3026年4月14日、キース・ハワード少佐率いる混成傭兵大隊『SOTS』は、ライラ共和国タマラー協定領トレル州の惑星ネイバーフッドに到着した。そう、「少佐」であり、混成「大隊」である。あれほど大尉の階級に固執して偉くなることを拒んでいたキースが、何故急に方針変更をしたのか。その理由を説明するには2週間少し前、3月の29日まで遡る。
その日、キースはいつも通りにイヴリン訓練生と共にトレーニングを済ませた後、会議室にてイヴリン訓練生、エドウィン訓練生、エルフリーデ訓練生の3名に対して基礎教養の授業を行っていた。と、そこへ部屋備え付けのインターホンが鳴る。キースは授業を一時中断し、インターホンのスイッチを入れた。
「こちら会議室、キース・ハワード大尉。」
『こちらブリッジです。』
「どうした、マシュー副長?緊急事態か?」
『いえ、キース少佐にお客様が見えています。何やらお急ぎのご様子で……。』
ちなみにキースの階級はこの時点で大尉であるが、船長である「キャプテン」と大尉である「キャプテン」を区別するために、降下船などに乗船中は大尉の方を1階級上の少佐と呼ぶ慣例になっていた。無論、今彼らはフォートレス級降下船ディファイアント号を宿舎代わりに使用しているため、常に乗船中なのである。
「お客?……わかった、手が空いていればジャスティン伍長あたり、そうでなければ適当な誰かをつけて、部隊司令室まで案内してもらってくれ。それとこのままハオサン博士に回線を繋いでくれ。俺の代理を頼むから。」
『了解。今、回線を繋ぎ換えます。』
『……はい、こちらミン・ハオサンです。』
「ハオサン博士、俺です。キース・ハワード大尉です。少々お願いが……。」
キースは惑星学者であるハオサン博士に、現在行っている生物・地学の教師役の代理を頼む。ハオサン博士は快く承諾してくれた。キースは3名の訓練生たちに向き直る。
「急な来客があったので、俺は少々外す。代理に当部隊が誇る惑星学者、ミン・ハオサン博士が来てくれる。物腰が柔らかい方だが、それに甘えて失礼はするなよ?それとハオサン博士が来るまでは、問題集で自習していろ。わかったな?」
「「「了解!!」」」
訓練生たちは起立すると、敬礼と共に大声で応える。キースも答礼をし、踵を返すと会議室を早足で出た。彼はそのまま、部隊司令室として使っている士官用船室まで急ぐ。
そしてちょうど部隊司令室の前で、キースは来客の一団を案内しているエルンスト曹長と出くわした。どうやらジャスティン伍長は手が空いていなかったらしい。エルンスト曹長は、キースに敬礼する。キースも答礼した。
「キース大尉、お客様をご案内いたしました。」
「ご苦労、曹長。こちらがお客様……ロベールさん!?」
「お久しぶりですな、キース様。仇討のご成功、おめでとうございます。しかし、しばらく会わないうちに益々ご立派になられましたな。背も更に伸びられた様で。」
そう、それはキースの親友であるジョナス・バートンの、忠実なる執事であるロベール・マクファーソンであった。ロベールは4人の男女を連れている。その男女は、青年から少年と言った年齢であり、その態度もきょろきょろと落ち着きが無い者からビシッと規律正しい者まで様々だ。ちなみに4人全員がキースの迫力に、額に汗を流している。
「どうもありがとうございます、ロベールさん。まあ何はともあれ、とりあえず入ってください。エルンスト曹長、お客様にお茶を持って来てくれるよう、厨房に託けてくれ。では下がって良い。」
「了解です、大尉。では失礼いたします。」
キースは部隊司令室へと、ロベールを始めとする客人たちを迎え入れ、ソファを勧める。客人たちはロベールは礼儀正しくも悠然と、他の者は恐縮しつつソファに座る。キースもソファに座ると、話を切り出した。
「ロベールさん、この度の急なご来訪、いったい……?」
「まずはアポイントメントも取らず、失礼いたしましたことをお詫びします。キース様がガラテアに居る間に到着できたのは幸運でした。キース様、失礼を承知でお聞きしますが、次のお仕事は決まってらっしゃいますか?」
