GGOで凸砂する   作:MKeepr

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誤字報告ありがとうございます!


今日も凸砂のするからよ、だから止まるんじゃねえぞ……

 荒涼たる大地、吹きすさぶ砂は汚染された毒を孕み一切の植物の生存を許さない。毒はそこで暮らす生物たちに蓄積され、異形へと変化させる。細菌さえほぼ残らない、毒の無菌空間にして異形生物達の蟲毒。赤い光に照らされる砂漠はそういうところである。あと正体不明のPKプレイヤーが定期的に出る恐怖の場所でもある。

 

「あったんね」

 

 爆発のような発砲音で射出された.50BMGは狙い過ち当たらない。コッキングで排出された薬莢が砂に落ちると、砂に跡だけ残しポリゴンになって消える。すでに何個も薬莢が落ちたような跡がある。

 

「あったんね!」

 

 砂漠で対物狙撃銃を伏せながら発砲しまくっている男がいた。凸侍である。狙うは500m先で優雅に砂漠浴を楽しむ蠍の上半身にムカデの胴体をくっつけたようなキモイ生物である。名前は『火星の王』。成る程赤く照らされる砂漠を火星の赤に見立てているのだろう。

 

「あたった!」

 

 そのムカデの節足の一つが.50BMGにもぎ取られ悲鳴、いや咆哮をあげた。蚊の羽音を拡声器で撒き散らしたような不快な鳴き声をあげながら、攻撃者である凸侍に狙いを定める。ムカデの名の通りの莫大な数の足が巨体を砂に埋没させることなく高速で凸侍の方に迫る。やっと当たった凸侍は小躍りである。最近DEXも上がってきたのである。

 

「ウヒョー! やっと当たった! 次当たんなかったら殴り込むところだった!」

 

 突進してくるムカデを前に凸侍は余裕綽々だ。だが正面から見れば大型トラックが突っ込んで来ているようでかなり恐い。

 小躍りする凸侍の余裕などしらないとばかりに全力疾走する火星の王が残り100mを切った辺りで、水面を切るように進んでいたムカデ胴の前方で大爆発が発生し前部の節足を吹き飛ばす。前方部の足を失ったムカデ部分は後部側に押される形でつんのめり、くねり上に持ち上がっていた蠍部分を地面に叩きつける。

 

「やっぱりモブは楽だなあ」

 

 体力の量は莫大だが火星の王は罠を警戒するという発想がない。ヘイトを一番稼いだキャラクターに全力攻撃するのみだ。初期攻略時は突進でAGI型以外が轢かれて全滅する惨事が多発したが、今は複数人での攻略法が確立されている。凸侍は一人だが。

 ボルトアクションで薬莢を排出しつつ地面に落ちた蠍部に飛び乗り頭の部分を撃ち抜く。さらに光剣を形成して蠍の尾の部分を切り落とした。

 転倒状態から復活した火星の王からの最大ヘイトを凸侍が受ける。動作として上に乗ったキャラクターに対するヘイトが最大になるように設定されており、ここでパーティプレイならAGI型が飛び降りてヘイトを維持しつつ逃げ回り、その隙に光学銃なりなんなりで倒すのが定石だ。

 が、飛び降りない。すると乗っている凸侍を振り落とそうと体をねじり回転を始めた。たま転がしの上を走るように上に乗ったままでいると、本来は回転が終わると蠍の尾からビームが撒き散らされるはずなのだが、尾はすでにない。

 故に4秒程度の空白の時間が発生する。それを待ってましたと言わんばかりに光剣を形成したまま銃を下、つまり火星の王に向け撃つ。接射と光剣が突き刺さったことによるダメージが火星の王の体力を削っていく。そのまま頭から胴に走り出した。

 50mはあるムカデ部分を走破するのに凸侍であれば4秒で十二分だ。

 対物弾の衝撃を高STRで抑え光剣を刺したまま頭から尾までを切断する。尾に到達する頃にはもう火星の王の体力はゼロになっていた。

 そうして表示されるドロップ品の中に目当てのものを見つけると凸侍はガッツポーズをした。

 

「とったどー!」

 

 喜んでばかりもいられないとさっさとグロッケンに戻る凸侍であった。

 そして目立つ大暴れをしていたので寄ってきていたハイエナはいつも通り人狩りしていたピンクの餌食になっていた。合掌。

 

