ナンシーちゃん強すぎ&可愛すぎぃ!
ゴールデンカムイは土方さんと杉元が好きです。
「ヒカリゴケ……?」
数日後、コピアさんにお店で訊ねれば、平坦なトーンで鸚鵡返しされた。うーん、二年以上前だし一回ポッキリの商品だったからなぁ。思い浮かばくても仕方ない。
「どっかの魔術師の失敗作ってことでコピアさんが買い取った品だったんですよ。誰が作ったとかわかりません?」
「う〜ん」
それでも、根気よく説明すればコピアさんも段々と思い出してくれたようだ。
「あぁ、あの人ね! それならたまに魔導具を卸したりしてくれてるわ。住所知ってるから呼んでみる? ダンジョンに潜ってるかもしれないけれど」
「じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「ん、任せて」
言うやいなや、コピアさんは適当な紙を一枚手にして用件をしたためると、紙を折り始めた。そして翼の部分だけ可動する鳥の形にすると「いってらっしゃい」と掌に乗せる。魔女の魔力が込められた鳥は、バタバタと翼をはためかせると、紙で出来てるとは思えないスピードで窓から飛び出していく。
「便利ですねぇ」
「一時間待っても来なかったら、ダンジョン潜ってる可能性が高いわね」
「分かりました」
その後、エンスを交えながらお喋りで時間を潰していると、例の魔術師の人がやってきた。挨拶をした後「ヒカリゴケについて訊きたい事が」と口にしたら「あー」と苦い顔をする。失敗作だもんね、あんまり思い出したくないんだろう。わかる。
「あれなぁ、売れなかったヤツだろ? 無かったことにしたかったんだが」
「すいません、使われている素材がどうしても気になって」
「ん〜、まぁいいか。アレは普通のコケに俺の光の魔術とドリュアスの根っこを組み込んで作ったんだ」
「ドリュアス?」
初めて耳にする単語だ。お陰でそれが只の植物なのか魔物なのか見当もつかない。だが、コピアさんは知ってたようで説明を引き継いでくれた。
「ドリュアスはダンジョンの十階を越えた辺りから出てくるモンスターだった筈よ。見た目はマンドラゴラを私たちぐらいの大きさにして、もっと可愛らしくした感じかしらね」
「大体、大きな木の近くに隠れていて、冒険者が傍を通ったら木の幹の中に引きずり込もうとしたり、葉っぱや花粉を撒いて攻撃したりするんだ。まぁ、突然現れるから驚くけれど、そこまで深い階層の魔物じゃないから恐れることはないな。実際に木の幹に引きずり込まれたっていう話も聞かないし」
「ほほう」
そんな魔物もいるんだ。でっかくしたマンドラゴラねぇ……ん?
「花粉を撒くって、そのドリュアスって魔物は花があるんですか?」
「あぁ、頭の天辺に握り拳ぐらいの花が咲いてる。種類や色は個々によって違うから統一性はないな。ダンジョンにいる蜂型の魔物が張り付いている時もあって、蜜も採れる。探せば町の何処かでドリュアスの蜂蜜を扱ってる店もみつかるんじゃないか」
「そういえば素材を売りに来た冒険者の人から、何回か採れたての蜂蜜貰った事があったわね。普通の蜂蜜より甘くて美味しかったわよ〜」
ふむふむ、ドリュアスは頭がお花畑で美味い蜜が採れると。でも脅威度が高くないとはいえ、魔物を村に置くのはなぁ。頭だけその辺に転がすとか……いや、それはそれで絵面がグロくなる。
「あの、その花って毟れたりするんですか?」
「ドリュアスの頭花か? 茎の部分があるから、頭部から切り離すのは簡単だが、その後が面倒だぞ」
「と、言うと?」
「ドリュアスの素材は、大量の水がないと直ぐに萎れてしまうんだ。特に頭花は一時間もしない内に駄目になる。逆を言えば、水さえ確保できれば花は何時までも鮮度を保ったままなんだがな。ダンジョンの中で転移魔術を使っても、指定出来る場所は町の中ぐらいだし、そもそも町の中に大量の水がある場所となるとな」
「だから、ドリュアスを素材として使うなら根っこが一番保つのよ。それでもせいぜいが二日だから、売り物として買い取るのはなかなかないわね〜」
ふ〜ん、まぁ欲しいのは頭花だ。運搬の問題さえクリアすれば、理想の花が手に入る。となれば。
「アリアドネをもうちょっと大がかりにすれば行けそうかも」
よし、いつ出来るかはともかく、道筋は見えた。私も美味しい蜂蜜を食べてみたい、村に帰ったら早速アリアドネを改良してみよう。
