卑怯でも勝ちは勝ち   作:凧の糸

17 / 17
久々の投稿。

最近本当に暑くないですか?私は汗がドボドボ出てきてびしょ濡れです。

それではどうぞ

追記:お気に入り件数100件ありがとうございます!ハーメルンを使っていて、自分も作品投稿をしたくなって生み出した初作品ですがようやく個人的な一つの区切りまでやってきました。
 拙い文ですが、これからもよろしくお願いします。





人形と魂

 

 

 二人は同時に目覚めた。

 

 

「……ん?ゲオルク、山本が二人に見えるんだが……」

 

「ああ、俺もだ」

 見事に二人は混乱していた。それもこれも全ては隣のやつのせいだ。

 

 

「えー、なんかごめん。俺じゃないんだわこいつ」

 

『どーも。私の事はとりあえずメタトロンって呼んでくれ』

 

「メタトロンか、実物と違うぞ?」

 二人は怪訝げだが、ちゃんと理由はあるのだ。

 

『私はそもそもメタトロンではないが、お前たちの言葉に当てはめていくと"それ"が一番近い。特に気にする事でもないだろう』

 

「気にするんだがなあ……まあいい。あっちは中々面白かった。魔術という学問に手を出したことはなかったが、中々に奥深いものだな」

 

「メタトロン、山本。俺もかなりの数魔術を修めたが、こんなにも啓蒙を得られた日はこれ以上に存在しないだろう。本当に感謝する」

 二人はかなり満足しているみたいだ。隣の『どうだ、いいことをしただろう?』という面には腹が立つものの、こんなに感謝の感情をはっきりと向けられては困惑ものだ。

 

 

「で、今後はどうするんだ?」

 紛らわそうと何となしに一つ言ってみる。彼らは啓蒙されたから、これからが大変だろうなと思ったというのもあるが。

 

 

「俺たちは協力することになったからな……」

 

「曹操」

 

「ああ。俺たちの計画もかなり変える必要がある」

 二人の目は先ほどとは全く異なる光を宿していた。

「なんでもいいけどさ、お前ら以外のメンバーにはこのことについて教えるのは止めろよ。」

 

 

「分かってる。俺たちは理解したからな」

 ゲオルクも同様に肯く。

 

「それならいい。そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」

 

「そうだな。帰らないとみんなが怪しむ」

 

 

 

 

「……さらばだ、暇な時にまた来る」

 霧に包まれると二人は消えていた。相変わらず便利な能力だと思う。神滅器(ロンギヌス)だからという事もあるだろうが、使う本人の技量が凄まじく高い事も一因であることは一目瞭然だ。

 

 

 

 

 で、問題は隣のこいつだ。

 

「結果的には良かったものの……なんてことをしてくれたんだ!」

 

『いいじゃないか。全ては計画通り、安心しろ』

 

「頼むぞ……ほんと」

 全く困った奴だ。どこから持ってきたのか知らないが、俺そっくりの人形を使ってやがる。

 さらに、俺のちょっとした仕草や声帯の使い方もそっくりそのまま真似しているのはコイツ特有の道楽趣味も関係しているのだろうかと邪推してしまう。

 

「俺の弟って設定をその体使うなら忘れるなよ」

 

『いいだろう。あと、監視がお前についてるから気をつけろ』

 

「知ってる。杜撰だからすぐに分かった」

 

『ならいい。この体はここに置いとくから丁重に扱えよ?』

 

 

 

 糸が切れるように、ガクンと人形の身体が崩れ落ちた。メタトロンの意識体はまたフラフラと何処かを飛んでいるのだろう。

 

「仕方ないな……」

 

 

 約五十キロ前後の肉の殻を押し入れにしまおうとするがこれが収納しづらい。足や腕の関節を曲げようとするがかなり固い上に力を入れすぎてはポッキリと折れてしまうような気がして手を出しづらいという事もあるのだ。

 悪戦苦闘して、俺はなんだが腹が立って人形を軽く蹴った。でも自分を蹴ってるような気がして、何とも言えない気分にさせられて。余計に疲れた。

 

 

 結局、しまうのに2時間もかかってしまった。

 

 

 

 

____________________________________________

 

 

 

 体育祭、修学旅行。どちらも楽しいイベントである事に代わりはないが、今度は学園祭である。

 

 

 やはり、準備で忙しい。学生もかなりの準備をするが、先生側も、とにかく手一杯で家に帰る。

 

 

「あれ?」

 なんだか騒がしいというか、胸騒ぎがしてきた。

 

 

 玄関ではなく、裏口からそっと入る。やはり、あの人形をしまった押し入れの部屋だろうか。やけに物音が立っている。

 

 

 間違いなくメタトロンはこんなマヌケを晒さないはずだ。

 

 

 では、一体?

