった。いい奴らだったときもあるし、嫌な奴らだったときも勿論ある。トラブルを起こされたことも1度や2度じゃあない。
だがそいつらがジャンプポイントに戻って来なかったときは、そいつらがどんな連中だったかは別にして、いつも物悲しい気持ちにさせられた物だよ……。」
そしてイクセル艦長は、キースに懇願する様な口調で言った。
「どうか約束してくれんか。口約束の空手形でも構わん。必ずジャンプポイントに帰ってくると。できるだけ多くの隊員を連れ帰ってくると。」
「……俺は味方の裏切りにより壊滅した、傭兵大隊『鋼の勇者隊』、略称『BMCOS』の出身者です。『BMCOS』は、俺がメック戦士養成校に就学中に壊滅し、その報せだけが俺の元に届いたんですよ。だから残される者の気持ちは、理解できるつもりです。
俺の部隊は精兵です。真正面からの戦いでは、そうそう遅れを取ることは無いでしょう。そして俺は、二度と大事な仲間達を背中から撃たせるつもりは金輪際ありません。そちら方面も充分に気を付けています。
約束しましょう、ノートクヴィスト艦長。俺は……俺たちは、必ずジャンプポイントに帰って来る。」
世の中に、100%と言う事は無い。だがキースは、気休めであろうともイクセル艦長の気持ちを慮って約束した。イクセル艦長の目が和らぐ。
「ありがとう、ハワード部隊司令。わしのことは、イクセルでかまわんよ。それと丁寧語はいらんよ。これからよろしく頼む。」
「ありがとうイクセル艦長。俺の事もキースでかまわない。今後ともよろしくお願いする。」
こうしてインベーダー級航宙艦イントレピッド号は、傭兵中隊『SOTS』と本契約を結ぶことになった。
ここは傭兵たちの星、惑星ガラテアの宇宙港ガラポートに着陸したフォートレス級降下船ディファイアント号の、上級士官用船室を流用した部隊司令執務室である。ここで書類の束を手にしたキースの前に、メック戦士2名、整備兵1名、歩兵2名、戦車兵3名の計8名が整列していた。キースは手にした書類を捲って記されている情報を確認すると、机上に置いて口を開く。相手は歩兵のうち、少尉の階級章を付けた1名だ。
「エリオット・グラハム少尉。貴官を本日ただ今より、中尉に任ずる。合わせて、『SOTS』所属歩兵中隊指揮官に任命する。……まあ後半は実際のところ、現状を追認するだけなのだがな。これが辞令と新しい階級章だ。」
「はっ!謹んで拝命いたします!」
「うむ、今後とも一層の精進を期待する。」
次にキースは、整備兵に視線を向ける。その整備兵は、かなり年配の老人であった。しかしその老人は、キースには及ばないがそこそこの体躯と鍛えられた体格をしていた。ぶっちゃけた話、サイモン老である。
「サイモン・グリーンウッド曹長。貴様は今回の士官任用試験に、見事な成績で合格した。おめでとう。これより貴官を少尉に任じ、『SOTS』の上級整備兵に任命する。……まあ、元々やってもらっていた仕事は、上級整備兵の物だったのだがな。なお貴官の偵察・整備兵分隊指揮官職は、そのまま継続となる。辞令と新しい階級章を受け取りたまえ。」
「はっ!謹んで拝命いたしますわい!」
「ああ、頼んだぞサイモン少尉。」
そしてキースは残り1名の歩兵と3名の戦車兵に、次々に視線を向ける。
「テリー・アボット軍曹、イスマエル・ミラン軍曹、ベンジャミン・フォーブス軍曹、レオポルト・ブルッフ軍曹。貴様たちもまた、士官任用試験に合格した。ただしイスマエル軍曹、ベンジャミン軍曹、レオポルト軍曹の3名は、合格点ぎりぎりだったぞ?まあ、合格は合格だ、おめでとう。
