Tales of Trust -信じることを知るRPG- 作:keim
ようやくここまで来た。ずっと憧れてきた存在に、ようやく手が届く距離まで来た。
あと、少し。
不安はある。でも、やれることをやるだけ。
人を助ける、人の役に立ちたいって気持ちは誰にも負けない。怖じ気付いてたまるかっての。
聖堂の壁に貼られた、第五試験通過者の名前をもう一度見上げる。そこにある私の名前を見るだけで、鼓動が早くなる。ドキドキしてる。
不安と緊張とそして、きっとこれは高揚感。
明日が最終試験。
それに合格すれば、女神アシリア様の力を賜って、私は聖女になれる。巡礼者になれる。
この手で傷付いた人を救えるようになる。
医術じゃ救えない人も魔術で救えるんだ。
自然と笑みが溢れて、あわてて表情を引き締める。
まだ試験が残ってる。浮かれるには早いぞ、私。
軽く頬を叩くと回りの喧騒が帰ってくる。
喜ぶペアや、泣き崩れるペア。悲喜こもごも。
何れにせよ、聖女見習いと聖騎士候補の二人組で感情を分かち合っている。
私以外は。
私だけ一人ぼっちだ。
……私にもパートナーはいる、でもこの場にはいない。
9:00に合否発表があるから来てって、私は言ったよね。
私悪くないよね。
……あのバカ面が脳内でちらつく。
やる気をどっかに置いてきたような顔。寝癖が付いたままのようなボサボサの髪。
私のパートナー、聖騎士候補のダレン・ジョーカー。
自堕落を絵に描いたような男。
どうしてあんなやつが本試験に進めたのかって思うほどに、女神様への信仰心皆無だしダメ人間。
良いところは剣の腕しかない。
どうしてあんなのが、私のパートナーなんだろ。
例えば仮に私が聖女になったら、あいつも聖騎士になる。つまり、私とあいつで巡礼者として活動することになる。
……先行き不安だわぁ。
どうせなら、女神の盾って言われるホワイト様みたいな人がパートナーなら……ね。
一度だけ目にしたことがあるけど、素敵な人だった。
……こんなこと考えてたってしょうがない。
とりあえず、ダレンを探しにいかないと。
確かあいつ、私が9:00には来てって言った時に
"9:00とか普通の人間ならまだ寝てる時間だろ"
とか言ってたっけ。
つまりまだ寝てるのかな。
一体どんな神経してるんだろ。
自分の進退が決まる発表がされてるのに、寝坊するとかさ。
とりあえず、あいつの宿泊先、覗いてみようか。
「ちょっとごめんねー!!
通してくれない? 私用事があって」
周囲にいたペアが何事かと私に視線を送ってくる。
そんな目向けないでよ。
人混みを掻き分けて、聖堂の外に出た。