道具屋さん、始めました   作:飛沫

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多分今年最後の投稿です。

どうでもいい豆知識
神様は、当然ゲーム作製したスタッフたちです。多分会社はどっかに吸収されて、チームも解散しているので続編の可能性は限りなく低くなっています。


宝珠の仕組み

「ほーら、シルキさんがジト目で虚空を見てる。やっぱり言わない方が良かったんじゃない?」

 

「いや、そうは言いましても。私もこの宝珠の秘密を抱えるのは嫌でしたし、同じ秘密を共有出来る相手が欲しかったので」

 

 まぁ、そうだろうよ。私も宝珠の事一人で持つのは嫌だったからエンスとステリアちゃん巻き込んだし。しかし、分かっていてもやはり許せん。オノレジャンダグ、恩を仇で返しやがって。

 

「因みにコレを知っている人間は、今のところシルキさんと村長さんだけですね。今、私の上司が村長さんの元へ赴いて報告しているはずです」

 

 ハハァ、じゃあ今頃村長は泡吹いてぶっ倒れてそうね。それ聞いたらちょっと元気が出てきた。人間、下を見れば元気になる時があるからね。

 

「ハァーッ、本当に余計な事教えてくれましたね。一週間くらい寝つきが悪くなりそうですよ」

 

「あれ、なんか立ち直り早いね」

 

「ん〜、なんかよく考えなくても、私が生きてる間にどうこうなるわけじゃないですかね。子供とかもいないから、残された家族が心配……って事もないですし。あぁ、でもエンスの寿命がどうなのかなぁ」

 

「ボクは人と同じくらい生きるから、問題ないんだニャン!」

 

「そりゃ結構。じゃあ心配するの止めます」

 

「こういう時、人っていいよね。ボクはどうやっても百年以上生きるし」

 

 うん、こういう時だけ人種はいいかも。こういう時だけね。

 

「そうは言っても、別に諦めるつもりはないですけれどね。直してもらうのは凄い職人に任せるとして、私は要望があれば、ウンディーネの素材で色々作ったりしてお手伝いしますよ」

 

「それは助かる。ところでシルキさん、こんな事を訊くのもアレかもだけれど……あの宝珠って、本当にドワーフが作ったの?」

 

「村の伝承では、親切にしたドワーフから礼として設置して貰ったって事になってますけど……問題でもあります?」

 

「いや、見た限りあんな凄いのを作ったドワーフの名前を、ボクたちが知らないってのが違和感あって」

 

「言い伝えによれば何百年も前のものだから、忘れ去られたって可能性は……?」

 

「確かに、その可能性もあるかもしれないけれど……痕跡すら無いのはあり得ないと思うんだよ」

 

「あー、なるほど」

 

 言われてみれば、こんなに凄いのを作ったら名前は知らなくても、作ったドワーフがいたって事を、種族自体が知らないというのは妙か。

 

「コレを作ったドワーフがはぐれものだった……とか」

 

「それなら他にも宝珠のような凄い魔導具が、どこかに存在してもいいと思うんだよね。野垂れ死ぬって可能性も、ドワーフの寿命と頑丈さからは考えにくいし……。例のドワーフが、ここに居着いたって話もないでしょ?」

 

「はい。礼として宝珠を設置して旅を続けたって話ですけど……やっぱり気前が良すぎます?」

 

「うん。感謝の品物としても、言い方悪いけど釣り合わなすぎるんだよね。だからこれ、実はドワーフじゃなくて神様が置いた物じゃないかなぁ」

 

「『いなくなった神様』ですか」

 

 この世界を作ったのは神様だが、肝心の神様はここにはいない。どうやら、他にも沢山の世界を作らないとだったようで、この世界を作ったら自分の代わりに八体の大精霊と、天使たちを作って世界を任せるようにしたそうだ。んで、神様程の力を持たない大精霊たちは、世界を維持するのが精一杯だったので、魔王みたいな規格外な存在が現れたら対応出来ず、英雄達が討伐することになったとか。まぁ、腐っても大精霊、直接手伝えない代わりに、手厚い加護や能力向上などは施したらしいけどね。

 

「悔しいけど調べた結果、凄腕のドワーフでも作れそうな物じゃないんだよね。だから、神様にぶん投げた方がしっくりくるというか」

 

「だから、早めの修復じゃないと直せないってわけですか」

 