「いえ、まだ決まっていません。新しいメック戦士をまず雇用しようと思いまして、それが一段落ついてから仕事を探そうと考えていました。ただメック戦士の新規雇用は、上手く行きませんで、今日にでもMRBのオフィスに行こうと考えておりましたが。」
キースの言葉に、ロベールは大きく安堵の息を吐いた。
「ああ……。幸運でしたな……。キース様、お願いがあります。どうか我々の依頼を、いえ正確に言えば恒星連邦からの依頼なのですが、それを受けていただけませんか?」
「……レイディ・ローレッタ・グリフィス関係の問題ですか?」
キースの言葉に、ロベールは小さく頷く。
「やはりご存じでしたか。流石はウォルト様のご子息だけのことはある……。」
「詳しく話してください。」
「はい、実は……。」
ロベールの話は、以下の様な物だった。サルバーン女伯爵、レイディ・ローレッタ・グリフィスは、ジョナス・バートンに対し敵愾心を抱いていた。まあ理由は知っての通り、逆恨みの様な物なのだが。そして彼女は一計を案じた。
恒星連邦とライラ共和国は、秘密協定を結んでいる。このため、秘密裏……と言うには大っぴらなのだが、戦力交換や合同演習などがよく行われている。某「大隊から1個中隊だけ大きい自称連隊」も、戦力交換で恒星連邦からライラ共和国へ行ったと言う事情があったりする。レイディ・ローレッタ・グリフィスは、この戦力交換に目を付けたのだ。
レイディ・ローレッタ・グリフィスは、優秀で信頼のおける部隊を戦力交換でライラ共和国へ派遣すべきだ、と運動を開始した。その運動は、恒星連邦政府の方針と合致していることもあり、成功する。
そして次に彼女はその戦力交換の部隊に、事もあろうにジョナス・バートン率いる連隊が選ばれる様に裏工作したのである。これが成功してしまっては、最低でも数か月、最高で年単位の間、ジョナスは恒星連邦を離れなければならなくなってしまうのだ。そしてその間、レイディ・ローレッタ・グリフィスは政治工作のやり放題となる。
無論ジョナス陣営でも黙っていたわけではない。完全な編成の1個連隊を送り込むのは、少々やり過ぎだと噂を流し、もっと小さな規模の部隊……つまりはジョナスの連隊以外が選ばれる様に話を持って行った。
ここでレイディ・ローレッタ・グリフィスは自らの手駒を使い、恒星連邦宮廷内の意見を誘導。曰く、完全編成の連隊を送り込むのがやり過ぎならば、送り込むのに適した部隊を、本来送り込まれるはずだったジョナスが推薦しろ、と。同時に金に糸目を付けない贈賄攻勢に出た。
レイディ・ローレッタ・グリフィスの意図は明白である。ジョナス自身を遠ざけることが叶わないのなら、ジョナス子飼いの部下をライラ共和国へ遠ざけ、少しでもジョナスの力を削ぐと共に、嫌がらせをしようと言うのだ。
無論、ジョナスも受け身に回っているだけではない。こっそりとレイディ・ローレッタ・グリフィスの足元に、穴を掘る準備は整っている。ただし今回には間に合わない。できれば若干でいいので、時間稼ぎをしたいところだ。
キースは頷いた。
「なるほど。それで俺の部隊に、ジョナス子飼いの部下の代わりに行ってもらいたい、と言うわけですか。」
「はい、ですが実はまだこのことはジョナス様はご存じでありません。私をはじめ、一部の部下たちの独断なのです。ジョナス様はキース様にご迷惑をかけることを極力避けたいでしょうから……。主の意にそぐわぬことをするのは忸怩たる物がありますが、しかし私どもは……。」
「ストップです、ロベールさん。ジョナスも水臭い……。こういう時に遠慮などされる方が寂しいものですよ、友としては。それに仕事先が恒星連邦からライラ共和国へ一時的に変わるだけです。それほど問題ではありませんよ。」
ロベールは感極まり、キースの手を取って涙を流す。
