道具屋さん、始めました   作:飛沫

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次々と明かされるキャラたちの(全く重要ではない)秘密!

そして感のいい方はお気づきかもしれませんが
シルキ→ツルギ
エンス→ランス
フェルクス→ファルクス
コピア→コピス
レイス→メイス
マクナベティル→マクアフティル
アキュニス→アキュリス
ザベル・シグクシア→シンクレアー・サーベル
アフィア→アフェナ
とキャラの名前は皆武器の名前をもじってます。
名前考えるの難しいですよね。


町へ買物・再び 二

 一旦宿をとって絨毯を預けてから、私たちは町のダンジョン目指して歩き出した。

 この町のダンジョンはなんと、町の中にダンジョンが存在している。元々は別れていたらしいのだけれど、町が発展していくにつれて取り込んだ形になったのだとか。いくら冒険者たちが毎日ダンジョンに潜って魔物退治をしているとはいえ、怖くないのかしら。私は嫌だなぁ。

 歩いて十五分ほどしてくると、段々と大きな山が見えてきた。アレがダンジョンか。ついでに並んで歩いている人の比率も、冒険者の人たちが高くなってくる。

 更に十分ほど歩いて、ダンジョンの入口へと辿り着いた。何時もは離れた場所からぼんやりと眺めていただけだったが、こうやって見ると大きいなぁと実感する。山頂部分もしっかりと青い。

まさかあの青さが木の枝だったとはね。

 ぐるりと見回してみると、私たちのような物見遊山みたいなのは数えるくらいしかいなかった。後は全員冒険者。地図を開いて楽しそうに話をしていたりするのがこれからダンジョンに潜る冒険者で、疲れた顔をしたり大きな袋を抱えていたりするのが、探索を終えた冒険者かな?

 キョロキョロと物珍しげに顔を動かす姿は、さぞかし目立ったのだろう。ふと視線を感じて前を向けば、革製の防具みたいのをガッチリと着込んだ、赤い髪の青年がこっちに向かって歩いてきた。口元にあるホクロがチャームポイント……かな?

 

「観光の方ですか? ココはダンジョンなので、これ以上近づくと危険ですよ」

 

「あ、すいません。知り合いの人が此処にいると聞いたので、ちょっと見にきただけなんです。ダンジョンに入るつもりはさらさら無いので安心して下さい」

 

 私の言葉に、男の人は「なら大丈夫です」と笑ってみせる。そんなにこのダンジョンは危険なのかと顔を顰めていると、詳しく説明してくれた。

 何でもこのダンジョンは魔王を封じ込めているという噂が立つだけあって、内部は桁違いの魔力が溢れているのだとか。

 お陰でダンジョン内に生息しているカラスやカエル、カタツムリなんかも相当強化されていて、油断していると痛い目をみるらしい。

 カタツムリに泣かされるなんて想像もできないけれど、彼が私に嘘をつく理由なんてないから本当なんだろうなあ。

 

「ところでお兄さん。マクナベティルさんって知ってるかニャン? ボクたち、その人に会いにきたんだニャン」

 

「え、隊長ですか?」

 

「隊長?」

 

 え、マクナベティルさんて、そんな肩書を持っている人だったの?

 驚いているとふと空が暗くなり、彼が「あ、戻ってきましたよ。隊長」と明るい声を上げる。そのまま、深く考えずにエンスと一緒に顔を上げれば。

 

「ヒィッ!?」

 

「ニャーーン!」

 

 頭上には全長三十m以上はありそうな黒竜と、その首に跨っているマクナベティルさんがいた。

 

「シルキか。こんな所までどうした?」

 

 バッサバッサと風圧を巻き起こしながら黒竜が地面に降りてくると、ピョンと飛び降りて歩いてくる。一方、そんなマクナベティルさんを見ながらも私たちは声が出せなかった。

 だって竜よ。しかも黒竜!! 確か黒竜って炎すら吐けないけれど、凄く凶暴で力が強いんじゃなかったっけ!?

 何でそんなのに乗ってるの。この前のブラックドッグはどこにいったの!?

 

「隊長、この人は隊長に会いにきたそうですよ。冒険者じゃないそうですし、どこで知り合ったんですかー」

 

 うわ、黒竜がメッチャ私を見てる。宝石みたいな赤い瞳で睨んで

 

『あの犬、凄くドラゴン臭かったニャン』

 

 あー! そういうことか! どんな魔術を使ったのか知らないけれど、この黒竜はあの時のブラックドッグか!

