いただいたネタに預言書があったので、それをちょいと弄ってみました。
活動報告でまだまだネタは募集してるので、誰かネタ下さい
ドリュアスの頭花は、予想通り鈴糖蜂の蜜集めに最適な花だった。花自体の扱いも簡単で、村の端にあるほぼ利用者がいない泉に、適当に浮かべているだけでいい。マジで綺麗な水があれば、後はどうにでもなるのね。栄養とかどうしてるんだろ。でもそれ言うと、ヒカリゴケもそうか。
村長に無駄遣いを疑われながらも、やることはしっかりやったので、それ以上の追及は飛んでこなかったものの、折角手に入れた火打ちメイスは没収されてしまった。「もうお前使わないだろ。元々俺の金だし」に異論はないが、村長だってあんな物騒な武器使う機会ないでしょうに。嫌な客(滅多に来ないけど)相手に、脅しで使おうと思っていたのにな。
移住と養蜂に貢献したということで、ドリュアスの蜜が欲しい時は優先的に販売してもらえる権利を貰った私は、ご機嫌で家に戻り、ダンジョンの町で買ってきた素材を引っ張り出す。
「さぁて、作るわよ」
「これ何だニャン」
「賢者シリーズよ」
要は空の木で作られた厚紙に、ダンジョンのモンスター「賢者」の体液、魔石で作られたペン先とちょっとお高めのインクだ。
「全然気づかなかったニャン。いつの間に買ったんだニャン」
「あ〜、エンスがコピアさんの店で招き猫してもみくちゃにされている時にちゃちゃっと。結構高かったわよ」
「自腹切ったんだニャン?」
「完全に自分用の品物だからねぇ。その辺はちゃんと別けないと」
村長だってウダウダ言ってきたけれど、全てドリュアスの頭花入手で使う品物だったから、多少の無駄遣いしても咎められることなく、メイスを取り上げられるだけで済んだのだ。これに私物買ったなんてことしたら、全額返金を要求された事だろう。今の村長はそういう所の勘が鋭いから、しっかり別けた方がお得なのだ。
「んで、何を作るんだニャン」
「『知恵の文具』の改造版? みたいなやつ。お店で売る商品じゃなくて、自分用のね」
「ニャーン?」
ダンジョンに潜った時、案内してくれた冒険者グループの魔術師さんがこんな事を教えてくれた。
『道具屋で自作の魔導具も作ってるんですか。だったら、こんなのはどうですかね。冒険者の中では、結構作られていて便利なんですよ』
冒険者さんたちが作るという品はこうだ。まず、なるべく厚めの空の木の紙にダンジョンの地図を出来るだけ詳しく描き込む。その後、『賢者』の体液を紙に染み込みせ保存の魔術をかける。するとその『賢者』の思考が紙に宿るらしく何かを描き込むと、その出来事を記憶していくのだとか。
後は、その地図に何処何処にはこんなモンスターがいたとか、この階層にはこんな宝箱があった、等を書き込んでいくと、実際にその階層に来た時に、出現するモンスターの種類や宝箱から出やすいアイテムなんかを教えてくれるそうだ。
しかも保存の魔術をかけることと、ペン先やインクから魔力が補給される事によって効果が長持ちし、大切に扱えば数十年も使えるようになる為に、怪我なんかで冒険者を引退しても、売れば直ぐに仕事が見つからなくても大丈夫なくらいのお金になってくれるとか。
「どんな悪い事に使うんだニャン」
「人聞きの悪い、私が誤魔化すのは村長だけよ。使い方としては、お店にくるお客さんの数を予想してくれないかな〜って。お客さんこない日が分かれば、その日はお休みにしてもいいじゃない? 休日が増えるわよ」
「いいニャンねぇ」
今でもお客さん来ない時は、結構好き勝手なことしたりしてるけど、やっぱり休みの日は特別なのだ。何やるか考えるだけで楽しくなるし、チョコたちと薬草やハーブ畑で虫退治してから青空の下でご飯食べて本読んで過ごす時は、至福の癒しタイムだ。今の休みが十日に一度くらいだから、七日に一度くらいになったら、最高なんだけれど。
「ボク、なんか手伝うことあるかニャン?」
「いや、一から作るんじゃなくて既製品に手を加えるようなものだから、特にやってもらうことはないかな。でも、することないなら見てれば?」
「そうするニャン」
椅子を持ってきて腰掛けるエンス。酒蟲も興味があるのか水槽から身を乗り出して見ているし、チョコたちも虫取りが終わったのか、糸を使って机をよじ登ってくる。
失敗するような物を作るわけじゃないけど……こんなに注目されるとなんか緊張しちゃうわね。
「何をどうするんだニャン」