 

 

 手持ちの鞄を武器に、静かに忍び寄る。

 

 物音は相変わらずゴソ……ゴソと不安定に発生している。

 

 

 

 

 ガバッと一気に襖を開いた。

 

 

 

「あ……山本か!助けてくれ、身体がこんがらがって操作しづらいんだ」

 

 

 ……誰だ?

 

 

 そんな俺の表情が分かったのか、続けて話す。

 「俺は……いや、俺たちは曹操と、ゲオルクだ。細かい事は後だ、無理やりこっちに飛んできたから安定してない。緊急の話があるから早くここから出してくれ」

 全く奇妙な話である。しかし、彼らの話は予想を超えた妙な話であった。

 

 

「拠点に帰還した俺たちを待ってたのは、偽者の俺たちだった。」

 

「俺たちの物と同じ形をした神滅器(ロンギヌス)のような物を持っていて、俺たち以外のメンバーはヤツらに洗脳されたらしい」

 

 

「何故か神器が使えなくて、俺たちは殺されかけた。だが、ゲオルクの咄嗟の起点でどうにか魂だけは唯一強い縁のあるこの人形にたどり着けたというわけよ」

 

 

「成る程、で、どうしろと?」

 

 

「ここからが本題だ」

 深刻そうな言葉で語り始める。血の気のない人形の顔が、更に白くなる。

 

 

「俺たちの神滅器(ロンギヌス)は脱走時に魂から分離した。仕組みはまだ分からないが、一つだけこれからわかる事がある。」

 

「おい、まさか」

 

「そうだ、恐らくロンギヌスを奪われた」

 それ自体にとてつも無い力を有しているロンギヌスが二個も奪われた。冗談だと思いたい事態だ。唯一の慰めとなるのは奪ったロンギヌスは使用していた本人と比べて、出力がめっきり落ちる事にある事ぐらいだがそんな事がどうでも良くなるくらいにバカみたいな力が神器には秘められているのだ。

 

 

 

 

「俺たちは本来、この後は三大勢力を攻撃するはずだった。恐らく偽者も同じ行動をするだろう」

 

「まあ、一誠くんたちなら何とかなるか?」

 

「それがいい、どう転んでもある程度楽に済む」

 うんうんと二人で肯く。俺は二人に対してある提案をした。

 

 

 

「取り敢えず二人の元の身体から人形作っておくから、窮屈かもしれないがそこに入っていてくれ。それと絶対に向こうの世界に行くなよ?」

 

 

「分かってる。十分に理解しているさ」

 

「少し待ってろ」

 光の針を挿して、白い世界に移動する。

 

 

 

いつもの意識が沈むような感覚の後、視界が暗転する……

 

 

 

 

「ようこそ、人形の部屋へ」

 

「二人分、こんな顔で」

 曹操とゲオルクの顔を想像すると、顔が写された写真が現れる。

 

 

「ふむ、少し掛かる。完成品はどこに届けたらいい?」

 

「俺の家で」

 

「了解、今後ともご贔屓に」

 

「それでは」

 黒い扉を開けて。

 

 

 

 浮上感とともに、俺は戻ってきた。

 

 

 

「早いな、もう終わったのか?」

 

「まあ、時間はかかるらしい。しばらくはここで待機だな」

 

「世話になる」

こうして男三人での生活が始まったが、意外にも一週間後に事態は好転した。

 

 

 

ピンポーンとありふれた音が鳴った。

 

 

「はーい!」

 いそいそと俺が出ると大きな段ボールが二箱。隣には台車があった。

 

「サインをお願いします」

 

「はい」

 山本大輔とボールペンで書く。

 

「それでは」

 帽子を目深に被った配達員はそのまま去った。

 

 

 

「届いたぞ」

 ようやく窮屈から解放される、と顔はとても喜んでいた。

 

 

 段ボールから取り出すと、全裸のマネキンが入っていた。人間程ではないものの中々の重量だ。ご親切にも説明書がついている。

 

 

「顔がないぞ?」

 二人はふとした疑問をぶつけた。

 

「えっと、説明書によると魂が入り込んだら自動的に整形されるそうだぞ」

 

「見せてくれ」

 渡したらじっくりと読んでいた。

 

 説明書を読み終わると、早速儀式を執り行う事にした。

「始めるぞ」

 呪文を恐らくゲオルクが唱え始めると、白目を向いて口から約21グラムの白い煙が二つ、ゆらりゆらりと空中を泳いでいる。

 

「間違えて違う身体に入るんじゃないぞ」

 ご丁寧にも人形には『曹操』『ゲオルク』と油性のネームペンではっきりと書かれていた。説明書曰く、間違えて入ると取り返しのつかないことになるらしい。勿論、試す気はさらさらない。

