オーバーゼアー城の第1大会議室では、『SOTS』の士官による会議が開かれており、様々な意見が交わされていた。議題は、バトルメックの修理が完了しだい敵に対し攻勢に出る上で、何処の敵拠点を攻撃するか、である。議長役である、惑星守備隊司令官兼混成傭兵大隊『SOTS』部隊司令キースが要点をまとめた。
「……つまり意見をまとめてみると、攻撃目標となり得る敵拠点は3つあるわけだな。気圏戦闘機で撮影した航空写真で判明している敵の前進基地1ヶ所、仮にAポイントとしよう。これと、それより後方にある前線基地、これをBポイントとする。最後にドラコ連合軍が現時点の根拠地として利用している城、インターリアー城だな。敵の本丸だ。これをCポイントとする。」
ここで機甲部隊戦車中隊の指揮官、イスマエル中尉待遇少尉が立ち上がり発言する。
「自分はCポイント、インターリアー城の攻略を進言するものです。今現在敵の戦力は低下し、絶好の機会と言えます。」
「待ってくれないか。」
イスマエル中尉待遇少尉に待ったをかけたのは、ヒューバート大尉だった。彼は手元の資料を指し示しながら言う。
「城を攻略するとなると、生半可な戦力では不安だ。元々この城は、ドラコ連合軍来襲前にはライラ共和国側の施設だったんだ。その当時の情報を見てみると、このオーバーゼアー城に劣らない防御設備が存在している。スナイパー砲2門、北東、北西、南東、南西の4ヶ所に設置された砲台、それに地雷原だ。その上に、これらが更に増強されていないとは限らない。
必然的に全力出撃となる。その間に敵が戦力を2つに分けてオーバーゼアー城を攻撃したら危険だ。それに敵の戦力が低下しているとは言え、最低でもまだ前回逃げ延びた戦車1個小隊、バトルメック8機はあるんだ。更に捕虜にした戦車兵を尋問した結果、バトルメック戦力についてはよくわからなかったが、戦車に関しては前回出て来なかった戦力がまだあるらしい。
それに城を落としたとして、城以外に配置されている戦力がゲリラ化する可能性が高いのも厄介だ。」
「なるほど……。では大尉はどこを攻略すべきだと考えておられるのですか?」
「多少消極的すぎると言われるかも知れないが、ここAポイントの前進基地だ。理由は2つほどある。まずここに前進基地があることによって、敵はこちらの軍事行動を掣肘できる。以前から目障りだと思っていたんだ。ドラコ領域内に進攻するためには、この前進基地が邪魔になる。できれば早いうちに潰しておきたい。
2つ目は、ここの戦力が戦車1個小隊という小規模だと言うことだ。と言うか、小規模な戦力しか置けない程度の規模しかない。その気になれば1個メック小隊で充分に潰せるだろう。逆に言えば、その程度の戦力でこちらを掣肘できる様な絶妙な位置に、前進基地を造られたのは痛恨なんだが。前任の部隊を悪く言いたくはないが、愚痴も出ようと言う物だな。
……それはともかくとして、機甲部隊から支援のための1個戦車小隊、歩兵中隊から1個歩兵小隊出して貰えれば、更に確実にここを潰せる。他の戦力は丸々予備戦力にできる。
ただ懸念があるとすれば……。」
ヒューバート大尉が眉根を寄せる。レパード級ヴァリアント号のカイル船長がその先を引き取った。
「懸念と言うのは、政治的な問題かね?ライラ共和国政府からの通達文には、できるだけ早い時期に攻勢に出ろとあった。たかが前進基地を潰した程度で、攻勢と見てくれるかどうか、と言うことかね?」
「その通りです。」
「もう1つ問題が。その後方に前線基地が控えています。」
メック部隊第2中隊火力小隊『機兵狩人小隊』の暫定小隊長、サラ中尉待遇少尉が付け加える様に言った。だが彼女はそれだけで黙ってしまう。彼女は時々言葉が足りない。確かにある程度の知識がある者ならば、これだけの台詞で充分理解できるかも知れないが、誤解を生む可能性もある。ちょっと慌てて、アーリン中尉が付け加えた。
「あ、えっと。Bポイントの前線基地が控えているから、Aポイントの前進基地程度はいつでも別の場所に再建できる、ってことかしら。」
「はい。」
「たしかにそれは厄介ね。いっそのこと、Bポイントの前線基地を叩くのはどうかしら。ここには現在メック1個小隊と戦車2個小隊および砲台1基が配備されているみたいだけど。そこを叩いてそこに1個メック小隊でも駐留させれば近くにある街、エクステリアーもこちらの領域に取り込めるわよ。」
アーリン中尉の意見に、歩兵部隊を率いるエリオット中尉が異を唱える。