* * *
そんなこんなで二十日程過ぎて。アリアドネの改良に成功した私は、村長にドリュアスの頭花の話をしてみた。そしてやれそうだと判断した村長は、費用として金貨十八枚をポンと渡してくれた。このお金で、ダンジョンに潜ってくれる冒険者や探索に必要な道具を買えとのこと。ケチケチしないで気前がいいのは、やる側としては本当に助かる。なので、早速ステリアちゃんを誘って空飛ぶ絨毯に乗りダンジョンの町へと向かう。
「ねぇシルキ。別に用事無いからいいんだけれどさー、何で私まで?」
「ん〜用心棒? 物凄い強い魔物じゃあないらしいけど、そこそこの階層潜らないとだから」
一応、十階を越えると脱初心者らしいから、前みたいに着の身着のままで行く所ではないだろう。ちょっとした装備は勿論購入するつもりだが、安心出来る要素は一つでも多い方がいい。熊や狼とタイマン張れるステリアちゃんなら十分やり合えるだろうし。
「それに……村長から今回の件で結構お金貰ったからさ。私の手伝いにかこつけて……狩りの装備一式新調したくない?」
「そういう悪巧み大好き♪ 持つべきものはやっぱ友達だね」
ニヒヒ、と向かい合って笑う。折角貰った金貨十八枚だ、ギリッギリまで有効活用させてもらうことにしよう。
* * *
町に着いて、宿に荷物一式を預けてから、並んで歩きだす。今日で準備を整えて、ダンジョンに行くのは明日、ドリュアスの頭花の採れ具合によっては連泊の可能性もある。うーん、ダンジョンの町にこんなに泊まるのなんて久しぶりかも。
「それで? 最初は何処に行くのさ」
「まずはレイスさんの鍛冶屋かな。ドワーフだから、武器や防具がいいの揃ってそうだし」
「ふ〜ん」
そして、レイスさんの店に行きステリアちゃんを紹介しつつ装備品の事を相談すれば、レイスさんは奥から色々な物を持ってきてくれた。
「弓を扱うのなら、防具は軽くて動きを遮らない革や鱗の胸当てや手甲なんかはどうかね? これはサラマンダーの革で作った奴で、こっちはジャキュラスの鱗で作ったものじゃが」
「へぇ、これ厚みの割には軽くて動きの幅も制限されないからいいですね。うーん、どっちにしようかな」
「弓は、空の木で作った物が一押しだ。軽くて丈夫だから、言うことなしじゃよ」
「わ、本当だ! 弓はこれでお願いします。胸当ては……うぅん」
悩みながらも楽しそうに試着するステリアちゃんの姿に、私もほっこりする。他人の金というのがまたね、いい。
ちょっと離れた所で、二人のやり取りを眺めていると、レイスさんがこっちにも来てくれた。
「シルキさんはどうするつもりかね?」
「防具は、上から羽織れるようなのがいいんですよね。欲を言えば普段着としても使えるようなのがあれば。武器は……私みたいな素人でも振り回せるのがあったら見せてもらいたいかも。一応、黒龍の爪で作ってもらったナイフは持ってきてるんですけどね」
「ふーむ、ローブやマントみたいのは儂は扱っとらんからなぁ。魔術師用の店に行くか……あぁ、コピアさんのトコなら中古がいくつかあるかもしれんから、覗きに行くのもありかもしれんぞ」
おっ、それはいいことを教えてもらった。いつも素材しか見てなかったからな。
「武器なら、このメイスはどうじゃ! 火の巨人の拳で作ったものでな、打ち付けた瞬間に火花が出る仕掛け付きじゃわい! 試作だから、安くしとくぞ」
「じゃあ、それで!」
こうしてステリアちゃんの狩り道具一式、私の火打ちメイスで金貨七枚と銀貨十二枚を支払う。銅貨分はオマケして貰った。金があると安心して無駄遣い出来るから本当に嬉しい。その後、コピアさんのお店に行って事情を話すと「それならコレどう?」と出してくれたのはなんとスノーウルフのケープマント! しかもトグルボタンがムーンストーン製というトンデモ品だ。中古ということで多少汚れはあるものの、状態はかなりいいほうだろう。
「でもお高いんでしょう?」
「今後も贔屓にしてくれるなら、金貨五枚でいいわよ」
「マジですか、こちらこそよろしくお願いします!」
やったぁ! 凄く得した気分!
「良かったニャン。シルキちゃん、ずっーとスノーウルフの防寒具欲しがってたニャンね」
「うん、本当に嬉しい。他人の金で買うってのがまた」
さて、これで準備は整った事だし、今日はもう美味しいもの食べて明日に備えることにしますかね。