鋼鉄の魂   作:雑草弁士

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『エピソード-062 深夜の緊急出撃』

 未だ休戦期間が明けぬ3026年11月17日、キースは自分やサイモン老の得意とする間接砲撃に関しての講義を、自分の「学生たち」に対して行っていた。

 

「……つまり間接砲撃は、本来敵の地雷原を吹き飛ばしたり、敵の防御陣地を破壊したりするのが普通の使い方だ。よく俺とサイモン中尉がやっている、「移動するバトルメックの動きを読んでそれに命中させる」のは、正直なところ邪道だからできなくとも構わん。敵と味方の動きを正確に読み、発射から着弾までのタイムラグをも計算に入れて命中させるなど、熟練の技量の砲兵と着弾観測員でなければ誤射が怖い。万一味方に当てたりしたら、たまった物ではないからな。

 ……ただ、機動兵器であるバトルメック等に命中させるやり方で、比較的だが邪道では無い使い方もある。幾つかあるが、それが解る者や思いつく者は、挙手しろ。」

 

 ばらばらと手が挙がる。キースは一番挙手が早かったイヴリン軍曹を指名した。

 

「よし、イヴリン軍曹。答えてみろ。」

「はいっ!自分が考え至ったのは、野戦において敵……主に支援メックなどが優位地形などを確保した場合であります。この場合、その優位地形である地点に間接砲撃を行う事により、敵支援機を早期に叩き、あるいは敵に優位地形を放棄させます。またその優位地形から敵がいなくなっていても、その地点への砲撃を継続する事により、敵が優位地形を再度奪取する事を阻止できます。」

「うむ、その通りだ。これは敵が確保した優位地形を、1つの防御陣地に見立てて砲撃を行う物だな。つまりは「敵防御陣地への砲撃」の変形だ。ふむ、これは先日の『第25ラサルハグ連隊C大隊』との戦いでやった間接砲の使い方だ。よく覚えていたな。」

 

 褒められて嬉しそうなイヴリン軍曹に、ニヤリと笑いかけてから、キースは続ける。

 

「さて、今イヴリン軍曹が一例を挙げたが、他の方法を思いつく者はいるか?……カーリン軍曹か。よし、答えろ。」

「はっ!自分が覚えているのは、惑星ドリステラⅢにおける駐屯軍基地防衛戦です。あの時は地雷原との併用で、敵メック部隊を誘導し、移動を制限し、間接砲撃で叩いていた様に思われます。また敵を地雷原へ追い込むため、敵の退路を断つ形で砲撃を行っておりました。言い換えれば、間接砲撃を敵の動きを誘導するために用いていた様に思われます。」

「あれは貴様にとって、初陣だったな。印象深いのも頷けるか。そうだ、籠城戦などでの間接砲の役割が、それだ。地雷原を始めとした防御施設で敵の動きを制御し、間接砲撃を命中させる。いや、命中させなくとも、間接砲撃自体を敵の動きを制御するための道具として使えば良い。

 これは城を始めとした防御陣地の周囲を、あらかじめ多数の地点を照準設定しているからできる芸当だな。比較的未熟な砲手でも、あらかじめ時間をかけて照準設定しておけば容易に目標地点へ命中させられる。

 ついでだ。逆に間接砲と地雷原で守られた城や基地を攻める場合の定石も教えてやろう。まずは味方にも間接砲がある事が望ましい。これで敵の地雷原を切り拓く。そして充分に広い区域が確保できたなら、次に注意すべきはあえて優位地形を確保しない事と、動きを止めない事だ。先ほど言った通り、城や基地の周辺はあらかじめ照準設定済みだと考えて良い。動きを止めて自機の火器を撃っていたら、敵の間接砲撃が降って来るぞ。うちの部隊の様に航空戦力が充実しているならば、気圏戦闘機を爆装させて敵間接砲を爆撃させるのも手ではある。」

 