 ど、どうする。ここで「町に買い物にきたついでに、マクナベティルさんの顔を見に来ました♪」なんて口にしたら、間違いなく殺害対象にされちゃう。

 な、なんかそれっぽい理由というか訊きたい事というか。

 

「マクナベティルさん! 私、ドワーフのレイスさんの所に行きたいんですが、住所とかご存知ないでしょうかね!?」

 

*  *  *

 

「ハッハッハ、それで逃げるように儂の所にやってきたわけか」

 

「笑い事じゃないですよ。マクナベティルさんの黒竜に睨まれている間、生きた心地がしなかったんですから」

 

 豪快に笑うレイスさんに渋い顔をしながら、出されたコーヒーを啜る。うぅ、牛乳がないのなら、砂糖もらっておけばよかったかな。でも、今はこの苦さが生きていることを実感できて、ちょうどいいかも。

 

「まぁ、この町の人間ならともかく、他の者は黒竜なんか見たら大騒ぎになるだろうからな。マクナベティル殿が気を遣ったんだろうて」

 

「そうなんでしょうね。でも、竜って変身できるんですか?」

 

「竜は魔物の中でも一二を争う強さと魔力の持ち主じゃからなあ。変身は造作もないぞ。尤も、素で強い存在を、態々弱く見せる状況なぞ限られてくるからの。あまり知られてはおらんな」

 

「ふむ、勉強になりました」

 

 こら、エンス。そんな苦そうな顔しない。当たり前のように牛乳と冷たい水が置いてあるのなんて、私たちの村くらいなんだから。

 

「マクナベティル殿の黒竜はアキュニスという名前だった筈だが、確かマクナベティル殿が卵から孵して面倒みたらしいから、慕う気持ちが一層強いんじゃろうて。儂が言うのもおかしいが、まぁ大目に見てやってくれ。ところで、来たついでじゃ。何か作っていくか? お前さんたちには金貨六十枚分の借りがあるからな、その分まではタダにしておくぞ」

 

「あのルビーそんなにしたんですか。うーん、どうするエンス。包丁でも作ってもらう?」

 

「ボクが使っている包丁は、この前お肉屋さんにお願いして研いでもらったから平気だニャン」

 

「なら私が仕事で使うナイフを作ってもらえますか? 色んな素材切ったりするんで、ボロボロになっちゃって」

 

「あい判った。材料の希望はあるかね」

 

「んー、その辺はあまり詳しく無いので、専門家のレイスさんにおまかせします。あ、でも切れ味よりも頑丈さ重視でお願いできますか」

 

「それなら丁度いいのがあるわい。じゃあ作ってくるから少し待っていてくれんか。三十分もあればできるからの」

 

 立ち上がるとレイスさんは棚から材料らしきものを取り出し、奥の鍛冶場へと入っていった。一方の私たちは、レイスさんのジュエルドールからお代わりのコーヒーを貰いながら待っていると。

 

「おい、じーさん。頼んでいたの取りに来たぜ」

 

「アレ、ザベル様じゃないですか」

 

 今度はザベル様に遭遇した。何でここにいるのかと問われ、事情を話したあと同じように訊ね返せば「宮廷騎士の試験に合格したから、腰に佩く剣を注文して取りにきた」とのこと。

 宮廷騎士って剣の腕が物凄く立たないとなれないんじゃなかったっけ? そんな簡単になれるものじゃない筈なんだけれど。

 加えて容姿も良くないとって……ザベル様の顔だったら余裕か。うーん、地位もあって顔も良くて剣の腕もあるって、ちょっと欲張り過ぎなんじゃないの?

 

「できたぞシルキさん……って。おや、子爵様もいらしたか」

 

「ああ、完成したって連絡もらったからきたんだが」

 

「今持ってきますので、お待ち下され」

 

 レイスさんは私の前にナイフを置くと、もう一度奥に引っ込む。透き通った素材で作られた鉤爪状のナイフだ。コレ金属じゃあないわね。素材は何かしら?

