アンケートありがとうございます。範囲外から隠れて攻撃し、弱ったところを袋叩きという方針で進めていきますので、よろしくお願いします。
あの後、俺は本拠地であるイタリアへと帰った、という訳ではない。コカビエルを倒した為、暫くは引きこもっていなさいと教会からお達しが来たのだ。上からの命令には従わなければならず、やってきた神父服を着た二人に目隠しと耳栓、感覚を遮断するものを次々と付けられた上で何かに乗せられた。
どれくらい時間が経ったか分からない。体感では二時間ほどだが、おそらくもっと時間は経っているだろう。
目隠しを外された。
「降りろ、山本」
真っ黒な車から降りるとそこはどうやら地下にあるようで、空気は淀んでいなくても独特の重苦しさがコンクリートの無骨な壁から感じられた。
「暫くここに滞在っていってもどれくらいですか?」
「次の任務が出れば通知がそちらに行く。 それまではこの先にある部屋を使ってくれ。 必要な物は基本的に揃っている。」
少し奥に視線を遣ると通路がある。あの先に部屋があるのだろう。たが、基本的な物は揃っていると言っても清貧を良しとするような連中も一定数いるし、あまり高望みをするべきではないだろうな。
俺は歩を進め、部屋に入ると日本のアパートの様にずらりと部屋が並んでいた。
「お邪魔しますっと」
107とだけある扉を開ける。
ベットに冷蔵庫、机に聖書とパンフレット、おまけにテレビだってあった。
冷蔵庫の中身を確認するとミネラルウォーターが6本入っていた。
テレビもなんだか見る気がしないので、机の上にあるパンフレットをめくると食料は102号室にあるとか、ここの利用方法について書いてあった。
万年氷でも置いてるんじゃないかと思う程冷たい102号室から積み上げてあるカロリーメイトを取ってきて、口に放り込む。
パサパサするな……
ただ、だらだらと過ごした。
時計を見るともう22時。眠たくなってきたので硬いベットにゴロリと寝っ転がって目を瞑った。
ドンドンドンと激しくドアが叩かれる。
硬いベッドですっかり固まった身体をのそのそと動かしてドアを開ける。
任務ですか?の一言を言う前に目の前の男は「任務だ」と言った。
「お前が先の任務で活動した駒王町、その隣町で本来駐在していた戦士が訳あって離れることになってしまった。 お前は代理として白羽の矢が立った。 今からその町へ行ってもらう」
有無を言わせず、再び目隠し等をされ、隣町へと連行された。
「到着だ」
教会の敷地内に車を入れて、目隠しをようやく外された。
古ぼけた教会へ入ると教会の戦士の格好をした二人組が何故かいた。
「おい、ちゃんと戦士が居るじゃないか?」
俺は困惑した。戦士が遠出する際は誰も居ない場合や、戦力に不安がある場合に代理が派遣されるのが常だが、ここの地域は駒王町の近くであり、他の地域と比べてはぐれ悪魔が出没する訳ではないのだ。
目の前の教会の戦士が気まずそうに口を開いた。
「実は……」
二人はまだ戦士としてはまだ一人前とは言えなくて、今回遠出した戦士に戦闘の指南を受けたりしていたのだそうだ。そして最近、悪名高いはぐれ悪魔、"悪食"が付近までやってきたらしく、三人で対応に当たるはずだったのだが、どうしても外す事の出来ない用事が入ってしまったので、応援を今回要請したのだという。
悪食と聞いて驚いた。何故俺だけ?と。しかし、教会の戦士自体もそこまで多くなく、カバーできる範囲は少ない事に加えて、近頃何やら大きなイベントがあるらしく、上はいつも以上にざわざわとしている。その為、今、用事の無い戦士は俺だけしか見つからなかった様だ。コカビエルを倒す事の出来た功績がそれを後押ししてしまったのだろう。
「悪食はどこら辺に出没していますか?」ここいらの地理には詳しく無いので出現しそうな人気の無い場所なんかを確認してみる。
「最近、廃工場で子供や大人が数人行方不明になっていて、恐らく食われたのではないかと睨んでいます。」