 

 第三回、第四回と順当に順位を落としていた。ついでになんか変な奴らに襲われ車にひかれる失態を犯した。なんか侍仲間と再会できたのは良かったが、それはそれこれはこれである。つまり自身を強化する必要がある。

 先程の火星の王との戦闘開始も普段の突撃を抑えて搦め手を使う練習である。あと必要な素材があのモンスターからドロップするといった事情もある。大学の単位が少しやばかったが何とかクリアしたので憂いなくゲームできると言うものだ。

 

『やあ、君! その手にあるのは光学増幅器Τ型ではないか!? ぜひそれを譲ってくれ! 礼にお前のコガラスマルを最強の状態にしてやる!』

 

「あ、ハイハイお願いね」

 

 コンソールでイエスを選択すると素材が渡され銃剣としてくっついているコガラスマルをAW50ごと持っていく。どう見てもAW50が無いような動きで科学者がコガラスマルを持っていく。バグか。

 

『見ろ! 完成したぞ! これこそコガラスマルG9Xだ!』

 

「おおバグってるバグってる。スクショ撮って運営に送っておこ」

 

 銃剣として装着されてるのを無視して持つNPCに変な笑いが出そうになる凸侍であったが、バグ報告は大事なのでスクショを撮っておく。

 

「で、肝心の何が変わったんだ?」

 

『よくぞ聞いてくれた! バッテリー容量が増加し単純に出力と稼働時間が伸びた! 形成できる刀身の長さも伸びた! そしてビームガンとしても使用可能になったぞ! 柄の部分を回して切り替えればビームガンになる!』

 

 受け取ってとりあえず刀身を形成すると、以前より出力がありそうな感じて時折刀身からバリバリと雷みたいなエフェクトが出ている。そして長さが倍くらいあるこれはいい、ちょっとかっこいいではないか。ただ柄を回して切り替えるの無理では? と凸侍は思った。フォアグリップよりかなり先の方にくっついているのである。

 

『ちなみにビームガンは光学防御フィールドに霧散させられるから気を付けるのじゃぞ!』

 

「言うのおっそいわ!?」

 

 強化内容が思ったより微妙であった。武器説明文通りの性能になっただけだった。ビームガン撃つならそのままAW50撃った方が強い。

 火星の王がポップする度に倒してた苦労を返してほしい。他にドロップしたサブマシンガンやらなんやらを売って防弾服の性能を上げるかAW50を強化でもするかとショップに繰り出し店主に売り付ける。

 今月の接続料は余裕をもって確保できそうで、さらにAW50もチタン仕様に改造もできるらしいが、そこはどうするか少し悩む。重量が減るのはいいが全長が少し変わるのが使用感が変わってしまわないか悩ましいところである。スプリングフィールドの時はものが違いすぎて逆に楽だったのだが。

 しかし、とりあえずボスモブ独占やめろのファンメールが飛んでくる前に素材がドロップして本当に良かったと思う凸侍だった。

 視界の端でメールが届いたアイコンが出た。コンソールを開くとKKHCのリーダーからだった。チャットグループがあるのにわざわざメッセージにする意味はあるのだろうか、と凸侍は思ったが、KKHCからするとチャットにはライバルとも言えるSHINCやPM4のメンバーもいるのでKKHCからすると意味がある。

 

『凸侍さん、今度第三回SJの為、凸砂の練習をさせてください』

 

『マジか いいよお!』

 

 KKHCからそんなメッセージが来たので快諾した。神速の返信だった。そう言えばレンもリベンジの為特訓を続けてると言っていたし、ついでに呼ぶのもありか、等と考えながら他に誰かやるか善意で聞こうと『全GGO砂の会』にチャットを打ち込み始めるのだった 。

 

「…………んん?」

 

『凸侍さんがグループ名を全GGO凸砂の会に変更しました』




コガラスマルG9X
マッドサイエンティストが改造し真の性能を引き出したコガラスマル。必要素材の要求に対して性能がそうでもない。それでも光剣のなかでは上位に位置するレアな武器である。ビームガンとしても機能するので光剣縛りをするならよだれの垂れる逸品だが光学防御フィールドで防がれるので直接ダメージを与えるのは厳しい。

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