 おもむろにキースは、「学生たち」全員の顔を見渡す。実戦経験のある任官済みのメック戦士たちは、なるほど、と言う顔をしていた。だがジャクリーン・ジェンキンソン、ゲルダ・ブライトクロイツ、モーリス・キャンピアン、ブリジット・セスナの各訓練生は、実戦経験が無い故に今一つ理解が及んでいない様だ。

 

(これは仕方がないだろうなあ。だけどそれでも、教えて置くのと教えてないのとでは、実際にその事態に直面した時に、大きく違いが出るもんな。)

 

 キースは引き続き、実例を交えながら間接砲撃について解説して行った。

 

 

 

 アル・カサス城の司令執務室にて、数枚の書類を前にしてキースは少々困っていた。なおジャスティン少尉は、自分の席で書類の山に埋もれている。キースは呟く。

 

「ううむ、『アリオト金剛軍団』第1中隊各小隊から、城外演習場の使用願いが上がって来ているな。だがアル・カサス城の演習場は、『SOTS』も使いたいんだがな。だが、『SOTS』ばかりを贔屓するわけにもいかんか。しかも申請理由が、入院中のブランクを実機演習で取り戻したい、とあらば……。却下はできんな。

 仕方ない、『SOTS』の面々にはシミュレーター訓練で我慢してもらうとしよう。だが今度は、訓練生たちのシミュレーター訓練に支障が出る、か。いやこの場合は、敵が目の前にいるんだ。実戦部隊を優先だ。訓練生たちには代わりに図上演習をやらせて、戦術眼を磨かせるとしよう。」

「『アリオト金剛軍団』の第1中隊の面々、バトルメックの調子が以前とは比べ物にならないほど良くなってる事に、驚くんじゃないかしら。」

 

 そう言ったのは、仮設遺跡基地からアル・カサス城に帰還してきたばかりのアーリン大尉だ。彼女は仮設遺跡基地にいる間の報告書を提出しに来たついでに、書類仕事を手伝っていたのである。ちなみに仮設遺跡基地には、今現在ケネス大尉率いる第4中隊が、ジェームズ・パーシング少尉の第4歩兵小隊と共に駐留していた。

 キースは苦笑しながらアーリン大尉に応える。

 

「たしかにな。サイモン中尉によれば『アリオト金剛軍団』第1中隊のメックは、部品を抜かれたフェニックスホーク2機と、元から部品が足りなくて修理不能だったサイクロプス1機を除いて、完全に修復が成ったそうだ。損傷する前からあった不具合まで全部直した上でな。ついでと言うのは何だが、コルセア戦闘機も損傷や故障を完全修理して復帰している。……ぶっちゃけた話、『アリオト金剛軍団』の整備兵たちではなく、サイモン中尉主導で修理したらしいな。

 だがこれで、『アリオト金剛軍団』の予備部品は底をついてしまった。月末に入るはずの戦闘報酬の多く……隊員に支払う給与を除いた全額を物納の形にして、ライラ共和国に部品を発注したそうだが……。だが発注できた部品は、結局のところそれほど多く無いらしい。『SOTS』と同居している間に、部品が届いてくれればいいんだがな。」

「ああ、サイモン中尉やジェレミー少尉の手を借りられますからね。修理の失敗で部品を無駄にする事は無いでしょうね。」

「サイモン中尉の話では、『アリオト金剛軍団』の整備兵たちも以前より格段に技量が上がっているし、意識改革も進んでいるそうなのだが……。それでも、修理に失敗しない、とはまだまだ言えないレベルだそうだからな。」

 

 『アリオト金剛軍団』第1中隊のフェニックスホーク2機と、第3中隊の完全破壊を免れた全機、計9機のメックは、『第25ラサルハグ連隊C大隊』に鹵獲されていた間に部品取り用として扱われ、生半可なことでは復旧できなくなっていた。また、元から希少な強襲メックである、『アリオト金剛軍団』大隊長機たる90tのサイクロプスは、貴重品であるが故に部品が品薄かつ高価であって手に入らず、大破状態からの復旧が覚束ない状況である。

