この場てお礼をいわせて下さい。本当にありがとうございます。
アンケートも沢山の回答ありがとうございました。
主人公は現状維持で猫とイチャイチャさせようと思います。
あと皆、ネタをくれてもいいのよ……(チラッチラッ)
午前の十一時過ぎ。
本来は店を開けている時間だけれど、私たちは外に出ていた。
鍵をかけてから『本日休業。ご用がある方は広場までお願いします』と書いた紙を貼り付けておく。
「よっし。コレで誰か来ても大丈夫。人が来るなんて今日はまず、ありえないだろうけれど」
パンパンと手を叩きながら、忘れている事はないか頭の中で確認していると、エンスの声が聞こえてきた。
「シルキちゃーん。早く来るニャーン」
「今行くわー。ちょっと待ってて」
しっかり鍵がかかっているか確認して、私はエンスがいる方へと向かう。少し走れば、鳥かごを抱えたエンスの姿を見つけることが出来た。
「お待たせ。さ、行こっか」
「急ぐニャン! 無くなっちゃうニャン!」
「まだ始まったばかりじゃない。もうちょっとのんびり行っても大丈夫よ」
急かすエンスを落ち着かせようと喉を撫でてやりながら、腕の中に収まっている鳥かごへ視線を向けると、入っているチョコと目があった。
不安そうにしたり、興奮した様子は見受けられない。何時ものように大人しく、しかしどこか不思議そうな表情で此方を見ている。
「何時もより賑やかでびっくりした? 今日はね、数ヶ月に一回領主様がやってくる日でご馳走が出るの。だから、皆で外に出たわけ。留守番なんて拷問以外の何物でもないからね」
「三kg分の食べ物を提出すれば、好きなだけ食べていいんだニャン。出さなくても、銀貨五枚に銅貨九枚払えば参加していいんだニャン。隣の村や、商人さんたちもやってきて凄く賑やかなんだニャン!」
私たちの説明を理解できたのか。表情からは読み取れなかったが、これから三人で出かけるんだという事は、分かってくれたようだ。鳥かごの縁を両手でしっかり掴んで、揺れても問題ない姿勢をとるのを見てから、私たちは広場へと歩き出す。歩くたびに、持っている籠の中からカチャカチャと音がするが、それは私が対価として差し出すリンゴジャムだったりする。
裏庭にあるリンゴを使った物で、当然エンスの手作りだ。結構評判で店で売ったりお裾分けのお礼に渡したりと、年に何度も作っているが、余ることはない。
あのリンゴの木は、私たちがこの家に住む前から存在している。もういないけれど育ててくれたお祖父ちゃんが言うには、私たちが住む家の前の持ち主は結構有名な占星術師で、それと同時にとんでもないリンゴ狂だったとか。
それで村にやってきた魔術師に頼んで、栄養さえしっかりやれば、何度でもリンゴが採れるようにしてもらったらしい。
今回のジャムは、数日前に熟れた採れたてのリンゴを使った奴だ。この前使った空の木の灰を乾かして、木の根の傍に埋めたらいい肥料になってくれたらしく直ぐに立派な実をつけてくれた。ひょっとしたら、まだ魔力が残っていたのかも知れない。
「あ、いい匂い」
「お肉の匂いニャーン」
広場に近づくに連れて漂ってくるいい匂い。耳をすませば楽しそうな音楽も聞こえてくる。
今日もいい一日になりそうね。
* * *
匂いが示すように、広場は既にお祭り状態だった。あちこちにテーブルや椅子、ベンチ等が置かれ、中央には何人ものシェフが包丁を持って食材を切り分けたり、ゴウゴウと音を立てている焼き場で調理をしていたりする。
「こんにちは、参加したいのでよろしくお願いします」
「はい、村の方ですね。今重さを測りますのでお待ちを―――。確認しました。では、どうか楽しんで下さい」
