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「ヒャッハー! 騎兵隊だー!」
「……無駄口を叩いてる場合か?」
戦車と戦車の隙間を縫うように二人の男が高速で疾走していた。現状十五人の中で単純ステータスで最速の二人、凸侍と闇風である。それを見下ろす丘の上には獅子王、機関銃を設置し簡易的な防盾を設置。トーチカに向け牽制射撃を敢行している。
他はゆっくり安全に戦車の遮蔽をしっかり使いながら移動している。三人とも流石本戦出場というだけありスムーズに進行していく。
「おっなんか踏んだ」
疾走の勢いと高速でシャカシャカと回る足で気づけるのは流石であるが、そのシャカシャカした足に踏まれる地雷は気の毒であった。
踏んで少ししてからしてポンッとジャンピング地雷が跳ねあがる。しかし跳ね上がり破裂した時には既に凸侍は加害範囲から走り去ってしまっていた。
『大丈夫か? なにが起きた?』
戦車をカバーにした影から夏侯惇が通信を寄越してくる。
「地雷だな、普通の踏んだら即爆発だったらヤバかったなって」
あまり大量に仕掛けられているわけではないのと速力でゴリ押せるので気にせず進んでいるが、大人数で行くなら非常に邪魔なので処理は視野に入れておくべきだろう。
後方、凸侍が踏んで跳ねあげられた地雷を闇風が躱し、左に大きくそれた。
速力の高い二人でもこういうことが起きるので全処理してしまうのが一番である。
『凸侍、塀の上に二人出た!』
走りながら上を見ればこちらを狙っているNPCが居た。バレットラインが照射されてくることからおそらくはアサルトライフルであった。凸侍の持つ端末がピロン、と鳴ったがそれどころではない。
避けた先に着弾し地面が小さく弾ける。
「ちっ」
正確な偏差撃ちで進行方向をガッツリふさがれた凸侍が跳ね飛びバレットラインを飛び越し前転で衝撃を殺しつつ着地、左右ジグザグにバレットラインを避けながら門へと接近していく。
『ダイン! 凸キチと闇風を援護しろ! 撃たせるな!』
『分かってるよ!』
闇風は避けながら短機関銃を撒いているが、射程の関係で加害できるだけの威力はなく牽制にもなっていない。獅子王は狙撃を警戒したトーチカへの制圧射撃の為二人の援護はできないので、共にアサルトライフル使いのダインと夏侯惇がそれぞれ援護射撃を行う。
「フゥー! あったんね!」
凸侍も走りつつ塀の上の敵を狙い撃つが、引き金を引いた瞬間さっさと陰に引っ込んでしまう。そもそもこの距離を走りながら当てるのは無謀きわまる。
壁に直撃した弾は大きく罅と窪みを生み出すが貫通には至っていなかったので壁抜きをすることも困難だろう。
ジグザグの回避運動に移行したせいでこの速度では地雷を走り抜けられない為、自分の進行方向にある地雷を走りながら撃ち抜く。
対物ライフルの大威力で地雷が跳ねあがることもできず爆発する。
埋まったまま発生した爆発は上方への指向性を発揮し、金属球はほぼ真上に飛び散るのみで加害範囲はぐっと狭くなった。
二人の牽制射撃のお陰でバレットラインもほぼ飛んでこなかったお陰でもある。
「フゥー! この私! 凸侍が敵内部に一番乗りだっ!」
壁際まで走ると射角が取れなくなったのか銃撃が止む。
閉じられた門は鋼鉄製でがっちりロックされ開かないようになっているが、凸侍には関係ない。
中指の連動スイッチを押し込むと、先端付近に付けられた筒から赤い光が出る。
コガラスマルG9凸砂カスタムである。対人でもワイヤー切断でも過剰威力の光剣であるが、この鉄製の扉を破るには最適であった。厚さが二十センチ近い鉄の扉が容易く溶断されていく。
「おっと、こういうのは即入るのは良くない」
ストレージから一個、通常の破砕手榴弾を取り出すとピンを引っこ抜きレバーを弾き飛ばす。
溶断され立って居るだけになった鉄板を蹴り倒すと爆発寸前の手榴弾を投げ込んだ。
こういう時よくある待ち伏せ爆弾を誘爆させ中に突入するつもりであった。
「にょほっ?」
『なんだ!?』
『おわっ⁉︎』
しかしまさか、待ち伏せ爆弾の破壊力が鉄の扉そのものを吹き飛ばすレベルだとは想像だにしていなかったのである。背を預けていた鉄の扉ごと弾き飛ばされ、爆風の直撃こそ受けなかったもののそもそも耐久値が低いため体力を全損して無念の初死亡となってしまった。
爆風で吹っ飛んできた鉄の塊に当たればそりゃ死ぬのである。
その爆炎を潜り抜けるように迫るのは闇風だ。最高速度を維持したまま煙を突き抜け内部に侵入すると。直線通路の先に一人NPCが銃座を構えてこちらを待ち構えていた。
『……くっ、内部にマシンガンナー!』
『ああーー死んだ! 俺死亡一番乗り!? イヤァァァァァ』
