GGOで凸砂する   作:MKeepr
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銃撃戦描写難しすぎて作家さんへの尊敬を深める

誤字修正しました



毒鳥を煽ったら襲われる凸砂

「いや罠だろ」

 

「いや罠でしょ」

 

「なんでやこの凸砂の愛に溢れる初心者のメッセージが見えないのか」

 

 凸侍がコンソールを操作してグレヲンとシャーリー、凸侍が全GGO凸砂の会の二人にそのメッセージを見せる。

 

『こんにちは! 凸侍さん先日GGOを初めてプレイし始めた際に第二回BoBで活躍した凸侍さんの姿が忘れられずご連絡させていただきました!

凸侍さんのプレイスタイルを参考に私も凸砂をはじめたのですが、凸侍さんのようになかなかうまくプレイできていませんなのでお時間が合うようでしたらX月⚫️日の夜21時頃にグロッケン郊外の廃退の都市の座標12.91辺りでお会いしませんか? よいお返事をお待ちしています!』

 

 スッとほぼ同時に読み終えた二人は遠い目をした。

 

「「罠じゃん」」

 

「なんでだ凸砂を志す初々しい奴の文章だろ!」

 

「凸砂なんてネタビルドをやる初心者はそういない」

 

 グレヲンに指摘されボディーブローを受けたように腹を押さえて後ずさる凸砂。

 

「第二回BoB見てて憧れるなら闇風でしょう」

 

 晒し出されたその首にシャーリーのギロチンの刃が落ち凸侍はその場で物言わぬ屍となった。

 

「……思い当たるフシはある」

 

 地面に顔をつけピンと背筋を伸ばしたうつ伏せのまま凸侍がか細い蚊のような声を出す。

 

「一昨日にめっちゃ高額なマネーで銃売ってくれないかってヤツが来たんだが売らない言ってるのにしつこいからつい煽った」

 

「どんな感じで」

 

「リアルラックを鍛えてどうぞwwww」

 

「それは怒るわ」

 

「俗にいうお顔真っ赤だな」

 

 凸侍はゆっくり立ち上がった。さすがにグロッケンのエントランス付近でずっとうつ伏せになってるのは恥ずかしくなってきたのだ。

 

「だがまあ、凸砂志望でなくとも、別に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

((あっ死んだなこいつ))

 

どや顔しながら向かう凸侍に二人の思いが重なるが、続けてこう思った。

 

((まあ凸侍ならどうにかなるでしょ))

 

 罠とわかっていても助けに行かない。それが全GGO凸砂の会である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってた」

 

 廃退の都市、それは広野付近に存在する廃ビル群の総称だ。グロッケン近郊にあることもあり、PKがよく行われる場所でもある。

 その廃ビルのうちの一つの一階、柱を背にした凸侍はそう呟いた。

 指定されていた座標はここより少し離れた開けた広場のど真ん中だったのだが、狙撃が飛んできたのだ。

 ビルから出るスコープの反射光が見えてなかったら凸侍は死んでいた。さらに狙撃を認識したにも関わらずバレットラインが出ない謎の狙撃をされ、物陰から沸いてきた五人を一射一殺して回避動作を繰り返しながらなんとか狙撃手のいるビルに突っ込んだのである。

 ビル入り口にもご丁寧にバリケードが用意されていたが対物銃らしくバリケードごとその裏の敵もぶち抜き爆散させた。

 そうして上に上がる階段前で軽機関銃のヤツに牽制射撃され続けている訳である。対多数のなか無傷でここまでやれるあたり第二回BoB準優勝者の面目躍如だが、その表情は泣きそうである。

 

「し……知ってた」

 

 罠ではなく凸砂志望の初心者さんがやって来るのを本気で楽しみにしていたのである。フルダイブゲームで鉄面皮は作れない。感情のままに表情は変化するのみである。

 この先、かなりのワイヤートラップ、しかも爆発するとかではなく単純に足をひっかける為にしっかり張られた物がかなりの数張り巡らされている。この柱に追い込まれたのもワイヤートラップが邪魔で走り抜けられなかったからだ。外のやつらを一掃できていなかったら動くこともままならず蜂の巣にされていただろう。