これより貴官らを少尉に任ずる。合わせてテリー少尉は歩兵中隊第2小隊小隊長に、イスマエル少尉は中尉待遇勤務として機甲部隊戦車中隊中隊長に、ベンジャミン少尉は同戦車中隊第2小隊小隊長に、レオポルト少尉は同戦車中隊第3小隊小隊長に、各々任命する。
まあ今までやってもらっていた仕事と変わるところは無い。気負うこと無くやってくれ。これが辞令と階級章だ。」
「「「「はっ!謹んで拝命いたしますっ!」」」」
「うむ。今後一層励んでくれ。」
最後にキースは、2名のメック戦士に顔を向けた。
「ヴェラ・クルーグハルト伍長、カーリン・オングストローム伍長。貴様たち2名は、上げた戦果、技量の向上その他を鑑みて、昇進に値すると認められた。故に本日ただ今をもって、貴様たちを軍曹に任ずる。これが辞令と階級章だ、受け取れ。
今後とも一層の活躍を期待する。特にカーリン軍曹、一刻も早く部隊から貸与しているバトルメックを買い取って自分の物にできる様、頑張れ。また目覚ましい活躍を見せれば、部隊から買い取らずともメックを下げ渡される可能性もある。ただし、無理はせんようにな。」
「「はっ!謹んで拝命いたします!」」
と、ここでキースはエリオット中尉とサイモン老に話を振る。これもまた、部下の昇進に関する話だ。
「エリオット中尉。貴官の部下であるヴィクトル・デュヴェリエ伍長、ジェームズ・パーシング上等兵、ラナ・ゴドルフィン上等兵、ジャスティン・コールマン一等兵なんだが……。各々昇進させたい。ヴィクトル伍長は軍曹にして第3歩兵小隊小隊長に、ジェームズ上等兵は伍長にして軍曹待遇勤務とし第4歩兵小隊小隊長に、ラナ上等兵とジャスティン一等兵は伍長にしたい。
昇進が早すぎると思うかも知れんが、うちの部隊では能力がある者に階級を与えず遊ばせておくと言う様な贅沢はできん。階級に見合った仕事も増えるだろうが、我慢してもらってくれ。
サイモン少尉も同じだ。貴官の配下の偵察・整備兵分隊……。いや、整備兵の人数が増えて来たから分隊と言うのも少々そぐわなくなって来ているんだが……。そろそろ偵察兵分隊と、整備兵小隊に分割の時期が来ているかも知れんな。ああ、いやそれは置いておくとして、だ。
偵察・整備兵分隊からも何名か昇進させようと思う。偵察兵のアイラ・ジェンキンス伍長を軍曹に、整備兵のキャスリン・バークレー伍長、ジェレミー・ゲイル伍長、パメラ・ポネット伍長を各々軍曹に昇進させたい。
彼らに対する昇進の通達と辞令、新しい階級章は、貴官らから頼みたい。」
「はっ!了解いたしました!」
「こちらも了解ですわい。しかし、偵察兵のネイサン軍曹は、階級据え置きですかの?」
サイモン老の疑念に、キースは頷いて見せる。
「とりあえず暫定的にな。本人も了解済みだ。本人は自分には士官としての素養が無いと言っているし、任用試験を無理に受けさせても、正直合格できるかはわからんからな。優秀な戦士ではあるのだが。ともあれ、後々偵察兵分隊と整備兵小隊を分割する可能性があるから、その時には曹長か准尉になってもらって、偵察兵を率いてもらう。」
「了解ですわ、隊長。」
「では全員、下がってよろしい。」
キースを除く全員が、部隊司令執務室を出て行く。おもむろにキースは独り言ちた。
「……昇進させ忘れてるのは、いないよな?惑星ドリステラⅢで雇った歩兵や戦車兵、助整兵も全員チェックしたし……。」
