道具屋さん、始めました   作:飛沫

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買い物とか日常の描写が大好きです。
ハリポタでも一番好きなシーンはダイアゴン横丁での買い物シーンです。


トリュフのメンテナンスとお買い物

 混乱した思考を元に戻すのには少しばかり時間がかかったけれど、何とか落ち着く事に成功する。それにしてもマクナベティルさんが百歳超えかぁ。大人しいオジサンかと思いきや、おじいちゃんだったのね。

 その後はオルアムさんと別れ、町に戻る。とりあえず目的の一つは達成出来た。次に目指すのは、レイスさんの鍛冶場だ。

 

「こんにちはー、トリュフの具合はどうでしたかね?」

 

 扉を開けて中を窺えば、背中を向けているレイスさんを発見する。振り返る前に傍に行けば、机の上で足をブラブラ揺らしているトリュフもいた。トリュフを受け取る時に、関節部分にゴミや傷が無いか定期的に検査した方がいいと言われたから、ついでに見せにきたのだけれど、どんな物だろう。

 

「おお、シルキさんか。メンテナンスはさっき終わった所だ。結構動き回っているようだが、まだ問題はなさそうじゃの」

 

「それは何より。トリュフも良かったわねー、おかしい箇所はないって」

 

 声をかければ、トリュフはレイスさんに深々と頭を下げた。さて、と辺りを見回せばチョコがこっちに向かって走ってくるのが見える。どこかに潜っていたのか、髪の毛には埃がついていて左腕には藻掻くカマドウマをしっかりと抱えていた。足元にまでくると大きく口を開けてかぶりつこうとしたが、カマドウマも命がかかっている為必死だ。自慢の跳躍でチョコの腕から逃げ出すと、ピョンピョン跳ねながら奥へと消えていく。頬を膨らましながら追いかけるチョコ。さて、チョコが追いつくかカマドウマが逃げ切れるか、どっちかしらね。

 

「おや、シルキさんは虫は苦手じゃないみたいだの」

 

「まぁ、ハーブ弄っていればよく見ますし噛み付いて来るわけじゃないですからね。今日ダンジョンで見たKAERUやMAIMAIに比べたら可愛いものじゃないですか」

 

「ほう、ダンジョンに行ってきたのか」

 

「はい。今更なんですけれど、魔術覚えた方が便利だなって感じまして」

 

「お前さんも物作りを生業にしているようだしの。使えて損はあるまい。ところで……なんでこの生き人形は、女子の格好をしているんじゃ?」

 

 お前さんの趣味か、と問われて苦笑いしながら否定しておく。トリュフが女性狩人っぽい格好をしているのは、ステリアちゃんの衣装を参考にしているからだ。チョコとトリュフにとっては狩人=ステリアちゃんの姿になっているみたいで、存分にステリアちゃんの服の作りを観察すると、早速二人して作り始めたのがこれだったというわけ。

 

「まぁ、理由は納得できたが……止めんかったのか」

 

「だって、着替えてもトリュフ嫌がりませんでしたし。人形ならあんまり性別関係ないかなとも思いまして」

 

 加えてトリュフは、顔の作りもどっちとも取れるような感じになっている。だから、女の子の格好をしていても全く見苦しくはない。まぁ、こうやって趣味は疑われるけれどね!

 レイスさんは複雑な表情のまま、トリュフの服の裾を捲っている。どうも、服の作りが気になっている様子。見様見真似で作ったものだから、近くで見ると粗が目についちゃうのよね。かと言ってトリュフサイズの型紙もないから、作り直すことも出来ないんだけれど。

 その後、レイスさんが狩人の衣装と弓矢を作ろうかと提案してくれたので、お願いしておいた。男物でいいんじゃよな、と再確認されたから、信用されてないなぁと思ったけれど。

 やり取りを終えて、お店を出ようかと思っていた時だった。レイスさんに呼び止められる。

 

「ところでシルキさん。魔術を使うのなら、宝石を一つくらい持っていた方がいいぞ」

 

「宝石……ですか」

 

 確かに魔術師は必ずと言っていいほど宝石がついた装身具や杖を持っているわよね。

 

「知っているとは思うが宝石は魔力を増幅したり、受けた場合には魔術を吸収して効果を和らげたりしてくれる。壊れたりしない限りは永久に使えるし、使い込めば使い込むほど馴染むから、損はせん。儂のお勧めは腕輪か指輪じゃな」

 

「あぁ、着ける箇所によって発揮する効果が違うんですっけ」

 

 確か帽子やピアスとかの頭部に着けるものは魅了や混乱とかの精神系からの防御、首飾りとブローチ・ベルトが向けられた魔術全般の緩和、そして杖や指輪・腕輪は発動する魔術の強化よね。靴やアンクレットは……何だったけ。能力向上だったかな?

 幸いレイスさんにはまだ金貨五十枚近くの『貸し』が残っているから、ここでいっちょ奮発していい指輪か腕輪を作ってもらうのもありかもしれないが。

 

(私程度の魔力だとそんな良い物、無駄遣いな気がするんだよなぁ)

 

 ステリアちゃん並に魔術が使えるなら価値はあるだろうけれど、勿体ない気がしてならない。だからといって安物作ってもらうのも、ドワーフのレイスさんには失礼な気がするし。とりあえず今回は、保留にしておこう。

 

「そうですね。じゃあ中古とかで良さそうな物を探してみます。良いのが無かったらお願いしますね」

 

「うむ、お前さんにはまだ借りが残っているから、その時はとびっきりのを作ってやるぞ。ああ、そうだ。中古のを選ぶ際は、好みもあるだろうが一番指に馴染む物がいいから、それを決め手に選ぶといいじゃろう」

 