「封鎖は?」
「既に」
悪食は相当な巨体で一度居を決めると中々動くことは無く、拠点を中心として人間や他の生物の捕食を行う。とある村が丸々一つ無くなったなんて例もあるくらい凶悪で、捕食を数え切れないくらいに繰り返しているので危険度は言うまでも無く高い。
封鎖が既にされているならこれ以上の被害の拡大や増強はないだろう。
「それでは、作戦を立てようか」
悪食は人型の上半身に肥大した異形の多脚をしたはぐれ悪魔。悪食の面倒な点は戦闘時に自分の巨体から小さな分身を生み出し、攻撃をする。それ自体に特質した能力を持たないものの、教会の戦士と同じか上回るくらいに強い。悪食がピンチの際には食べて回復する行動を起こす。本体は口から黒い泥の様な物を撒き散らすが、あらゆる物を溶かす溶液で非常に危険である。だが、自分の分身も当たって仕舞えばダメージを受けるのでよっぽど追い詰められないと使用しないらしい。
そして一番の特性は悪食の名の通り、何でも食べる点にある。鉄屑やゴミですら食べてエネルギーを得るのだ、あらゆる物が奴のエネルギー源と思った方がいいだろう。
「最終的に人気無い場所で討伐を第一目標にする」
「撃退はしないのですか?」
「撃退はこれ以上止めるべきだ。 逃げる際にかなり多くの人間が犠牲になっている。 これ以上の強化をされると手が付けられなくなる」
「でも! 俺たちは……」
「……それも分かるけどね、まだ今なら三人で勝ち目はある」
「「え?」」
「話は変わるけど、絶対的な力という物を見たことあるかい?」
「い、いえ……」
「見れば分かるけどね、アレに対してはどんな小細工だって意味が無いんだ。 だって上から全部纏めて叩き潰して仕舞えばそれでおしまいだからね」
「「……」」
「でも、そうじゃなかったら? 策を弄して、弱点を突き、恥も外聞も無く相手を貶す。 どんな手をって事では無いけど人間死ぬ気でやればまだ、何とかなるものさ」
「話は逸れたけど、早速負けないための準備をしようか」
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「という事で、朝早いけど、沢山肉を買ってきて」
「? 肉……ですか?」
「おびき寄せるのに使う、後、毒を混ぜておけばダメージを与えられるからな」
「お金はどうしましょう?」
「かかった諸経費で何とかなるよ、多分」
「「多分!?」」
こうして着々と準備は進み……日は暮れた。暗い夜が此方へと顔を覗かせている。
「それじゃあ、アダム君はポイントA、永原君はポイントBに」
「大丈夫なのでしょうか……」
「こういう時は自信を持つべきさ。 三人で立てた作戦を信じよう」
こうしてはぐれ悪魔狩りは幕を切った。
「ヴオオおおぉぉ!!!」
悪食だ。緩慢な動きで仕掛けた普通の豚肉をむしゃりむしゃりと食べている。
「よし、順調だ」
計画通り第一の肉に食いついている。あっと言う間に食べ終わると少し離れた所に置いてある肉を食べようと再びのっそりと巨体を揺らして動き始めた。
次の場所に誘われた悪食は肉を食べた。
その瞬間、巨体の周囲で聖水がパチンと弾けた。
「ウゴゴオオ、ウゴオオオオオオ!」
聖水が身体中にかかってじゅうじゅうと表面を焼いている。
敵がいるのだろうと肉体の一部を分離させ、分身を作るもその分身も少しドロリと溶け出している。
「それじゃあ、狙撃開始してください」
二人は頭部へと狙撃を開始した。
「ウボッ!!!」
弾丸は数発に一度身体に命中し、体力を削っていく。
そうすると身体の正面がベリベリベリと剥がれ出した。
「不味い! せっかくの聖水も意味が、」
体表はかさぶたの様に剥がれ、剥がれた所はあっという間に消滅した。
「予想外の事は起きたけど、続けて下さい」
痛みから解放された悪食は細くなった身体から苦しげに分身を四匹生成する。
住宅街に走り込んでくる4つの分身。
聖水を投げつけ、槍を刺したり、鎖を巻きつけたりして動きを止める。