キース自身を忘れていると言えば言えるだろう。傭兵部隊『SOTS』は充分に、混成大隊と言っていい規模になっている。普通の指揮官であれば、既に大隊を名乗って少佐か中佐の階級に自分自身を昇進させているものだ。大隊から1個中隊大きいだけで連隊を名乗っている某傭兵部隊もいるくらいなのだから、誰も文句は言わないだろう。だがキースはあくまで『SOTS』は増強中隊だとして、未だに大尉の階級にかじりついていた。
(あんまり階級が高くなると、自分が偉い人物だって勘違いしちゃいそうだしなー。)
まあメック戦士を雇い入れて、敵から奪還したバトルメックを修理してあてがえば、誰がどう見ても大隊規模以上になってしまうので時間の問題なのだが。
キースはいつものジャスティン・コールマン伍長を運転手に、次の仕事を探すためMRBのオフィスまでやって来ていた。サイモン老を運転手に呼ばなかったのは、彼はバトルメックの修理をするのに忙しいからである。
「大尉、到着しました。」
「ご苦労、ジャスティン伍長。」
キースはジープから降りると、建物の中に入って行く。ジャスティン伍長は忠犬の如く後に付き従う。このMRBのオフィスには歴戦の傭兵たちが集っており、キースの姿を見て気圧されたりする者はゼロとまでは言わないが、そう多くも無かった。キースはジャスティン伍長と共に1つの空きブースに入って座ると、そこにある端末を起動させる。
(……ふむ。前にも思ったけど、流石に色々な仕事があるなあ。仇は討ったから優先すべき事項は特に無いけど、基本的に恒星連邦がスポンサーの仕事がいいよな。俺たちのコネはほとんどが恒星連邦筋だし。サイモン爺さんはライラ共和国政府にもコネを持ってるけど。これまで通り恒星連邦のために忠実に働いた方が、最終的には見返りも大きいしな。
まかり間違っても、カペラ大連邦国や自由世界同盟、ドラコ連合は勘弁だ。そこしか仕事が無い場合は、思い切って長期休暇を取るのも選択肢の1つだが……。その必要も無さそうだ。恒星連邦がスポンサーの仕事は、けっこう来ている。)
端末の画面に表示される多数の任務の一覧を眺めながら、キースは沈思する。
(ジョナスは大丈夫だろうか。女伯爵、レイディ・ローレッタ・グリフィス……。ドリステラⅢのコムスターHPG施設からメッセージを発信したけど……。返事には「今のところ心配ない。」とあったけどなあ。何やるかわからない女性なんだろ?論理的思考が通用しないのは、怖いっちゃ、怖いぞ。)
万が一レイディ・ローレッタ・グリフィスが、傭兵でも雇ってジョナスを襲撃でもしたりしていないかと思い、キースはサルバーン女伯爵、レイディ・ローレッタ・グリフィスや、バレロン伯爵、ジョナス・バートンなどの名前で任務依頼の検索をかけて見る。幸いと言ってはなんだが、どの名前も検索にヒットしなかった。キースは息を吐く。直立不動で控えていたジャスティン伍長が、一瞬怪訝そうな顔になるが、すぐに彼はその表情を消した。キースはそれに気付かないふりをして、作業を続ける。
(まあ、考え過ぎで終わって良かった。さて、普通に仕事を探すとしようか。できれば戦利品の権利を、ある程度認めてもらえる方がありがたいよな。それを条件に入れて、うちの部隊の評価値で受けられる仕事を検索っと。おお、無法者相手の場合に戦利品の権利が得られるって条件の仕事が、一応出たぞ。前は1件も出なかったのに。
これは……クリタ家領内への襲撃任務。想定敵戦力が大きすぎるな、うちの部隊向けじゃない。第一、相手が無法者かどうかの判断基準の条件が曖昧すぎて不安だ。
カペラ境界域への駐屯任務……。って、これ駐屯先の惑星はモラビアンじゃん!これを受けたらマイケル・ハセク=ダヴィオン公の派閥に入った部隊と見なされてもおかしくないぞ。パス、パス!ジョナスはハンス・ダヴィオン派だってば!
