Tales of Trust -信じることを知るRPG-   作:keim

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4.最終試験 side:アンネ

夕陽が沈むとき。最終試験が始まる。

集合場所は試練の間の扉の前。

空が茜色に染まり始めると、ちらほらと聖堂に人が集まってくる。

ダレン、ちゃんと来るかな。来るわよね……?

流石にここ大一番で遅刻とかすっぽかすとかはないと思いたい。今までも試験にはギリギリ間に合ってたし。

 

「待ったー?」

 

思ったより早くダレンが来た。

よかった。

……というか、その格好。

一応、聖騎士候補としての服装は教会から支給されている。聖寮(聖騎士候補養成機関)出身の聖騎士候補はみんなそれ。他所から来た人もだいたいそれを着てる。

っていうのにさ……思いっきり普段着じゃない。

 

相変わらず寝癖なのかなんなのかわからないボサボサの茶髪。ヨレヨレの白Tシャツに、赤いジャケット。緩めの黒いズボン。あ、靴紐片方ほどけてるじゃない。

相変わらず"ちょっと雑貨屋寄ってくる"みたいな格好。

緊張感がないというか、空気読めないっていうか。

……それがダレンの良いとこかもね……なんて思ったり。

……思わなかったり。

 

「ちょっとだけ待った。

行くわよ、ついてきてね」

 

私についてこないと部外者と勘違いして弾かれそうだし、あいつ。

 

聖堂入ってすぐは礼拝堂になっている。

その礼拝堂の左右に細い通路がある。

その左が、試練の間に続く階段への通路。

赤い絨毯にステンドグラスが鮮やかな影を落としている。

 

「……今日、全然人いねえな」

 

「人払いしてるからね」

 

「わざわざ?」

 

「わざわざ。最終試験は神様が使徒を選ぶ場だから、部外者は立ち入り禁止だって……神聖な儀式らしいわ」

 

「へえ……」

 

興味なさそうな返事が返ってくる。

あんたが聞いてきたんじゃない。

ダレンの視線は右手の甲に向いていた。フェデーレの紋章。女神様の良き信者である証……ダレンみたいなのも一応、フェデーレ。

 

「聖騎士になるってことは、アポストルになるってことだよな」

 

「そうだけど……なんか、その言い方、嫌」

 

善神・邪神問わず力を授かって使徒になった人間はアポストルと呼ばれる。フェデーレの紋章が、その神を表す紋章になる。

確かに聖騎士も聖女も、アポストルだけど。

 

「聖女と聖騎士は特別よ。

聖女は女神アシリア様の力を授かって、聖騎士は聖女を守るために善神の力を授かる。女神アシリア様に認められて使徒になる。これって凄いことよ。

巡礼者は女神様の想いの代行者なの」

 

「……そういうの、よくわかんねえわ俺」

 

「そう言うと思ってた」

 

普段なら腹のたつ軽薄な発言だけど、今はその軽さが有り難く思う。

気負わなくてすむし、緊張しない。

 

赤い絨毯の廊下の終わり。

小さな木製の扉がある。

ダレンがそのドアノブを捻って開ける。その先は螺旋状の階段が続いている。

 

「うっわ、すっごい階段。

しかも上りだし……」

 

ダレンがあからさまに嫌そうな顔をした。

 

--------

 

階段を上りきった聖堂の最上部。

大きな扉の前に、聖女見習いと聖騎士候補がいた。確か私達を入れて10組だから、20人。

 

「お前達で最後だな」

 

扉の前に立っている男の人がそう言うと、辺りは静まり返る。

 

「ラヴ様、此方へ。

道を開けろ」

 

男が私達の後方に向けて頭を下げる。

ラヴ様……。まさか……。

周囲がざわつく。

 

「え……何……誰?」

 

ダレンは何だかよくわかってないようだけど。

さっと作られた通り道。

そこを扉に向けて、女性が歩いていく。

艶やかな銀髪に長身、透けるように白い肌。

そして右腕の羽の紋章。

……本物のラヴ様だ。

 

「ラヴ・シンク様。女神アシリア様の妹とされるアリア様の使徒……ううん写し身って呼ばれてるすごい人……」

 

「胡散臭……」

 

「失礼なこと言わないでよ」

 

扉にラヴ様が手を翳す。

白い光が扉の装飾に走り、ゆっくりと扉が開いていく。

 

「入れ」

 

男に促され、私達は試練の間に足を踏み入れた。

中は案外、質素。真っ白な壁と、天井に描かれた大きな魔方陣。それ以外は何もない。

ラヴ様が試練の間中央に立つ。

 

「これより最終試験を始める」

 

いよいよね。

何だろう、最終試験の内容。

何が来たって、私は負けない。

必ず……聖女になってみせる。

 

「殺し合え」

 

「え」

 

「最後に残った一組が聖女と聖騎士。巡礼者となる。

貴様らの女神への忠誠心を見せよ。ここで命を落とすような弱いものは女神の代行者足り得ない」

 

背後で扉が閉まる音がした。

 

殺し合えって……何?

どうして……?

 

「冗談ですよね……」

 

聖騎士候補の一人が、ひきつった表情で呟く。

ラヴ様は何も答えない。

つまり、本当?

 

「私……やだ……そんなの出来ない、出して!!」

 

まだ幼さの残る聖女見習いが、扉を叩く。

そういえばあの扉……どうやって開けるの。一人で押したって開きそうにない大きさだし、そもそも蝶番がない。

一種の魔術で開閉しているのだとしたら。

 

「私達……ここから出れないんじゃない?」

 

生きて出たいなら、殺して生き残れってこと?

そんな……それって。

……みんなで出る方法は……。

 

「……俺は死にたくない。

お前らが死なないと出れないっていうなら、殺る」

 

一人の聖騎士候補が武器を構えた。

それがこの場の微妙な空気を壊す。みんな次々と武器を構える。

やだ……どうして……。

 

女の子の悲鳴が響いた。

茶髪の少女が、斬られた肩を押さえて蹲る。

 

「悪く思わないで。

私は……私は……!!」

 

切りつけた少女がナイフを振りかざす。

その少女を狙うの細身の槍。

なんで……みんな……殺し合わなきゃ……。

 

「ぼさっとすんな」

 

ダレンが声をかけてくれる。

 

「うん……」

 

「死にたくないならしゃんとしろ」

 

ダレンの表情は少しだけ険しい。

でも、困惑したり迷ったりしてる様子はなかった。

どうして覚悟を決めれるの。

人を殺す覚悟なんて……。

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