「いえ、それではAポイントの戦力がフリーになります。小規模の戦力とは言え、無視して良い物かと思いますが。後方で下手に動き回られてはいささか……。」
「あちらを立てればこちらが立たず……。いっそのこと、A、B両ポイントを一緒に潰しちゃえればいいのに。」
「そうだな……。」
やけくそ気味なアーリン中尉の台詞だったが、それに同意する声が上がった。よりによって、キースの声だった。アーリン中尉は驚く。
「キース少佐、本気ですか!?」
「貴官が最初に言ったんだろう?アーリン中尉。」
キースはにやりと笑う。
「Aポイントは、落とした後に占拠する必要性は全く無い。ならば徹底的に破壊してしまえば良いだけだ。Aポイントに、気圏戦闘機6機による爆撃を敢行すればどうだ?跡形も無く、吹き飛ばしてしまえると思うぞ?ここには偵察兵による先行偵察を行っておけるなら、なおさら良いな。ああ、爆撃後に歩兵を乗り込ませるのも忘れてはいけないな。
Bポイントに対する攻撃は、後々占拠することも考えれば、バトルメック部隊でやった方がいい。事前の偵察はこちらも偵察兵で行うことになるだろうな。おそらく存在するだろう地雷原は、本隊に随行するスナイパー砲車輛で吹き飛ばして道を切り拓けばいい。」
「「「「「「うわ、力押し……。」」」」」」
「たしかに芸は無いが、基本に忠実だろう?本隊として投入する戦力は、第1中隊あたりかな。第2中隊はオーバーゼアー城の守りを固めて欲しいしな。万が一、迂回してきた敵の襲撃に備えてな。敵戦力を殲滅後には、歩兵部隊を乗り込ませて残存兵力の掃討および降伏者の捕縛をさせることになるな。なにか意見はあるか?反対意見でもかまわんぞ。と言うか、それを期待する。問題点はあらかじめ洗い出せる物なら洗い出しておきたいからな。」
キースの台詞に、挙手する者がいる。マテュー少尉だ。
「Bポイントの前線基地を落とした後のことも考えておく必要があると思います。まずは落とす事が肝要かとは思いますが、その後そこに配置する戦力はどういたしますか?」
「第1中隊の火力小隊か偵察小隊に、戦車を1個小隊、歩兵を1個小隊と考えていたんだが……。」
「ならばその任務、自分たちにお任せ下さい!」
そう言って、第1中隊火力小隊小隊長のケネス中尉が直立不動になる。火力小隊副隊長のジョシュア少尉も、それに追随した。
「偵察小隊は他にも仕事が多いでしょう。拠点防衛ならば火力小隊が適任かと存じます。」
「ああ、うむ。では火力小隊に……。そうだな、レオポルト少尉のヴァデット哨戒戦車小隊と、ジェームズ伍長の第4歩兵小隊を付けて……。」
「いや、第1歩兵中隊の面々は精兵ですわい。と言いますか、精兵すぎてこの任務には勿体ないですのう。第1から第4歩兵小隊の第1歩兵中隊よりかは、第5から第8歩兵小隊までの第2歩兵中隊、この惑星で臨時雇いした歩兵たちの中から、1個小隊ではなく2個小隊連れていかせたらどうでしょうかのう。」
サイモン老が意見を出す。と言うか、いつの間にかA、Bポイント両方を同時攻略する方向性で話が進んでいる。キースは内心で反省する。
(俺は叩き台のつもりで意見を言ったんだがな……。事後処理などで若干の修正は加わったけど、基本的に俺の意見がそのまま通ってるよ。もっと皆に考えさせないと駄目だよな。俺がいつでも正しいわけじゃないんだし、間違えたときの反動が怖いよ。
指揮官がうかつに意見を言うと、それがそのまま決定になっちゃう可能性は、いつでも存在するんだ。注意しないと。って、今さら注意したって今回は間に合わないじゃん。まずいかも……。)
と、ここでヒューバート大尉が発言する。
「少し疑問に思うことがあります。何も完全に同時攻撃をかける必要は無いのではありませんか?気圏戦闘機隊がAポイント爆撃後、オーバーゼアー城にいったん引き替えし、推進剤を補給の上でBポイントに向かえば、Bポイントを攻撃する第1中隊は気圏戦闘機隊の支援の下で戦うことが可能です。航空兵たちにはかなり激務を強いることになりますが……。
これならばBポイントを攻めているときに、敵本陣が援軍を出しても対処可能でしょう。スナイパー砲で地雷処理している間に、敵本陣へ緊急連絡が発せられれば、こちらの攻撃に対処するために援軍が派遣されると思われます。ですが気圏戦闘機隊がいれば敵援軍が来たとしても、万全の態勢で迎え撃つことが可能です。」
(おお!いいぞヒューバート!そう言う意見を待ってたんだ!)