 

 

 俺そっくりの人形がガクン!と倒れ、遂に沈黙する。

 

 

 二つの魂が、己が器に口から侵入すると、マネキンは徐々に血色を帯びて人間のように変身していく。

 

 

 始めに顔が二人の物になり、そこから段々と人間がマネキンを覆い尽くす。

 

 

 1時間ほどで二人の定着は終了した。

 

「気分はどうだ?」

 

「新品のスニーカーを履いた気分。まだピッタリって訳じゃあない」

 

「それ、同感だゲオルク。身体が広く感じる」

 

「本来一つだけの場所に二人分も突っ込んだから仕方ない。」

 

 

「さて、仕事の話だ」

 二人はこちらを見た。

 

「グレモリー眷属はサイラオーグ・バアルとのレーティングゲームやらしてるらしいが、そこはどうでもいい。上はさっさとロンギヌスを取り返してこいだとさ、三人で」

 

 

「ほ、本気か?」

 

「人数は出せないし、バレたら不味いからな。それにいずれグレモリー眷属にちょっかいかけてくるだろうから、混乱に乗じて奪還するだけでいい」

 

 

「……まあどの道、これしか道はない」

 曹操は苦々しい顔をするも、瞳の奥はゆらゆらと揺れ動いていた。

 

 

 

 

 

 

_________________________________

 

 

学園祭も無事終わり、二人もあっちの世界で色々やってるみたいだ。

 

 俺は学園祭の準備なんかが忙しすぎてヘトヘト。三大勢力の動向を調べたりするが、リアス部長たちがサイラオーグ・バアルを打ち倒し、先の京都でも新しい力を手に入れたのにまた強くなったらしい。毎回毎回強くなっていて正直不気味に感じるが、神器が想いで力を引き出すのを考えれば不思議ではない……のだろうか。

 

 彼らが強くなってくれる分にはロンギヌス奪還が間違いなく楽になるので良いのだが、敵対した場合が恐ろしい。そうならないよう気をつける必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

 

____________________________________

 

 数日後ーー

 

 「なあ、ゲオルク」

 

 「なんだ……お前か。忙しいから後にしてくれ」

 

「駒王町にオーフィス来てるらしいぞ」

 

 

「おーふぃす、オーフィス……うん、嘘だな!」

 

「いや、本当らしいんだって!!」

 現実逃避をするゲオルクにアザゼル先生から聞いた話をすると、ウンウン唸ってようやく納得してくれた。

 

 

「本当に厄介だな……サマエルでオーフィスが弱体化するのは間違いない」

 

「……」

 

「まあ、そんな事を言ってもどうにもならない。神器剥離装置(リムーバー)ようやくが完成した」

 

 

「おお、遂にか」

 ゲオルクが取り出したのは約一メートルの幾何学模様が描かれた杭だった。

 

「こいつを偽者に突き立てれば自動的に起動して神器を排出する。既に実験済みだ」

 長さ6分30秒の映像を見せてくれる。椅子に縛りつけられて暴れる男に突き刺すと杭が緑色に光り、幾何学模様に絡めとられるようにして彼の神器、恐らく形状から龍の手(トゥワイス・クリティカル)が引き摺り出される内容だ。

 

「あの男は生きてるのか?」

 神器を抜き取った人間は死ぬ。ごく当たり前の事実であるが、どういう事か彼の胸はかすかに上下していた。

 

「勿論生きているとも。魂を傷つけずに引き剥がせる画期的発明だが、とにかく時間がかかる。その上、突き立てている間は両者が無防備になるのが欠点だ。この欠点は抜き取る上で最重要のファクターになる為、こればかりはどうしても直せない」

 

「十分。何本あるんだ?」

 

「合計5本。これ以上は難しい、曹操に使わせるのが一番だろう。俺もお前も槍術に長けていないし」

 時間がかかるのがネックだが、かなり良いものには違いない。

 

「成果は良かったよ、俺はそろそろ帰る」

 

「良き1日を」

 

「……良き1日を」

 ゲオルクも相当此方の世界に慣れたみたいだ。その事を知れたのも、また一ついい事であった。白い世界にはどうしても慣れることの出来ない者も一定数いるらしく、発狂して消滅してしまう者だっているそうだ。

 

 この世界では肉体的な疲れなどというものはなく、ゲオルクは有り余る情熱と知識欲でずっと研究をしていた。気のせいか、前に会った時よりも少し痩せた印象を受けたが俺の些細な勘違いかも知れない。

 ただ、ゲオルクが此方の時間に換算して四ヶ月程寝ていないという事だけは確かな事実であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公にヒロインとかいる?

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。