 

「おら出てこいよ! それでも侍か!?」

 

「ウルセー! 武士道とは死ぬことと見つけたりだけど死にたかねーわバーカバーカ!」

 

 仲間を倒されて怒り心頭な軽機関銃使いの野次に子供みたいな言い返しをしつつも、機関銃のリロードのタイミングを計る。

 面倒なことに軽機関銃の弾倉はベルト給弾方式ではなく、片側50発、合計100発の弾丸を放てるダブルドラムマガジンである。ベルト給弾方式に比べると高い値段と対応した銃が少ないため面倒は掛かるが、システムアシストのリロードも早くアシスト無しでもやりやすい。つまりリロードの隙が少ないのである。

 突如、3発程度をタップして撃っていたのがフルオートに変わり大音響がビルの中を満たす。

 嫌な予感のままにバレットラインが柱で遮蔽される形のまま離れるように走り出すと柱が青いプラズマの火球に包まれた。さらにぶちまけるような9つのバレットラインが凸侍の進路を妨げるように現れる。

 あとは狙撃手だけだと思っていたがまだ居たのか、と凸侍は残り4発となっていた10発のロングマガジンをその場で落とし、5発入る長さのマガジンを装着、薬室の弾を排出し構える。バレットラインの内4つがヒットし、HPがすごい勢いで減るが、VITが低い凸侍には日常茶飯事である。

 凸侍の体力を削った散弾の主、水平二連のショットガンを構えた男と視線が交錯する。

 引き金を引くのは凸侍の方が早かった。

 大口径対物銃特有の巨大な発砲音、そうして弾丸は吸い込まれるように男の胴体へ入り込み、内から爆炎を発生させ体を粉々に飛び散らせた。瞬間的に室内が明るくなるほどの爆発に、思わず機関銃の男も呆気にとられる。それが良くなかった。その爆発の次の餌食はその男だったからだ。

 

「……50BMG1000発分」

 

  勝ったのに死んだ目で凸侍が呟いた。死亡ドロップ品を後で回収して売っぱらってやると強く決意した。

 

「もはやこれまで……あの狙撃手を凸砂に改宗させねば死んでも死ねぬ……」

 

 回復薬を首に打込み、ワイヤートラップをぼそぼそと呟きながらAW50先端の“銃剣”で切って階段をしばらく上に登ってみると、もぬけの殻である。屋上か、と思ったが柱にくくりつけられたワイヤーを見て身を隠す。対面のビルから狙撃が飛んできた。

 

「ジップラインで隣のビルに移って狙撃か」

 

 どうするべきか、正直あの狙撃手を倒さないのは消化不良なので倒したいが、あまり時間をかけると漁夫の利狙いのハイエナも寄ってきそうだ。こうなれば凸砂の本領を発揮するしかあるまい、そう思いながら斜めに添えられたスコープを外し、より大型のスコープをストレージから取り出して装着した。さらに缶コーヒーのようなアイテムを二つ、一つを腰に下げ、もう一つを安全ピンを取り外し左手に握りこんでおく。

 上の階の手頃な窓からアイアンサイトで狙いをつける。スナイパーに不利な判定であるスコープの反射もアイアンサイトだと発生しにくくなり、150メートル程度先のビルで、盾をカバーにして伏せる大男が見えた。

銃を傾け、スコープに切り替えれば倍率25倍の超拡大された顔が弾着予測円の先にうつっている。

 大男と凸侍の目がスコープ越しに合った。

 大口径故の撃った反動のまま後ろに倒れ込むと、肩の辺りを銃弾が掠った。

 一回転してそのまま覗き込むと、着弾の爆発が大男を守っていた盾を吹っ飛ばし、男も負傷している様ではあったが、致命傷ではない。

 

「ああー、2000発分……」

 

 そう言いながら下層のジップラインに飛び乗り走り出す。

 150mあるジップラインの上を疾走しながら一度特殊弾をぶっ放す。今度は大男のつま先程に当たったが、その破壊力で無理やり体力を削り飛ばす。

 

