余談ですがこの小説に出てくるキャラのAPP値は
APP21(チート級)フェルクス&ザベル
APP18 エンス&トリュフ
APP16 コピア&ステリア
APP15 マクナベティル
APP14 チョコ&アフィア
APP12 シルキ
APP11 レイス
というイメージです。別に主人公が低いわけではないのですが、周りが高すぎるという
「へぇ、面白い効果だね。シルキちゃん、こんなのも作っているんだ」
「エヘエヘ、まぁ。作ってみたのは最近で、お店で初めて出したお客さんも、フェルクスさんが初めてなんでふへれど」
なんだか変な言葉遣いになっている気がしないでもないけれど、意識しても直りそうにないから放っておくことにした。多少言動がおかしくても、フェルクスさんはそんな相手見慣れているだろうし。
「んー、でもコレはありがたいな。蜂蜜も入っているなら喉にもいいだろうし。この効果も、ボクたちみたいに話でお金を貰う商売をしている人間にはピッタリだよ」
「んひぃ、フェルクスさんに褒めてもらえて恐縮です」
気分は完全に舞い上がっていた。その後は締まりのない顔をしたり、動きが不審な物になる度にエンスが背後から突いてくれたおかげで、なんとか普通に売買のやり取りができたけれど。本当、よくできた子だわ。
「それじゃあまた。シルキちゃん、面白い品を作ったら教えてね」
「はい、また。ご歓談下さい!」
手にスッポリ収まる瓶を持って、フェルクスさんは出ていった。扉を開けっ放しにして見送って、完全に姿が見えなくなってからようやく閉めてお店に戻る。ほぅ、と息を吐けば、興奮していたせいか吐く息まで熱を持ってるような気がした。
「エンス、どうしよう。あのフェルクスさん凄く破壊力持ってるわ。ただでさえおそろしく顔が整っているのに、あんな効果までついたら本当に物語に出てくる王子様そのものよ。いや、もう実在する天使様でもいいわ。その内フェルクスさんを見て死ぬ人がでるかもしれない」
「シルキちゃんがそう思うなら、もうそれでいいと思うニャン」
どうやらツッコム気すらわかないみたいだ。その後しばらくフェルクスさんを讃える言葉を口にしていると、可哀想な人を見るような目をしながらエンスが口を開く。
「シルキちゃん、そんなにフェルクスさんの事が好きなら好きですって言ったらどうニャン。歳の差二倍くらいあるけれど」
「いや、私は別にフェルクスさんといい仲になりたいわけじゃないのよ。あの人は私の理想というか憧れの王子様というか。すぐ近くで見ていられるだけで充分だから、これ以上距離をどうこうって気はないわ。というか、私程度じゃ恋人なんて無理よ」
「そうなのかニャン?」
「うん。けどフェルクスさんが結婚したりしたら、一日か二日は泣いて使い物にならない自覚はあるわね」
「面倒くさいニャーン」
欠伸をしながら隣に寄り添ってきたエンスの喉元を撫でておく。けれど、まさかアレが売り物になるなんてねぇ。
ゴロゴロという喉の音を聞きながら思い返す。今回フェルクスさんに売った物は、私たちだけで使おうと考えていた調味料。売り物にする気はなく、寧ろ材料が材料なだけに売れるとは想像もしていなかった。
けれど予想外の効果があり、フェルクスさんがその効果をえらく面白がったのだ。使ったのは就寝前で、その時に効果に気づいたけれどまさか半日近く持つなんてね。
「ところでシルキちゃん、今度からアレ売るのかニャン?」
「試しに置いても損はないかもね。とはいえ、売るとしたら注意書きはしとかないとかな。知らなかったなんて文句言われても困るし」
そんなやり取りをしながら奥の方に戻ろうとしたら、再び扉が開いた。フェルクスさんが買い忘れでもして戻ってきてくれたのかと顔を綻ばせるが。
「よぉ、シルキ。邪魔するぜ」
「お、お邪魔します!」
入ってきたのは顔の良さならフェルクスさんに引けを取らないザベル様に、ええと天使ちゃん……名前何だっけ? の二人だった。
「アレ、ザベル様? どうしたんですか、こんな所まで。王都からこの村まで馬車で一日以上かかりますよ。宮廷騎士のお仕事はいいんですか?」
「もう一本剣を作ろうと思ってな。レイスに頼んだら四日かかると言われたから、コッチにも来た。前回食べた食事は悪くなかったし、天使がもう一度エンスに会いたいって言ってたからな。宮廷騎士は休みだ。討伐依頼や外交の護衛があれば別だが、魔王がいた時代と違うからそこまで忙しくはねぇよ」
「でもダンジョンの町からでも、馬車でくればかなりの時間がかかるでしょうに」
「絨毯に乗れば二時間ちょっとだろ」
いや、四時間くらいはかかりますよ。二時間って、マクナベティルさんのアキュニスちゃんくらいの速さなんだけれど。よく泣かなかったわね、天使ちゃん。
「ん、この匂い……蘭か?」
スン、と鼻を鳴らしてザベル様が訊ねてきた。よくご存知で、と答えれば香水のお陰で花の匂いには詳しいんだとか。
「付けてる匂いを当ててやれば、喜んで色々と便宜を図ってくれるからな。努力して覚えたぜ」
うわぁ、悪い顔してるなぁ。
「しかし香水にしちゃ匂いが薄いな。生花があるわけでもなさそうだし」
不思議そうな顔をしながらも、ザベル様の興味はそこまでだったようだ。コッチへ向き直ると、また変わった物を作ったかと質問される。変わった物と言えば……人魚の丸薬か。一応、報告した方がいいのかな?