キースはヒューバート大尉に頷きを返すと、気圏戦闘機パイロットである航空兵たちの方へ向き直る。彼はおもむろに口を開いた。
「航空兵諸君、頼めるか?」
「大丈夫っす!ちょっとぐらい厳しい任務の方が、遣り甲斐がありますよ!」
「またあんたは調子に乗って!あ!い、いえ文句を言ったわけじゃないです!その程度でしたら無理じゃありません!」
アロー1のマイク少尉とアロー2のジョアナ少尉が、口々に言う。アロー3のミケーレ少尉、アロー4のコルネリア少尉、ビートル1のヘルガ少尉、ビートル2のアードリアン少尉も、各々少し考えて頷きを返して来る。
ここで第2中隊指揮小隊の副隊長、グレーティア少尉が挙手する。
「オーバーゼアー城の守りは、機甲部隊の戦車を城に置いてくだされば、あとはバトルメック1個小隊があればなんとかなると思います。城備え付けのスナイパー砲2門と、フォートレス級降下船ディファイアント号のロングトムⅢ間接砲があれば、万が一のときに味方が帰ってくるまで持ちこたえるには充分かと。メック部隊第2中隊から、指揮小隊もしくは火力小隊『機兵狩人小隊』を、Bポイント前線基地の攻略に割り振るべきかと。」
「であれば、それは我々の仕事です。」
サラ中尉待遇少尉が言葉少なに言う。確かに現在の『機兵狩人小隊』の編成は、45tD型フェニックスホーク、50tエンフォーサー、55tシャドウホークの3機編成で、防衛戦に向くとは言えないだろう。ちなみに指揮小隊のメックは75tオリオン、55tウルバリーン、65tクルセイダー、55tグリフィンである。どちらを城に残すべきかは明らかだった。キースはサラ中尉待遇少尉に向かい、頷く。
「うむ。では『機兵狩人小隊』にはBポイント攻略隊に参加してもらおう。」
「了解。」
「ふむ……。さて、他に意見のある者はいないか?」
第1中隊偵察小隊の副隊長、リシャール少尉が手を挙げた。彼は慎重に考えながら発言する。
「Aポイントの前進基地爆撃と、Bポイントの前線基地攻略の時間をずらすと言うことでしたが、Aポイントが爆撃されて緊急連絡が行われれば、Bポイントから援軍が出されませんか?そうなると、Aポイントの前進基地跡地を押さえている歩兵部隊が危険です。その場合は気圏戦闘機の最出撃が間に合わなくとも、足止めを兼ねてBポイントへ攻撃を開始すべきではないでしょうか。」
「ふむ……。となると、こうなるか。Aポイント前進基地攻略部隊は気圏戦闘機による爆撃隊と、爆撃後に生存者などの捕縛を行う歩兵第2中隊。Bポイント攻略部隊はメック部隊第1中隊および『機兵狩人小隊』に、スナイパー砲車輛と基地制圧後に残存戦力の掃討などを行う歩兵第1中隊。オーバーゼアー城の防衛にメック部隊第2中隊指揮小隊と機甲部隊。
作戦予定日は今現在修理中のバトルメックが修理完了する、連盟標準時にて2日後。作戦フローチャートは以下の通り。
まず当日連盟標準時で05:00に偵察兵3名がA、B、両ポイントへ進発。事前の偵察を行う。その報告を受けた後、同日18:00時に爆撃隊を除いた全部隊進発。各部隊が配置に着くのは、Aポイントの歩兵部隊が20:00時頃、Bポイント攻撃部隊が21:00時頃だな。当日は1日中夜の日だったな。夜襲ではあるが、第1段階の爆撃以外は奇襲にはならんな。
Bポイント攻撃隊が配置に着くと同時に、オーバーゼアー城から気圏戦闘機による爆撃隊が発進。Aポイント到着しだい爆撃開始する。おおよそ21:15頃か。Bポイントから援軍が出る様であればすぐさま、そうでなければ気圏戦闘機の補給と再出撃を待ってスナイパー砲による地雷処理を開始。地雷原に穴が開きしだいメック部隊が突入し、戦闘開始。この戦力差なら、敵本陣からの援軍があっても、それが到着する前にBポイント前線基地を陥落させられるだろうし、そうでなくても味方の気圏戦闘機が到着するまで粘れば形勢はこちらが有利だ。
