道具屋さん、始めました   作:飛沫

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エンスだって可愛いから、客寄せには凄く貢献しているんですよ!!(謎の対抗心)


久しぶりのダンジョンの町・下

 マクナベティルさんたちのいるダンジョンから離れて暫く歩いた後、レイスさんのやっているお店へとやってきた。失礼します、と声をかけながら店内へと足を踏み入れれば、レイスさんが振り返ってこっちをみる。

 

「おう、戻ってきたかシルキさん。こっちも少し前に、トリュフのメンテナンスが完了したぞい。今回も特に問題はなかったから、安心してくれ」

 

「ありがとうございます。トリュフ良かったわね、特に交換する所は無いって」

 

 机に腰掛けて足をぶらつかせていたトリュフに声を掛ければ、やったぜという感じで親指を立ててくるトリュフ。前に比べれば、随分と男の子らしくというか、やんちゃになった気がする。チョコの影響もかなりあるんだろうけれどね、あの子トリュフのこと毎日連れ回して虫取り手伝わせてるし。お陰か、弓の腕はかなり上達していて、室内で虫退治を頼めば百発百中で仕留めてくれる。

 レイスさんに礼を言ってから代金を支払い(とは言っても、お金はレイスさんへの貸しから引かれるので、私は銅貨一枚すら払う必要はないのだけれど)移動用の鳥籠の扉を開ければ、当たり前のようにトリュフは鳥籠に移動しちょこんと座り込む。さて、次はと。

 

「チョコー、何処にいるのー?」

 

 鳥籠を持ったままトリュフについてきたチョコへ呼び掛ける。すると、壁の隙間からチョコがニュッと顔を出してきた。前回のように虫を抱えているふうではないけれど、口元が動いているから、捕まえて食べたわね。家の中なら芋虫の可能性は低いだろうから、羽虫かバッタ系かしら。

 そんな推理をしていると、鳥籠の中から手を振っているトリュフに気付いたようだ。チョコも鳥籠の傍に走ってくると、自分から扉を開けて中に飛び込む。これで、二人揃ったわね。

 直ぐに出ようかとも思ったけれどレイスさんが「特に急ぎの仕事もないし、客がくる予定もないからゆっくりしていかないか」と声をかけてくれたので、お言葉に甘えてもう少しお邪魔させてもらうことにした。

 エンスと一緒に椅子に腰掛けて、ダンジョンの町で最近起きた事や、私の宝珠の村で起きた事なんかをコーヒーとお菓子をいただきながら話す。コーヒーとかを用意してくれたのは以前見たジュエルドールだ。お礼を言うと笑顔を返してくれるが、この笑顔がまた綺麗で、もし人形だと知らない男の人がこんな顔を向けられたら、一目惚れしちゃうんじゃないかと思う。

 これで喋ったら完璧でしょうね。

 

「今ふと思ったんですけれど、レイスさんが作る人形って喋りませんよね。やっぱり声をつけるのって難しいんですか?」

 

「ん? イヤ、喋らせること自体はそれ程難しくはないぞ。ただ、ワシらのように流暢に喋らせるとなると、調整が鬼のように面倒でな。かと言って調整しなければ、声に抑揚が無さすぎてかなり聞き取りづらいものになっちまうんじゃ」

 

「へぇ、そうなんですか」

 

「まぁ、人形作製に関しては、それぞれの職人のこだわりがモロに出るからな。ワシは顔の造形に全力を注ぐが、他にはそこまで注力せん。関節なんかは服なんかで隠せるし、声だって変に弄るくらいなら、喋らせないでいた方がいいんじゃないかと思っているくらいだしのう」

 

 ふーん、私は人形が綺麗な顔をしているのは当たり前だと思っていたのだけれど、そういう訳ではないんだ。だったら、それぞれの拘りを持つ職人が集まって人形を作ったら、理想のヒトガタが出来るのかしら。

 いや、でも拘りが強すぎたら喧嘩になって結局出来ないかも。

 レイスさんの所にお邪魔していた時間は三十分程だっただろうか。中堅っぽい感じの冒険者グループが防具の相談にやってきたので、退散することにした。

 

「それじゃあレイスさん、私たちはこれで失礼しますね。また今度、よろしくお願いいたします」

 

「お邪魔しましたニャン」

 

「何時でもきてくれ」

 

 外に出た私は鳥籠を抱え直して、最後の用事であるコピアさんの店を目指す。そういえばコピアさん、この前買い物に行った時に、もうちょっと広い空き物件を見つけたから其処に移動するって言ってたっけ。ええっと、移転した場所はどの辺りだって言ってたっけ?