「飛んで火に入る夏の虫って奴ね!」

 

「あ、やっべ」

 

 凸侍は狙撃手の男がラストかと思ったが、彼が煽った本人がいた。黒い防弾ボディースーツを着たタトゥーの女である。あの所持金の量から傭兵を雇って襲撃してきたのだと思ったのだが、本人も居たとは凸侍も予想外だった。持っているのはAK47と思われ、ジップライン上を走ってるため回避は困難だ。予定と違うが左手に握りこんでいた手榴弾を放り捨てる。

 バレットラインが現れず足に銃撃が命中するが、前方で閃光が発生する。投げられたソレは閃光手榴弾だスコープ越しの目を焼いてやろうと思って持っていたものだが、目くらましに使う羽目になった。

ジップラインから外れ、勢いのまま下の階にダイビングする。AGI特化の闇風ならばここから1秒で撃たれる前にジップラインを走破するだろうが凸侍はさすがにそこまで速くない。

 飛び込んだままに階を上っていき、丈夫なコンクリートを背に凸侍は叫んだ。

 

「おいあんた! なんかもう疲れたしやめない!?」

 

「えぇーもっと楽しもうよぉ?」

 

「狙撃銃出る狩場教えるからぁ」

 

「乗った!」

 

「軽いなおい! じゃぁなんで俺襲われたの!?」

 

「煽ったから」

 

「正直すまんかった」

 

 姿は見えないが、笑っているような気配が凸侍の背中に伝わる。こいつはゲームを全力で楽しんでいる。狙撃手の大男が爆散したことでさえ楽しみの一つなのだろう。

 

「最期は景気よく一騎打ちと行きましょうか!」

 

 その声と共に凸侍の足元に何かが転がってきた。凸侍の顔が引き攣る。

 硬質な球体で緑に点滅するそれは。

 

「グレネーダー!!」

 

 そう叫びながら部屋に無理やり突っ込みプラズマの奔流を回避、バレットラインが意味をなさない室内での接近戦だ。互いが狂ったような笑顔でビルの中を走りまわり、ほぼ意味をなさないバレットラインをまき散らしながら、女は柱から柱へ、凸侍は止まることなく疾走し続ける。

 しかし狭い故に最高速度を維持するのが困難な凸侍の方が不利なのか詰将棋のように徐々に端へ端へと追い込まれていく。

 そうして、ついに来た。逃げ場のない隅に凸侍が押しこめられた。

 柱をカバーにAKを構えた女の視界に映ったのは銃を構えず、再び閃光手榴弾が宙を舞っている光景だった。

 引き金が引かれAKの連射が始まるのと閃光と爆音が空間を塗りつぶしたのは同時、逃げ場はなく閃光で視界を潰されても当たる距離だ。しかし視界が戻る前に女の腹部に激烈な熱が走った。視界の端にある自身の体力バーがまるでバケツの底が抜けたように減り、ゼロに至る。

 女が消える寸前、僅かに戻った視界で自分の腹部から光る棒が突き出ていることだけが認識できた。

 闇風など高AGIプレイヤーの行う壁走りで上方へ弾幕を回避、“銃剣”を女に突き刺したのだ。

 

「さっすがトッププレイヤー殺し甲斐がある……」

 

 狂気的な笑みを浮かべ、女はそのままポリゴンになり弾ける。装備品のAK47がランダムドロップし床に転がる。

 

「さ、さすがにもう勘弁してくれ」

 

 凸侍も疲れたらしく、よたよたとビルを降りてグロッケンの安全地帯に逃げ込む。ハイエナと遭遇しなかったのは運が良かったか。

 グロッケンの自室で先ほどのクレイジー女に狙撃銃の狩場を教えつつ狙撃手の大男を全GGO凸砂の会に勧誘するため、メール送信の画面を開き、宛名を打ち込んだ。

 Pitohuiという毒鳥の名前を。

 




ヘッドギア込みとはいえ頭を狙撃されても死ななかったとしても光剣やら対物銃の直撃を貰ったらさすがに死ぬと思うんだ


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