だがもし敵がBポイントの前線基地を見捨てて、大きく迂回してオーバーゼアー城を攻撃せんとした場合だが、その場合は作戦を放棄してオーバーゼアー城に全速力で帰還、襲撃してきた敵を討つ。
とまあ、こんなところだろう。無論タイトな作戦は望むところではない。特にBポイントへの攻撃開始時刻は、状況によって左右されるだろうな。その辺は俺を含めた各現場の指揮官の判断だ。何か他に意見のある者は?」
「「「「「「……。」」」」」」
「無い様だな。ではひとまずこれで閉会としよう。整備兵小隊指揮官のサイモン少尉は、作戦開始前までに全メック、全気圏戦闘機を万全にしておいてくれ。では解散!」
士官一同はキースに敬礼をする。キースも答礼を返す。そして彼らは三々五々、解散して行った。
キースはイヴリン訓練生に対し、指揮官としての心得を説いていた。イヴリン訓練生は、指揮官候補として他の訓練生よりも座学の時間が長い。今も彼女は、キースとマンツーマンで指導を受けていたところだった。
「いいか?指揮官が動揺していたら、部下にもその動揺は伝染する。できるだけ冷静さを保てる様にしろ。そして動揺しているときでも、それは内心に止めておき、表には出さない様に自分を律するんだ。まあ、一朝一夕には難しいだろうが、心の片隅にでも置いておけ。」
「はい!!……キース少佐も、動揺したりすることはあるんですか?」
「ん?……この場だから言うが、俺でも動揺することや、激昂することも多々あった。すぐに我を取り戻したとは言え、怒りを表に出してしまったのは今でも失敗だったと思っている。
幸いにも、当時……『SOTS』が小隊規模だったときなんだがな。そのとき部下だったのは、気心が特に知れている現第1中隊指揮小隊の面々だけだったからな。俺が怒った理由もちゃんと知っていた。それで致命的なことにはならなかったんだ。後は当時指揮官だった、アルバート中尉……一時的に大尉待遇だったが、そのおかげだな、すぐ我を取り戻せたのは。」
イヴリン訓練生は、目を見開く。
「……パパ。」
「そうだ、貴様のお父上だ。彼のお人のおかげをもって、今の俺があるのは間違いのないところだ。彼のお人からは、学ぶことが数多くあった……。」
キースはわずかな間、瞑目する。そして目を開くと、彼はにやりと笑った。
「いいか、貴様がどんな指揮官になるかはわからん。だが冷徹でも、人情家でも、頭脳派でも、武闘派でもかまわんから、部下に信頼される指揮官になれ。部下に好かれなくともかまわんから、部下の信頼は勝ち取ってみせろ。
まあ、そんなことを言っている俺自身、できているかどうか自信は無いがな。言っている事も、俺の教官の受け売りに過ぎん。だが俺の短い指揮官生活でも、教官の言っていたことは真実だとわかる。部下あってこその指揮官だ。部下との信頼関係があればこそ、部隊は貴様の意志の通りに動くだろう。恐怖で縛ったり、軍律だけに頼っている様では、いずれ限界が来るぞ。」
「はいっ!!」
「いい返事だ。」
頷いて、キースは心の中で考える。
(そのうち、軍事関係の座学以外の基礎教養は、誰か教育担当官を雇わにゃならんなあ。と言うか、早急に。誰か伝手を持ってないかなあ。ハオサン博士の伝手はどうだろう?あ、駄目か。ハオサン博士はカペラ大連邦国を追い出されて来たお人だった。伝手があっても、カペラ大連邦国だ。俺やサイモン爺さんの伝手は、政治家かお貴族様がほとんどだし……。)
「……?」
「む?……ああ、すまん。すこし考え事をしていた。そうだな、後は……。有能な怠け者になれ。」
「は、はい!?」
よくある言葉を引用したキースに、イヴリン訓練生は目を白黒させる。「有能な」はわかるが「怠け者」がわからなかったのだろう。キースは説明する。