「まずは、この空の木でできた紙に賢者の体液を染み込ませるの」
大きめの刷毛があったので、それを体液に浸して紙に薄く塗る。ちなみにこの液体は無色透明だ、脳漿? ってやつらしい。まぁ『賢者』ってのが、でかい頭部に手足つけたようなモンスターらしいからねぇ。杖持ってて魔術が得意らしいとか、ダンジョン内の罠は殆ど『賢者』が作ってるとか、頭良さそうなエピソードはあるけれど、実際の戦闘時は別にモンスター達の司令塔をするわけでは無いらしい。
とりあえず体液を染み込ませたら、破らないよう気をつけながら乾かして様子をみる、と。
「これで終わりかニャン?」
「ううん、一回じゃ弱いから複数回塗らないと駄目らしいから、まだまだやらないとかな」
と、その時良いこと思いついた! という表情でエンスがこんな提案をしてきた。
「シルキちゃん! この体液にマンドラゴラ浸したワイン混ぜるのはどうニャン? マンドラゴラって予言するから予測にきっと効果があるニャン」
「う〜ん? でもワイン浸したハンカチはチャームつくわよ。引っ被ったエンスもそうだったし」
「あー、じゃあ駄目かニャン」
「いや、でもマンドラゴラのエキス使う案は凄くいいわよ。ちょうど作ろうと思ってワインに浸していたからふやけてるだろうし、試してみましょう」
近くに置いたままにした鍋の蓋を開けて、マンドラゴラをむんずと掴むと、やけに怯えた顔をしたマンドラゴラが震え声を出す。
「まってシーちゃん。嘘だよね? 暴力反対」
「ああ、大丈夫。包丁で刻んだりとかはしないわ。ただ、野菜の水切りみたいにギューッて搾るだけだから」
「イーヤー!」
金切り声がマンドラゴラから発せられ、一瞬意識が遠のきそうになるが、なんとか踏みとどまる。
辺りを見回せば、トリュフ以外は気を失ったのか仰向けにひっくり返っている。ヤバ、酒蟲沈んでるじゃない、溺れちゃう!
慌てて水槽から引き出してから、マンドラゴラを睨みつける。
「ちょっと! 引っこ抜いたわけでもないのになんて声出すのよ!」
「だってシーちゃんが怖いこと言うから」
言いながら想像して怖くなったのか、ダラダラと謎の汁がマンドラゴラから迸る。うわ、気持ち悪い。何これ、冷や汗みたいなやつ? ああ、でもこれ使えば絞らなくてもいっか。
「シーちゃん、くすぐったいよー」
「搾られたくなかったら黙ってなさいな」
刷毛でマンドラゴラの表面に噴き出している汁を拭い取って『賢者』の体液に混ぜる。三回ほどやると汁が出なくなったので、マンドラゴラをワインの中に戻してやればその間にトリュフが叩いて起こしてくれたのか、エンスが頭を振りながらやってくる。
「マンドラゴラは臭いだけじゃなくてうるせーニャン」
「私もよろけた瞬間に足の小指ぶつけてなきゃ、ぶっ倒れるところだったわ。さっさと作業終わらせましょう」
「ニャーン」
その後、体液が無くなるまで紙に染み込ませて乾かすを繰り返し、保存の魔術を紙にかける。これで、インクで文字を書き込んで吸い込まれるように消えれば成功したってことらしいけど……ヨシ!
「出来たわよ! 休み増えるといいわね」
「ニャーン!」
* * *
というわけで、私は紙に来客の有無の予測をしてもらうべく、チョコチョコと細かく書き込みを始めた。時間毎に何人来ただけではなく、少しでも予測に役に立つかと天気や温度、風の強さや方角等も分かる範囲で色々と。ついでにお店を閉めた後の夜も、寝る前まで書き込みに勤しんだ。
それを続けて一カ月ほどたった時のこと。
「……んむ?」
紙に文字が浮かび上がったのだ、『午後に急な雨の可能性あり』と。
「こんなに天気がいいのに……?」
だが、紙に書かれた内容の通り、時間が経つに連れてドンドンと黒く重たそうな雲が空を覆っていく。雨は降らなかったものの、何時降ってもおかしくはない状態だった。
その後も『強風注意』とか『晴れのち雨』だとか出てくるように。書き込んだ情報が一カ月程度なので外れることもあるが、そこそこ信用できる。できるのだが。
「まさかお天気予想の紙になるとは」
「予想外だニャン」
人数予想のつもりだったのに。天候の事を、詳しく書き込み過ぎたか。
「まぁ、天気は天気で凄く便利だし、いっか!」
「お洗濯の取り込み時間が分かって助かるニャン!」
結果よければ問題なしと考えよう。
その後、雨が降りそうな予想が出た時はウンディーネの雨避けを勧める事にして、感謝されつつ売上を上げることに成功した。