そしてなんとビックリ。この話、アイテム作りをメインと謳っているのに、肝心のアイテム作りは全話中半分もないんだぜ。
つまりはネタがないってことですね。ネタ下さい。活動報告にて待ってます。
甕を抱えて、私は家の周りを一周する。どの辺りに置くのがベストかを検討した結果、畑やリンゴの木からも遠くて、万が一ひっくり返しても被害が出なそうな左側の角っこが良さそうなのでそこに置くことにした。
「うわ、この刺激臭、やっぱり好きになれないわね」
「臭いニャーン」
蓋を外した途端にツンとくる独特の匂いにたまらず顔を顰めていると、後ろにいたエンスが匂いから逃げるように腰の辺りに顔を押し付けてくる。何でこの子、いつも私の服でやり過ごそうとするのかしら。家の中からハンカチでも持ってくればいいのに。
さて、このスライムの酸は名前の通りスライムが吐いたり、倒したときに溢れた体液を集めたものだ。本来ならスライムはそれほど強くない魔物らしいのだけれど、ダンジョンの町にいるスライムはダンジョン内の豊富な魔力によってかなり強化されていて、冒険者泣かせの厄介な奴という位置づけにいるのだとか。
で、厄介な奴となっている原因が、ここにある酸のせいだ。元々のスライムの体液は、変な匂いがする粘着性の液体であって、身体に付着しても害はないという。けれど、ダンジョン町の強化されたスライムの体液は、強い酸性の液体になっている。皮膚に付けばまるで日焼けしたかのような痛みを伴い、武器や防具によってはドロドロに溶ける……まではいかなくても劣化が早まって直ぐに使い物にならなくなるとか。買ったばかりの物を駄目にされたら、確かに膝から崩れ落ちるようなショックを受けるだろう。私なら少しの間立ち直れないかもしれない。
「臭いニャン。臭いニャン。シルキちゃん、こんな臭いのどうするニャン」
「臭いって連呼しないでよ。この酸は、コレを漬ける為に買ってきたの。コッチの方がお酢よりも酸度が高いから、早く仕上がるかと思ってね」
エンスをしがみつかせたまま、取りに戻ったのはロック鳥の卵の殻。酸を跳ねさせないよう注意しながら沈めれば、直ぐにシュワシュワと小さな気泡が、殻から大量に作られる。
「アレ? せっかく買ってきたのに、ソレ入れちゃうニャン?」
「別にこの殻欲しさに買ったわけじゃないもの。そりゃ確かにこっちじゃ珍しい物だけれど、籠代わりなら他にも沢山あるわけだし。私が欲しいのは別の物よ」
五日もすれば分かるから楽しみにしてなさいな、そう言ってから私は甕の蓋をしっかりと閉めた。
* * *
朝と夕に蓋を開けて、様子を確認すること二日目。
「あら、もう溶けちゃってる。結構殻の厚みがあったから、もうちょっと日にちがかかるかと覚悟していたけれど、やっぱり酸度が高いと違うのね」
私はその辺に転がっていた木の枝を使ってそれを掬い取ると、地下室から鍋を取ってきて水を張り、ソレを突っ込む。すると、ちょうどエンスがやってきたので見せてあげる事にした。
「ほらエンス、殻が溶けてくれて綺麗にコレだけが残ってくれたわ」
「あ! コレ卵の膜ニャン!」
そう、私が材料にしようと考えていたのは卵殻膜の方。大きいから普通に剥がす事も出来るだろうけれど、それだと千切れる可能性があったから、殻だけを溶かしてくれる酸の液体に漬け込んでいたのだ。
「膜をどうするんだニャン?」
「まずは数日水に晒しておきましょ。変な臭いがするのも嫌だし。臭いが取れたら膜の強度を試してみて、普段使いが耐えられそうなら、色々作って売り出すわ」
更に二日後。卵殻膜が無臭になったのを確認してから、水気を十分飛ばしてお店のカウンターへ持っていく。卵殻膜の他に脇に抱えているのは、貰った黒竜のナイフに靴職人さんから作ってもらった型紙、そしてコピアさんの店で買ってきたボロボロになったぬいぐるみ一体。
コピアさんのお店って、本当に何でも扱ってるわよね。私的には、欲しいものを安く手に入れられたからよかったけれど。
「四六時中忙しいわけじゃないし、売り物でもないから暇を見て作っちゃいましょ」
「シルキちゃん、ボクも手伝うニャン。何をすればいいニャン」
「このぬいぐるみから綿を出してくれる? 綿を使いたいの」
「任せるニャン!」
ニャンニャンと上機嫌で歌いながらぬいぐるみにナイフを突き立て、中から綿を引きずり出すエンスを横目で見ながら、私は卵殻膜に型紙を当てて型をとっていく。六枚ほど切ってからそれぞれを縫い合わせ、中にエンスが出してくれた綿と妖精の粉を詰めれば浮かぶ手作りボールの完成だ。軽くて浮かんでいるから、どんな子が投げても遠くに飛んでいってくれるので、遊ぶにはもってこいの品になっている。
「シルキちゃん、試さないのかニャン」
「この部屋で投げたら酷いことになるから勘弁して。遊びたいなら外で」
「おはようございます!」
「お母さんのおつかいできましたー!」
「ショール七まいです。おおさめ下さい!」
遮るようにベルを鳴り響かせて、三人のちびっ子たちがお店に入ってきた。おっ、お隣さんの子どもたち。ちょうどいいタイミングで来てくれたわね。
「ありがとう、じゃあこれお金ね。お母さんに渡してね、ネコババは駄目よ?」
「しないよー。まっすぐ帰ってきなさいといわれたもん」
「そっかそっか。じゃあ後コレも上げる。いつもみたいに思いっきり遊んでちょうだい」
「あ、ボール!」
「遠くまでとんでくボールだ!!」
ボールを見せた瞬間、子どもたちの目が輝きを増す。ここまで素直に喜んでくれると、私も上げたかいがあるというか。嬉しくなるわね。
「また色々試しているから、十日と一ヶ月くらいしたらどんな状態になっているか見せに来てくれる? その前に壊れたら、直ぐに持ってきてくれると助かるわ」
「いいよー!」
「じゃあ帰りまーす!」
「シルキお姉ちゃんありがとう!」
キャッキャとはしゃぎながら、お隣さんの子どもたちは帰っていった。お姉ちゃん……いい響きだわ。でもあと何年するとそれがオバサンに変化するのか。それを考えるとちょっと怖い。
「丈夫そうだったら、膜で何を作るニャン?」
「そうねー、ポーチや背嚢辺りかしら。でも背嚢だと卵殻膜が足りないか」
それに結構透けるから、難しいかな。でも行商人さん曰く変わった物を持っていると、それで話しかけられることによって商売のきっかけが出来たりするって言っていたから、ありか?
「とりあえず目標はポーチにしておこうかな。また職人さんにお願いして型紙と作り方教えてもらわないと」
「お金払うのかニャン?」
「いや、ユニコーンの水薬数個でなんとかなるんじゃない? あの人よく二日酔いで呻いてるの見かけるし」
と、ポーチにするつもりでいたロック鳥の卵殻膜だったが。
その後、子どもたちが遊んでいるのを見かけた行商人さんの希望によって、ボールのまま売り出すことになった。何でも子供の多い町とかに持っていくと、こういう『誰でも楽しく遊べる物』は売れるのだとか。うーん、そうくるか。
今回の話の為(?)にスケルトンエッグを作ってみたのですが、アレゲロマズですね。
人間の食うもんじゃねぇ。