 住んでるわけじゃないから、いまいち疎いのよね、その辺り。

 

「ねぇ、エンス。コピアさん、何処に新しいお店があるって言ってたっけ?」

 

「シルキちゃんが知らないのに、ボクが知るわけないニャン!」

 

 知らない事を誇らしげに言うんじゃないわよ。でも、エンスの言う事ももっともだ、となれば。

 

「じゃあ、広場に行ってみよっか。あそこなら人がいっぱいいるから、訊ねれば教えてくれるだろうし」

 

 くるりと足の向きを変えて、広場に向かう事にした。声を掛けやすそうな人がいればいいなぁ、なんて思っていたら広場では市場が開催されていたようで、かなりの賑わいを見せている。その賑わいの中でも一ヵ所、特に人が多いテントがあった。しかも群がっているのは女の人ばかり、そのくせ冒険者っぽい人や町の住人といった感じで、統一感がない。

 市場のテントは、売っている品物は様々だけれど、大まかに冒険者向け、町の住人向けと別けられている。だから、気になって思わず近寄って覗いてみると。

 

「あ! シルキさんお久しぶりです。お元気でしたか!?」

 

 元気な声で、アフィアちゃんが挨拶をしてくれた、はーん、ってことはこの女の人が集まっている原因は。

 

「あ? シルキ? お前も今日はここに来てたのか。偶然だな」

 

 予想通り、テントの直ぐ近くにはザベル様が立っていた。相変わらずケチの付け所が無いくらい、整った顔をしてらっしゃる。というか、丹精込めて作られたレイスさんの人形の器量よりもいいって凄いことよね、よく考えたら。

 

「こんにちはアフィアちゃん、ザベル様。私はこれからコピアさんの所で買い物ですよ。お二人こそ、ここで商売なんて珍しいですね」

 

「えへへ、お兄様が冒険者さん向けに良さそうな貴石をいっぱい仕入れたので、預かって売りにきました。お駄賃として、売った額の二割を貰えるので、頑張って完売させたいです!」

 

「俺は、宮廷騎士の呼び出しも無かったから、天使の付き添いだ。黙って立ってりゃ人がどんどんよってくるからな」

 

 成る程、アフィアちゃんの客寄せ兼用心棒をしている訳だ。これだけ女の人が集まっているのだから、効果は充分に発揮されているようだし、更に買い物をすればザベル様が一言話しかけてくれる模様。売れないわけがない、アフィアちゃん商売上手ね。

 

「シルキさんも、よかったら見ていって下さいね」

 

「ええ、そうさせてもらうわ」

 

 誘われたのでマジマジと眺めてみる。置かれているのは、イヤリングやペンダントに使えそうなものから、杖の先端や胸元を飾るのに良さそうな大きさの原石だ。大きさだけじゃなく品質も色々揃っているようだから、どんな人の要望にも応えられそうな感じがする。

 この前使い果たしたターコイズが幾つかあったので、それを有るだけ買い込む事にした。

 

「ところでザベル様、『すわ、一大事!』って名前の店が移転したんですけれど、何処にあるかご存知です?」

 

「悪いが知らねぇ、俺がここで足を運ぶのはドワーフの鍛冶屋が主だからな」

 

「ごめんなさい、シルキさん。私もわからないです」

 

 あー、まぁ二人もここの住人じゃないからね、当然か。

 アフィアちゃん達は知らなかったようだけれど、私が買い物している間にエンスが冒険者に訊ねてくれていて、コピアさんの新しい店の所在は無事にゲットすることのとが出来た。

 教えてもらった住所に向かえば、見覚えのある看板が目に飛び込んでくる。確かに、前の店よりも大きいかも。

 

「あら、シルキちゃん。いらっしゃいませ」

 

「い、いらっしゃいませー」

 

 ドアを開ければ、コピアさんと新しい店員のマカエルちゃんが出迎えてくれた。

 

「移転おめでとうございます。広くていい感じですね」

 

「ありがとう。中古物件だから、それ程綺麗じゃないけれど、結構気に入ってるの。これもマカエルちゃんが来てくれたお陰よ」

 

「そ、そんなコピアさん……照れちゃいますよ」

 

 恥ずかしそうに顔を俯かせるマカエルちゃん。店番として雇ったつもりだったようだけれど、どうやら魔導具を作る才能があったらしく、今は職人兼店番で仕事をしているんだとか。売り上げもマカエルちゃんの魔導具のお陰で上々らしく羨ましい限りだ。

 

「でも、店が判って良かったわ。迷うか心配してたの」

 

「あー、いや。自信なかったんで、人に訊いたんです。広場で市が出てて、ザベル様がいて人もいっぱいいたんで丁度よか」

 

「ええ!? ザベル様!?」

 

 途端、マカエルちゃんが声を張り上げた。見れば顔が真っ赤に染まっている、ザベル様のファンなんだ、マカエルちゃん。

 

「あ、あの。コピアさん、私、その」

 

「いいわよ、行ってらっしゃい。そういえば休憩もまだだったし、ゆっくりしてきていいわよ」

 

「ザベル様、貴石の原石売ってるテントにいますよ」

 

「あら、じゃあついでに魔導具の材料も買ってきちゃいなさいよ。其処に買い付け用のお金あるから」

 

「は、はい! ありがとうございますぅ!!」

 

 示された場所から皮袋を取り出すと、一目散に走り出した。うーん、やっぱり人気あるんだ

ザベル様。

 

「好きなんですね、マカエルちゃん」

 

「ええ、レイスさんの所に行った時に見て以来、あんな感じ。見てて楽しいわ」

 

「コピアさんは行かなくていいんですか?」

 

「私は其処までじゃないし。それに、私まで出たら誰がシルキちゃんの相手をするのよ」

 

 そりゃそうだ。

 

「とりあえず、ゆっくり見ていって。広場がそんな調子なら、こっちもしばらくお客さんこないだろうし」

 

「はーい、お言葉に甘えさせてもらいます」

 

「掘り出し物を見つけるニャン」

 

 コピアさんのお墨付きだったので、時間いっぱい使って素材をしこたま買い込む。色々新しい素材も買い込んだから、新作を作るのが楽しみだ。

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