もし"ステイナイト"で召喚されたサーヴァントがビルドだったら 作:術平ニムル
衛宮士郎は焦っていた。
自身の力で攻撃をしのぐのももう限界、どうにもならない。生き延びるためにはどうしたらいい?
青い全身タイツの槍兵に殺されかけ、命からがらなんとか自宅離れの蔵に逃げこんだ。
「はっ、はぁ、な、なんだこれ、プラモデル?」
蔵に逃げ込んだと同時に大きく前に倒れた士郎は、倒れた場所の手元に見覚えのない戦車のプラモデルを見つけた。これが本物の戦車だったらばもう少し延命できただろうかとどうしようもない想像を頭に浮かべて思わず笑みをこぼす。
「何がおかしい?」
青タイツの男はそう問うと自身の槍を一薙ぎして衝撃波を起こす。
「ぐわっ!?」
大きく前に吹き飛ばされた士郎の体がダンボール箱に直撃して中身を散らす。
誰が使ったか、何に使うのかもわからないようなガラクタたちが地面に大量に散らばる。
模型やら人形やら、ペットボトルや缶などのゴミも辺りに大きく散乱し、軽く片付いていたはずの蔵が一瞬にして汚物塗れになっていた。
「さて、ワリィなボウズ。そろそろ終わりだ」
「くっ、こんなところで……」
こんなところで何も果たせずに終わってしまうのか、それは嫌だ。悔しい。
「何か言い残すことはあるか?」
士郎は、そんなものはない、と思いつつ、一瞬頭の中によぎった自身の夢、どうせ死んでしまうのならこの青タイツの人物にでも覚えておいてもらおうと思い声を出す。
「ひとつ、覚えておいて欲しいことがある」
「おう、それだけは聞いてやるよ」
彼の最後の情けか、静かな顔で槍を構え、その体勢のまま動かずに静かに士郎の言葉を待った。
「俺は、ヒーローになりたいんだ!」
「ハッ、いいねぇ、どうせこの世からは忘れ去られる記憶だろは思うが、一応覚えておいてやるよ」
せめて死ぬのならこの青タイツくらいには自分の夢を覚えておいてもらおう。そう思って士郎は振り下ろされる槍を視界の中心で捉えながら大きく叫んだ。
災害の時にヒーローに助けられた。本人はあくまで否定していたけど、俺にとっては、あの切嗣という人間はヒーローで憧れだったんだ。
……あぁ、俺もあの憧れのようなヒーローになりたかったな……
士郎の脳内でそっと静かに走馬灯が流れ出したその時、
「よく言った! それじゃ、後は本物のヒーローの背中を見ておけよ」
突如蔵の地面が光り、光りの中から現れた人物がそう言い放つ。
「七人目のサーヴァントだと?」
「サーヴァント、マスクドライダー。自意識過剰なヒーローが召喚に応じてやったぜ!」
光りの中の人物が自分の腰部に謎の機械を巻き、小さな実験用の物のようなボトルを激しく振って腰の機械に差し込む。
「さあ、戦う準備はいいか? 少年」
「ああ」
起こったことに理解が追いつかなかったが、彼の言うことにはなぜか清々しいほどの安心感があった。
彼が機械のハンドルをグルグルと回す。大きな起動音がなったかと思うと何度も繰り返し機械的な音が流れた。
『Are you ready?』
「変身ッ!」
そう叫んで彼は蒼紅の鎧を身にまとう。
「勝利の法則は、決まった!」
槍を構えた青タイツの槍兵に向かって、仮面の騎士は月光の下で高らかに叫んだ。
読んでくださりありがとうございました。