前回の続きです。よろしくお願いします。
相変わらず主人公は不在です(白目)
誤字修正いいいい(狙撃される)
「な、何だこりゃあああああ!」
「うひゃああああああっ!!」
「「ジャングルだ……!」」
「森は燃やさなくちゃ……」
「……流石にこの場所で狙撃銃は厳しいな」
荒涼たる世界からドーム内の通路を抜けた先は、一面の緑。とても生命力あふれる空間を目の前にしたLFTY。それぞれが感嘆とうわ言と状況分析をつぶやく先は、青空が照らす南国の世界であった。おそらくはバイオスフィアのなれの果てような物なのだろう。
視界は5mから30m程度しかなく、狙撃銃には厳しい場所であった。とりあえずポンチョを取り出し目立つ色だったピンクをレンが隠す。
そんな南国感あふれる空間にドピンク少女とグレネード少女、暑そうな黒男二人がどうするか作戦会議を始める。
「中には三チーム、しかし銃撃戦の音が聞こえないのは妙……」
「えっなんで俺に銃渡すの今回お前が狙撃手やるんだろ」
「……この状況で普段の二倍以上の過重ペナルティを受けてお前みたいに銃を振り回せとでも?」
「正直すまんかった」
ヤーさんが押し付けた対物ライフルをストレージに格納する。逆に二丁拳銃のように持っていたMP7を一つ渡し、100発ドラムマガジンをボトボトと3つストレージから出してヤーさんに渡していく。サプレッサーも受け取り、ヤーさんはねじ切りを回して銃口に取り付けていく。
「うへぇ、ストレージが銃と弾薬でパンパンだよぉ」
「やめてっ! 私に乱暴する気でしょうグレネードみたいに! グレネードみたいにっ!」
「…………」
「やめてそんな目で見ないでメットで見えないけど」
「悪乗りしてごめんヤーさん」
「よし! これだったら気づかれず抜けられるかもしれない!」
フカ次郎とトーさんがヤーさんに土下座している脇、レンが思いついた作戦を提案する。
「分かった! これ罠だ!」
バレットラインを利用した直進の途中、突然始まった銃撃の演奏会にレンが違和感を感じ、原因を感じ取ったレンは右角度に向きをずらしながら進行することを決定する。残念ながら演奏を聴いている余裕はない。
ちなみに陣形はインペリアルクロス風である。バレットラインを利用しレンを先頭にフカ次郎がそれを追う、そして左右にヤーさんとトーさんが配置されてフカ次郎の脇を固めるような動きだ。ちなみに男二人にはレンのバレットラインのアシストが無いがどうやってついてきているかはレンには理解不能であった。
「フカ! 30m減らして撃って!!」
突然の叫びにフカ次郎がグレネードを発射する。レンと敵がカチあったのである。レンが撃たれる前に着弾し、驚いた敵4人を即座にハチの巣にする。
「レン? 大丈夫?」
「無傷マガジン半分敵四人援護ありがとうこっち来れる??」
「うんうんいけそうっふやああああ!?」
一口ですべて言ったレンにフカ次郎が応えていると、それが悲鳴に変わり少し離れた所で発砲音が再び響き始めた。
「うひゃああ撃たれてるっ! ライン飛んできてるっ! なんか窪み落っこちた!」
レンは発砲の音源から三方向に分かれてこちらを囲い込んで来ようとしているのが分かった。
「左右お願いします! ごめんフカ! 耐えて!」
「ええええまってぇ!むり掠った怖いいいい!」
「……少し我慢してくれ」
「フカちゃんは犠牲になったのだ……」
「ヤダー! 犠牲になりたくないー!」
レンが発砲音を頼りに駆けていくと演奏団であった4人がフカの居る方向に向け制圧射撃を行っている。それを回り込むようにしてサプレッサーを取り付けたP90で撃ち抜きすぐさま絶命させた。4つの【dead】が浮かぶ。全員頭がダメージエフェクトで真っ赤である。
「殺した4!」
「おっとすまんねこっちも5」
「……5だ」
レンの4の叫びから、最初雨あられの様だったバレットラインが徐々に減り、ヤーさんの5の声以降、再び静寂が訪れた。
見ればフカ次郎から離れた50mほどの所で【dead】のマーカーが4と5ずつ浮いていており、フカ次郎を中心とした半径50m圏内は死屍累々のありさまだった。くぼみに落っこちていたフカ次郎を中心にまるで水の字を書くように草が弾丸で薙ぎ払われ除草されている様は、くぼみが無ければフカ次郎が死んでいたことを表していた。
「全滅だと思うけれど、一応数数えておくね」
直進性で結構見晴らしの良くなった空間でレンが【dead】数えていくが、13しかない。
「おや? さっきの報告の合計だと14のはずじゃない?」
レンが気付いて腰の拳銃を抜くと、4mあたりで折り重なったように死んでいる死体にぶっ放した。かなり練習したが反動で腕が思いっきり跳ねあがる。
本来死体は破壊不能オブジェクトとして撃たれてもエフェクトがでるだけだ。
「あいだっ!!」
しかしレンが撃った死体は断末魔をあげると吹っ飛んで【dead】を点灯させるのだった。その顔はとてもイケメンであった。
「……トーさんのやった所だぞ」
「すまん威力が慣れない銃でな」
「それは確かに……」
レンが遠い目をした。
「で、どうする? たぶん外の二チームのうち……たぶんSHINCは入ってくるだろうが」