「大昔の地球に伝わっていたとされる言葉の1節だ。有能であるが故に、物事をきちんと判断することができる。怠け者であるが故に、有用な他人を上手く用いて仕事を任せられる。だから指揮官に向く、とな。他にも、自分の部隊がどうすれば楽に勝てるかを考えるからだ、とも言われてもいる。」
「はい!!……ですがキース少佐、有能な働き者ではいけないのでしょうか?」
「有能な働き者は、働き者であるが故に他者に仕事を任せ切ることができない……だそうだ。だが働き者故に自分で色々働くから、部下を率いるよりは司令官を補佐する参謀の方が向いていると言われるな。」
イヴリン訓練生は、変な顔をした。キースは怪訝に思う。
「……どうした?」
「はい!……いえ、キース少佐は働き者の様に思えましたので。」
「む、そうか?これでも任せられる仕事はできる限り他に任せているのだが……。確かに権限の委譲は少し下手かも知れんなあ。」
その言葉に、イヴリン訓練生は慌てた。
「も、勿論良い意味で、です!」
「いや、かまわん。そうだな、もう少し怠けられる様に努力するか。まずは副官と、基礎教養を教える教育担当官を探さないといけないな。」
「えっ……。教育担当官、ですか?」
イヴリン訓練生は、自分で意識しているかどうかは定かでないが、少々残念そうな顔になる。キースは続けた。
「ああ。基礎教養を教えるのは、俺は実のところ専門ではないしな。まあ軍事関係の座学は引き続き俺が担当するが。それに人材はすぐに見つかるものでもないから、まだ先の話だ。」
「そ、そうですか!」
今度は一転して元気になるイヴリン訓練生のことを、キースは多少不思議に思う。しかしまあ、悪い気はしなかった。キースは指揮官教育の続きに入る。
「では続きと行くか。テキストの102ページを開け。」
「はいっ!!」
(イヴリン訓練生の初陣のことも考えにゃ、いかんなあ。ヒューバートからも言われたし。実機訓練も、最初こそ粗が目立ったけど、シミュレーター訓練をみっちりやっていたせいだろうか、慣れるのも早かったしな。イヴリン訓練生の後にはエドウィン訓練生とエルフリーデ訓練生が詰まってることだしなあ……。)
キースは多少の悩みを抱えながら、かつて自分がレオ・ファーニバル教官から教わったことをイヴリン訓練生に教え込んで行った。
昼なお暗い惑星ネイバーフッド……。と言うか、この惑星の自転周期は48.8時間であるため、連盟標準時で生活していると、惑星時とかなりのずれが生じる。連盟標準時では18:00であるのだが、辺りは真っ暗闇で、空には暗雲が立ち込めており、星明りや月明かりも無い。ちなみにこの惑星の月は、地球の物よりもかなり小さな物が2つ存在している。
キースは命令を下す。
「ただ今より作戦を開始する!Aポイントの残敵掃討部隊、Bポイントの攻略部隊、出動せよ!」
『『『『『『了解!』』』』』』
闇の中、『SOTS』メック部隊第1中隊と、第2中隊火力小隊『機兵狩人小隊』が進発した。ウォーハンマーとライフルマンは、サーチライトを消灯している。メック部隊は操縦席の主スクリーン映像を赤外線映像にし、歩兵部隊の装甲兵員輸送車も運転手が希少な暗視ゴーグルを使用していた。無論、スナイパー砲車輛を運転しているサイモン老も、暗視ゴーグルを使っている。バトルメックの様な重量物は見つかりやすいとは言え、わざわざその存在を喧伝することは無いのだ。
キースたちの部隊は、闇の中を目的地に向けて進んで行った。
雇い主であるライラ共和国からの命令で、『SOTS』は攻勢に出る事になりました。色々会議を重ねた結果、主人公の思惑を外れて、主人公の示した意見がほぼそのまま通ってしまいましたね。ちょっと危険ですねー。