「うん。宝珠がジオデシック多面体だからね」

 

「なんですか? それ」

 

 初めて聞いた言葉だ。単語を聞いても想像が出来ない。

 

「ボクもあんなの初めてみてちょっと感動したんだけれどね。あ、説明するから紙もらってもいい?」

 

「どうぞどうぞ」

 

 裏が比較的綺麗な紙を差し出せば、マカナナさんが絵を描き始めた。おおー、ドワーフって絵も上手いのか、羨ましい。

 

「さっきも言ったけれど、あの宝珠はジオデシック多面体って言って、正三角形を組み合わせて球体にしている立方体なんだ。一応、三十二面体という物から、球体っぽく見えるんだけれど、あの宝珠は限りなく球体に近いから多分千以上の正三角形を組み合わせてると思う」

 

「へぇ、凄い」

 

 それはかなり気の遠くなる作業になりそうだ。私だったら絶対に嫌になる。

 

「想像も含まれるけれど、魔石を元に加工して作られた水を生み出すコアが中にある。そのコアを包んでいるのがジオデシック多面体。仕組みとしては、コアの魔力をジオデシック多面体の面で反射させながら増幅させて、ほぼ魔力を使わずに水を半永久的に生み出すってどんでもない事を実現してるの。宝珠が真珠みたいに輝いてるのも、中で魔力が反射してるからだね」

 

「ちょ、ちょい待って。中で水を作り出すって……そんな事をしたら普通破裂しません? その辺はどうやって解決を?」

 

「それも、多面体のお陰。継ぎ目から水だけが漏れ出すようになってる。どうやってそんな仕掛けが出来てるかまでは分からないけど!」

 

「はえ〜すっごい」

 

 そりゃ神様が作った物、ってなるのも納得だわ。

 

「今回調べて、傷が付いてるのは多面体の方。コアだったら詰んでたかも。加工の仕方が未知数すぎて、複製できなそうだし」

 

 マカナナさんが、ペンで傷があるであろう場所に印をつける。三箇所……多いのか少ないのか分かんない。

 

「それぞれの面が独立してるから、小さい傷ならその面を外して修理することは可能、寧ろ円よりも修理しやすいかもしれない。けれど傷が広がると、傷の面全部が割れて一気に剥がれる。その状態にまでなっちゃうと、千面が細かすぎて修復は不可能って感じ。かなり強固だし面の数が多いから、半分近く壊れても稼働はするけれど、修理が出来なくなるってのはそれが理由なんだ」

 

「成程、とにかく凄くて時間がないってのは分かりました」

 

「ニャーン」

 

 三分の二くらいしか理解出来てないけれど、とりあえず頷いておく。因みにエンスはかろうじて話を聞いているけれど、チョコとトリュフは飽きたのか、酒蠱をグラスに入れるとどこかへ連れて出てしまった。うん、まあ関係ないもんね。

 

「修理は……ボクでは難しそうだから、師匠に連絡を入れてもらってお願いしてみる。幸い今いる場所も分かったしね。ただ、もう一つ気になる点があって、この多面体が作られている素材がよく分からないんだ。見た感じ鉱石なのは間違いないんだけれど……。師匠なら知ってるかなあ、でもあんまり師匠に頼ってばっかもアレだし、もうちょっと資料とか調べて探ってみるつもり」

 

「んー、私はその辺はあんまり役に立ちそうにないので、よろしくお願いします」

 

 魔物の素材は多少詳しいつもりでいるけれど、鉱石類は宝石の名前ぐらいしか分からないしなぁ。

 ま、その内村長が虚ろな目で愚痴を言いに来るかもしれないからその相手をしつつ、レイスさんが来た時用に美味しいものでも準備してようか。

 そんな話をしていたら、すっかり遅くなってお昼になっちゃったから、そのまま上がってもらってチーズと蜂蜜パンを振る舞うことにする。マカナナさんは蜂蜜が美味しいと喜んでくれたし、ジャンダグさんは二枚平らげた後に持ち込んでいた大きな弁当箱を食べて、一時的にだが満足してくれた。

 食べ終わる頃にチョコ達が戻ってきたから、マカナナさんにも酒蠱のお酒を勧めたら「いや、酔わないとしても仕事中は……」と断られてしまった。えー、ジャンダグさんなんかがぶ飲みしてるし、仕事中だからこそ美味しいのになぁ。勿体ない。

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