受付業務をしている領主様のメイドさんたちに、持ってきたリンゴジャムを籠ごと渡す。すると直ぐに天秤に乗せられて重さを調べられ、基準を満たしていると確認がとれれば、領主様の紋章が刻まれた銀のトレイを渡される。このトレイを持っていれば、好きなだけ飲み食いが出来るのだ。
「うーん、どれから食べようかしら。みんな美味しそうで目移りしちゃう」
出来上がった料理が置かれているテーブルの前に立ち尽くす。温かく柔らかいパンに、柔らかそうな煮込み料理。他にも、普通の家じゃ絶対に作れそうにないような手の込んだソースがかけられた肉や香草のいい匂いをさせている蒸した魚等、お金持ちのパーティーのメインディッシュを張れるような料理が皿に置かれている。
色々と葛藤した結果。
「最初はこれにしよーっと」
炙った厚切りのベーコンに蕩けたチーズを乗せた料理を手に取る。
皆美味しそうだけれど、好きなもの同士の組み合わせに勝るものは無いわね、やっぱり。
「後は……コレとコレと……」
他にも何品かの肉や魚料理、飲み物をトレイに載せて、エンスが座っているテーブルへと向かう。はい、と皿を渡せばエンスの髭がピン! と伸びた。因みにチョコには、ベーコンの欠片を渡しておく。
「「いただきまーす(ニャン)」」
手を合わせて、早速口いっぱいに頬張る。
「うー、しあわへー」
行儀が悪いとは理解しているけれど、言葉にせずにはいられない。ベーコンの旨味と濃厚なチーズが、舌の上でうまい具合に絡み合って至福の時へ導いてくれる。
コレを褒めなかったら、一体何を褒めればいいのか。そんな感じだ。
「美味しいニャーン♪」
隣で魚を食べているエンスの尻尾も真っ直ぐに立ち、上機嫌を示している。チョコも大人しく食べているので、気に入ってくれたのだろう。
その後、持ってきた料理や新しく取ってきた料理を食べ比べていると、何度も聞いたことのある歌声が響いてきた。この声は! と振り返れば、音楽隊がいる一角が女性達に占領されている。
ああ、やっぱりフェルクスさんも来ていたんだ。
「相変わらず凄い人気ね。人が多すぎて全然見えない」
「シルキちゃんはいかないのかニャン?」
「あの人だかりを掻き分けるのは……ねぇ。フェルクスさんのあの綺麗な顔は、この前間近でバッチリみさせてもらったし、歌はちゃんと聞こえてくるから、そこまで無理しなくてもいいや。今回は」
ついでに辺りをグルッと見回してみる。食事に夢中になっている間に、広場には随分と人が集まってきていた。
奥の方ではビール樽のようなお腹をした領主様と、顔なじみの行商人さんたちが、ワインや食べ物を片手に持ちながら話をしている。
まぁ、この食事会は行商人さんたちにとっては売り込みのチャンスだ。取り引きしている商品を皆に食べてもらえ、気に入ってもらえたら取引してもらえる。実際、村のお店にも「食事会で美味しかったから」と販売が始まったワインなんかは結構ある。
「……今日は私も飲んじゃおうかなー」
「ニャン? まだお昼ニャン」
「いいじゃない、殆どの人が飲んでるし。それにさっきも言ったけれど、今日仕事頼まれるなんてありえないし。平気平気」
トレイを持って立ち上がる。丁度持ってきた料理も食べ尽くしたので、エンスに次に食べたいものを訊ねれば「お肉ニャン!」と返ってきた。
なのでワインと肉料理、まだ食べてない料理数点を取る。席に戻って、エンスたちとフェルクスさんの歌を聴きながらワインを楽しんでいる時だった。
「仕事の話をしたいのだが……」
「ふへ?」
突然、身なりの良い年下っぽい男の子に声を掛けられる。しかも仕事の。
まさかの事態。その時の私は、茹でたトウモロコシを固く握りしめていた。