 アーリン大尉は溜息を吐いて言った。

 

「はぁ……。『アリオト金剛軍団』暫定指揮官のクリフ・ペイジ大尉もジレンマでしょうね。前大隊長の妹にメックと大隊長の座を受け継がせる以上、サイクロプスの修復をサイモン中尉たちの力を借りられるうちに済ませたいでしょうに。でも部品がなかなか手に入らないし、今必要なのはメック戦士がいるメックの修復だもの。優先すべきは、おそらくウォーハンマー、サンダーボルト、アーチャー2機あたりかしら。」

「ああ。その4機と、加えてクルセイダーを復帰させるべく、今回は部品を注文したらしいな。だが、本当にそれでぎりぎりらしい。しかも予備部品にまでは手が回っていない。修理で全部使い切ってしまうらしい。」

 

 キースは『アリオト金剛軍団』第1中隊からの演習場使用許可願いに承認のサインを入れつつ言う。そして彼は他からの演習場使用許可願いに、却下理由とシミュレーター訓練を当面行う様にとの申し送りを書き付けて、差し戻し書類のボックスへ放り込んだ。彼は頭を振る。

 

「うちから部品を貸し付けるわけにもいかん。部隊経営が統合されているわけでもなし、本当の意味で貸しになってしまう。弾薬は、ライラ共和国との契約で補填されるから、遠慮も躊躇もなしに貸したが……。部品は返してもらえるあても無しに貸す事はできん。」

「『アリオト金剛軍団』は、本当であれば恵まれてる方の部隊なんですけれどねえ……。降下船もユニオン級3隻を持ってますし、専属の航宙艦も持ってるのに。ユニオン級を商用航宙に出したり、航宙艦を商用降下船を運ばせたりして小金を稼ぐ手は?」

「敵が目の前にいる以上、それはできんよ。うちも現時点ではやっていないだろう?もし敗北したならば、致命傷を負う前に降下船で撤退し、航宙艦で星系を出ていかねばならん。金稼ぎに使っていて、いざと言う時に降下船や航宙艦が無い、などと言う危険は冒せないんだ。」

「ですよねえ……。」

 

 アーリン大尉も、分かっていて言ったのだろう。今現在の戦力比で、そう簡単に負けるとはキースもアーリン大尉も思っていない。ただし敵が増援を送ってこないならば、だ。この惑星には戦略目標となり得るバトルメックの倉庫が存在する。規模はヘスペラスⅡの物に全く及ばない様だが、それでもライラ共和国にとっては貴重な補給源だ。ドラコ連合を支配するクリタ家が、そう簡単に諦めるだろうかと言うと、疑問符がつく。

 だからこそキースたちは、貴重な推進剤をなんとかやりくりして、気圏戦闘機によるCAP……戦闘空中哨戒を行っている。12機の気圏戦闘機を保有する『SOTS』でさえ、ザル同然のエアカバーしか敷けないが、無いよりはましである。この惑星には、惑星首都の隣の宇宙港に通常の対宙監視レーダーこそあったが深探査レーダーは無く、またその通常の対宙監視レーダーも惑星首都を一時占領されていた影響で、現状満足に動いていないのだ。

 ちなみにオスニエル公爵もこの事を憂慮しており、この惑星の小さな海に隣接する水工場から作り出される推進剤を、優先的に惑星守備隊に回してくれる約束をしてくれた。これにより、将来的には推進剤の不足は改善すると見られている。あくまで将来的には、であるが。

 その後キースたちは、粛々と書類仕事に精を出す。『アリオト金剛軍団』にはやはり、できるだけ戦場を用意してやって稼ぎ場を与えた上で、自助努力を期待するしか無いらしかった。

 

 

 

