GGOで凸砂する   作:MKeepr

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ハンドガンナイフ縛りとかいう凸砂より修羅の道

誤字修正いたしました


第一回BoB:武士の一分グレネード

 「闇風が、やられた……だと?」

 

 サテライトスキャンを眺めながら凸侍は独り言を呟いた。勝手にではあるが終生のライバルに認定している闇風が消えてもの悲しい気分になった凸侍はスプリングフィールドを構え直しサテライトスキャンで判明した名前を呟く。

 

「サトライザー、俺のライバルを倒した天誅を下してやる」

 

 まさか天に代わって誅罰を下すのではなく天から笑いの神が降りてくるとはこの時の凸侍は思っていなかった。

 当世具足のような防弾チョッキを揺らしながらとりあえず部屋に立てこもった奴へプラズマグレネードをプレゼントした。芋は良くない。

 ただどこからか流れてきたAGI万能論のせいか大会出場者皆が足が速くて難儀しているので楽に倒せて逆にありがたくもある。

 部屋の内で死体がデッドのアイコンを点灯させているのを確認し息を吐く。

 

「ダイングメッセージ……いやうんふざけてないで真面目にやろう」

 

 サテライトスキャンの際に生きていた光点の残り二つはゼクシードとサトライザー、距離が近かったろうし潰しあってくれているだろう。

 

「そういえばゼクシードの奴、人の銃を指してAGI型に擦らせることもできない産廃銃呼ばわりしてやがったな」

 

 ゼクシードが勝ってたらお前が産廃以下と証明してやる等と意気込みながら消費したプラズマグレネードを右足太股に巻いたベルトにつけ足す。

 その上部の腰のベルトにはホルスターに入った拳銃が下げられていた。いまだに一回も使ったことのないリボルバー、M29だ。44マグナムとも呼ばれる銃で早撃ちカスタムを施した一品だ。全部スプリングフィールドで足りてるので無用の長物と化しているが。

 次のスキャンまで身を潜め、状況確認をする。

 

「しっかしサトライザーって誰だ? 噂にも聞いたことないんだが」

 

 カメラが寄ってきたので地面に棒で『スナイパー最強』と書いてどや顔する。観戦者のみなさんがお前狙撃一回もしてないだろとツッコミを入れまくっているのが聞こえないのは凸侍には幸いか、サテライトスキャンが開始される。

 

「なんじゃこりゃ?」

 

 ゼクシードが死んでたのはいいザマアミロと思った凸侍だが、生き残ったサトライザーのいる光点の位置が不可解だ。

 障害物のない広場のど真ん中にスキャン中動かず表示され続けていた。

 

「どう考えても釣りだよな」

 

 広場から少し離れた場所には森林地帯がある。広場を囮にしてそちらから撃つ作戦か。しかし、初っ端のスキャンならまだしももう一対一だ。釣られるバカは居ない。

 

 

 

 

 

「うわまじかよ」

 

 さらに十五分が経ってもサトライザーは動かず、試しに森林地帯までやって来て覗いてみたら広場ど真ん中で仁王立ちである。

 丁度背中を向けておりこれは撃つしかないなと構え、撃つ。

 普通にサトライザーの先の地面に着弾した。

 驚くことなかれ、この時の凸侍、DEX初期値。バレットサークルが縮小しきってても6倍スコープではサークルから相手がはみ出すのである。

 サトライザーは別段驚いた様子もなくナイフとハンドガンを取り出し肩を竦めた。

 

「なんだこいつナメプか!?」

 

 客観的に装備で見れば初弾を当てなかった時点でお前がいうなだが当たらなかったのだから仕方ない。AGIとSTRばかりにステータスを振っているのが悪い。

 当たらないので森から飛び出し広場に走り出す。下手な鉄砲数打ちゃ当たるに則り撃ちまくるが命中しそうな弾は易々と回避され逆にサトライザーのハンドガンの玉がビシビシと凸侍の当世具足風防弾チョッキに当たる。

 残り30m、ここで大きくサトライザーが動いた。身を低く折り予測線と同時襲来する弾丸を回避すると一足に凸侍の首にナイフを振った。

 凸侍は危ういところでスプリングフィールドで防ぎ、逆に銃剣を利用して足払いを行う。

 驚いたように下がったサトライザーにどや顔する。

 

「へへ、元薙刀部嘗めんなよ!」

 

 サトライザーはなに言ってるんだと言わんばかりに首をかしげた。観戦しているみんなも音は拾ってないのでなに言ってるんだと思った。

 再びの疾走、銃剣と射撃を併せ迎撃する凸侍だが、異常な身のこなしと勘の良さで懐に潜り込み、合気道のような技でスプリングフィールドを上空へ弾き飛ばした。

 無手となった凸侍が咄嗟に後ろに跳ぶが読んでいたと言わんばかりにハンドガンとナイフで徐々に凸侍のHPを削っていく。凸侍をなぶり殺しにする気なのかもしれない。

 

「んにゃろ!」

 

 無手ではどうしようもないと44マグナムを引き抜こうとした腕をサトライザーが押さえ込み、逆手のナイフが凸侍の首を狙った。

 この時、運命のいたずらが起きた。

 笑いの神が舞い降りたのはサトライザーか凸侍か、それとも両方か。卓越した動きを持つサトライザーでなければ発生し得なかっただろう。

 ところで、プラズマグレネードには誘爆条件がある。プラズマグレネードはプラズマグレネードの爆発に連鎖して誘爆する以外にも、弾丸による衝撃でも誘爆する。対物弾である.50BMGはもちろん低威力で知られる22LR弾でも至近距離で当たったなら誘爆する。

 そうして別の話題だがM29は早撃ち仕様である。引き金にちょっとでも触れただけで発射されるレベルの。引き金を引かない限りゲームゆえ暴発の危険がなく、撃鉄もへたれることもないので起こしっ放しだ。

 さらに海外のガンマンが早撃ちの練習をしていてよく起こる事故も紹介しよう。

 ファッキンショットマイセルフである。

 

 閑話休題

 

 腕を押さえられたことで引き抜けなかったが、指は引き金にかかっていた。放たれる44マグナム弾はホルスターを突き抜け、その下にある二つのプラズマグレネードの内一つに直撃した。

 

プラズマの奔流が広場の真ん中を満たす。もう一発のほうも誘爆したのか本来の二倍の時間広場を焼き、それが収まった後に残ったのはこんがり焼けるどころか粉々になった凸侍とサトライザーだった物だった。

 粉々の状態からゆっくり人型に戻って二人とも仲良く頭にdeadのタグを点灯させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのままでは負ける、ならば武士の一分として相討ちに持ち込みたかった」

 

 後に遠い目でインタビューでそう答えた凸侍。

 その後二度とプラズマグレネードとハンドガンを持つことはなかった。

 ガンゲイルオンラインにおいては第一回の大会は爆発オチになるというジンクスと武士の一分グレネードという謎ワードが生まれた瞬間であった。




真面目に勝つビションが浮かばないサトライザーさんには笑いの神に降臨してもらうしかなかった。

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