むう……。少し契約条件を緩めなきゃ、だめかな?戦利品の権利を諦めるとして……。装甲板と弾薬の消耗分を支給してくれる条件の仕事、あるいはその辺の条件を交渉可能な仕事……っと。うわ、一気に件数が増えた。)
内心で溜息を吐いて、キースは大量の任務依頼を1件ずつ素早く確認して行く。急がないと、見ている間にもその依頼の幾つかが「任務受諾済み」に表示が変わって行くのだ。有利な仕事の取り合いは、熾烈な生存競争なのである。
と、そのとき画面上に「緊急依頼」の赤い文字が躍る。キースは当初、それを受ける意志は無かった。緊急の依頼と言う事は、大至急出立せねばならない可能性が高い。彼としては、出立までに多少の余裕がある任務の方が良かった。
だが一応、キースはその依頼の内容や条件を確認してみる。そしてキースは突如として立ち上がり、凍り付いた。ジャスティン伍長が、驚いて尋ねる。
「な、何かまずい事態でも!?大尉!」
「ああ、まずいかも知れん。……幸い装甲板と弾薬については損耗分を支給してくれることになっているな。ただし補填は任務完了時、か。この任務の特性上、やむを得んだろうが……。
それと敵が無法者であった場合は、戦利品の自由裁量の権限が与えられる。ただしその場合は、戦利品全てが与えられる代わりに戦闘報酬や物資の補填は無し、か。自前の物資をかなり持っていった方が良いな。」
キースはその緊急依頼を、素早く受諾の処置をする。そして任務内容や報酬他の条件を備え付けのプリンターでプリントアウトすると、それを持って踵を返す。
「ジャスティン伍長!ディファイアント号に戻るぞ!」
「了解っ!」
キースの眼差しは、厳しく顰められていた。
宇宙港ガラポートの降下船ディファイアント号に戻ると、キースは全メック戦士と全航空兵、その他の全士官を集め、幹部会議を開いた。受けた任務に付いて、通達するためである。キースが緊急依頼を受けたことを話すと、任務の報酬などの条件を記してある用紙を見ながら、アーリン中尉が疑問をぶつけて来た。
「キース大尉、確か予定では少し余裕を持って次の任務に出立したいと言っていませんでしたか?まあ確かに、かなり条件が良い依頼の様ですが……。」
「まあ、いいんじゃないですか?これだけ条件が良い任務は、そうは無いでしょう。装甲板や弾薬の補填が任務完了時ってことで、一時的な持ち出しはある程度必要でしょうけど。」
ヒューバート中尉が、アーリン中尉を宥める様に言う。アーリン中尉も別に文句を言ったつもりは無かったので、すぐに頷く。キースはだが、難しい顔で口を開く。
「……任務内容を記してある方の用紙を見てくれ。」
「え゛!救援任務!?あ、し、失礼しました。でも救援任務ですか?危険な任務ですね。いえ、危険じゃない任務はあるわけは無いのはわかっていますが……。」
「いや、かまわない。救援任務は数ある任務の中で、ある意味でもっとも面倒臭い任務だからな。」
アーリン中尉が驚きの声を上げたのも無理はない。救援任務は、まず間違いなく敵の優勢の状況下の中で、味方を救出しなければならないからだ。だが文面を読み進めていったアーリン中尉は、文章のある場所に視線を止めると目を見開く。
「惑星タンタールズⅣの守備部隊……『機兵狩人小隊』!?」
「あれ?その名前どこかで聞いた気がしますね?ご存じの部隊ですか?」
「ああ、良く知っている部隊だ。俺とアーリン中尉には縁深い部隊だよ。ドリステラⅢでヒューバート中尉やグレーティア少尉、ヘルガ少尉にアードリアン少尉が来る前に、一緒に駐屯していた小隊だ。当時小隊規模だった『SOTS』が、かなりお世話になったんだ。」
怪訝そうなヒューバート中尉に、キースは簡単に説明する。『SOTS』の初期メンバーだった指揮小隊の者たちや、元『デヴィッドソン装甲巨人隊』メンバーだった偵察小隊の者、それに気圏戦闘機隊のライトニング戦闘機乗りたちが騒めく。火力小隊のうちでも、『機兵狩人小隊』を知っているロタール軍曹とカーリン軍曹は、少々不安そうだ。