 仮設遺跡基地への駐留部隊は、あれからヒューバート大尉の第2中隊と、ラナ・ゴドルフィン少尉の第2歩兵小隊に交代している。キースは今、指令室の司令席に着いて、城の通信施設を通じてヒューバート大尉と交信を行っていた。

 

「ヒューバート大尉、あと2日で25日だ。」

『休戦期間の期日切れですね。』

「ああ。もし奴らが休戦破りをするとしたら、直前が怪しい。充分警戒してくれ。それに奴らが休戦破りをやらないとしても、休戦明け直後のタイミングで奇襲攻撃を仕掛ける事は、充分にあり得る。

 こちらも緊急出撃の準備は整えて置くので、万一の際は粘るだけ粘ってくれ。まあ、ネイサン軍曹の班とエルンスト曹長の班、それに『アリオト金剛軍団』の偵察兵たちが交代でサンタンジェロ城を見張っているんで、まず間違いなく発見されて奇襲にはならないと思うがね。」

 

 ヒューバート大尉がおそらく失笑しているのが、キースには容易に想像がついた。ヒューバート大尉は一拍置いて言葉を発する。

 

『了解です。任せてください、そう簡単にこの遺跡都市は渡しませんよ。』

「ああ。いや、できるなら出撃した敵をアル・カサス城から出撃した我々と、貴官の部隊で挟み撃ちにして撃滅したいところだがな。」

『……それもいいですね。可能なら試みてみましょうか。』

 

 キースはにやりと笑う。おそらくヒューバート大尉の脳裏にも、キースがにやりと笑った姿が浮かんでいるだろう。それぐらいには、2人の付き合いは長い。

 

「まあ、あくまで可能なら、な。」

『ですね。ではそろそろ自分はメックに戻ります。』

「了解だ。交信終わり。」

 

 キースは通信回線を閉じる。ふと彼は思いついて、オペレーターに命令を下した。

 

「オペレーター、城内の練兵場の様子を主スクリーンに映せ。」

「はい、了解です。」

「……ふむ、やっているな。」

 

 指令室の主スクリーンに映し出されたのは、先日雇用されたばかりである臨時雇いの第2歩兵中隊、つまり第5から第8までの4個歩兵小隊の姿である。第2歩兵中隊の指揮を執っているのは、テリー・アボット大尉待遇中尉であった。キースはエリオット大尉、アイラ軍曹、ベネデッタ伍長、そしてテリー中尉から報告を受けた内容を思い出す。

 

(……第2歩兵中隊の兵員募集に際し、やはりドラコ連合のスパイが計3名入り込もうとしていた、か。あの4人のおかげで入り込まれる前に発見し、捕縛する事ができた……。コンピューターのエキスパートであるパメラ軍曹は、尋問技術のエキスパートでもあるからなあ。あっさり自白させて情報を引き出せるだけ引き出して、その後銃殺したけど……。

 引き出した情報を惑星政府に流して、スパイ組織について捜査してもらっているけれど、その後どうなったかな。ライナーはこの惑星にも、コネを作ろうとしているだろうから、今度訊いてみよう。)

 

 主スクリーンに映る練兵の様子は、非常に厳しい。とは言え、第1歩兵中隊の面々ならば鼻歌混じりにこなしてしまう程度の訓練でもある。

 

「やはりまだまだ雇ったばかり、と言う事だな。練度が低すぎる。」

「確かに……。」

 

 思わず相槌を打ったのは、元歩兵であった経験を持つ、大隊副官のジャスティン少尉である。彼はキースのボディーガードと言う側面も持っており、今も書類仕事の合間に鍛錬を欠かしてはいない。その彼から見れば、第2歩兵中隊の新兵どもは頼りにならないことこの上なし、と言うところであろう。

 キースは苦笑して言った。

 

