今年観た映画は比較的面白いのが多いので当たりかなーと思ってます。ただしFNAF、テメーはダメだ。
警備員室で爆睡して無事なんておかしいだろうがよぉぉ!
ステリアちゃんに頼まれた物を作る、という意気込みは変わらないものの、名案が思い浮かばないので、計画は頓挫していた。まぁ、一から物を作るとなれば、こんなものだろう。一人で悩んでも進展しないので、アレに話だけしてみる。
「というわけなの。なんか予言とか予知めいたのとかない?」
「う~ん、う~ん?」
地下室に片手鍋を持ってきて、マンドラゴラと貰い物のワインをぶちこんで助言を求めた。まぁ、相談はしてみるもののコイツからいい知恵が出る期待はしていない。ベロベロ状態になっているので、よく取ったとしても酔っ払いの戯言だ。
だけど、この妄言で閃いたことは何度かあるので、ひょっとしたらと淡い期待は拭えない。
「あれ、シーちゃん。エーくんは~?」
「エンスは夕飯に使うソースをどれにするか考えるのに一生懸命だからいないわよ」
「え~ん」
泣き真似をしだすマンドラゴラ。ぶっちゃけると、エンスはアンタの事相当嫌ってるわよ、酒臭いって。事実を言うと、面倒くさそうだから黙ってるけど。
「気を取り直して明日の占い~。シーちゃんのラッキーアイテムはロープ! 畑に蒔くといいことがあるかも!?」
「あー、そう」
やっぱり使い物にならないわ、このマンドラゴラ。
その後、エンスとチョコたちのラッキーアイテムまで言うと、大きないびきをかき始めたので、ワインから取り出してハンカチにくるむ。
やっぱり参考にならなかったか、期待していなかったとはいえ時間泥棒されたみたいで悔しい。
階段を上がって、棚にマンドラゴラを押し込んでいると、足音を聞き付けたのかエンスがやってきた。
「どうしたのエンス、ソース決まった?」
「決まったニャン。シルキちゃんの方はどうニャン?」
「駄目、畑に縄蒔けって言われたわ」
「肥料にもならないニャン。そうだシルキちゃん、ちょっとハーブ摘んできて欲しいんだけど、頼んでもいいかニャン?」
「はいはい。そんなに時間かからないと思うけれど、お客さん来たら対応お願いね」
言われたハーブを収穫しに畑へと向かえば、虫取りの鬼と化したチョコたちと、寂しくないように連れてきたのか、コップの縁にもたれている酒蟲がいた。
「ミャ~~~」
やってくる私に最初に気づいたのは酒蟲、子猫みたいな可愛らしい声を上げながら両腕の肉塊をブンブン振り回して応対する。それに気づくと、チョコたちも狩猟の手を止め顔を上げた。
「こんな時間も虫取りやってくれてるの、ありがとね。何獲れた?」
訊ねれば、隅っこから運んできたのは数匹の青虫とバッタとカマキリ。明日食べる用なのか、糸でグルグル巻きにされている。この辺は蜘蛛っぽいわよねー。
「……糸」
頭の中で何かが閃く。そうだそうだ、糸を使って音を出せる楽器があるじゃない、しかも私、それをフェルクスさんに作ったじゃない!
あー、こんな閃きをくれるなんてやっぱりフェルクスさんて凄いわ。今度村に来たら感謝の意を述べないと。
一つでもヒントがあれば何とかなるもので、朧気ながら頭の中に、試作品の完成図のようなものが浮かび上がってくる。うんうん、こんな形のを作ってみて、そこから改良を加えていけばいいんじゃない?