ヒューバート中尉は腑に落ちた様な顔をする。
「なるほど、それでこの任務を受けたわけですか。」
「任務の報酬条件が良かったのもあるがな。決して縁故だけで受けたつもりは無いが、この縁故が無ければ無視していたかも知れんのも確かだ。
ちなみに敵の陣容は、おおよそ2個中隊。おそらくドラコ連合所属で、正規軍ではない模様だ。気圏戦闘機を最低で4機含んでいる。俺たちの任務は、味方の惑星守備軍の救出と、更なる味方増援が到着するまでの時間稼ぎだ。
急遽戦力を派遣するために、自前で降下船と航宙艦を保有している星系間移動力に優れた部隊にのみ、任務依頼情報が開示された様だ。」
「隊長!だけど倒せるもんなら、敵を倒しちまってもかまわねーんだろ?」
アンドリュー軍曹が、不敵な笑みを見せつつ言ってのける。キースもまた、不敵な笑みでそれに返答を返す。
「無論だ。まあ無理をする必要は無いが、できそうだと思ったら狙って見るのもいいだろう。」
「そうね、あたしたちにハリー・ヤマシタの始末を任せてくれた恩が、アルバート中尉にはあるものね。」
「そうですね。なんとか助けられると良いんですが。」
エリーザ軍曹とマテュー少尉も、乗り気である様だ。マイク少尉が叫ぶ様に言う。
「敵の気圏戦闘機は、俺たちに任せておいてください!4機程度、俺たちの敵じゃないっす!」
「調子に乗らない!」
ジョアナ少尉がマイク少尉に突っ込むが、さりとて反対している様子ではない。アーリン中尉がキースに顔を向けて頷く。
「行きましょう!」
「ヒューバート中尉もかまわないか?」
「無論です。キース大尉が世話になった人だって言うなら、『SOTS』全体の恩人ですよ。それに縁故だけで受けた任務じゃないって言ったでしょう?」
ヒューバート中尉の答えを受けて、キースは各員に指示を出す。
「よし。ハオサン博士、軍医のキャスリン軍曹と打ち合わせて、現地の風土病などのワクチンを明日までに準備してください。ライナーは、部隊の予備費を取り崩して装甲板と弾薬を明日までに可能なだけかき集めてくれ。
特に必要なのは消耗の多い中口径オートキャノンの弾薬と、ライトニング戦闘機で使用する最大口径オートキャノンの弾薬だ。手配が終わり次第、宇宙港ガラポートと当局に明朝早くの出港申請を。
ヒューバート中尉、アーリン中尉。両名は俺といっしょに作戦会議に入ってもらう。マテュー少尉、リシャール少尉、グレーティア少尉も参加してくれ。」
「わかった、まかせておいてくれたまえ。」
「了解です。早速手配します。」
「「「「「了解!」」」」」
呼ばれた全員が、それぞれ返事をする。キースはここで一泊置くと、サイモン老に向かって言った。
「サイモン少尉、メックの調整は任せた。それと、今現在の不稼働メックを現地に着くまでにできるだけ直しておいてくれ。いざという時は、メックを修理せずに乗り換えて戦うことも想定内だ。」
「了解ですわい。現地までは2週間と言ったところですかの?」
「そうだな。厳密には、惑星ガラテアからジャンプポイントまで7日、補給ステーションのある星系を辿って行けるから、ジャンプ自体にかかる時間はほぼ無視できる。タンタールズのジャンプポイントから惑星タンタールズⅣまで6日の13日だな。明朝出発の予定だから、今日から数えればちょうど2週間だ。」
キースは自分で言ってから、その内容に対し大きく溜息を吐く。
「ふう……。2週間か……。間に合えば良いが。」
敵はドラコ連合だけではない。星と星の間にある距離その物が、最大の強敵であった。
はてさて、ドリステラⅢでの駐屯任務が終了したと思ったら、突然あの頼れる仲間だった、『機兵狩人小隊』が大ピンチ!いったいどうなるでしょうか!