「まあ、そんな新兵でも使い道を考えるのが俺の役目だ。せっかく雇ったんだ、臨時雇いとは言えど給料分は働いてもらわんとな。」

「はっ!」

「さて、オペレーター。アーリン大尉を呼び出してくれ。指令室の事を頼まねばならん。俺は司令執務室で書類仕事がある。」

「了解です。……繋がりました。司令席に回線を回します。」

 

 オペレーターは即座に命令に従う。キースは司令席の卓上に設えられた通信設備の回線を開いた。

 

 

 

 連盟標準時にて3026年11月24日の深夜23:55時、この惑星の標準時と連盟標準時のズレはさほど大きく無く、既に外は真っ暗闇である。だがキースはあえて昼間のうちに仮眠を取り、この時間に指令室に詰めていた。『第25ラサルハグ連隊C大隊』が、休戦明けと同時に何かしら事を起こすのではないか、そんな予感がしていたのである。

 時間は刻々と過ぎていく。そして11月25日00:00時になった。だが何事も起こらない……、そう思った次の瞬間である。オペレーターの1人が叫ぶ様に言った。

 

「ハワード中佐!偵察兵ノーランド軍曹より緊急連絡です!」

「やはり来たか!回線を司令席へ回せ!」

「了解です!」

 

 キースは司令席の通信設備を立ち上げる。すぐにネイサン軍曹の声が響いた。

 

『隊長!どんぴしゃです!奴ら、休戦明けと同時に動き出しました。IR偽装網をかぶったメックが次々にサンタンジェロ城の城門を出て行きます。しばらくしたら、私は後を追いますんで……。ん?』

「……ネイサン軍曹、どうした?」

『少々待ってください隊長……。』

 

 キースはしばし待った。やがてネイサン軍曹の声が、再び聞こえて来た。

 

『隊長、先のIR偽装網をかぶったメック1個大隊は、遺跡都市方向へと進軍して行きます。で、もう1組……。こちらは堂々と姿をさらしてます。規模は1個中隊弱、進軍方向は首都方面です。』

「堂々と出て来た方は、明らかに囮だな。だが放って置くわけにもいかん、か。」

『ですね。隊長、囮の方はフィリップ伍長に後を追わせます。私はIR偽装網をかぶった方を追いますんで。通信機材はここに放棄します、すいません。』

「かまうな。貴様の判断は正しい。では後は頼んだ。」

『了解です、交信終わり。』

 

 通信は切れた。キースはオペレーターに叫ぶ。

 

「全メック戦士と航空兵、上級整備兵サイモン中尉、大隊副官ジャスティン少尉、偵察兵ソフィーヤ伍長、および第1、第3歩兵小隊と……第5、第6、第7、第8歩兵小隊に緊急招集をかけろ!全員、機体やスナイパー砲車輛、指揮車輛、スィフトウィンド偵察車輌、各歩兵小隊割り当ての兵員輸送車の所に行かせるんだ!」

「「「「「「了解!」」」」」」

「それと仮設遺跡基地に呼び出しをかけろ!回線は俺のマローダーに繋げ!俺はマローダーへ行く!」

「了解です!」

 

 キースは衣服の襟元を緩めつつ、城のメック格納庫へと疾走した。

 

 

 

 そして今、キースはマローダーの操縦席にいた。アル・カサス城の通信施設を介して、仮設遺跡基地との回線は繋がっている。キースは通信相手を呼んだ。

 

「ヒューバート大尉。寝ているところ済まんな。」

『いえ、昼間仮眠を取って今は起きてました。やっぱり動きましたか。』

「ああ。IR偽装網をかぶって、1個大隊がそちらに移動中だ。おまけに首都方面にも、1個中隊弱がこちらは囮のつもりか、堂々と出張って来ている。……ヒューバート大尉、前に言ってたことを試してみるとしよう。」

 

 ヒューバート大尉は即座に応える。

 

『了解です。では第2中隊は、これより緊急出撃します。』

「頼んだ。そちらは多少のんびりとサンタンジェロ城方面へ向けて移動してくれ。距離が近くなれば、敵の後をつけているネイサン軍曹と通信可能になるだろう。そうすれば逃がすことは無い。