無線で叫ぶ凸侍を全員が無視しつつ闇風も仲間にならないよう神経を張り詰める。
銃座単体であれば左右の広い通路故に回避しきることもできたが、両サイドから先ほどのアサルトライフルを持ったNPCが追従し攻撃を加えてくる。
急制動で反転、その際に数発被弾してしまったものの死ぬことなく門の外へ闇風は脱出する。
外へ出ると援護するダインと夏侯惇、既に壁に張り付いているペイルライダーの姿があった。
『ダイン、踏み台になってくれないか』
『ハッ? ……分かったよ!』
戦車と壁までの遮蔽のない区間をダインが全力疾走。なりふり構わない一番速度の出る速さで駆け寄るのを夏侯惇が援護する。
『くそっまた塀の上にアサルト使い!』
『こうなりゃ、俺に任せな!』
トーチカへの牽制を中断し塀の上のNPCに向け獅子王が牙を剥いた。遠隔でも十分な殺傷力を保持した汎用機関銃の弾丸を避ける為に塀の裏に隠れたことでダインが安全に踏破。
『ガァ!』
代償にトーチカから放たれたラインのない初弾ボーナスを乗せた狙撃が獅子王の肩に着弾し、運動エネルギーが胴体から足までをぶち抜き体力を全損させられた。
『夏侯惇も来るんだ』
ペイルライダー、ハンドルネームの通り夏侯惇を死に誘ってるようにしか見えない。
『いやいや援護なしで走り抜けられるわけないだろ!』
『いやうん、このペイルライダー君のやりたいことはわかってしまったぞ夏侯惇君、囮になりたまえよ』
『くっそダインにペイルライダー、覚えてろよ!』
夏侯惇が走り出すと当然堀の上のアサルト使いとついでに狙撃手まで夏侯惇を狙い出した。初弾ボーナスが消えているのでラインが出ているのが救いか、ラインを避けてなんとか進んでいるものの、時折被弾し体力が削られる。
致命的なダメージは受けない辺りはへたれたことを言っててもトッププレイヤーの一人である。
『行くぞ』
『来い!』
バレーのレシーブのような姿勢をとったダインの手にペイルライダーが飛びつき上に跳ねあげられる勢いと合わせた大跳躍を見せた。投げられたのはフック付きのワイヤーだ。
塀の角に引っかかったそれを支点にさらに跳躍、フルフェイスのショットガン使いが塀の上に躍り出た。
目の前にいるのは夏侯惇に集中していたNPCだ。
無慈悲に胴体に向け引き金を引くと、12ゲージバックショット弾が銃口から解放され至近距離ゆえにすぐさま着弾、怯むことなくアサルトライフルを掃射するNPCを飛び越えるように跳躍。
同時にその顔面に2発目のバックショットが叩き込まれた。
そのまま背面に着地し、リロードしながら動こうとして、足を止められた。
『なっ』
油断していなかったといえば嘘になる。残るアサルト使いと狙撃手には、最大の警戒をしていた。
その胴体に背後から顔面をダメージエフェクト塗れにしたNPCが抱きついてきたのだ。軽量装備で三次元機動をブーストするペイルライダーには致命的な荷重であった。あくまで死ぬ間際、体力バーが全損するまでの短い時間だが、狙撃の弾頭はそれよりもはるかに早い。
対物弾と高速弾の挟み撃ちに会いペイルライダーも体力全損となった。
『悪い』
『こうなりゃやけだ! どうせ逃げようにもうしろから撃たれるなら特攻じゃぁ!』
壁に体をぴったりつけたままダインが叫んだ。脇では精神的に疲れた夏侯惇が厳つい顔に似合わない疲労困憊顔をしている。
体力を半減させた夏侯惇は回復アイテムは使わない。どうせ特攻で死ぬのだから後での大事な場面で使うのだ。
『みんなはよ死ぬんだよぉ、キリトちゃんもこっちにきたぞぉ、デヴィッドチームは撤収するらしいゾォ、ほらダインもはやくダインイングするんだよ』
『うるせえ凸侍! 闇風、お前は突っ込む必要ないからそのまま戻れよ! お前の足なら逃げ切れるだろ!』
哀れ、夏侯惇とダインは戦車の陰に移動する前に確実に撃ち抜かれて死ぬ。
『アルファ、実質全滅だ、他はどうだ?』
『ベータ、耐久バカ以外グレポンで全滅、耐久バカもそのうちこっちにくる』
『ガンマ、剣ガールが死亡、クレハが軽症な以外は問題なし、撤退中よ』
闇風が状況を把握して撤退を開始する。夏侯惇とダインは内部確認と一人殺せればのワンチャンと闇風が逃げる時間稼ぎの為の特攻である。3回分あるので命は軽い。
完全に射線から逃れると、ホームベースに全力で疾走を開始する。
『……ひとまず、ホームベースで情報交換と行こう』
第一次とりあえず突撃作戦は新型AIチームの損害1、地雷原壊滅、北部鉄扉木っ端微塵、チーム魔境は死者多数の大損害という結果に終わった。
ペイルライダー
三次元機動を駆使するショットガン使い。デスガンの殺害候補だったが、ビル群での乱戦に巻き込まれ埋もれ死をしてしまいデスガンに襲われる機会を逃れる。
事件後電子ロックを買い換え扉にチェーンをつけるようになった。