「へぇ、参考にさせてもらいます。じゃあチョコー、行くわよ」

 

 声を掛けると、チラチラと何度も後ろを振り返りながらチョコが戻ってくる。悔しそうな表情だし、こりゃカマドウマには逃げられたか。

 それでも持ってきた鳥かごを開けば、トリュフ共々大人しく中に戻ってくれる。再度お礼を言ってから、私たちはレイスさんのお店を後にした。

 

* *  *

 

 指輪を買う機会は直ぐにやってくる。コピアさんのお店に行く途中の広場で蚤の市を開催していたのだ。何でも『遺跡』から見つけた品を販売しているのだとか。

 『遺跡』は魔王に壊されたり滅ぼされたりした、百年以上も前の町や城の事を言う。中には魔物の巣窟と化している『遺跡』もあったりして、危ないらしい。その代わり逸品が眠っている可能性も高く、宝探しを生業としている冒険者たちの稼ぎ場になっている。

 ここなら、丁度いい指輪があるかも。

 そう考えてフラフラしていると、若い女の子たちが集まっているお店を発見。寄ってみれば、装飾品を中心に販売しているみたい。若奥様もいかがですかと言われたので、若奥様ではないけれど覗いてみることにした。

 指輪も数個あったので、早速片っ端から嵌めてみる。色々と素敵なデザインがあるけれど……私の指に一番しっくりきたのは、緑の石がついた金の指輪かな。翡翠みたいな色をしているけれど、幾らだろう?

 店主に値段を訊ねれば、金貨四枚と銅貨十二枚だと教えてもらった。そんなに高くないわね。と言う事はクリソプレーズかしら?

 どうしようかと考えている傍から、指輪は幾つも売れていった。うん、買えない金額ではないから、思い切って買ってしまおう。

 店主に金貨分のサファイアと銅貨十二枚を払い、早速指輪を右手の中指に嵌めてみる。うん、いい感じ。

 

「これからよろしくね」

 

 指輪に挨拶して広場を出ようとしたら、別のお店で天使ちゃんの姿を見つけた。何やら店主と真剣な顔で話し込んでいるけれど。

 

「このブローチ、幾らですか?」

 

「そうだね、金貨二十三枚と銀貨十三枚ってところだね」

 

「お願いします。もう少しオマケして下さい」

 

「うーん、なら金貨十九枚と銀貨十六枚でどうだい?」

 

「いいですか?」

 

「いいよ。お嬢ちゃん、商売人の娘だろ? サービスさせてもらうよ。その代わり、次もよろしく頼むぜ」

 

「はい、では王都に来た時は是非寄ってください! グリーク・メアンダーというお店です」

 

 おお、やっぱり商売人ね。華麗に値引きして更に店まで紹介するなんて。

 天使ちゃんは、受け取ったブローチを大事そうに肩から下げているポシェットにしまう。そして顔を上げると、此方に気がついたようだ。

「シルキさん、エンスさん、こんにちは!」と元気よく挨拶して歩いてくる。

 

「アフィアちゃん、こんにちはニャン」

 

 天使ちゃん、アフィアって名前なのか。

 

「こんにちは、アフィアちゃん。アフィアちゃんも買い物?」

 

「はい、お買い得な掘り出し物がいくつかあったので、購入していました」

 

 そう言われて見せてもらったのは、さっき買ったのであろう貴石を嵌め込んで作ったモザイク画みたいな花のブローチに、カメオが数点。流石お金持ちの家の娘。良い物買ってるわね、値段も良い物なんだろうけれど。

 

「コレを王都に帰ったらお兄様のお店で売ってもらうんです。いいお小遣いになります!」

 

 あ、よく見たらアフィアちゃん、ちゃんとルーペと小さなウィル・オ・ウィプスのランタンを持っているじゃない。うん、やっぱりこの子はいい商売人になるわね。

 

「シルキさんは何か買われたんですか?」

 

 正直、アフィアちゃんが買った品の前に出せるような品ではないけれど……見栄張っても仕方ないし。

 

「ほら、コレよ。アフィアちゃんに比べれば大したものじゃないけれどね」

 

 前置きしてから指輪を外してアフィアちゃんに見せる。てっきり微妙な表情をされるものだと覚悟していたら、もらったのはお褒めの言葉だった。

 

「わぁ、素敵な指輪ですね。良い買い物ですよ」

 

「そ、そう? アフィアちゃんが買った物に比べれば、半分以下の値段だけれど」

 

「それは、指輪が全体的に小さいからだと思いますよ。石の色も綺麗ですし、ベゼルの彫金もシンプルですがしっかりしているので、普通の大きさならもっとします」

 

「アフィアちゃんに褒めてもらえるなら、得な買い物だったのね。他にも指輪はあったんだけれど、これが一番しっくりきたの。他のは指に当たるっていうか、違和感があったというか」

 

「きっと他のは、指輪に作り変えた品だったんじゃないですかね」

 

「そんなのがあるの?」

 

 アフィアちゃんはコクリと頷く。

 

「遺跡で見つかる品の中には、需要がなくて売れにくい物もあります。それらはフープを着けて、指輪にしちゃうんですよ。違和感はそこからきているかと」

 

「へぇー」

 

 レイスさんのアドバイスはそういうのも含めていたのかしら。何にせよお陰で本物を手にできたから良かった良かった。

 

「私、お兄様についてきたのでそろそろ戻ります。シルキさん、エンスさん。王都に来たら是非グリーク・メアンダーにも寄って下さいね」

 

「こちらこそ。またザベル様と村に来た時は、私の所にも寄ってね」

 

 手を振るアフィアちゃんと別れてから、私たちも広場を出た。今度はコピアさんのお店で買い物ね。……お金足りるかな?

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