「ありがとうございます、キース様。仕事の条件は、できる限り有利になるよう整えさせていただきます。それと……。私が連れて来たこの者たちなのですが。」
「そう言えば、この方たちは?」
「キース様は、傭兵部隊『SOTS』は増強中隊だと言って、大尉の階級のままだと聞きます。ですが今回の件、中隊規模では少々部隊が小さいと、レイディ・ローレッタ・グリフィスにそこを突かれる危険があります。
そこで、この者たちをキース様の配下に加えて、部隊を大隊としていただきたいのです。充分に信用、信頼でき、実力もそこそこの者たちです。」
キースは思わず唸る。だがロベールのいうことは、もっともだ。それに人材という希少資源は、キースたちが今最も欲していたものである。キースはロベールに向かい、おもむろに言葉を発した。
「彼らを紹介していただけますか?」
「はい、ではまず……。いえ、自己紹介の方がよろしいですな?」
「……で、では、自分から。」
ロベール以外の中では、一番年長に見える青年が口を開く。彼らの中で、一番規律正しそうな人物だ。彼は当初キースの迫力に気後れしていた様だったが、思い切って話し出す。一度話し出すと度胸が据わったのか、その口からは滑らかに言葉が流れ出た。
「自分はケネス・ゴードンと言う者です。ゴードン家の3男で、予備メック戦士としてサハラ士官学校を卒業後、これまで部屋住み生活をしてまいりました。
バレロン伯爵ジョナス・バートン卿には、我が家にご恩をかけていただいたことがございます。そのご恩をお返しするため、志願してまいりました。バレロン伯爵のご友人であらせられるハワード大尉にお仕えするのは、望むところであります。」
「……そうか、ありがとう。ジョナスのためにも、俺に力を貸してくれ。それと、呼び方はファーストネームでかまわない。」
「……はっ!了解いたしました。誠心誠意、キース大尉にご奉公いたします!」
次に自己紹介をしたのは、同じく規律正しい行動を取っていた青年だ。年齢も2番手程度と見える。彼も最初は腰が引けていたのだが、ケネスの自己紹介の間に気を取り直したのか、堂々と話し出した。
「自分はジョシュア・ブレナンです。ブレナン家の4男で、家の予備メック戦士としてサハラ士官学校へ通いました。ケネス先輩の後輩にあたります。先輩同様に、部屋住み生活をしていたのですが、今回の件で志願させていただきました。
バレロン伯爵ジョナス・バートン卿は、我が家にとっても恩人です。そのご友人であるハワード大尉のお力になれるのであれば、光栄です。」
「了解した。君も俺のことはキースでかまわん。一緒にジョナスのために頑張ろう。」
「了解!よろしくお願いします、キース大尉。」
3番目は、2番手のジョシュアとさほど歳が変わらなく見える女性である。彼女は最初に自己紹介したケネスに、時折熱っぽい視線を送っていた。しかしケネスの方はどうやらその手のことには鈍いらしく、まったく気づかれていないのが哀れである。
「私はドロテア・レーディンです。ケネス・ゴードンの従妹で、レーディン家の2女の予備メック戦士でした。実戦経験は無いのですが、ケネスとのシミュレーション対戦では勝ち越しております。」
「ドロテアの言う事は嘘ではありません。自分は手加減無しで戦ったのですが、負け越しております。」
「そうか、優秀なメック戦士は1人でも多く必要なところだ。よろしく頼むぞ。君も俺のことはキースでかまわんぞ。」
「はい、キース大尉。よろしくお願いします。」
最後は、1人だけまだ少年と言う外見であり、17~18に見えた。彼はきょろきょろと落ち着かない様子であったが、自分の自己紹介の番が来たことに気付き、慌てて口を開く。
「ま、マイケル・ニューマン、18歳です!ニューマン家の3男で、予備メック戦士でした!今回母……家長より、正式なメック戦士になるチャンスだって言われまして!あ、し、失礼しました!」
「くっくっく、いや構わん。腹の底に一物隠し持たれているよりも、よっぽど良い。腕前の程は?」