摘んできたハーブを渡してから、接客しつつデザインを紙に描き込んでおく。仕事を終えて夕飯の頃には、すっかりイメージは出来上がっていたので、明日は特に作るものもないから朝イチで試してみることにしよう。
* * *
次の日、私は細目の薪数本を手にして地下へと降りた。材料を揃えてから、持ってきた薪を曲げてみたりして、しなるヤツを探してみる。ん~、コレかなぁ。
「まぁ、試しに作る物だから、とりあえず形になればいいや」
とりあえず一番グニグニと曲がった枝を手にとって、両端にアラクネの糸をくくりつけて完成だ。見た目は小さな弓、この弦の部分を引っ張って手を離してみる。
「……あんまり音しない」
ビィィィンと延びたような音はするものの、思い浮かべていた音より控え目だ。音出すような道具なんだから、五月蝿い位に響いてもらわないと。
「素直に竪琴を作った方がいいとか? でもステリアちゃん使ったことないっていってたしなぁ」
ついでに言うと、私は竪琴の調律はできない。弦を直したり張り替えたりはしたことあるけれど、最終的な調整はフェルトさんにお願いしている。
「となると、やっぱりこんな感じの音が出る道具にした方がいいのよね」
多分方向性としては、間違ってはないはずだ。課題としては音の出し方と大きさかな、あんまり大きいと、持ち運びに邪魔だろう。それにすぐにしまえた方が、熊や狼なんかとも対峙しやすいし。
次の目標も決まったので、机の上を片付けていると、エンスが呼ぶ声が聞こえてくる。朝食が出来たのだろう、返事をして急いで上へ戻ることにした。
リンゴのキャラメル煮をつついていると、気になったのかエンスが訊ねてくる。
「シルキちゃ~ん、ステリアちゃんのオーダー出来そうニャン?」
「大丈夫じゃない? アラクネの糸と空の木使って作るってとこまでは進んでるから、後は形が決まれば。幸いにも、アドバイスくれる人は沢山いるだろうし」
* * *
「ん~、糸と木材を使った、音を出す道具?」
「はい。出来れば、子供が大して練習しなくても使える玩具のようなものがモアベターなんですけど」
接客中、行商人さんたちへ片っ端から聴き込みだ。行商人さんの中には海を越え「それどこ?」と首を傾げたくなるような場所からやってきて商売をしている人もいるから、面白い話が聞けるかもしれない。
この辺りの人は「うーん」と唸って終わりだったが一人、反応をしてくれた。
「その条件なら口琴とか……かな?」
「こうきん?」
聞いたこと無い単語だなぁ、と視線を泳がせていると、ざっくりとだが教えてくれた。
「雑な説明になるけど、草笛みたいな道具だよ。口に押し当てて音を出すんだ。小さな子供もよく吹いていたから、使い方はそんなに複雑じゃないはずだよ。俺の所では金属で作った奴だから、探してるような奴ではないかもしれないけど、他の地域にも似たようなのはあるだろうから、口琴で訊いてみればいいと思うよ」
「ありがとうございます!」
それから、口琴で質問してみれば返してくれる人がポツポツ出てきてくれた。紙に形を描いてくれたりする人もいて結果。
「ステリアちゃん、頼まれていた呼び寄せる道具、出来たわよ!」
十日程で、望まれていた品を無事に作り出すことができた。
「お! 待ってたよー。どれどれ、どんなの?」
「こんなヤツ」
ゴソゴソとポーチから取り出したのは二本の竹筒。掌程度の大きさなので持ち運びも楽チンの長所しかない道具だ。
「ダンモイっていう口琴を真似してみたの」
というか、教えてくれた行商人さんがちょうど実物を持っていて、拝借して作ったものだから、形はそっくりそのままだったりする。ちょっと面倒な箇所もあったけれど、職人さんにお願いするほど難しい構造はなく、全部自作で済ませられたのは良かった。
「使い方としてはー、まず筒から物を出して」
巻き付けていた糸を外して、筒から口琴を引っ張り出せば、見よう見まねといった風に、ステリアちゃんも同じ行動をとるので、口琴を出したのを確認したら、次の行動に移る。
「んで、この木の部分を唇で挟む」
「歯じゃなくていいんだ?」
「うん、こうやってハムッてするだけで大丈夫」
教えてもらった口琴は、歯で挟むのも多かったけれど、ダンモイは唇で軽く咥えるだけでいい。そのお陰か、音を出すのも簡単で私も数回練習しただけで扱えるようになった、上手いのか下手なのかは分からないけれど。
「んで、咥えたら指でこの部分をこう弾いて」
「んー……おおーれきたれきた」
木の薄い部分を弾くと、ビョオオオンという弦を弾いたような音が辺りに響く。その後、数回やれば私同様にコツを掴んだようで安定して音が出るようになった。
「これで呼べるんだ?」
「多分ね、そこのアラクネの糸の部分に、セイレーンの髪と呼び出したい動物の毛を編み込んで音を出せば、標的にしてる動物にだけ遠くにいても聞こえるようになるみたい。最終的に怒って殴りこんでくるわ」
「怒るんだ?」
「最終的にエンスがキレかけてたから」
ちゃんと有効か、どこまで届くかという検査でエンスの毛を数本使ってやってみたのだ。『アリアドネが繋ぐ糸』を持たせて。しばらくの間は「村長さんの家の前にいるけど音が聞こえるニャン」「お肉屋さんの前でも聞こえるニャン」「橋にきても聞こえるニャン」なんて律儀に返してくれたんだけれどその内に「まだ聞こえるニャン」「まだやるのかニャン」「うるさいニャン」となり最後の紙には「ニャーン!」と殴り書きされていたので止めた。帰ってきたエンスが言うには、村の端っこまできてもビョンビョン耳に響いていたとのこと。
まぁ、これが聞こえるのが使った毛の「種族全般」なのか、「本人」だけなのかという確認まではとれてないから効果ないかもしれないけれど、その時はその時だ。別の方法を考えるか、それすらお手上げなら諦めよう。
「ちなみにこれいくら?」
「うーん……友達割引してこれくらいかな」
「あー、結構するね」
「空の木って板になると高いのよね。枝は安いんだけれど。それも、数回は使えるけど、ずっとは無理だと思う」
「それじゃ気軽には使えないか」
「楽するなってことなのよ、多分」
因みに、ダンモイはちゃんと有効だったけれど、ステリアちゃん曰くブチキレタ熊が二匹やってきて結構大変だったから、普通に探す事にしたらしい。それにしても熊二匹相手に大怪我しないって凄いわね、やっぱ規格外だわ。