 

「シルキちゃんシルキちゃん、それボクが持つニャン、持ちたいニャン!」

 

「はいはい、やっぱり男の子ねー。落とさないように気をつけなさいよ」

 

 持っていた紐に通してエンスの肩からぶら下げてやっていると、レイスさんが一本の剣を持って戻ってきた。ううん、嫌味じゃない程度に華美な装飾が施されているわね。いったいいくらするんだろう。

 

「レイスさん、これって材質は何ですか?」

 

「あぁ、それは黒竜の爪で作ったんじゃ。ちょっとした金属よりも硬いし切れ味もなかなかだぞ。あいにく長さがないから剣には向かないが、ナイフにするにはうってつけの素材だわい。さて子爵様、ご注文の剣の仕上がりはいかがですかな?」

 

「文句のつけどころがねえな」

 

「ザベル様ー、好奇心でお訊ねしますがその剣ちなみにお幾らですか?」

 

「さぁ? この前のパーティーで踊った侯爵の次女が『金は出すから好きに作ってくれ』って言われたからきいてもねぇな」

 

「凄いニャーン」

 

 本当にあるんだ、そんなこと。

 

「……ん?」

 

 と、今頃になってようやく、私はもう一人、人がいることに気がついた。屈み込むと、ザベル様の腰にしがみついていた小さな女の子と目が合う。

 これまた上等な服に、光の反射次第で黒にも見える深緑の髪を、ザベル様と同じように結っている。……マクナベティルさんの黒竜も、人として考えたらこんな感じなのかな? この子も目が赤いし。

 

「妹さんですか?」

 

「何言ってやがる。天使だ」

 

 ……はい?

 

「え、ヤバくないですか? だってこの子、十もいってないでしょ。……ええと、おいくつですか?」

 

「アフィアです、七歳になりました!」

 

「一回りも違うじゃないですか!」

 

「五十の爺が二十の孫みたいな娘を嫁にする話に比べれば大したことねぇだろ」

 

「いや、まあ、そりゃそうですけれど」

 

「だいたいシルキだって似たようなことしてんじゃねぇか」

 

「はい?」

 

 

 

『ところでエンス、お前何歳なんだ?』

 

『ボクは十四歳になったニャン!』

 

『てことは十違いか……。お前とは気が合いそうだな』

 

『はぁ』

 

 

 あー、あのセリフはそういう

 

「って違います! 一緒にしないでもらえません!?」

 

*  *  *

 

「アハハハ、それじゃシルキちゃん、エンス君のこと囲ってたと思われてたのね」

 

「何をどうとったら、その考えに至るか理解できませんけれどね」

 

 手を叩いて大笑いするコピアさんに、しかめっ面のまま答える。

 あの後、もの凄い勢いで間違いを訂正しておいたけれど、ザベル様はイマイチよく解らないという顔をしていた。今度出会ったらもう一回、言い含めておいた方がいいかもしれない。

 

「しっかし『あの』ザベル様が、七歳の女の子とねー」

 

「コピアさん、ザベル様の事知ってるんですか?」

 

「王都に行ったとき、飽きるくらい耳にしたわよ。ほら、ザベル様って貴族様でも次男じゃない? ひょっとしたらって、若い娘は貴族、庶民関係なく騒いでいたわ。王都でならフェルクスさんと双璧を成すくらいの人気があるんじゃないかしら」

 

「えぇ〜、フェルクスさんの方がいいと思いますけれどね〜」

 

「相変わらずフェルクスさん大好きなのね。ところでシルキちゃん、今回の買い物はこれだけでいいかしら」

 

「はい、マクナベティルさんが色々持ってきてくれたんで」

 

 頷いて、数個の魔石と空の木の枝二塊を受け取る。あ、そうだ。

 

「コピアさん、マクナベティルさんから買い取ったんですが、コレってどういう効果があるんですか」

 

 鞄から持ってきていた「精霊の破片」を出して見せてみる。

 

「精霊の破片ね。コレは―――」

 

 曰く、やっぱりこの素材は単品ではかなり使いづらい品物らしい。コピアさんはこの精霊の破片を集めて精霊の魂に作り変えることが出来るそうだけれど、それは魔女であるコピアさんの特権だ。話を聞いても、私には真似できそうにない。

 

「で、どうしよう。使わないなら買い取るわよ?」

 

「んー……もうちょっと持ってます。私なりに使いみちが思い浮かぶかもしれないですし」

 

「ん。解ったわ。……話は変わるのだけれどシルキちゃん、お金にまだ余裕はある? そして、夜に予定はあるかしら?」

 

「夕飯食べた後の予定は無いですし、お金はまだ余裕ありますけれど……どうしたんですか?」

 

「実は今日、広場で変わった市をするの。よかったら一緒に行かない?」

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