「は、はい!実戦経験はありませんし、大したことは無いと思います!」
「嘘はいけないわよ、坊や?」
ドロテアが突っ込む。マイケルは焦った顔をした。
「キース大尉、このマイケル坊やは操縦はあまり上手くないですが、メック戦闘での射撃に天性の物を持っています。支援機に乗せれば、非常に役に立ちます。まあ接近されると危険ですけど。」
「ほう?ならば問題は無さそうだな。君も俺のことはファーストネームでかまわん。よろしく頼むぞ。」
「は、はいっ!キース大尉!」
キースは少々考える。
(……今の部隊の小隊編成を変更するのは、あまり得策ではないな。となると彼ら4人で新小隊を編成した方が良いだろう。しかし、そうなると訓練生のメックを除いて、5個小隊か。
2個中隊に編制するとして……。第1中隊は3個小隊の完全な編成で、第2中隊は指揮小隊か、もう1個小隊のどちらかが、メック3機の中途半端な形になるな。
第2中隊の中隊長は……。新しく来た彼らの中から抜擢するのは、あまりにも博打が過ぎる。となると、アーリン中尉、ヒューバート、サラ中尉待遇少尉の中から選ぶことになるが……。
サラ中尉待遇少尉が、まず候補から外れるな。彼女は、イヴリン訓練生が昇進して中尉になるのを待って隊長職を引き渡す、と言って中尉への昇進を断ったくらいだものな。それを大尉にするのは余計に断るだろう。となると……。)
「キース様?」
「ああ、済みませんロベールさん。さて、仕事の詳細な条件を教えてもらえますか?」
「はい、まずこの仕事は恒星連邦からMRBを介しての指名依頼となり、我々自身は恒星連邦政府に対し貴隊を推薦すると言う形になります。そして実質上の雇用主はライラ共和国政府となりますな。恒星連邦から貴隊を、ライラ共和国へとレンタルする様な形になります。そして実際の条件ですが……。」
ロベールとキースは、この任務の契約条件などについて事細かに話し合った。更にキースは『SOTS』の幹部会議を招集し、新たな部隊編成について決定する。そしてその翌日、3月30日にMRBのオフィスにて、正式にこの任務に関する契約が結ばれた。その時点において、『SOTS』は混成大隊へと部隊規模を拡張――もともと混成大隊規模はあったとも言えるが――し、キースは少佐へと昇進していたのである。
キースは降下船の船窓から、惑星ネイバーフッドのオーバーゼアー城に付属している離着床と滑走路を眺める。そこにはキースたちのフォートレス級降下船ディファイアント号、ユニオン級降下船ゾディアック号、エンデバー号、レパード級降下船ヴァリアント号、ゴダード号の5隻の他、2隻のユニオン級降下船が着陸していた。そのためこの施設は、ちょっとばかり手狭になっている。
まあだがしかし、この2隻は早ければ明日、遅くても3日以内にこの惑星から発進するはずである。キースたちの部隊『SOTS』はこの惑星の駐屯任務を、現在駐屯している傭兵大隊『エフシュコフ剛腕隊』から引き継ぐことになっているのだ。そしてこの2隻のユニオン級は、その『エフシュコフ剛腕隊』の所属降下船なのである。ちなみにユニオン級2隻と言うことからわかる通り、『エフシュコフ剛腕隊』は大隊とは言っても正確には2個中隊でしか無いが。
現在この惑星には、ドラコ連合が橋頭堡を築き、この惑星の人類可住域の30%を支配下に置いている。『エフシュコフ剛腕隊』は、その敵と継続的に戦いを繰り広げた結果、後方での補充と休養、再編成が必要になり、一時惑星を撤退することになったのだ。その代わりとして『SOTS』は、今から6ヶ月の間この惑星に駐屯し、敵と戦うことになったのである。
そのとき、キースに話しかける者があった。
「キース少佐、もうすぐ迎えのバスがこちらへ着くそうです。」
「ご苦労、ヒューバート大尉。」
「……なんか、慣れませんな。半年前に少尉すっ飛ばして中尉になったばかりだと言うのに、もう大尉なんですから。」