 こちらもこれより緊急出撃する。会敵予定地点は、サンタンジェロ城と遺跡都市の中間点よりやや遺跡都市側の、XA-447地点だ。できるならばこちらが会敵した後で、そちらが敵の後背を突く形にしたい。だがそちらが先に会敵した場合、敵は1個大隊規模だ。のらりくらりと時間稼ぎをして、こちらの到着を待て。」

『了解。無理はしませんよ。ではまた後ほど。交信終わり。』

 

 ヒューバート大尉との通信回線を閉じると、キースは麾下の全部隊に対し、回線を繋いだ。

 

「……諸君!敵が行動を開始した!狙いは遺跡都市に我々が設営した仮設基地だ!敵1個大隊がIR偽装網で身を隠し、隠密行動を取っているつもりになっている!しかしその後を我々の偵察兵が追尾している!敵は裸の王様だ!我々は仮設遺跡基地に駐留している第2中隊と、こちらから進発する第1、第3、第4中隊で敵を挟撃する!スナイパー砲車輛、指揮車輛、第1、第5、第6歩兵小隊は随伴せよ!」

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 そしてキースは『アリオト金剛軍団』の面々に声を掛ける。

 

「『アリオト金剛軍団』の諸君、君達には首都方面へ進軍している敵の別働隊への対処を命じる。囮のつもりか、こちらは堂々と姿をさらして移動している。こちらにも我が部隊の偵察兵、フィリップ・エルランジェ伍長が付いているから、距離が近くなれば交信可能となるはずだ。規模は1個中隊弱。ペイジ大尉、君達だけで相手を壊滅させて欲しい。できるな?」

『無論です!』

「そうか、頼もしいな。戦闘には参加させんが、遠距離通信手段としてソフィーヤ・セミョーノヴナ・クロチコワ伍長のスィフトウィンド偵察車輌を随伴させる。会敵予定地点が近くなったら、適当な所で待機させてくれ。それと降伏させた相手を捕虜にするのに歩兵が必要だろう。第3、第7、第8歩兵小隊を随伴させるから、これもスィフトウィンド偵察車輌と同じ場所に待機させて、事が終わったら呼び出してくれ。」

『はっ!お気遣いありがとうございます!』

 

 おそらくクリフ大尉には、キースの思惑が分かっているのだろう。キースはあえて『SOTS』の部隊をそちら側の戦闘に参加させない事で、敵メックの鹵獲や撃破に伴う戦闘ボーナスを、全て『アリオト金剛軍団』に与えようと意図しているのだ。

 キースは引き続き、気圏戦闘機隊へと命を下す。

 

「『SOTS』所属の気圏戦闘機隊。こちらの指揮車輛から城に連絡が入り次第、貴官らにはこちら目指して発進してもらう。地上攻撃支援だ、できるな?」

『『『『『『了解!』』』』』』

「『アリオト金剛軍団』所属コルセア戦闘機のボリス・ヤロスラヴォヴィチ・ゴルトフ少尉、貴官の役目も地上攻撃支援だ。だが支援するのは『アリオト金剛軍団』だ。ソフィーヤ伍長のスィフトウィンド偵察車輌から連絡が入り次第、ペイジ大尉たちを助けに飛び出してもらうぞ。」

『了解です!』

 

 航空兵たちの返事を聞き、キースは頷く。彼は出撃命令を下した。

 

「『SOTS』、『アリオト金剛軍団』、出撃せよ!!」

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

 バトルメックの群れが、格納庫の扉を抜け、城門をくぐる。そして彼らは二手に分かれ、闇の中へと進軍して行った。




『SOTS』『アリオト金剛軍団』、共に現時点で可能な限りの修理を完了し、いざ出撃です。勝利の女神は、微笑んでくれるでしょうか。特に『アリオト金剛軍団』とかに。
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