「UGG GGAAA!!!」
時間は思ったよりかかったが、四匹ともしっかりと無力化し、処理していく。
「GAAAA……」
しわしわに萎びて、に弱った呻き声を上げて分身は消滅していった。
『悪食の活動が停止しました!』
「そこでしばらく万が一の為に待機しておいて」
『『了解』』
近くへ行き、聖水を掛け、持ってきた槍で縫い付ける様に串刺しにしていく。念のため、足と腕も切り落としておこう。
「やったか?」
さっきまで暴れていて周りの物を食い荒らしていたのに、今ではピクリとも動かない。
足を切り落とそうと触れた瞬間
「!?」上半身がぼとりと落ちた。
少し惚けてしまったのが運の尽き。
「グハっ!!」
足に思いっきり吹き飛ばされ、俺の身体は一瞬でボロ雑巾に早変わりした。
『『山本さん!』』
「……ッ、俺はいい、早く潰せ、暴走した……」
動けない身体を動かしながら命令を出す。
本当に不味い、市街地に向かおうとしている……
「永原……、悪食が通るだろうお前の近くに消火栓はあるな……」
『はいっ!、いつでもイケます!』
「頼んだ……」
俺は意識を手放した。
悪食は槍で突き刺さった部分を千切り、捻り出した生命力でめちゃくちゃに身体同士をくっつけていく。
「UガガアあアいあアァぁAaa!?!」
もはや意思などない。獣は生きたいという本能一つで肉の方向へ進軍する。
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まさか山本さんが倒れるなんて……
はぐれ悪魔に吹き飛ばされて、ピンチ。俺には託されたんだ。
『リョージ! 僕が援護するッ! 少し待ってろ!!』
アダムが来てくれるのは心強い。
「ああ、早めに頼む!」
正直、こっちに迫ってくる悪食の気持ち悪い姿にチビりそうになる。
「よしっ!、やるぞ、永原亮二!」
気合で恐怖を押しつぶし、消火栓の準備をする。
「手の震えが……止まらん……」
死が、濃厚な死の気配が首をもたげてくる。
「しっかりしろ! リョージ!」
がしっと手を掴まれた。
「アダム……」
「やるしかねぇだろ、僕だって、僕だってやるときゃやるんだぜ?」
ホースを全て出し、接続する。
どくん、どくんと今にも心臓は張り裂けそうだ。
「来たぞ!」
不気味な足取りでやってくる悪食。
「今だッ!!」
地面を悪食が踏み締めた瞬間、ズズゥンと深い落とし穴へ落ちた。
「Uが??!??」
どくどくと水を吸い上げた消火栓はホースからドバババと勢い良く水を放出する。
「GがあァああアuうuuうううウゥィィィゥアァぁA」
声にならない悲鳴を上げ、凄まじい勢いで浄化される悪食。それでも穴から這い上がろうと、浄化の痛みから逃れたい一心で叫ぶ。
「う、嘘だろ、これだけ受けてまだ、動くのか……」
希薄だが、芯のある気迫に飲まれそうになる。
やがて、動きは鈍くなり、再生した部分が崩れたかと思うと、ずぶずぶずぶと消滅していった。
「や、やった、やったあー!」
「俺たちで、やれたんだ」
両方の腰が抜けて、格好がつかないが、生きていることへの安堵感でいっぱいだった。
「あっ、そういえば山本さんが!」
「頭からすっかり抜けてた……」
俺たちはあの廃工場へと走っていった。
「山本さん、山本さん!」
肩を揺らすとうぅん、と呻いて目を覚ました。
「倒せたか」
「はい、俺たちやれました!」
「そうか……俺は骨が折れてるからおぶってくれないか、動くと痛くて痛くて」
「やったな、リョージ!」
「おう、じゃあ、帰りますか、教会に!」
来た時とは違い、二人の足取りはより強く、深くなっていた。
主人公にヒロインとかいる?
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いる
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いらない