「それを言うな。俺だって『SOTS』結成当時に少尉すっ飛ばして中尉になって、その後3ヶ月で大尉、その半年後には少佐だぞ。……本当はもうしばらく増強中隊ってことで大尉のままのはずだったんだが。まあ、やむを得まい。」
そう、第2中隊の中隊長には、現在ヒューバート大尉が就任していた。最初彼は、アーリン中尉の方が先任だからと第2中隊中隊長の座を譲ろうとしたのだが、アーリン中尉は中隊規模の部隊を指揮する自信が無いとして、それを断った。
そしてヒューバート大尉は、かつての火力小隊をそのまま第2中隊の指揮小隊とし、『機兵狩人小隊』を火力小隊として従えて第2中隊を編成したのである。キース直卒の第1中隊から火力小隊が抜けた形になるが、そこにキースは新参の4人を据え、新たな火力小隊を結成した。
ちなみに第1中隊の、新たな火力小隊の編成は次の通りである。隊長にケネス・ゴードン中尉、バトルメックは55tウルバリーンを貸与。副隊長にジョシュア・ブレナン少尉、貸与された機体は50tハンチバックである。平の隊員にドロテア・レーディン軍曹とマイケル・ニューマン軍曹、機体は2人とも70tアーチャーを貸与されている。
キースとヒューバート大尉は、しみじみと船窓の外を眺める。そこへアーリン中尉がやって来た。
「何をやってるんですか、2人とも。キース少佐を呼びに来たはずのヒューバート大尉まで一緒になって。もう迎えのバス、来ちゃいますよ。」
「おお、いかん。キース少佐、行きましょう。」
「そうだったな。いかんいかん。ご苦労、アーリン中尉。急ごう。」
3人は、駆け足でディファイアント号の乗降ハッチまで急いだ。
オーバーゼアー城の司令執務室で、キースは傭兵大隊『エフシュコフ剛腕隊』の部隊司令兼、惑星ネイバーフッド守備隊司令官、ヴィクトール・ワディモヴィチ・エフシュコフ少佐と対面した。
「お初にお目にかかります。自分が傭兵大隊『鋼鉄の魂』、略称『SOTS』の部隊司令、キース・ハワード少佐です。見ての通りの若僧ですが、どうぞお見知りおき下さい。」
「み、見ての通り?あ、いや申し訳ない。わしが傭兵大隊『エフシュコフ剛腕隊』の部隊司令で、これまでの惑星守備隊司令官、ヴィクトール・ワディモヴィチ・エフシュコフ少佐だ。これから半年間、この惑星のことを頼むぞ。まあ、わしらの部隊がまたここに戻って来れるかわからんが……。
着任を歓迎する、惑星守備隊新司令官、キース・ハワード少佐。」
「ありがとうございます。」
キースとヴィクトール少佐は、固く握手を交わす。その手が離れると、ヴィクトール少佐は少し肩を落として言った。
「やれやれ、本当は自分の手でこの惑星からクリタ家の奴らを追い出したかったのだがな。さっきも言った通り、またこの惑星に戻ってこられるかどうか、わからんからな……。随分長いことこの惑星にいたもんでな、わしも部隊の者も愛着がわいておるのだが……。
まあビジネスだ、仕方あるまいて。」
「お気持ちがわかるとは言えません。ですが慮ることぐらいは、できるつもりです、エフシュコフ少佐。」
「ありがとうハワード少佐。さて、わしは部隊の撤退準備があるからな。もう行くよ。互いを詳しく知る機会が無いのが残念だ。見ただけで貴官の凄さの欠片なりと伝わって来るからな。そんな凄腕と話してみたかったんだが……。
では失礼する、ハワード少佐。」
互いに敬礼を交わすと、ヴィクトール少佐は司令執務室を名残惜しげに見回し、そして部屋を出て行った。キースは少し感傷的な気持ちになり、彼を見送ったが、すぐに気分を切り替えて執務机に座る。そして書類棚や引き出しから引継ぎ書類を取り出して確認を始めた。
こうしてキースたち『SOTS』の、ライラ共和国惑星ネイバーフッドでの6ヶ月間の戦いが始まったのである。
とうとう主人公、昇進してしまいました。今まで往生際が悪かったのですが、親友のためとあらば仕方ありません。部隊も大隊として、再編成されました。
そして活躍の場所も、今までの恒星連邦からライラ共和国へと移動します。これからしばらくは、ライラ共和国での行動となりますね。