* * *
シルキとザベルが話し始めた姿を見て、エンスは首を傾げた。先程ザベルは、この村での食事が気に入ったと言っていた。王都で貴族や富裕層相手に腕を振るうコックに敵うとは思っていないが、美味しいと言ってくれたのなら前回同様、昼食をご馳走したほうがいいのか。それを確認したいのだが、二人は自分の視線に気づいてくれそうにない。どうしようかと悩んでいると、背中をスルリと撫でられた。
振り返れば、ザベルの腰にしがみついていた少女が立っていた。以前ダンジョンの町でちらりと見たが、名前までは覚えていない。なんとか思い出そうと首を捻っていると、察した向こうが「アフィアです。七歳です!」と自己紹介してきた。
「えっと、アフィアちゃん。ボクに何か用かニャン」
「妖精さん、可愛い!」
アフィアの言葉に、エンスは僅かに警戒した。「可愛い」という言葉は、エンスにとっては挨拶の一種のようなものになっている。実際シルキは毎日のように「エンスは本当に可愛い顔してるわねー」と言いながら撫でてくるし、村に買い物に行けば「可愛いから」とオマケしてもらうのもしょっちゅうだ。
だが、エンスにとって「可愛い」は時にマイナス要素になることもある。ケット・シーの国にいた時、必要以上に仕事をしていたのは城のお姫様に「可愛い」から気に入られ「エンスにして欲しい」とちょくちょく用事を言いつけられていたからだ。極めつけは川に落ちて流された時のこと。
『エンス、あの花が欲しいニャン。取ってきてニャン』
空の木に咲いていた花が欲しいと言われ、その結果足を滑らせた原因は、お姫様の我儘だった。だから、お金持ちのお嬢様の口から発せられる「可愛い」は苦手だ。無茶を言われるんじゃないかと身構えてしまうが。
「妖精さん、ギュってしてもいいですか?」
アフィアのおねだりは、それほど無茶な要求ではなかった。緊張しつつも頷けば、エンスはギュウと抱きしめられる。
「凄い、妖精さん温かくてフワフワです!!」
そのままスリスリと頬ずりされた。同じような背丈なので彼女の頬が顔に当たるのだが、向こうは特に気にした様子はない。しばらく抱きつかれているとアフィアは満足したのか「ありがとうございました」と離れて頭を下げてくる。コレ以上何かを要求してくることはなさそうだ。お金持ちとは言っても人を相手にして財を成した商人、王族とは違ってそれほど我儘に振る舞っていいという教育はされていないのかもしれない。
「アフィアちゃん」
「はい、妖精さん」
「ボクの事はエンスって呼んでいいニャン」
言いながら、エンスは再びシルキたちの方を見た。今はシルキが赤い粉が入った小瓶をザベルに渡しながら、身振り手振りを交えて話をしている。やはり自分が二人を見ていることに気がついていない。
(やっぱりボクが、アフィアちゃんを相手をした方がいいみたいだニャン)
「アフィアちゃん、お腹空かないかニャン? ボクでよければ何か作るニャンよ」
「本当ですか!? じゃあエンスさん、私甘い物が食べたいです」