ピーンポーン。閑静な住宅街にドアホンの音が響く。
「はぁーい」
「お久しぶりです。松田さん。」
コカビエルの事件の際、家に泊めてくれたお礼と引越しの挨拶を込めてこの家にやってきた。元気だろうか?
「あら、山本君じゃない。久しぶりね。洋介から聞いたわ、先生になったって。ここじゃなんだから家に上がっていって」
奥さんのご好意は非常にありがたいが、今後のプランを進めていく上で行かなければならない所があるのだ。非常に惜しいが仕方ない事だ。
「ありがとうございます。でも、この後用事で東京に行かないといけないので。今日は以前のお礼をと思ってこれを。」
日本にやってくるときに買ったお高いお菓子。以前食べたことがあるがあの甘味を超えるものを未だ食べたことは無いくらい美味く、是非ともお世話になった松田家に送りたい品だった。
「まあ! それ、確か最近東京に進出したって言う……」
奥さんは絶句しているが、その目は未知の甘味への興味で満ち満ちている。
「あっちで買ってきたんですよ。流石にちょっと値が張りましたが、きっと気に入ってくれると思います。皆で食べていただけたら嬉しいです。」
「いや〜本当にありがとうね、山本君。あ、そういえば時間大丈夫?急いでるみたいだったけど?」
「あ……マズっ」
もう少しで行かなければ乗り遅れて約束の時間に遅れてしまう。
「では、また今度。お二人にも宜しくお願いします」
「ええ、お仕事がんばってね〜」
奥さんはにこやかな笑みを浮かべ、手を振りながら見送ってくれた。
「急がないとな……」
あまり褒められた事ではないが、私用で身体強化を使い、駅へと駆け出したのだった。
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都内某ビル地下XX階ーー
グオングオングオン……
鈍い音が反響し、地の底まで堕ちていく。
「山本大輔様、ここで何が作られているかはご存知ですか?」
案内役の者にそう尋ねられる。
そもそも、俺が都内の地下深くに何故いるのかーー数日前に遡る。
きっかけはメタトロンのいつもの電話からだった。
「もしも〜し、ちょっと東京の**ってビルに行ってくれないか? 計画進める上で必ず見といて欲しいんだわ。神器を使えばわかる気配があるからそいつに"ロバの耳は王様の耳"って言えば案内してくれるって事で頼んだわー」
いつもよりは多少真面目な事を言ったかと思えば勝手に切ってしまった。まったく気まぐれな奴である。
行ってくれと命令され、正直鬱陶しい……と思ったが、それが計画に必要なら行かない訳にはいかない。すぐ支度をし、数日の休暇をとって東京へ行った。学校の教師と言えど、俺は特別な枠なので、こう言った休みを詳しい内容を言わずとも簡単に取れる。ありがたい学校だ。
こうしてビルに到着したはいいのだが、何せ都会のビルは広い。神器を使えば分かると言っていたので、早速俺は神器を使った。
あれかーー
感覚であの暗いサングラスをかけたスーツの者がメタトロンの言っていた"そいつ"なんだろう。
後ろに近づいて、"ロバの耳は王様の耳"と言うと、何処かへ歩き出した。着いてこい、と言う事だろうか。
ビルのあまり人のいない区画へ入っていき、それでもなお進み続ける。三階分ほど階段を降りて、扉を開けるとエレベーターがそこにはあった。
「こちらに……」
今まで口を固く閉ざしていたスーツの奴がボソリと呟く。
俺はそれに乗り、あの状況に至る訳だ。
「聞いていないな、俺は。教えてくれるのか?」
「……こちらはV研究所です。我々の完全なる勝利のため、日夜研究が重ねられております。今回案内するのは一番発動する確率が多いだろう方法です」
ピーンポーン。地下<→9階です。
バグっている人工音声が到着を知らせる。
黄土色の門の先には広い空間が待っている。通路の向こう側が研究区画だろうか。蛍光灯がピカピカと一際主張している。
「大変お待たせしました。区画3です。案内を続けます。」
そのまま通路に歩いて行った。
「ちょっと待って!」
スタスタと歩き出したので、追いつくように駆け足。
「こちらが最重要部です。」
シュュュゥゥゥゥ……と未来的な扉が開くと研究員たちが机にかじりついている。
「彼らは気にしないでください。研究に没頭している時に話しかけると激昂して襲いかかってきます」
「そ、そうか……」
研究員とは思えないくらい物騒な奴らだが、かなり優秀な人材らしい、ただ性格に難があるみたいだが。
「そして、こちらがもうじきロールアウトするアークです。」
「それは一体どんな物で?」
船の形をした、奇妙な物体がプレパラートの上を蠢いているのが分かる。
「名前の通り、箱舟の形をした特殊なファージで、自分の持つデータを対象の細胞に植えつけることができ、自己増殖も可能です。」
「つまり?」
「楽に魂のアップデートができます」
「そりゃあいい」
計画を楽に進められると聞いて素直に喜べる。にしても"これ"を使って計画を進めるとは……驚きである。
「これだけか?」
「他にも見ますか?」
「頼んだ」
別の区画に行くと、食物を介して進化を図ったり、気候を変動させることで進化を促したり、ネットワークで無意識的に人間を変化させるなど短期的なものから、長期的なものまで存在している。全てが分かるわけではないが、説明が分かりやすくて多少の面白みはあった。
「もういいかな」
かなり見てきたので、もう必要ないだろう。さっさとこの息苦しい場所から出たいという気持ちもあった。
「では、これを」
一粒薬を出した。
「飲んで下さい」
どう言うことだ?
「今後の方針を知ることができるそうです。情報の流出は危険なので」
「なるほど、飲もう」
俺は出された錠剤をゴクン、と丸呑みにする。ぴりりと舌先が痺れる様な感覚がする。 バンっ!! 頭の中に今後の方針が刻み込まれる……
「ッ……飲んだぞ」
「ご協力ありがとうございます」
「しかし、どうやってこうなるんだ? 俺にはさっぱり分からない」
薬を飲んで記憶を植え付けるなんて……これもやはり新技術か?
「研究過程で生まれた特定のDNAに対して内部に秘められた記憶を放出し、脳細胞に記憶を刻ませる薬物です。価格も高く、あまり効率が良いとは言えませんがこういった場面では非常に楽なのです」
再びエレベーターが上まで上り、軽い話を交わしながらビルの入り口まで戻ってきた。相変わらず人でごった返している。
「それじゃあ、帰るんで」
俺はそのまま駒王の家へと直行で帰った。
王様の耳はロバの耳、というお話が有りますが、そこらで荷物を引いているロバの耳に国政なんかの話をしても到底理解は出来ないでしょう。しかし、王様はロバの耳であるにも関わらず、話を一応聞いて理解ができるはずです。果たして、王様の耳は本当にロバの耳なのでしょうか?国民がロバの耳と思っているだけで、それは"普通"の耳ではないのでしょうか?もしかしたら、自分の耳が本当はロバの耳であり、気付いていないのは自分なのかも知れません。
主人公にヒロインとかいる?
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いる
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いらない