Tales of Trust -信じることを知るRPG-   作:keim

8 / 8
5.ミカハヤヒ side:ダレン

何のために殺し合うのか。

 

俺は人を殺すために来たわけじゃない。ここにいる奴等は"巡礼者になりたい"って人を守りたいって思ってここに来たんだろ。おんなじ考えを持った人同士(俺を除いて)殺し合えってか。

……こんなのってないよな。

 

ぼさっとすんな。

そう、アンネに声をかけたのは他でもない俺。こうなったからには殺らねばならない、生きるために……そう覚悟を決めたはずだったんだけど。それなのに、割りきれない。

いや、割りきれて良いものじゃないよな、普通さ。

 

巡礼者は人を守る存在なんだろ。

人を守る巡礼者になるために人を殺す?

酷い矛盾で、エグい皮肉だ。人を助けてまるで神様のように崇められている存在が、人殺し。何の冗談だ。

アンネに視線を移した。

 

『巡礼者になりたい。

人を助ける存在になりたいから』

 

人を助けるためただ真っ直ぐ生きてきたアンネに、人を傷つけろって言うのか。殺せって言うのか。

 

非情になれとでも言うのか。

切り捨てる覚悟を持てとでもいうのか。

 

左からの殺気に剣を構える。

聖騎士候補の一人が振るってきた剣。受け止めるけれど、軽い。

全く気が乗ってない。

困惑したような瞳と目があった。

 

「こんなの おかしいじゃねえか」

 

決まりだ、規則だ、掟だ、女神の教えだ……ごたごた煩いんだよ。

規則も掟も、人を守るためにあるんだろ。

人を傷つけるようなものはクソだ。しかも、その教えを忠実に守った人間に牙を剥くんだ。

 

……今に始まったことじゃねえ、昔っからそうだったじゃねえか。

教会はさ。

 

はっきり言ってやる。

"そんなの間違ってる"

 

女神の教えだかなんだか知らないけど、人を傷つけるなら壊れてしまえ。

いや、俺が壊してやる。誰も壊せないって言うんなら、俺が代わりにぶっ壊してやる。

恨みならいっぱいあるんだよ。

 

-地獄にだろうが何処にだろうが落ちてやるよ-

 

足元が崩れて世界が暗転した。

上下左右もわからない。

宙に浮いたような感覚。

 

『地獄に落ちてやる、か』

 

聞いたことのない男の声が響く。

辺りを見渡したけど、誰もいない。

 

『面白い。壊してみろ、世界を。

我が名はミカハヤヒ。

力を得たいならば 手を 伸ばせ』

 

目の前に光る球体が落ちてきた。

本能が叫ぶ。

それを手にしたら戻れないって。

でも、直感が囁く。

それを手にすれば、この現状を変えられる。

 

この場にいる全員を救えるなら……絶望させなくて済むなら。

 

何も迷うことなんてない。

 

その光を、右手で掴んだ。

 

世界が急速に色と方向と音を取り戻していく。

それと同時に、右腕に燃えるような痛みが走った。なんだこれ。内側から燃えてるような感覚。

剣が手から滑り落ちる。

斬られたかと思った。右腕に目を向ける。

あ……。

 

「お前……まさか」

 

ラヴとか名乗っていた女の声が聞こえる。

試験官が試練の間から出ていく様子が視界の端に写った。

すぐに、騎士団の連中が乗り込んでくる。

 

右手の甲に浮かぶのは、剣に絡んだ蛇のような紋章。

ミカハヤヒ……あの言葉からしてつまり邪神の紋章だ。

俺も晴れて、アポストルに……その上ヘレティックの仲間入りってことか。

 

力って……そういうこと、かよ。

そりゃもう、後戻り出来ねえし社会的に死んだも同然だけどよ。

このふざけた教会の教えをぶっ壊すには丁度良いや。

 

もともと"女神様"なんか信じちゃいねえ。

異端者、破門者、上等。

 

「ぶっ壊れろおおおおお!!」

 

紋章が輝く。

あり得ないほどの力が右腕に集まってくるのがわかる。

それこそ制御できないくらいの力が。

集まり続けた力はやがて、暴発した。

衝撃波と熱風が周囲に迸る。

 

「ダレン!!」

 

アンネの呼ぶ声が聞こえた。

声のした方に顔を向ける。

焔の渦のなか、アンネが俺に手を伸ばした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。