「その心は?」
「あいつら室内戦好きでリスクとるの嫌いだから。特にデヴィット。ただでさえ前回優勝のレンに正体不明の3人が居るジャングル地帯、しかも近くにSHINCが居るのにわざわざ入ってこないよ」
じゃあ、と今後の作戦方針をレンが決定する。
「SHINCとは再戦の約束があるんですが、出来れば今戦闘は避けたいです。やるなら最後、先に確実にピトさんぶっ殺したい」
「確かに、今ここで決着をって雰囲気でもないね」
AGI型の脚力で思わず飛び跳ねてしまったレンが背後を見ると三つ編みアマゾネスのエヴァが茂みから現れた。バレットラインがレン以外を射抜くように現れ、トーさんヤーさんフカ次郎が両手をあげる。
姿を現したのはSHINCの面々だ。
「ごきげんようチビ助、どうして戦闘できないんだい?」
「えっその、詳しく理由はいえないんだけれど今はズルしててそれでSHINCと戦うのは真っ向勝負と違くて……」
「いやねー、ピトフーイさんをレンが倒さないと、大変なことになるのさー。SJ2優勝できずに死ぬと、リアルでも死んじゃうんだって。唯一レンがそれを止められるってわけ」
両手をあげるのをやめいつもの調子に戻ったフカが、レンの隣にやってきてネタバレをする。
あっさりばらしたフカにピンクを上回る勢いで赤くなったレンの後ろ、フルフェイスで顔の見えない男たちが、小さく頷きました。
「すまないな、レンを信用してやってくれ」
男二人はメットを外さないものの頭を下げた。
その声に何故かトーマとアンナが吹き出しかけたがギリギリのところで堪え空気を壊さないようにする。
レンとエヴァが握手すると丁度サテライトスキャンのタイミングだった。
二つのチームはもう既に戦闘態勢を解きつつ、AW50を持ったヤーさんとPP19を持ったターニャ、ドラグノフを持つアンナが周囲を警戒している。
南西からゆっくりスキャンが開始され、端末に映し出されていく。タッチをしまくって急かしながら北東のPM4の光点を真っ先にタッチし、生きているのを確認して安どのため息を吐いた。
他には中央西の森にMMTMと少し離れた位置にKKHC、北部丘陵地帯にはZEMAL、そうして北西壁際にT-Sというチーム。LFTYとSHINCを含め7チームが残っていた。
その脇でトーさんがストレージからポンポンレン用の50発マガジンを出してフカ次郎がレンの腰のマガジンケースに格納する作業をしていた。エヴァはその様子を二度見したが見なかったことにして、見栄を切る。
「互いに最後の殺し合い、そのお膳立てをさせてもらわないとね」
「この二チームなら絶対最期まで残って殺し合いだよ!」
レンとエヴァが再びがっちり握手をして別れる。
SHINCは行動方針に従って、エヴァを主導として北へドームを抜ける為走り去っていく。
「よし! ピトさんぶっ殺す!」
「「ぶっころーす!」」
元気よくドームを抜けるLFTYだった。
「レンちゃん怖い、しかしうん」
「ピトフーイもヤバい、しかしうん」
「かわいい子と美人」
「可愛い怖い子が美人ヤバイ人の所に向けて進行を続ける、これは実質告白では?」
「最近は大会でキマシタワーが建築されるのはやってんの??」
「おっ謎の光剣使いとシノンちゃんのキマシタワーとツインタワーブリッジ!?」
「何言ってんだお前らとりあえずレンちゃん攻めかな」
「オオン!? ピトフーイが攻めだろ長身美人攻め」
「オオン!!? 鬼畜レンちゃんがピトフーイにあんなことやこんなことを●●●!!」
「オンオンオン!!?!?」
「うわーやめろ撃つなー!!」
「誰だ撃ち始めた奴は!!」
「わー!!」
「ギャー!!」
酒場ではレンちゃん怖いからピトフーイヤバいとなっていたところにレンちゃんのチームすげえ! が乱入し、状況確認と大騒ぎで酒場は大混乱に陥った。結果的にレン×ピトかピト×レンかという論争が勃発、酒場で次の戦闘が発生するまでの間効かない銃撃戦が繰り広げられることとなった。
一方その少し前――――――
「うわぁ……」
「やっぱりああいうのいっぱいいるんだなぁ」
「アレを倒すにはまず、状況を整えないと無理だな」
ピトフーイ達の虐殺劇を遠距離から見ていたKKHCは転進を決定していた。アレは強大なヒグマに匹敵する代物だ。
倒すならばまず周りをうろつく狼たちを駆除しなければならない。狙撃も射程的には負けている故に分散して多方向から狙わなければ返り討ちに合うだろう。
そう決めたKKHCは丁度PM4と戦った場合背後になってしまう方角に居たMMTMに狙いを定めた。
林を抜けて北にすすみ、マップ中央やや東よりの森に陣地を構築し、MMTMを待つ。正面には駐車されたハンヴィー、第一回SJを見ていたシャーリーの言葉から、MMTMは乗り物を確保する癖があるのではという推測からの待ち伏せだ。
狩人達は待つ。MMTMにその名の通り死を思い出させるために。
人手が居るっていうのは強さですよね。一人だと対処不能でも複数人居れば割とすぐ何とかなるのは良くあること。
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