僕は、ばあちゃんが大好きだった。小さい頃からばあちゃんの家に行けば、ばあちゃんが笑って迎えてくれた。今日もばあちゃんなら笑って迎えてくれると思った。でもばあちゃんの顔は、お前は誰だ、とでも言いたげにしていて、僕と会っても何の表情の変化も見せてくれなかった。
僕の大好きだったばあちゃんは、この世にはもう、いなくなってしまったのだ。
ばあちゃんの命日から、数日が経ったが僕は死んだような顔で部屋に引きこもっていた。でも、今日は部屋から出なくてはいけない。今日はおばあちゃんのお葬式だから。
「私の母は、昔から物事に対してハッキリと意見を言いどんな事があっても自分を貫き通す、素晴らしい人でした」
僕の父が親戚の前でスピーチをする。僕にとってはどうでもいい事だった。目を閉じて考えてみる。そうするとばあちゃんの声が聞こえる気がする。ばあちゃんが笑いかけてくれる気がする。もちろんそれは願望でしかなく、もうおばあちゃんは笑わない。そう思うとなんとも言えない感情になり、僕は目を開けた。
「ん?」
思わず困惑の声が出た。目の前にはちっちゃな一本道しかなく、父やその他の親戚の人達が消えていた。僕は辺りを見渡した。何度も何度も首を振り、状況を掴もうと試みた。しかしここにあるのは一本道。ちっちゃな一本道だけだ。不意に頭から声が耳に届いた。
「オマエは死にたいか」
「え?」
僕は驚きを隠せなかった。
「オマエは死にたいかと聞いている」
「いや、死にたくない」
誰にも聞こえないような小さな声で返す。
「今、この道を渡るとオマエは死ぬ。だがそのかわりにオマエの大好きなばあちゃんと一生、二人で暮らせるぞ」
「本当か!」
「ああ、本当だ」
それは、今の僕にとって最高の提案だった。そのはずなのに、僕の足を止めようと別の声が響き、僕の邪魔をした。
「ダメよ健ちゃん。こっちに来てはダメ」
僕のことを健ちゃんと呼ぶの人は、たった一人しかいなかった。いや、今となっては誰もいなくなってたはずだった。
「ばあちゃんなのか?」
「ええ、そうよ」
「ばあちゃん、今そっちに行くよ」
「来ちゃダメよ」
その声は、すごく通ってハッキリとした声だった。しかしその声で僕は驚き、そして絶望した。
「なんでだよばあちゃん」
「あんたがいなくなったらみんな悲しむ」
「僕だってばあちゃんがいないと悲しいよ」
「ウジウジしない!男の子だろ」
「でも、ばあちゃん」
「あんたならなんでも出来るよ。若いんだから。ばあちゃんは、その気持ちだけで嬉しいから帰んなさい」
その時のばあちゃんは、笑っていたのだろう。なんとなくそんな気がした。
「で?オマエはどうする」
「僕は元いた場所に帰るよ」
「そうか…」
僕を連れてきたであろうそいつは、悔しそうに呟いた。
「ありがとばあちゃん」
「元気でね」
僕は、光に包まれ数秒で感覚の違いに気づいた。
辺りを見回すと父の姿があり、親戚の人達が座っていた。
火葬前にばあちゃんの顔を見る。おそらく、ばあちゃんの顔を見るのは最後になるだろう。でも、僕はそれでもいいと思ってしまった。だって、ばあちゃんの顔は笑っていたから。
どうでしたか。アドバイスなどお願いします。